異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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知り合いさんのささやかな復讐

 魔女と聞いて、受付さんたちが狼狽えてる。もしかして、気付いてなかったの? いや、確かに私も言ってなかったけど。証拠としてギルドカードを置いたら、あんぐりと口を開けて固まってしまった。

 

「ったく……。魔女殿。詳しい話を聞きたい。奥に来てくれるか?」

「ん。こいつらはどうしよう?」

「無論厳罰に処す。とりあえず地下の牢にぶち込んでおけ」

 

 後半は近くの冒険者に言ったみたい。慌てたように走ってきた人に三人組は連れて行かれた。商人さんの方は、もう少し私が捕まえておく。ルドガーさんに聞かないとね。

 商人さんを引きずって、ギルドマスターさんに案内されて奥の部屋へ。そこがギルドマスターさんの部屋らしい。ソファに座るように促されたので座っておいた。おお、わりと柔らかいソファだね。

 

「そいつは……まあ適当でいいだろ」

「ん」

 

 引きずってる商人さんは部屋の隅に転がしておく。目を覚ました時に騒がれるとうるさいから、口もしっかりふさいでおこう。

 

「口を封じておく」

「あのな? その言い方だと別の意味になるぞ?」

「……?」

「マジかよ」

 

『リタちゃんはたまに天然入るから……』

『あのね、リタちゃん。口を封じる、つまり口封じって、殺すってことだからね?』

 

 ああ、なるほど。さすがにまだ殺さないよ。この人はルドガーさんのお家に連れて行って、あとは任せるつもりでいるから。いろいろ情報とか持ってそうだしね。

 改めてギルドマスターさんに事情を説明。この商人さんとルドガーさんの話とか、いろいろ。

 聞き終えたギルドマスターさんは頭を抱えてしまった。

 

「逆恨みする商人は出てくるだろうと思っていたが……。まさか、こんなことになっているとは……」

「もうちょっとちゃんと所属してる人を調べた方がいいと思う」

 

 ギルドに所属してない人が狙うならまだ分かるけど、今回はギルドの人がこっそり依頼を受けて狙っていたからね。犯罪組織と思われても仕方ないと思う。

 

「少なくとも、私はこのギルドを信用できなくなった。疑われたし」

「それは、そうだな……。謝罪する。すまなかった」

「ん」

 

 もうどうでもいいとも言えるけど。あとはこのギルドの問題だろうし、がんばるのはギルドマスターの仕事だから。

 

「それじゃあ、私はこいつをルドガーさんの方に送り届けるから」

 

 商人さんの方に視線を向ける。いつの間にか目を覚ましていたみたいで、なんだかびったんばったんしてる。ギルドマスターさんもちょっと迷惑そうにそっちに視線を向けた。

 

「こちらで調べさせてもらうことはできないか?」

「私はこのギルドを信用できないと言ったはず」

「ルドガーも所属しているギルドだぞ?」

「ルドガーさんがかわいそうだね」

 

 まあそうなるよな、とギルドマスターさんは苦笑いだ。私が断ることもちゃんと分かっていたんだと思う。分かっていたのならいちいち聞かないでほしいけど。

 それじゃあ、と商人さんを引きずって部屋の外に出る。最初の部屋まで戻ると、みんなからまた見られることになった。どこか怯えたような視線だね。別に何もしてない人を襲ったりしないのに。

 

『リタちゃんに怯えるなんて失礼なやつらだな!』

『自分を殺せる相手だから怯えるのは仕方ない。わりと怒らせたし』

『おかしい、俺なら喜んでばくっとされるのに』

『なんかやばいやつがいませんかねえ!?』

 

 やばい人がいるね。反応しないようにしよう。

 私が歩くと、みんなが道を空けてくれる。後ろではまだ商人さんがびったんばったんしてるからか、みんなはそっちにも視線を向けていた。ちょっと哀れみのような目だ。かわいそうなものを見る目。

 

『ドナドナされる商人さん』

『かわいそうに、もう生きて帰ってこないだろうな、とか思われてそう』

『そうなるかはルドガー次第か』

 

 だね。私は何も口を出すつもりはないから。今日みたいに手は出すかもしれないけど。

 

「魔女殿! 待ってほしい!」

 

 そう言っていたのは、入口の側にいる剣士さん。なんだろう?

 

「なに?」

「これをその男に貼っておいてくれ」

「ん?」

 

 何の紙だろう。いっぱいあるけど……。えっと。

 

「私は、この女の子を襲って返り討ちにあった愚か者です、だって」

 

『いや草』

『助けようとしてるのかなと思ったら追い打ちをかけようとしていてワロタw』

『死体蹴り! 死体蹴り!』

 

 まだ生きてるよ。そういう意味じゃないだろうけど。

 

「俺はルドガーさんとは付き合いがあってな。まあ、そういうことだ」

「むかつく相手と」

「そう」

 

 それなら、貼っておいてあげよう。いっぱいあるからいっぱい貼ろう。ぺたぺたと魔法で外れないように。

 

「哀れだ……」

「自業自得だけどな」

 

 周りがひそひそ話してるけど、もう今は助けようとしてる人はいないみたい。さすがに分かってくれたってことかな。

 それじゃあ、ルドガーさんのお家に連れて行こう。紙をくれた剣士さんに手を振って、ギルドの外に出た。

 

「小さい手だったな……かわいい手だった……。ぷにぷにしてそう……」

「…………」

 

 後ろから変な声が聞こえてきたけど、きっと気のせい。間違いなく気のせい。

 

『なんかやばい声が聞こえてきたんですけど』

『幼女の手をぷにぷにしたい、だと!?』

『リタちゃんばくっとしにいこう! ばくっと!』

 

 気のせいだから。きっと気のせいだから。気にせずルドガーさんのお家に向かおう!

 




壁|w・)愚か者は出荷よー。
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