異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ねこみみ!

 サンドイッチを食べ終わってから、改めてこれからのお話になった。

 

「獣人国を見て回りたい、ということでよかったな?」

「ん。美味しいものが食べたい。とても良い香りがするもので、美味しいもの」

「良い香りで念を押された気がするんだが気のせいか……?」

「気のせい」

 

『嘘だぞ、絶対に気のせいじゃないぞ』

『美味しいものを食べてるはずなのに微妙な顔のリタちゃんは貴重でした』

『くちゃいをひたすらリピートする耐久動画作ったぞ』

『有能』

 

 いや無能だよ。何やってるの? 本当に何やってるの!?

 

「ど、どうした? 目元がひくひくしていて怖いんだが……」

「なんでもない。大丈夫」

「そ、そうか……」

 

 コメントはルドガーさんには聞こえてないから、変な反応を出さないようにしないと。

 でも……。耐久動画って、ひたすらに同じものをループする動画、とかそんなものだったよね。私の声をループさせて意味があるの? よく分からない。

 

「どんなものが食べたいんだ?」

「んー……。あまり見ない料理とか……。美味しければなんでもいいよ」

「ふむ……。エルフと獣人の味覚には違いがあるだろうし、難しいところではある……。例えば、先の料理も獣人にとっては良い香りに……」

「お兄ちゃん。わたしの恩人に嘘を教えないで」

「…………」

 

 横で聞いていたルミナさんがすかさず鋭い声で注意した。またルドガーさんがしょんぼりしてしまった。本当に、ルドガーさんはあの臭いをいい臭いと思ってるんだね。

 

『そもそもギルドの人らが全員逃げ出した事実を忘れてはならぬ』

『危ないことすらやっているだろう冒険者が我先にと逃げ出す香り!』

『ルドガーさんの故郷はどんな場所なんだろうなw』

 

 それはちょっと気になる。見てみたいような、行きたくないような、複雑な心境。

 

「それでは……。まずは、王都に行こうか。魔女殿も、王から正式に許可をもらった方が動きやすいだろう?」

「ん? どっちでもいいよ?」

「あの耳を生やす魔法を使っていると、食事に集中できないのでは?」

 

 それは……どうだろう? そこまで負担のある魔法じゃないけど……。でも、そうだね。挨拶ぐらいはしておくべきかなってちょっと思ってきた。後から何か言われたら嫌だし。

 

「じゃあ、行く」

 

『そんな!? ケモ耳リタちゃんはもう終わりですか!?』

『犬耳もいいけど猫耳も見たいよ!』

『わんもあぷりーず!』

 

 そこまで見たいものなの? ちょっとよく分からない感覚だ。

 

「ではそうしよう。すぐに向かうか?」

「んー……」

 

 すぐに向かう。そうだね、うん。そうしたいところだけど……。

 視線をドアの方に向ける。するとルドガーさんも難しい表情になった。

 

「気づいたか」

「ん……」

 

 外から感じる気配がある。なんとなくだけど……。三日前、ここから帰る時に感じた視線に似てる気がする。私を見ているのかなと思ったけど、この家に向けられてるってことは狙いはルドガーさんかな?

 

「ルドガーさんは恨みでも買っちゃったの?」

「まあ……。この街では取り締まりのようなことも請け負っていたからな。相応に恨みは買っている」

「そっか」

 

 逆恨みされてるってことだね。ルドガーさんも大変らしい。でも、こんな状態でルドガーさんを連れ出してもいいのかな。ルミナさんたちが襲われたりしない?

 

「襲われる心配なら大丈夫だとは思う。知り合いの冒険者に声をかけている。周りにもいるだろ?」

「いるけど……」

 

 確かに、他の強い人の気配もある。あるのはあるけど……。嫌な気配の人の方が、ちょっと強い気がする。多分相手が本気になったら、少しまずいかもしれない。

 私としては関係ないと言えば関係ないけど……。ルミナさんが襲われるのは、ちょっと不愉快かな。赤の他人ならともかく、こうして知り合った仲だから。

 

「じゃあ、私もちょっと準備してくる。買いたいものとかあるから」

「うん? 俺の方で旅に必要なものは用意したぞ」

「私には私の旅のやり方があるから。私が必要なものを買っておきたい」

「そ、そうか。護衛で同行しようか?」

「いらないよ」

 

 私の方がルドガーさんより強いしね。不意打ちをされたとしても、ルドガーさんに負けることはない。

 それじゃあ、家を出る前に獣化の魔法を使おう。ここに来る前はどうせすぐに家の中に入るだろうからって使ってなかったから。今回は……猫が良かった、なんてたくさん言われたから猫耳にしておこう。

 さっと魔法を使って耳と尻尾を生やす。するとルミナさんが目を見開いて驚いていた。ルドガーさんも少し驚いてる。

 

『猫耳だー!』

『猫耳リタちゃん!』

『やった! かわいい! ありがとう!』

 

 視聴者さんは本当に喜んでるけど……。やっぱり、何がいいのか分からない、かな。

 

「それが獣化の魔法か……。いや、すごいな」

「魔女様かわいいです! ぎゅー!」

「んむ」

 

 隣のルミナさんが抱きついてくる。そして猫耳を触ってくる。くすぐったいからやめてほしい。

 

『いいなあいいなあ! 俺も触りたいなあ!』

『その子ばっかりずるいぞリタちゃん!』

『不公平だ!』

 

 いや、地球にいても視聴者さんに触らせることはないからね?

 ルミナさんに離れてもらってから席を立った。今度こそ出かけよう。

 

「それじゃあ、行ってくるから」

「ああ……。その、すまないな」

「ん」

 

 ルドガーさんは私がついでに何をしようとしているか、なんとなく分かってしまったらしい。申し訳なさそうなルドガーさんに軽く手を振って、私は家の外に出た。

 




壁|w・)猫耳希望があったので猫耳にしてみました。にゃんこリタ!
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