異世界魔女の配信生活   作:龍翠

52 / 543
精霊様の照れ隠し

「これはすごい……。ちなみに、いくつか作ってもらったりとかは……?」

「んー……。今回は、情報のお礼だから。対価をくれたら、考える」

「対価……対価か……」

 

 そこまで真剣に考えるほどのものなの? 私にとっては、一回しか防げないから微妙だと思ってたりするんだけど。

 

「これそんなにすごいの?」

 

『わりと真面目にかなりすごい』

『一般人だとあまり意味がなさそうだけど、政治家にとっては喉から手が出るほど欲しいんじゃないかな』

『大金積まれてたくさん作ってくれって言われても不思議じゃない』

 

 うわ、それは面倒だ。そこまでやりたいとも思わない。さすがに私の生活の邪魔になるほど引き受けるつもりはないよ。

 

「どれだけお金を積まれても、私は気まぐれにしか作らないから」

「そ、そうか」

「ん。あと、私が知らない人に使われるのもやだ。最低限私と会って話すこと。あと嫌いな人にはそれでも作らない。あと何度も言うけど気まぐれ。もう一度言うけど気まぐれ。気まぐれ」

 

『大事なことなので三回言いました』

『マジで三回言ったのは草w』

『草に草を定期』

 

 橋本さんは少し考えてたみたいだったけど、それでもいいと頷いてくれた。これでいいなら、私も作ってあげるよ。対価はもらうけど。

 その後は、依頼する場合のことを少し細かく決めて、帰ることにした。ちなみに依頼方法の詳細は一度配信を切った。秘密の方法ってやつだよ。かっこいいでしょ。

 まあ、メールを送るだけ、なんだけどね。

 

 

 

 ホテルの部屋から世界樹の側に転移して、私はすぐに精霊様を呼んだ。

 

「これ。師匠の実家候補」

「早くないですか!?」

 

『間違いなく早い』

『でもその代わりに候補は多いみたいだけど』

『あー! リタちゃん隠さないで! 見たい!』

 

 見せるわけないでしょ。みんなには森でも見ておいてほしい。

 精霊様は書類の量に驚きながらも、一枚ずつしっかりと確認していく。一応私も見ていくけど、昔からの師匠を知ってる精霊様の方が分かると思う。私は師匠との会話内容で判断するしかないし。

 時間をかけてじっくり見ていって、最後に精霊様は一枚の書類以外を片付けてしまった。

 

「ここですね」

 

 そう断言して。

 

「ん……。間違いない?」

「間違いありません。あの子のフルネームとご家族のフルネームが一致していますから」

 

 うん。よし。いや待って。

 

『フルネームって言いましたか精霊様?』

『下の名前しか分からないんじゃなかったのかよw』

『情報の出し惜しみはよくないと思います!』

 

 そう流れるコメントを見て、精霊様はにっこり微笑んだ。

 

「私は人間をあまり信用していませんので」

 

『あ、ハイ』

『ヒェッ』

『すみません黙ります』

 

 ちょっと背筋がぞくっとした。でも、私はごまかされない。

 

「フルネームを見て思い出しただけでしょ」

「…………」

「精霊様? 私の目を見よう? ねえ?」

 

『くっそwww』

『偉そうなこと言ってて忘れてただけかよw』

『照れ隠しに脅すとか精霊として恥ずかしくないんですかねえ?』

 

「くっ……! あなたたちなんか嫌いです!」

 

 精霊様はそう言って消えてしまった。消える直前の精霊様の顔は真っ赤だった。かわいかったよ。

 それじゃ、また地球に、と思って立ち上がったところで、ひらひらと私の目の前に落ちてくる世界樹の葉っぱ。手に取って見てみると、文字が書かれていた。

 思い出せなくてごめんなさい、だって。

 

「かわいい」

『かわいい』

『かわいい』

 

 たまに私より人間くさく思えるのは気のせいかな。気のせいだよね。うん。

 それじゃ、改めて地球に行こう。真美たちをお出迎えしてあげたいしね。

 

 

 

 真美の家に戻った時には、夕方だった。書類を確認するのに時間がかかりすぎたかも。この後のことを考えて、先に配信は切っておいた。師匠の家族に会うなら邪魔なだけだから。

 真美の家の中にはまだ誰もいない。でもそろそろ戻ってくる頃だと思う。ちょっとだけそわそわしながら待っていると、玄関のドアから声が聞こえてきた。

 

「ただいまー」

「ただいまー!」

 

 真美とちいちゃんの声だ。二人とも、すぐにリビングに入ってきた。

 

「ん……。おかえり」

「ただいま」

 

 にっこり笑って、そしてすぐに真美は首を傾げた。

 

「電気つけてもいいよ?」

「私も今戻ってきたところだから」

「あ、そうなんだ。ちい、手洗いとうがいを先にしなさい!」

「はーい」

 

 走って行くちいちゃんと、苦笑する真美。うん。こういうの、いいなあと思う。ちょっぴり羨ましい。

 

「リタちゃん、晩ご飯は食べていく? 今日は……」

「あ、ううん。今日は大丈夫。何を作るか言わないで。食べたくなるから」

「えー? じゃあ食べていけばいいのに」

 

 不満そうに頬を膨らませてくる。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、今日は行かないといけないところがあるから。

 

「師匠の実家に行ってくる」

「え……。分かったの!?」

「ん」

「そっか……! じゃあ、うん。仕方ないね。すぐに行くの?」

「ん。二人と挨拶したかっただけだから」

「そうなんだ。ありがとう」

 

 ありがとう、はおかしいと思う。これは私の自己満足だから。でも言ってもらえて嫌な気持ちにはならない。なんだかこう、ぽかぽかする。

 

「それじゃ、行ってくる」

「うん。行ってらっしゃい、気をつけてね」

「いってらっしゃーい!」

 

 慌てて戻ってきたちいちゃんが元気よく手を振ってくれる。思わず小さく笑いながら、手を振り返して転移した。

 




壁|w・)そういえばこんな名前だったなあ、みたいな感じで思い出しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。