異世界魔女の配信生活   作:龍翠

525 / 544
軍艦島

 

 転移してきた先は、軍艦島の上空。魔法でふわりと浮いて、下を見る。眼下にはおっきなお船が……お船……。

 

「お船がない……」

「見るからにしょんぼりしてる……」

 

『やっぱり勘違いされてたかw』

『なんだっけ。形が戦艦土佐に似てるとかで軍艦島って呼ばれてたはず』

『ぶっちゃけただの人工島だよ。ちょっとした世界文化遺産にはなってるけど』

 

「ふうん」

 

 じゃあ、結構有名な場所ってことだね。でもそのわりに、誰もいないみたいだけど。町もぼろぼろでほとんどが廃墟だ。一応、島の隅っこに比較的綺麗な場所はあるけど……。少なくとも暮らすことを目的とはしていない場所だと思う。

 

『海底炭鉱があって、石炭の採掘のためにたくさんの人が住んでいた、らしい』

『当時の人口密度は世界一だった、らしい』

『その狭い島に五千人以上が住んでいた、らしい』

 

「らしいばっかりだね」

 

『五十年以上前のことなのでw』

 

 そっか。じゃあ、当時を知ってる人なんてほとんどいないか、いても当時子供でうろ覚えの人とか、かな。

 ぼろぼろの廃墟だけど……。なんだか、ちょっと入ってみたくなってしまう。ちょっとだけ下りてみよう。

 

「下りてみる」

「え? あ、待って! ここ、許可がないと上陸禁止で……」

「大丈夫」

 

 ゆっくり下りて……。地面のちょっと上で浮いた。

 

「上陸してない」

「そういうことじゃないと思います!」

 

『リタちゃんwww』

『屁理屈をこねちゃいけません!』

『でもリタちゃんなら結界もあるし安全に見て回れるのでは』

 

 うん。たとえ周りの建物が一気に崩れたとしても問題ないよ。

 

「でも他の人はまねしないようにね」

 

『できないんだよなあ』

『そもそもここに来る手段そのものが限られてるから』

 

 それもそうだね。

 学生さんと一緒にぷかぷか移動。学生さんはなんだかんだ言いながらも、移動し始めたら興味深そうに周囲を見ていた。普通では見れない光景だろうから、興味があるのかも。

 

「すごい……教科書で見た景色もある……」

「ん……。がれきがいっぱい。気をつけて歩かないとだめだね」

「浮いてますけど」

「そうだけど」

 

『歩く(浮遊)』

『歩くってなんだっけ』

 

 細かいことは言わなくてもいいよ。

 どの建物も本当にぼろぼろで、ひどいものだと建物の中が貫通していたりもする。よくまだ建ってるなって思うぐらい。

 

「今はぼろぼろだけど、昔はここに人が住んでいたんだね」

「らしいですね」

 

 大人が仕事して、子供はきっとあちこちで遊んで……。そんな場所だったんだと思う。でも今はもう、がれきが散乱した廃墟の町。歴史を感じるってこういうことを言うのかな。

 

「でも、この固い建物って五十年ぐらいでこんなことになるんだね。わりともろい?」

 

『管理する人が誰もいなかったらこんなものかも』

『風雨にさらされ、嵐に見舞われて、それでもそのまま、だからな』

『建物に傷ができたら、そのまま放置されて雨水が入って……とかになるだろうし』

 

「なるほど」

 

 そういうものらしい。日本のお家ってすごいと思ったけど、管理が大変そうだ。

 

『そういえばリタちゃんちはシッショが建てたんか?』

『いや違う。俺が守護者になった時にはすでにあった』

『マジでか』

 

 そうらしい。私も精霊様に聞いたけど、あのお家は森に守護者を置くことにした時に、当時の人里の家を真似して作ったのだとか。精霊たちが作って、保護魔法とか不思議な魔法を全力でかけたから、今もずっと綺麗なまま。

 何度か増築はされたらしいけど。昔は最初の一部屋だけだったらしいし。

 

「軽く千年以上は使われてるはず」

 

『いや、一万年は超えてるはずだ。エルフが守護者になっていた時もあったから』

『マジかよ』

『リタちゃんちの方がよっぽど歴史がある件について』

 

 歴史はあるかもしれないけど、劣化とかしないからね。あまり感じないと思う。

 しばらく歩くと、島の端っこにたどり着いた。そこは明らかに整備されていて、とても綺麗で……。そして人がいた。わりとたくさん。

 

「あ、リタちゃんだ!」

「リタちゃんが中から出てきた!」

「配信見てるよー!」

 

 おー……。観光の人たち、かな? 中側には入ってこないけど、きっと危険だからと思う。

 

「り、リタさん!」

 

 そして、係の人みたいな人もいた。こっちを見て叫んでる。

 

「困ります! 入られたら困ります! だめですから!」

「結界で安心安全だよ?」

「それむしろ調査の時に欲しいです!」

 

『草』

『そりゃそうだw』

『一般の人は立ち入り禁止だけど、保全調査とかそういうので中に入る人はいるからね』

 

 そうなんだね。でもわざわざ同行するのはちょっと面倒だと思ってしまう。

 怒られちゃったから移動しよう。結構あちこち見れたから満足だ。

 

「どこならいてもいい?」

「えっと……。この先の広場になってるところがあるので、とりあえずそこなら」

「分かった」

 

 ということで、おろおろする学生さんを連れて、そこまで歩くことにした。

 




壁|w・)上陸はしていない! ヨシッ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。