異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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バイオテロ?

 

 獣人国に転移。目立たないように建物の裏側あたりに転移して、表の道に出てルドガーさんのお家に向かう。

 

「ん……?」

 

 なんだか、ちょっとざわざわしてるというか、明らかに向かう先から人が逃げてきてるような……。でも急いで逃げてるとかじゃなくて、関わらないようにそそくさと逃げてるというか、そんな感じ。

 

『なんだなんだ?』

『何があったんだこれ』

『商人さんを見せしめに殺して死体があるとか』

『怖すぎるわ』

 

 さすがにそんなことはしない人だと思う。やるとしても、道ばたに放置はしないはず。

 そうして少し歩いて……歩いて……。そして、理由が分かった。

 

「…………」

 

『なんだ? リタちゃんの顔がちょっと歪んでるような』

『どうしよう、察してしまった俺がいる』

『リタちゃんがこの街で顔を歪めるってことは?』

 

「くちゃい」

 

『くちゃいきましたー!』

『やりやがった! ルドガーの野郎、やりやがったぞ!』

 

 うん……。つまり、そういうことだと思う。そりゃ逃げてくるよ、と。逃げてくるというか、避難というか。

 ルドガーさんのお家の前に到着。ここまで来ると、もうその臭いは隠しきれないものになっていた。いや最初から隠してないけど。わりと距離があったのに臭いがきてたけど。周囲から人が誰もいなくなってるけど。

 

『人っ子一人いやしねえ!』

『店まで放置して逃げるレベルなのかw』

『これもしかして、俺らが思ってるよりもやばい臭いなのでは?』

 

 そのあたりはノーコメント、だよ。

 意を決してドアを開ける。すると、ドアの方に手を伸ばして倒れてる人がいた。ルミナさんだ。

 

『し、しんでる……』

『なんてことだ! 誰がこんなことしたんだ!』

『実の兄なんだよなあ』

 

 うん……。そう、だね。そうなるね。いや、死んではないと思うけど。

 テーブルでもルミナさんのお母さんが突っ伏してぐったりしていた。

 

『し、しんでる……』

『なんてことだ! 二回目だぞ!』

『いともたやすく行われるえげつない料理』

 

 そして、テーブルの奥。調理台では……。ルドガーさんが、鼻歌を歌いながら料理をしていた。それはもちろん、あのとても美味しいけど死ぬほど臭い料理だ。すごく機嫌良さそうだね。後ろの惨劇に気づいた方がいいよ?

 内心で呆れながら、とりあえずルミナさんに声をかけることにする。しゃがんで肩を軽く叩くと、ルミナさんがゆっくりと顔を上げた。

 

「ま、魔女様……。どうして来てしまったんですか……」

「ん……。ちょっと後悔してる。どうしてルドガーさんが料理してるの?」

「解決祝いだって……。腕によりをかけるからって……。あの料理はだめだよって言ったのに……考えておくって言ったのに……」

「作らないって明言を避けてるから気づくべきだったね」

「兄を信じたわたしが……愚かでした……」

 

『料理一つでここまで言われるようなことってある?』

『兄に裏切られた妹の図』

『ただの料理だけどな!』

 

 そんな話し声に気づいたのか、ルドガーさんが振り返った。それはもう、本当に、とても機嫌がよさそうな顔だ。にこにこ笑顔。

 

「おお、魔女殿! 来たのか! 待っていたぞ!」

「ん……」

「あの商人は後ろ暗い組織に所属していたみたいでな! やつの証言からこの街の組織の連中を一網打尽にできた! 今日はその祝いだ! 是非楽しんでほしい!」

「…………」

「昨日はあまり量を作らなかったからな! 今回は近隣の方にも配れるように多めに作ったんだ! 今まで迷惑をかけたから、お礼をしなければと思ってな!」

 

 うん。気づいて? 今まさに現在進行中で近隣に迷惑かけてるよ? 人っ子一人いないよ? というかそんなに量を作っちゃったの? 何を考えてるの? バカなの?

 

『リタちゃんから表情が抜け落ちていらっしゃる』

『わりとキレかけてらっしゃる?』

『あまり怒らない魔女を臭いで激怒させるとは、こやつ、やりおる!』

 

 怒ってない。怒ってない。怒って、ない。悪意があるならともかく、ルドガーさんは完全な善意で作ってるからね。

 なんだっけ。悪意がない方がやっかいだっていうのはどこかで見たことある気がするけど。今まさにその言葉の正しさを実感してる。悪意があった方が分かりやすかったなって。

 まあ……。悪意があろうがなかろうが、今はもうそんなこと関係ないけど。

 

「迷惑なぐらいに臭いって分かってるのに、どうして作ってるの?」

「うん? 何を言うんだ魔女殿。食べればこの料理の素晴らしさに気づくだろう? そしてこの香りがとてもいいものだと理解できるはずだ」

「あ、そう」

 

『だめだこいつ、はやくなんとかしないと』

『どうしてこうなるまで放っておいたんですか!』

『なんてことだ、もう助からないぞ(はぁと)』

 

 とりあえずコメントは無視するとして、私はルミナさんに言った。

 

「ルミナさん。とりあえず……処す?」

「…………」

「え? 魔女殿? ルミナ?」

 

 あのバカは無視だ。話は後で、ということで。

 

「魔女様……」

「ん」

「やっちゃってください」

「ん」

「ルミナ!?」

 

 まあさすがに殺すわけにはいかないからばくっとはしないけど……。魔法で死なない程度の電撃をお見舞いしておいた。因果応報、ということで。

 あ、まだ動けるの? じゃあおかわりだね。びりっと。

 




壁|w・)バイオテロですね間違いない。
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