異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ジェットコースター

 

 ジェットコースター。真美のお家でテレビを見ていた時も、よく特集とかやっていたもの。すごい速さで進む乗り物なんだとか。

 最初は、速いだけで何がいいのか分からなかった。だって、飛んだ方が速いから。でもあの急流滑りでちょっと変わった。

 あの、なんだか押しつけられるような不思議な感覚。ちょっぴり楽しみ。

 ところで。

 

「師匠。師匠。ジェットコースター、二つある」

「ああ、あるぞ。でも、あっち側のやつだけな」

「どうして? 別の方が楽しそう」

「いや、その……」

 

 何故か師匠が困ったような顔になってる。少し言いにくそうな顔だ。どうしたのかな。

 

『あのな、リタちゃん』

『プールのスライダーを思い出してほしい』

『制限引っかかったやつ、あるだろ?』

 

「え……」

 

 ある。あった。身長が足りなくて、滑れなかったスライダーがあった。もしかして、ジェットコースターも?

 

「目測、ではあるんだけど……」

「ん……」

「リタは、ぎりぎりだめだな……」

「…………」

 

 そんな……。楽しみにしてたのに。いやちょっと待って。

 

「私は?」

「あー……。アルティは、多分、いける……」

「…………」

 

 なにそれ。双子なのに。ずるい。ずるい。とてもずるい。

 じっとりとアルティを見つめたら、アルティが頬を引きつらせて師匠の後ろに隠れてしまった。隠れなくていいよ。大丈夫だよ。怒ってないよ。羨ましいだけだよ。

 

『ていうか待って。アルティちゃんの方が身長高いのか!?』

『リタお姉ちゃん? の威厳が!』

『これ、多分あれじゃないか? 守護者になってから、成長止まってるんだろ?』

『それだ!』

 

 守護者になったことに後悔なんてしたことがなかったけど、今はちょっぴり、もう少しだけ待ってから守護者になれば良かったと思ってしまった。いやでも、それだと日本にも行ってないかも? むむ……。むむむ……。

 

「むぅ……!」

「ははは。拗ねるな拗ねるな」

「むー!」

「あっはっは」

 

 師匠に頭を撫でられる。でもちょっと、やっぱり悔しい。とても、乗りたかったのに!

 

『めちゃくちゃリタちゃんが子供っぽいところ見せてる』

『やっぱりシッショの前だと違うもんなんだなあ』

 

 恥ずかしいから変なことは言わなくていいよ。

 仕方ないので、身長制限が緩い方のジェットコースタ―へ。少し待つと、わりとすぐに順番がきた。

 カートの一番前に座って、体を押さえる部分を下ろす。落ちないようにするためのもの、かな? ぐるっと一回転する部分もあったみたいだから、大事なものかも。

 私の隣はアルティで、後ろが師匠だ。師匠は私とアルティを一緒に座らせようとしてる気がする。たまには師匠と座りたいけど。

 そんなことを考えている間に出発だ。最初はゆっくり進んで、一つ目の上り坂に来たところでガコガゴと登り始めた。

 

『この上っている間の謎の緊張感』

『俺は期待感だなあ』

『楽しみな瞬間!』

 

 そうして、頂上まで来て……。一気に下り始めた。

 

「おー!」

「わー!」

 

 すごい速さで下りていく。そのままの勢いで次の上り坂に入って、また下りてを繰り返していく。すごく速い。とても速い。楽しい。

 もちろん自分で飛ぶ方が速いのはそうなんだけど……。それでもやっぱり、全然違うものがある。こう、ぐわっとする感覚が、とても好き。

 そうしてコースを一周したところで、元の場所に戻ってきた。

 

「師匠。師匠」

「どうした?」

「もう一回」

「え」

 

 これは、うん。とても、楽しい。

 

『これはやみつきになっていますね?』

『ジェットコースターは魔女にも通じるものだった!』

『どやあ!』

 

 うん。とっても、気に入った。可能なら森に作りたいぐらいだけど、さすがに無理だよね。

 

「あー……。アルティは、どうする?」

「あ、その……。私は疲れちゃったので……。あそこの椅子で休んでます……」

「分かった。知らない人について行かないように。身の危険を感じたら魔法を使ってもいいから」

「はい」

 

 アルティもハイエルフだからね。魔法も使えるから、地球の人に襲われても返り討ちぐらいにはできるよ。結界を張っておくから、不意打ちにも安心。

 それじゃあ、もう一回。今度は師匠が隣。

 

「わー」

 

 うん。うん。これは、とてもいいもの。

 

「もう一回」

「ちょ」

 

『草』

『まさかの鬼リピ!』

『はまりすぎやろwww』

 

 まあでも、さすがにもう一回で終わりにするよ。残念だけど。

 最後の一回は、師匠も休憩に回っちゃったから、一人で。なので隣は知らない人が座った。ただこっちも女の子。私を見てびっくりしてる。

 

「よろしく」

「あ、うん……。よ、よろしく、お願いします!」

 

 その子と一緒に乗って、隣で騒ぐ女の子になんだかほっこりして、終わり。うん。ジェットコースター、楽しかった。女の子とは最後に写真も撮ったよ。

 師匠とアルティにはちょっぴり呆れられたけど……。こんな楽しい乗り物を作る日本人が悪いと思います。間違いない。

 




壁|w・)魔女はジェットコースターがお気に入り。
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