異世界魔女の配信生活   作:龍翠

419 / 543
茶色の温泉

 

 夕方。電車の時間まではもうちょっとある。何しようかな?

 

「何しよう」

 

『出雲市駅から何度も夜行列車に乗ってる俺がおすすめのムーブを伝授しよう!』

『うわなんかでた』

『変なやつだ! 座布団を出せ! 茶も用意しろ!』

『歓迎するのかw』

 

 おすすめのムーブ。むーぶ……? 動き方ってことかな? まずは聞いてみよう。

 

『そば屋の店主が言っていたのは、すぐそこのお寿司屋さんだ! 予約をすればスムーズに受け取れるぞ!』

『つまり予約しろと』

『もうちょっと分かりやすく言おうぜ?』

 

 じゃあ、予約だね。お寿司屋さんはすぐに分かる。ちゃんと看板があるから、駅からの上空ですぐに分かった。じゃあ、そっちに行って、お店に入ろう。

 

「いらっしゃいま……」

 

 そしてカウンターの奥にいる人が止まってしまった。いつものやつだ。

 

「お寿司、予約したい」

「は、はい! 少々お待ちください! おい!」

 

 最後のおいは、店員さんを呼んだみたい。女の人が出てきて、私を見てちょっと驚いて、すぐに笑顔で対応してくれた。

 

「ご予約ですね。何にされるか決まっていますか?」

「んーん。なんでもいい」

「一応、メニューはこちらですけど……」

「全部」

「だと思ったので入力始めてます」

「おー……」

 

 何か、タブレット、だっけ。それを操作しているなと思ったら、メニューの登録をしてくれていたみたい。手慣れた様子で操作してる。すごい。

 

『この人も視聴者じゃったか』

『ぶっちゃけ視聴者じゃなくても、リタちゃんが大食いなのはわりと周知の事実』

『以前テレビで、リタちゃんが食べたもの特集なんてものがあったなあw』

 

 なにそれ。私知らないんだけど。いや、別にだめとは言わないけど……。ちょっと気になるから見てみたい。でももう前の話だよね?

 

「真美。真美」

『大丈夫、録画してあるから見れるよ』

 

『なんでさも当然かのように録画してるんだこの子』

『リタちゃんが関わってる番組とか全部録画してそう』

 

 そんな話をしている間にも店員さんは操作を続けていて、やがて動きを止めた。

 

「お肉を使ったお寿司など、お持ち帰りできないものもありますので、それ以外は登録させていただきました」

「アイテムボックスに入れるから傷まないよ?」

「…………。特別、ですよ……?」

「ん」

 

『リタちゃんわがまま言っちゃだめでしょ!』

『たくさんの人が見てるっていうのにw』

『今回だけ特別ってちゃんと明言したからな!』

 

 全種類のお寿司を頼んで、お支払いも済ませておいた。あとは、受け取りに来るだけ。電車の時間は十九時前だから、十八時受け取りでお願いしておいた。楽しみ。

 これで予約は完了だけど……。次はどうすればいいのかな。

 

『予約が終わったら、さっぱりしよう! 夜行列車はシャワーしかない上に、シャワーカードは争奪戦で買える可能性はとても低い! 近くに銭湯があるぞ!』

『あれ? でもリタちゃん、シングルデラックスだからシャワーカード付属してるはずでは』

『お風呂大好きっ子に銭湯を勧めて何が悪い!』

『あ、はい。その通りです』

 

 銭湯。お風呂。是非行ってみよう。

 お寿司屋さんを出て、銭湯の看板を探す。すぐに見つけることができた。ちょっと特徴的な名前だ。かわいい名前かもしれない。じゃあ、早速。

 銭湯に入って、券売機で券を購入。店員さんが口をあんぐりと開けていた。

 

『いつもの』

『本日何度目のいつものだよw』

『驚き顔は何度見てもいいものだ』

『ドSかな?』

 

 変な趣味は持たない方がいいよ。

 人もわりといるけど、気にせず入る。着替えて、お風呂へ。

 

『そこ、ちゃんとした温泉だからね!』

『草津とかとはまた違うから楽しめるはず』

 

「へえ……」

 

 どんなお湯なんだろう。そう思って見てみたら、なんだか茶色のお湯だった。視聴者さんが言うには、鉄分が多い温泉なのだとか。よく分からないけど、すごい。

 でも知らない人も多いから、結界をなしにするのはちょっと不安。だから、入る直前に結界を解いて、入ってから囲むように結界を張っておいた。これでよし。

 

「んー……。気持ちいい」

 

『喜んでもらえたようでなにより』

『サウナもあるぞ!』

『同じ値段で入れるよ!』

 

「サウナ」

 

 周囲を見て探してみたら、確かにサウナがあったけど、ちょっと小さいみたい。すでに満員みたいだから、今回は諦めておこうと思う。

 それよりも、ゆっくり温泉を楽しまないと、ね。

 

「んふー……」

 

『気持ち良さそうだなあ』

『俺も温泉入りたい』

『ごくごくごくごく』

『この配信でごくごく民が出てくるだと……!?』

 

 なにその変な人。ちゃんと水を飲んだ方がいいよ。

 少しのんびりして、温泉から出る。買っておいたタオルで体を拭くと、薄く茶色になっていた。本当に不思議なお湯だ。温泉っていろいろあるね。

 フルーツ牛乳とかは……ないかな。じゃあアイテムボックスから……。

 

『ジュースの自販機ならある』

 

「ジュース」

 

 周囲を見回す。すぐに見つけられた。ジュース。

 

『ふらふらと吸い寄せられるようにw』

『ジュースを置いて捕獲罠を作ったらリタちゃんが捕まえられそう』

『どうしよう、否定できないw』

 

 その場合は罠を壊すから大丈夫だよ。

 




壁|w・)罠に引っかからないとは言ってない。

お寿司屋さんも銭湯もモデルはありますが、どことは言いません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。