異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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大きな神社

 そのままちょっと待つと、すぐに私の番になった。えっと……。この箱にお金を入れるみたい。日本の硬貨はあまり持ってないけど、逆に言うとちょっとは持ってる。電子マネーが使えないお店もあるからって橋本さんにもらったことがあるから。

 アイテムボックスから硬貨を取り出して、箱に入れる。賽銭箱っていうらしい。入れるお金は、お賽銭。日本語は難しいね。

 手を合わせて、次の場所へ。これで清められた、ということなのかな。よく分からない。

 少し歩いて、また鳥居をくぐって……。道が左右に分かれてる。なにこれ。

 

『そこに並んでる木の保護のために、真ん中は通っちゃいけないってことになってるんだ』

『両端の道を歩いてねー』

 

 そういうことみたい。じゃあ、そっちに行こう。でもその前に。

 

「木、でっかい」

 

 わりと大きな木が並んでる。もちろん精霊の森の木ほどじゃないけど、それでも大きくて太い木がたくさんだ。立派な木だね。松、という種類らしい。

 ちょっと真ん中を通ってみたくなるけど、決まりはちゃんと守らないとね。木の保護、とっても大切なことだと思う。

 左側の道を通って、さらに奥に進んでいく。思っていたよりも広い場所のような気がしてきた。実際はそこまでじゃないんだろうけど、雰囲気かな?

 さらに進むと、またたくさんの人が集まってる場所があった。小さい建物……建物じゃないかな。屋根があって、その下に何かあるみたい。なんだろう?

 

『手水舎ってところ。てみずや、な』

『手や口を清めるんだよ』

 

「ふうん……」

 

 なんだか清めてばっかりだね。人間、汚れすぎじゃない?

 せっかくだから私もやっていこう。人はたくさんだけど、みんなすぐに終わらせて移動していってるから、あまり待たなくてよさそう。

 

「あれ……。リタちゃん!?」

 

 私の目の前の人が小さく叫んで、他の人が一斉にこっちを見た。ちょっと怖いからやめてほしい。

 

「ん」

「わ……。あ、あの……! どうぞ、先に……!」

「いいの?」

「どうぞどうぞ!」

 

 よく分からないけど譲ってもらえた。というより、なんだかどんどん前に通されて、結局そのまま先頭に来ちゃった。いいのかな?

 んー……。大きな石の箱みたいなのがあって、そのちょっと上に通された竹から水がちょろちょろ流れてる。これで手を洗って、口をすすいで、清める……と。なんだか大変だ。

 杖をちょっと横に浮かせて、手を洗って、口をすすいだ。これでいいのかな?

 

「杖が浮いてる……」

「すごい、やっぱり本物だ……」

 

『いいなあ、俺も直接見たいなあ』

『神社にいるワイ、リタちゃんの後ろ姿の撮影に成功する』

『後ろ姿で喜ぶなよwww 羨ましいけど』

『羨ましいのかw』

 

 杖を持って、その場から離れて……。集まってる人に呼び止められて、写真を撮られた。みんなで撮るにはさすがに人数が多かったから、手水舎の前で写真を撮られただけ。今更だから、勝手に撮ってくれてもいいんだけど。

 そうして、手水舎は終わり。さらに先に進んで……。

 

「おー……」

 

 とっても大きな建物の前にたどり着いた。なんだかすごく太い縄が飾られてる。なにこれ。

 

『建物は拝殿。縄はしめ縄っていうやつ』

『その神社のしめ縄は日本最大級の大きさを誇るぞ!』

『でっかいよね』

 

「ん。でっかい。かっこいい」

 

『だからかっこいいはどこから来るのw』

『かっこいい……のか?w』

『リタちゃんがかっこいいって言ったらかっこいいんだよ!』

 

 いや、別に私の感想を押しつけるつもりもないよ。でも私はかっこいいと思う。よくこんなものを作れたな、とも。日本の人はすごい。

 しばらく見てたら、みんなもやっぱりしめ縄がすごいと思ってるのか、そっちの写真を撮ってる人もたくさんいた。みんなでぱしゃぱしゃ。

 でも振り返ったら、もっとたくさんの人が写真を撮ってた。わざわざ私が入るように撮ってる人が多い。何の意味があるの?

 

『SNSでめっちゃ流れてるw』

『神社にお参りする魔女、みたいな感じで投稿されまくってるね』

『俺も……撮りたかった……!』

 

 そんなに特別なこと、なのかな?

 お参り、というのをする人を見ていたら、みんな拝殿の方でお金を入れたり頭を下げたりしていた。手を叩いて、少し黙って、帰っていく。何をやってるんだろう。

 

『神様へお願いを言っているんだぞ』

『叶えてほしいお願い事を心の中で言うんだ』

『そこの神社は縁結びで有名だけど、気にせずなんでもお願いしていいと思うよ!』

 

 お願い。んー……。師匠とはもう会えたから、正直今は何もない。何かほしい、やりたい、ということがあったら自分でどうにかするし。

 でも、ここまで来たから、同じことをやっていこう。

 拝殿に向かって、しめ縄の下あたりへ。大きな賽銭箱があったから、そこにお金をそっと入れる。あまり強くは投げない方がいいって言われたから、静かに、ね。

 えっと……。で、どうすればいいの?」

 

『二礼二拍手一礼、がだいたいのやり方だけど、その神社は四拍手だったはず』

『二回お辞儀して、四回手を叩いて、お願いごとをして、最後に一礼、かな』

 

 えっと……。二回お辞儀して、四回手を叩いて、お願い事……。お願い事、どうしようかな……。

 

「ちいちゃんの魔法の習得がちょっとでも早くなりますように」

 

『ちょwww』

『神様「無茶言うな」』

『これにはお願いされた神様も困惑するわw』

 

 私はいいと思ったんだけど……。まあ、いいか。最後に一礼して、これで終わり。

 他にもいろいろと見て回るところはあるみたいだけど、そろそろご飯が食べたいからここまでにしよう。出雲そば、食べたい。

 

「楽しい……というのはまた違ったけど、不思議な場所だった」

 

『神社はテーマパークとかじゃないから』

『日本の神様への姿勢をちょっとでも感じてもらえたら嬉しいな』

 

 んー……。ちょっとだけ、分かったような、気もする。ちょっとだけ、ね。

 帰る前にちょっとだけ振り返る。姿は見えないけど、確かにある、精霊様にも通じる不思議な存在感。そのなんとなく感じるものに頭を下げて、私は神社を後にした。

 それじゃあ、出雲そばだ。楽しみ、だね。

 




壁|w・)あっちのSNSでは、おー、と目をきらきらさせてしめ縄を見るリタの写真が大量に……。
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