異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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どたばたギルド

「前にも大事な客人に対してくそったれなことやったよなあ……。そろそろマジで死ぬか? いっぺん死ぬか?」

「いっぺん死んだら終わりだと思うんだ!」

「そうか。じゃあ死ね」

「会話しよう!?」

「サブマスター! そろそろ落ち着いて……!」

 

 うーん。大騒ぎ。ここはいつも通りで安心するね。安心していいのかは分からない。

 

「なあ、リタ。もしかして、あの人か?」

「ん。前もあんな感じで怒られてた」

「あ、そう……」

 

 さすがにちょっと同情……とは違うみたいだけど、さすがにもういいかと思ったみたい。そっちをちらちらと見るだけで、カウンターの方に向かった。

 

「ちょっと腹が大きい気がするけど……。もしかして……」

「ん……。にんしん? してるって聞いた」

「マジかよめでたいな。妊婦さんが大の男を殺しかけてるけど」

 

『素直にこわい』

『まあ前からサブマスターさんの方が強かったっぽいから』

 

 あの二人はあれでいいんだと思う。見ていて楽しいよ。

 カウンターに向かって、師匠がカードを差し出す。師匠のギルドカードだ。ちょっと見てみたい。師匠もSランクかな?

 

「まさか……賢者様!?」

 

 カードを受け取った人が驚いてカードと師匠を交互に見る。師匠は頷いて、

 

「ああ。ギルドマスターと会いたいんだけど、いいか?」

「もちろんです」

 

 そんな感じで私たちはそのままギルドマスターの部屋に向かうことになった。後ろのあのどたばたはもう完全無視するみたい。職員さんもほとんどの冒険者の人たちも気にしてないみたいだからね。

 

「リタも来るのか?」

「ん。だめ?」

「だめじゃないけど……。ギルドマスターとは顔見知り程度だから、挨拶するだけだぞ」

「んー……」

 

 ついていく意味があるかと言えば、特にない。ここまで来たら師匠もちゃんとギルドマスターさんとお話しするだろうし。じゃあ、もういいかな?

 晩ご飯の時間だけ忘れないようにしないとね。あとは師匠にお任せしよう。

 

「じゃあ、ちょっと出かけてくる」

「ああ。俺は用事が終わったら、久しぶりにこの街を適当に回るから。何かあったら念話でな」

「ん」

 

 師匠に手を振って、私はギルドを出ることにした。私もせっかくだし、用事を済ませようと思う。

 

「歯ぁ食いしばれえ!」

「ぶへえええ!」

「わああああ!?」

「元気だね」

 

『あの惨事を元気だねで済ませるのかw』

『どうせなら挨拶すればいいのに』

 

 仲良し、というわけでもないから、必要ないと思う。

 ギルドを出て、一息。それじゃあ、ちょっと路地裏にでも行って転移しよう。

 

『で、どこに行くのリタちゃん』

『感動の再会ってわけでもないだろうから別にシッショのやつに興味はないけど、でもやることないのでは?』

『それとも、大事な用事があったり!?』

 

「あるよ、大事な用事」

 

 そう。とても、とても大事な用事がある。今日の朝にできた用事だ。私は、アイテムボックスからお菓子を取り出して、まじまじと見つめた。サルミアッキ。

 

『どうして急に取り出したの……?』

『まさか、くせになった、とか!?』

 

「それはない」

 

『即答w』

『食い気味に否定するじゃんw』

 

 さすがにこれでくせになるとかは、ないかな。これを美味しく食べられる人はすごいと思う。私には無理だ。だから、やっぱり外国は行かない方がいい。

 

「ちょっとエルフの里に行ってくる」

 

『え』

『まさか』

 

「ん。ちゃんと消費してくるね」

 

 消費するのは私じゃないけど、ね?

 ちょっとだけわくわくしながら、私はエルフの里に転移した。

 

 

 

 転移した先は、アルティの側。アルティが座るにしては大きな椅子に、ちょこんと座って何かを話していた。

 

「あなたの言いたいことは分かりました。ですがそれは……」

 

 そこでアルティが言葉を止めた。周囲の様子が変わったことに気づいたみたい。

 ここは、謁見の間。部屋にいるのは、ちょっと偉そうなエルフたち。そのエルフたちが、目を見開いてアルティを、というよりその隣に現れた私を凝視してる。

 アルティは首を傾げて、こっちを見た。

 

「あ、リタ!」

「ん。来た」

 

 アルティが嬉しそうに立ち上がって抱きついてきた。なでなでしておこう。なでなで。

 

『かわいい』

『てえてえ』

『それよりもいきなり謁見の間に行っちゃったことを誰か咎めろよw』

『エルフの里だし、別にいいかなって』

 

 そうそう。別にいいと思う。

 でも、お仕事中、かな? 今回はアルティを目印にして転移したからちょっと気づかなかった。忙しければまた後で来るか、それか場所さえ聞ければ勝手に行くんだけど。

 

「リタ、今日は何をしにきたの?」

「ん……。アルティ、忙しい? 忙しければ後でも……」

「大丈夫。大したことしてないから」

 

 えっと……。本当に大したことじゃないの? 話し相手っぽい跪いてる人がショックを受けてるよ? 何か、こう、王様に陳情に来たとか、そういう雰囲気に見えるけど……。

 

「増税したいとかくだらないこと言ってるから放置でいいの。兵士さん、丁重に送り出してください」

「え。あ、はい!」

「ちょ!?」

 

 兵士さんたちが戸惑いながらも集まってきて、跪いていた男の人を連れて行ってしまった。でもちゃんと丁重には扱ってるみたい。丁寧な対応だったよ。多分。

 

『これはひどいw』

『アルティちゃん、たくましくなって……』

 

 なんだかしっかりしてる気がする。よかった、かな?

 




壁|w・)ギルドのあの二人は普段は仲良しです。
リタの行くタイミングが悪いだけです。悪いだけなんです。多分。
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