異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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カステラのお店のどたばた

 

 転移してきた先は、長崎駅の上空。東京駅ほどじゃないけど、結構大きな駅だね。端っこの駅みたいで、北に向かって線路が延びてる。

 

「綺麗な駅だね」

 

『もう結構経ってるけど、一度移転されてるからね』

『結構おしゃれな駅だと思う』

 

 うん。なんだろう、ちょっと未来な感じがするというか……。こういう見た目、好きだよ。

 

「かっこいい」

 

『だからその感想はなんなのw』

『リタちゃんの感性は時々独特になるから……w』

 

 そう、かな? そんなことないと思うけど。

 長崎駅は新幹線もとまるみたいで、たくさんの電車が行ったり来たりしてる。新幹線といっても、私が乗った東京と大阪を繋ぐ新幹線とはまたちょっと違うみたいだけど。

 新幹線、ちょっと乗ってみたいけど……。それよりも今は、カステラを食べたい。

 

「まずはカステラを買いたい」

 

『いきなりかいw』

『何を食べるか、どこに行くかを先に決めるかと……』

『今回はまずカステラが目的になってるみたいだからなあ』

 

 そう。カステラ。とにかく美味しいカステラというのを食べてみたい。

 

「どこがいいの?」

 

『カステラだけでいくつもあるからなあ』

『好みによって紹介される店が変わると思う』

『リタちゃんの好みがわからん……!』

 

 むう……。私も私の好みにそこまで詳しくない。真美が言うには反応が違うらしいけど……。私はそこまで意識したことがないから。

 でも真美が私の好きな味だって作ってくれたものはどれも本当に美味しいから、やっぱり私にも好みはあるんだと思う。なので。

 

「真美。真美。どこがいいの?」

 

『困った時の真美ちゃん頼み』

『この信頼感よ』

『俺たちとの扱いの差を感じるw』

『真美です。私も高級カステラの食べ比べはしたことないからわかんないよ!』

『そりゃそうだw』

 

 そうだよね。ちょっと困った。じゃあ、適当に……。

 

『でもリタちゃんの好みならこの店がいいと思うよ!』

 

 そんな真美のコメントの後に店名と、そしてメールで写真が送られてきた。なんだか日本らしい建物のお店だ。歴史を感じる……かもしれない。

 

『さすがリタ学第一人者』

『お店の評価とか見て判断したんだろうなあ』

『誰かリタ学についてつっこめよw』

 

 そんな学問は存在しないし消滅させるべきだと思う。

 早速、真美が教えてくれたお店に転移で移動。大きな通りに面しているわけじゃないけど、なんだか雰囲気のあるお店にたどり着いた。でもまだ開いてないみたい。

 さすがにちょっと早すぎたかな、と思っていたら、ドアが開いて誰かが出てきた。店員さん、かな? ちょっと慌てているような感じだ。

 私と目が合った店員さんはしばらく唖然としていたけど、すぐににっこりと笑顔になって言った。

 

「リタちゃん、ですよね?」

「ん」

「どうぞ! 歓迎します!」

「ん……? まだ開店時間じゃないよね? いいの?」

「もちろんですとも!」

 

 なんだかわざわざ開けてくれた気がする。申し訳ない気持ちはあるけど、ここで帰ってしまうのもだめだと思うから、とりあえず中に入らせてもらおう。

 お店は結構広い。横長のショーケースがあって、カステラの見本かな? それがたくさん並んでる。黄色いものもあれば、茶色っぽいのもある。チョコ味とかかな? 美味しそう。

 そしてお店の奥ではなんだかばたばたしてる音が聞こえてきてる。

 

「リタちゃんが来たらしいぞ!」

「待って聞いてない! あ、店長がいない!? 先を越された!?」

「あの野郎!」

 

『一部音声が乱れております』

『乱れる(強い言葉的な意味で)』

『わりとガチギレの音声がw』

 

 隣の店員さんを見る。冷や汗を流していた。

 

「…………。店長さん?」

「い、いやあ、ははは……。お恥ずかしいところを。後でちゃんと言い聞かせて……」

「店長! 配信で見てるからなあ!」

「ひぇ……」

 

『いや草』

『どうやら店長は店員さんよりも先に出てきてしまったらしい』

『誰が接客するかとなった時に飛び出してきたのかな?w』

 

 そうなのかな? そこまで特別なことはないと思うんだけど。

 店員さん改め店長さんは、引きつった顔で言った。

 

「だって……。呼び止めないと、どこか他の店に行ったかもしれないじゃないか……! 俺は悪くない!」

 

 いや、他の店には行かずに、散策して待ってたと思うけど……。まあ、仕方ないかも。

 そう思っていたら、カウンターの奥のドアが薄く開いた。そして、女性の声。

 

「言いたいことはそれだけか?」

「…………」

 

 大丈夫? 店長さん、顔が青いよ?

 

『なんだこの店おもしろすぎるだろw』

『これはひどいw』

『もうやめて! 店長さんの頭がはげちゃう!』

 

「はげろ!」

「ひどい!?」

 

 うん……。えっと。とりあえず、私はカステラを食べられたらなんでもいいよ……?

 

「そ、それではこちらにどうぞ……」

 

 店長さんに案内されたのは、お店の隅っこ。そこにはいくつかのテーブル席がある。このお店はカステラのお持ち帰りはもちろんのこと、食べていくこともできるらしい。

 

「せっかくなので、味見をしていただければと」

「おー……」

 

 味見。美味しいカステラも食べていいのかな? それはとっても楽しみだ。

 

「準備をしてきますので、少々お待ちください」

 

 そう言って、店長さんはカウンターの奥に向かっていった。カステラ、わくわく。

 

『店長さん、行っちゃった』

『大丈夫? 店員さんにころころされない?』

『いやいやまさかそんなことは……ないよね?』

 

 さすがにないと思う。それよりも、早くカステラ食べたいな。

 




壁|w・)その後、店長さんの姿を見た者は、誰もいなかった……。
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