異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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突発的握手会

 

 プールで遊び終わって、そろそろ夕方。さっと着替えて、水着はアイテムボックスに入れておく。精霊の森でも使えるかな。あっちだとそもそも着なくてもいいと思うけど。

 そうして更衣室から出たところで、ちょっと困ったことになってしまった。

 

「なにこれ」

「あはは……」

 

 なんだかたくさんの人が集まってきてるみたい。プールの人だけじゃなくて、近くの海とか他の施設とか……。そんなところから、いっぱい。

 

「私がこれぐらいで終わりかなって言っちゃったからかなあ……」

「そうなの?」

「そうかも」

 

 プールでのんびり流されている時に、この後はどこに行くのか聞いてみたら、とりあえずは終わりかなって言われたんだよね。それをしっかり配信でも拾っちゃって……。こうなった、らしい。

 

「写真! 写真撮らせてください!」

「握手だけでも!」

「生ふりくださーい!」

 

 なんだこれ。

 

『うじゃうじゃわいてきたなあ』

『これ、心桜島の人じゃなくて観光客の方が絶対多いだろ』

『観光客からしたら最初で最後のチャンスかもしれないからな』

 

 別にそんなことは……。いや、あるのかな。心桜島以外は同じ場所に行くことって少ないし。

 

「リタちゃん、どうする? 無視して帰っちゃう?」

 

 真美が心配そうに聞いてくれる。時間は……まだ夕方の四時。晩ご飯には早い時間。

 

「真美。真美。カツカレーが食べたい」

「うん。用意しておくね。じゃあ、がんばって」

「ん」

 

 さすが真美だ。私の言いたいことを察してくれたらしい。手を振る真美を真美のお家に転移させて、と……。

 

「じゃあ……。んー……。適当に」

 

 そういううことになった。正直、真美を送ってしまってから後悔した。最初に流れとか決めてもらえば良かったなって。

 でもここはプールの施設。ここでやったらプールの人が怒ってくる。そう思っていたんだけど……。

 

「ではこちらへ。この部屋なら大丈夫ですから。握手して、写真の流れで。こちらから何名か出しますので、誘導に当たらせます。お任せください」

 

 プールの偉い人が許可とかいろいろしてくれた。働いてる人に迷惑がかかるのはだめだと思うんだけど……。今日私が行くことは真美がやっぱりあらかじめ伝えていたらしくて、念のためといつもより多くの人が働いていたらしい。だから問題ないって。

 さらにとっても長い行列になったけど、いろんな人が手伝いに来てくれて、誘導してくれるらしい。なんだか、とっても大げさなことになっている気がする。

 

『唐突に始まる一大イベント』

『なにこれめっちゃ羨ましいんだけど』

『俺も! このイベントに! 参加したいです!』

 

 参加しなくていいよ。面倒なだけだから。

 

「それでは始めましょう」

 

 どうしてこうなったかな、と思いながら、私は一人目の、目をきらきらさせてるちっちゃい子の手を握った。

 

「魔法少女さん!」

「ん。魔法少女ではない。にぎにぎ」

「やわらかい!」

「はい、写真。ぱしゃり」

「ぱしゃー!」

「じゃあ、元気でね」

「はーい!」

 

 ママー、と母を呼びながら走っていく子に手を振る。ああいう子たちなら、がんばってもいいと思える。だから、うん。この島にはたくさんお世話になってるわけだし、がんばろう、かな?

 

 

 

 夕方の六時までひたすら握手をした。最後は無心でやっていたかもしれない。気づけば六時だったから。とてもがんばったと思う。

 お片付けとかはやってくれるらしいから、私は先に帰ることにした。転移で真美のお家へ。

 

「ただいま」

「おかえり、リタちゃん。お疲れだね」

「つかれた……」

 

 椅子に座って、テーブルに突っ伏す。ぐてーっと。

 

『珍しくリタちゃんがマジで疲れてる』

『気疲れってやつだろうな』

『リタちゃんはようがんばったよ』

『だから俺の地元でもやってください』

 

「二度とやらない」

 

 正直、疲れるだけで楽しくない。ちっちゃい子が笑顔になってくれるのはかわいかったけど、そういう子たちばかりじゃなかったし。

 真美からもらったオレンジジュースをちびちび飲んでいたら、隣に誰かが座ってきた。ちいちゃんだ。にこにこ私を見てる。

 

「握手!」

「うん? ん」

 

 何故か握手を頼まれたので、手を握っておく。ちいちゃんならかわいいからいいよ。にぎにぎ。

 

「こーら、ちい。リタちゃんは疲れてるんだから迷惑かけないの」

「えへー」

「まったく……」

 

 見知らぬ他人ならともかく、これぐらいなら問題ない。

 そうしてちいちゃんとのんびりおしゃべりしていたら、カレーライスが出てきた。カツカレーだ。真美のカツカレー。疲れた時にはやっぱりカレーライスだよね。

 

『疲れた時の甘い物枠』

『疲れた時はカレーライスというパワーワード』

『どういうことだってばよ』

 

 そのままの意味だよ。疲れた時こそ好きなものを食べないとね。

 んー……。やっぱり真美のカレーライスが一番好きだ。カツもサクサク。とっても美味しい。

 

「次はチーズカツカレーだよー」

「おー!」

 

 チーズ入りある! とてもすごい! とてもえらい! いっぱい食べる!

 何故かにこにここっちを見てる真美に見守られながら、カレーライスをたくさん食べた。とても美味しかったです。

 それじゃあ晩ご飯も食べたし、そろそろ精霊の森に帰ろう。ちょっとだけ、やりたいこともあるしね。川の様子を見たりとか、だけど。ともかく、転移だ。

 




壁|w・)心桜島限定イベント、魔女の握手会。
なお次回開催は予定されておりません。
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