異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ルドガーさん

 冒険者さんは、虎の耳と尻尾がある冒険者さんだ。顔もどことなく虎っぽい。腰には、小さなナイフ。多分自衛用かな?

 

「うるせえ、獣が出てくんなよ!」

 

 冒険者さんの顔がぴくりと引きつった。不快だよね。あの人からすれば、自分のことを言われているようなものだし。

 冒険者さんは小さくため息をつくと、自分のギルドカードを取り出した。

 

「失礼。これで分かるか?」

「はあ? …………。Aランクの、ルドガー!?」

 

 おお、Aランクの冒険者さん。Sランクとはまた違うけど、それでも強い方ってことだね。

 ルドガーさんは店主さんを睨み付けて、言う。

 

「それで? 何があった?」

「あ、いや、それは……」

 

 しどろもどろになっちゃってる。答えられなくなっちゃってるみたいで、おろおろと周囲を見回して……。でも誰も助けにこない。当たり前だと思う。

 

「俺、見てたぞ! その子が、そいつの店の商品を偽物だって言ったんだ! そうしたら急に怒り始めたぞ!」

 

 周りの人……野次馬さんが口々にそう言い始めた。店主さんの顔が青くなっちゃってる。

 

「かわいそう」

 

『かわいそうwww』

『本当にそう思ってる?』

『これはあおりやな!?』

 

 さすがにあおってるつもりはないよ。

 ルドガーさんは商品を手に取って、じっと見つめて……。なるほどと頷いた。

 

「これが、精霊の森の品物だと?」

「へ、へえ……。そうです……」

「違うな。この島では採れない種類ではあるが、それでもただの薬草だ。精霊の森の薬草は、もっと禍々しい」

「禍々しい……」

 

『禍々しいwww』

『ここに来てまさかの評価である』

『なに? リタちゃんの実家には生き物を食べる草花でもあるの?』

 

「あるけど」

 

『あるんだ……』

 

 もちろんあるよ。大きなお花で、すごくいい香りがする。その香りに釣られてきた魔獣が落ちて、食べられちゃう。そんなお花。

 

「あまり美味しくない」

 

『だからなんで味の評価が出てくるの!?』

『ていうか食べたことあるんかいw』

『精霊の森にあるもののほとんどを口に入れてそう』

 

 それは……どうだろう。否定しきれない気がする……。

 そんなことを視聴者さんと話していたら、あっちのお話も終わったみたい。兵士さんがたくさん集まってきていて、そのまま連行されていった。

 うん。えっと……。

 

「私は何も悪くないよね?」

 

『今回は悪くない』

『今回はリタちゃん何もしてない』

『今回は大丈夫!』

 

「今回はって強調しすぎじゃない?」

 

 そんなに変なことやってないと思う。やってないよね?

 ここにいても仕方ないし、私もまた市場を見て回ろう。それが終わったら……どうしよう? 正直、なんだかもっと獣人の国は特別感があると思っていたから、ちょっとつまらない。帰ろうかな。

 そうしてまた別の場所に行こうとしたところで。

 

「待て」

 

 ルドガーさんにそう声をかけられた。

 

「ん……。なに?」

「君があの薬草が偽物だと見抜いたんだな?」

「ん」

「詳しく話を聞きたい。俺と一緒にギルドに来い」

 

 んー……。なんだろう。すごく、高圧的。有無を言わさない口調っていうのかな。そんな感じ。

 

「やだ。私は忙しい」

「忙しい? 何かあるのか?」

「ある。とても忙しい」

「何がある。手伝ってやろう」

「美味しいものを探さないといけない」

「…………」

 

『ルドガーさんが絶句しちゃった!』

『ちゃうねん! この子は、その……。こういう子やねん!』

『空気を読めないんじゃなくて読もうとしない子やねん!』

 

 なんだろう。すごく失礼なことを言われてる気がする。怒るよ?

 どう言われようと、私は美味しいものを探したい。市場を見終わったら、今度はその外で料理のお店を探す。獣人の国らしいご飯。せっかくここまで来たんだから、試したい。

 

「だからだめ。私には美味しいご飯を探すという大事な使命がある」

「使命か……」

「ん。使命」

 

『なんか勝手に使命にしちゃってるけど』

『おいシッショ! お前の教育どうなってんや!』

『待て待て。俺に言われても困る。こんなに食べ物優先してなかったと思うぞ?』

『シッショのご飯が実は不味かったと気づいたからでは?』

『やっぱシッショが原因じゃねえか!』

『ひどくない?』

 

 師匠のご飯はちゃんと美味しいよ。日本の料理と比べると微妙なだけだから。私は師匠の味も好きだよ。うん。好きだってば。

 ともかく。そういうことなので私はもう行きます。

 

「分かった。ギルドで俺の故郷の伝統料理を振る舞おう」

「すぐに行こう。どんな話でもいいよ」

「お、おう……」

 

『手のひらクルー』

『ルドガーさん困惑しちゃってるw』

『最近本当に食べ物でリタちゃんを簡単に釣れると思ってきた』

 

 そんなことはない。はず。多分。

 それよりも私は伝統料理というのが気になる。美味しいのかどうかも分からないけど、珍しい料理ではあるはず。楽しみだね。

 私がルドガーさんを急かすと、ルドガーさんは何とも言えない顔になりながら歩き始めた。

 




壁|w・)肉食植物はでっかいラフレシアみたいな感じ。
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