異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ぜんざい

 

 神社の南側から外に出て、周囲を見回す。来た時はあまりよく見てなかったけど、なんだか不思議な町並みだ。石畳って言えばいいのかな? それで舗装されていて、コンクリートは使われてない……かもしれない。

 建物も東京とか大阪にあった大きなビルは見当たらなくて、日本らしいお家がたくさん建ってる。お店もいろいろあるみたいだから、ここから出雲そばを……。

 

「あ」

 

『出雲そばか。ぶっちゃけそこならどこにでもあるからなあ』

『うん?』

『何か見つけた?』

 

「和菓子屋さんみたいなのがある」

 

 和菓子。あんことか、そういうのを使った日本のお菓子。お団子とか、好き。

 

『あーあw』

『これは……出雲そばが消えちゃいましたね?』

『出雲はぜんざい発祥の地だからね』

 

 ぜんざい。聞き覚えはあるけど、食べたことはないかも。お餅とか使ってるんだよね。せっかくだから、是非とも食べてみたい。食べよう。

 お店の中に入る。結構広いお店で、ちょっと段差になって畳に上がる場所があった。ここで食べられるみたい。

 

「リタちゃん!?」

 

 ふとそんな声が聞こえて顔を上げたら、店員さんと目が合った。

 

「わ……本物だ! 食べに来てくれたの?」

「ん」

「そうなんだ! じゃあ、どうぞどうぞ!」

 

 店員さんに促されて、畳の部屋へ。一番奥のスペースに案内された。窓はちょっと遠いから、外からはあまり見られないと思う。

 

『気を遣ってくれた感じ?』

『配信見てる人からすれば意味ないんだけどな!』

『それはそうだけどw』

 

 メニューは……いろいろ。ぜんざいもちゃんとある。というより、ほとんどがぜんざい。普通のぜんざいの他にも抹茶ぜんざいとかそういうのもあるみたい。

 んー……。とりあえず。普通のぜんざいと抹茶ぜんざいをもらおう。

 

「これください」

 

 メニューを指し示しながら言ったら、かしこまりましたと下がっていった。

 

「ぜんざい。甘いんだよね。とても楽しみ」

 

『いやそれはいいんだけどさ』

『出雲そば……どこにいった?』

 

「勘のいい視聴者は嫌いだよ」

 

『元ネタきついシーンなのにほのぼのしすぎだよw』

 

 出雲そばももちろん食べる。でもそっちを優先したら、ここを後回しにすることになる。そうするときっと、ここに来るのは忘れてしまうから……。いや忘れることはないけど……。でも、うん。そう。

 

「我慢はよくないと思います」

 

『それはそうw』

『好きに食べればいいんやで』

『問題は際限なく食べそうだってことぐらい』

 

 そんなことはない、と思う。多分。

 結構人気のお店みたいで、お客さんも少しずつ入ってきてる。みんな驚いたようにこっちを見て、ちらちら見て、クッションに座って、それでもちらちらと。

 スマホを向けてきた人には手を振っておいた。ふりふり。

 

『だからサービスしすぎなんだってよお!』

『リタちゃんにふりふりしてもらえた……写真撮れた……嬉しい……』

『視聴者がいた……だと!?』

 

 あの女の人は視聴者なんだね。スマホを見て、にやにやしてる。大丈夫? 一緒に入ったお連れの人にどん引きされてるよ?

 

『リタちゃんの写真の代わりにいろいろ失ってそう』

『別の意味で大丈夫か』

 

 はっとしたように顔を上げて、お連れさんを見て、愛想笑いを浮かべてる。頑張ってほしい。

 

「お待たせしました」

 

 それよりもぜんざいだ。ようやく運ばれてきた。

 店員さんが持つお盆には、ちょっと赤いお椀が二つ。机に置いてくれたそれを見たら、水っぽいあんこに満たされていた。片方は普通の黒いしゃばしゃばのあんこにお餅が二個入ってる。

 もう片方は緑色。抹茶ぜんざい、だね。これにもお餅がちゃんと入っていた。

 甘そう。とても美味しそう。それじゃあ、早速。

 

「いただきます」

 

 一緒についてきたスプーンを手に取って、まずはあんこを食べてみる。んー……。とっても甘い。甘いけど、くどくはない、自然な甘さ、みたいな感じ。

 そんなあんこと一緒にお餅も食べる。柔らかいね。柔らかくて、もちもちしてる。こっちはそんなに強い味がついているわけじゃないけど、だからこそあんこの味をしっかりと感じられて、とても美味しい。

 抹茶の方は、ほんのりと苦みを感じるけど、元が甘いからかそこまでじゃない。甘さが控えめになって、これはこれでいいと思う。甘いのが苦手な人はこっちの方がいいのかも。

 量があまり多くないから物足りないけど、他にもたくさん食べる人にはちょうどいいかもしれないね。

 

「ん……。とっても美味しい」

 

『もきゅもきゅ美味しそうに食べていて眼福でした』

『その場にいる視聴者が憎い』

『俺たちの全力の恨みパワーをお届けだ!』

『なんで!?』

 

 ケンカはよくないよ。

 

「どうでしたか?」

 

 店員さんがこそこそっと聞いてきたから、頷いて答えておいた。

 

「ん。すごく美味しかった」

「それは良かったです! あ、こちらもよければどうぞ。当グループの和菓子セットです」

 

 そう言って差し出されたのは、ちょっと大きな紙の箱。中は、和菓子がいっぱい入ってる。このお店でも売ってるセットなんだとか。どら焼きとか最中が入ってるみたい。

 

「おー……! ありがとう!」

「いえいえ」

 

『めっちゃ嬉しそう』

『表情はそのままなのに声だけちょっと弾んでるのはそれはそれで器用』

『そこの和菓子美味しいからおすすめだよ』

 

 精霊様や師匠へのお土産にしようかな。みんなで食べようと思う。

 最後に、お店の前で店員さんと、それに居合わせたお客さんと一緒に写真を撮った。みんな好きだね。

 

「ありがとうございました!」

「ん。とっても美味しかった。ありがとう」

「はい! また来てくださいね!」

 

 店員さんやお客さんたちに手を振って、お店を後にした。それじゃあ、今度こそ出雲そばだ。

 




壁|w・)あの場所って石畳なんだろうか、コンクリートなんだろうか……。
ちょっと分からなかった……。

甘い物を見つけてリタが我慢できるはずがないんだ……!
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