異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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詐欺のお店

 

 お肉を食べながら歩いて、市場に到着した。大きな建物だけど、正確に言えば中央の広場をぐるっと囲む建物みたい。建物の上は観客席みたいになっていて、広場を見渡すことができるようになってる。闘技場として使う時に必要なのかな。

 中の広場はとても広くて、所狭しとお店のテントが並んでる。一応、テントを立てる場所は決まってるみたいで、まっすぐにテントがずらっと並んでる。たくさんの列があるね。

 扱ってる商品は……種類分けとかはないみたい。宝石のお店の隣で食べ物を売ってたりと、わりと適当だ。いいのかなこれ。

 

「もぐもぐ……。おみせ、いっぱい」

 

『なんかすっごいなこれ』

『すっげえ混沌としてる』

『でも楽しそう!』

『ていうかリタちゃん、しれっと追加で何買ってんのw』

 

 パンだね。入ってすぐのお店で売っていたから買ってみた。塩を練り込んでるパンらしい。わりと美味しい。

 

「お店の人は獣人以外が多いね。獣人もいるけど」

 

 獣人は買い物をしている側に多いみたい。だから、ここでなら獣化の魔法を使っていなくても目立たなかったかもしれない。別にいいけど。

 

『あっちもこっちもケモ耳だらけで、ケモナーとしてはとても嬉しい』

『お前の趣味趣向はいいがリタちゃんに変な影響与えんなよ』

『もちろんだと言いたいけどとっくの昔に手遅れでは?』

『配信は教育に悪いと思います』

 

 別に関係ないよ。私はそこまで影響されてないと思います。

 美味しそうな食べ物とかないかなと歩きながら探してるけど、食べ物を取り扱ってるお店はあっても、香辛料とかそういったものばかりだった。料理そのものはあまりないみたい。

 多分、他の街に持っていけるものとかが中心なんだと思う。仕方ないけど私は残念だ。美味しいものが食べたいのに。

 

「ん……?」

 

 そうして探しながら歩いて見つけたものは。

 

「精霊の森の特産品?」

 

 看板にそう書かれたお店があった。

 

『ほほう』

『確かに精霊の森のものを売ればがっぽがっぽやな!』

『ワイバーンのお肉売ろうぜ!』

 

「絶対にだめ」

 

『ですよねw』

 

 あれは私が食べるものだから売らないよ。絶対に、売らない。

 でも、興味がある。森の浅い部分でも一般の人からすれば危険な場所だから。何を採ったのかな?

 テーブルに並んでる品物を見てみる。んと……。薬草とか、香辛料とか……。あと、ウルフのお肉を燻製にしたもの、とか。

 お値段は周りを軽く見た感じだと、わりと強気な設定だね。他の同じものと比べて五倍ぐらいの値段になってる。

 

『これは……どうなん?』

『精霊の森のものなら安いぐらいでは?』

『貴重な薬草が採れるっていうのは聞いたことあるけど、同じものの場合は?』

 

「魔力をたくさん吸ってるから、効能はかなり高いよ」

 

 だから、うん。値段は大丈夫。値段はね。問題は別の場所にあって……。

 

「おや、いらっしゃい! 買うかい?」

 

 お店の人がそう声をかけてきた。ちょっと太った、笑顔が気持ち悪いおじさんだ。ねっとりとした視線だね。

 

「これ、精霊の森でとれたの?」

「そうさ! ご両親が薬師だったりするのかい? それなら是非ともお土産にどうだい? 喜んでくれるよ。精霊の森の薬草をこの値段で買えるのはここだけさ! 有名な冒険者と契約をしていてね……」

 

 そんな説明がだらだらと続いてる。正直、あまり興味ない。だってこれ……。

 

「偽物だよね」

 

 そう言うと、店主さんがぴたりと言葉を止めて睨み付けてきた。

 

「何を根拠に言っている?」

「保有魔力があまりにも少ない。普通の薬草だよ、これ。ウルフのお肉も、部位のわりに小さすぎる。精霊の森のウルフは、もっとずっと大きいんだよ?」

「まるで知ったような口を……!」

 

 知ってるからね。

 

『お買い得のお店かと思ったら詐欺の店じゃねえか!』

『リタちゃん、ぺっしなさい! ぺっ!』

『何をぺってするんですかねえ』

『影の刃?』

『死ぬわw』

 

 さすがに攻撃とかはしないよ。こういうお店は、多分私が知らないだけで他にもあるだろうし。

 何も思わないのかと聞かれるとちょっともやっとするけど……。逆に言うと、その程度。精霊たちが気にしていないのなら、私も気にしない。私は別に正義の味方というわけでもないし。

 

「誰かに言うつもりはないよ。がんばってね」

「ふざけんな! 周りのやつも聞いてんだよ!」

「ん?」

 

 ふと周りを見たら、確かに何人かがこっちに聞き耳を立ててるみたいだった。聞かれちゃったかもしれないけど……。それすらどうでもいいかな?

 

「子供の言うことだから気にしたらだめだよ」

「ああ!?」

 

『リタちゃん、それは悪い使い方や』

『それはね、迷惑を受けた側が、仕方ないなと許す時に使う言葉だよ。やらかした側が言うことじゃないよ』

『やらかした相手が詐欺の犯人の場合は?』

『そんな特殊事例を聞かれましても』

 

 ん……。そうだね。気をつけよう。この人相手に気をつける意味はないだろうけど。

 店主さんがテーブルを越えてきた。とっても怒ってる。

 

「テメエ、変な言いがかりつけやがって! 獣風情がなめてんじゃねえぞ!」

「おお……」

 

『差別だ!』

『いけません! いけませんよこれは!』

『獣人族は他種族を下に見てるって聞いたけど、逆もまたしかりなのでは?』

 

 そうかもしれない。少なくともこの人は獣人族を下に見てるね。

 さてどうしようかなと思っていたら、遠巻きにしてる人の一人がこっちに歩いてきた。

 

「どうした、何を騒いでいる?」

 

 歩いてきたのは、多分冒険者さんだ。多分っていうのは、普通の服を着てるから。街の住人と言われても納得すると思う。

 ただ、しっかりと鍛えられているのは分かった。服の上から分かる筋肉。すごい。

 

『筋肉さん!』

『好き! 抱いて!』

『リタちゃんの配信で変なこと言うな』

『視聴者は変なことしか言ってないのでは?』

『正論はやめるんだ』

 

 筋肉が好きな人っているよね。私はかっこいいとは思うけど、それだけ。

 




壁|w・)配信に影響なんかされてません。されてませんってば。
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