異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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キツネ村

 

 転移した先は、宮城県の森の上。森というか、山? そこに結構広い施設が見える。

 

『キツネ村かな?』

『キツネもふもふですか!?』

『一度行ってみたいんだよなあ』

 

 ちょっと来るのは大変そうだけど、行けばいいと思う。がんばって。

 入り口らしい場所にゆっくりと下りていく。まだ朝早いからか人は少ないけど……。何人かが開園を待ってるみたいで、待機してるのが見える。人気の場所なんだね。

 私もそこに下りると、並んでる人がぎょっとしていた。そんなに驚かなくてもいいと思う。

 

「りりりリタちゃんだ!」

「魔女さん! 写真いいですか!?」

「え? あ、うん……」

 

『いきなりすぎるw』

『例のごとく羨ましい』

『自然と写真撮影会始まってるw』

 

 うん。なんだろう。別にいいんだけどね。入り口の前で記念撮影することになってしまった。みんなで並んで、ぱしゃりと一枚。喜んでくれるならいいけど。

 その後は、何故か一番前に並ばせてもらった。是非とも、ということで。よく分からないけど、お言葉に甘えておく。キツネ楽しみだね。

 

「みんなもキツネをもふもふするの?」

 

 後ろにいる男性に聞いてみたら、男性はもちろんですと頷いた。

 

「キツネがのんびり過ごすのを眺める場所なんですけどね。抱っこ体験ができるので、それが楽しみです」

「もふもふ?」

「もふもふですね!」

 

 もふもふ。楽しみだね。

 

『リタちゃんもすっかりもふもふのとりこに』

『もふもふはかわいいからね、仕方ないね』

『いろんな種類のキツネさんがいるよ!』

 

 いろんな種類。どんなのがあるんだろう。疑問に思っていたら、後ろの男性がスマホで写真を見せてくれた。以前ここに来た時に撮ったものらしい。

 

「おお……。かわいい」

「でしょう? 特にこの白い子がかわいいですよ。もふもふで」

「ん。かわいい。もこもこしてる」

 

『ホッキョクギツネな。かわいいよな』

『キツネの中で一番好き』

『真っ白くてもこもこしてるの最高だよね!』

 

 この子は抱っこできるのかな? 男性が言うには、抱っこするキツネの種類は選べないらしいから、やっぱり難しいかもしれない。

 開園までまだ時間があるらしいから、もうちょっとのんびり待って……と思っていたら、門が少しだけ開いた。

 

「ど、どうも」

 

 出てきたのは、女の人。若く見える人で、二十代前半ぐらいだと思う。ちょっとだけ緊張してるみたいだった。

 

「あの……。リタさん、ですよね?」

「ん」

「よければ先に入ってください、と園長から」

「いいの?」

「その……。騒ぎになりそうなので……」

「ああ……」

 

 後ろの人が納得したように頷いた。後ろの人だけじゃなくて、後ろの人たち、だね。

 

『これは正しい判断』

『みんなリタちゃんと一緒に行動しようとしそうだからね』

『そう思ったらとりあえず先にリタちゃんだけ入れて済ませた方がいいのか』

 

 なんだろう。ちょっとした隔離みたいに感じる。いや、いいんだけど。むしろ周りを気にせずに見学できると思ったら、私にとっても嬉しいことだし。

 お金を払って入場させてもらう。ちなみに小学生以下は無料だからいいと言われたんだけど、そこは払っておいた。小学生じゃないので。

 

『ちっこいだけだからな!』

 

「ちっこい言うな」

 

 守護者をやめない限り大きくなれないから、仕方ないと思います。

 そうして園内に入ったところで。

 

「おお……」

 

 たくさんのキツネがいた。あちこち走り回っていたり、お昼寝していたりしてる。お昼寝は尻尾をくるんと丸めていて……。うん。かわいいね。

 

「立ち止まったりしゃがんだりするとキツネが集まってきたりしますから、できるだけ立ち止まらないでくださいね」

「ん」

「あと、触ろうとすると噛まれます。気をつけてください」

「分かった」

 

 そんな案内を受けてから、出発。私たち見学者は舗装されてる道を歩いていくことになるみたい。そんな道の周りでは、キツネが遊んだりしていてとてもかわいい。

 そうしてのんびり歩き始めたところで、キツネが一匹、足下にやってきた。私の周りをぐるぐるしてる。どうしたんだろう。

 

『噛むのでは?』

『リタちゃんの足にがぶりですか!?』

『反射ダメージがいっちゃうぞ!』

 

 ああ、うん。ちょっと結界を別のものにしておこう。防ぐだけのもの。いつもの結界はここを出てから、だね。

 キツネは歩く私の横をちょこちょこついてくる。なんだかとってもかわいい。何故か私のことを上目遣いに見てきてるけど、何かあるのかな。

 

『ていうかリタちゃん』

『うしろうしろ』

 

「ん? …………。おお……」

 

 なんだかたくさんのキツネが私の後ろをぞろぞろ歩いてるんだけど。三十匹ぐらい。しかもみんなお利口で、走ったり順番を抜かしたりせずにしっかりと並んでる。なにこれ。

 よく見たら丸まって寝ていたキツネもさっと合流してきてる。本当になにこれ。

 

「何か芸でも仕込んでるの?」

 

『いや、見たことない現象だよ』

『なんなら遠くで園の関係者っぽい人が呆然としてるからなw』

『ほんまやw』

『なんかいつかの奈良の鹿を思い出すなあw』

『リタちゃんは動物に好かれるフェロモンでも出してんの?』

 

 そんなものは聞いたことがないよ。ないはず、だと思いたい。

 どうしよう。このまま歩いていていいのかな。とりあえず……。しばらく歩き続けることにした。私は悪いことはしていないはずだから。多分。

 




壁|w・)架空の施設です。架空の施設だってば。
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