異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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つんつん

 

 酒場から少し離れて、まっすぐに目的地に向かう。空を飛んで文字通りまっすぐに。

 

『リタちゃん、情報なくなっちゃったけどどうすんの?』

『ていうか今どこに向かってんだ』

『全体を焼き払うとかだめだぞ!』

 

「私を何だと思ってるの?」

 

 さすがにそんなことはしないよ。スラムの人全員が犯罪者ならともかく、さすがにそれはないだろうしね。

 

「酒場から出て行った人が何人かいたから、こっそり追跡魔法をかけておいた。いくつか候補があるけど……。とりあえず、複数人が集まっているところに行くつもり」

 

『またさらっと魔法使ってる』

『やばいやつが来てます、みたいな報告だったらすぐに捕まえられるね』

『でもそうすると人質殺されちゃうのでは!?』

 

 んー……。それは大丈夫だと思う。ギルマスさんが冒険者を派遣した時もまだ殺されてないみたいだし、多分騎士団とかが入らない限りは実行しないんじゃないかな。

 国が直接関わってる、と明確に分からないと使いづらい手札だろうし。だって王子を殺したら、自分たちを守る手札を失うのと同じだからね。

 実際にどうなるかは分からないけど、もしもの時はまたその時考えるということで。

 

『相変わらずそういうところはドライだなあ』

『何度も言うけど身内判定しない限り、赤の他人はわりとどうでもいい子だからね』

『日本だと法律とか気にしてくれてるっぽいけど、異世界なら敵対者はばくっだし』

 

 日本で快適に過ごすために法律は大事だと思ってる。

 そんなことを話していたら、目的の建物にたどり着いた。木造三階建てのちょっと大きな建物。お店……ではないね。民家みたいな感じ。

 それじゃあ、行こう。

 ドアをノックすると、中から声が聞こえてきた。

 

「誰だ」

「リタ」

「…………。いや、誰だ?」

 

『草』

『確かに誰か聞かれたけど! 聞かれたけど!』

『そこで普通に名前を名乗るのは予想外なんだw』

 

 え、だって誰か聞かれたから名乗っただけなんだけど……。違ったのかな。まあいっか。

 

「魔女」

「は……?」

「お邪魔します」

 

 ここで話をしても門前払いになるだろうから、さっさと入らせてもらおう。ドアをおもいきり蹴破る。すると中の人が部屋の奥に吹き飛ばされて壁にぶち当たっていた。痛そう。

 

「なんだあ!?」

「どこのモンだテメエ!」

「敵だお前らあ!」

 

 にわかに騒がしくなる人たち。それじゃあ、はい。

 

「ぎゅっ」

 

 建物内にいる全員を縛っておく。うるさいと嫌だからついでに口も。これでよし。

 できあがったのは、蓑虫みたいな人たち、だね。とりあえずつんつんしておこう。つんつん。

 

『おもむろに木の枝を取り出して犯罪者をつんつんする魔女の図』

『あれ? 大立ち回りは? 蹂躙は? まだ?』

『おじいちゃん、戦闘はもう終わったでしょ』

『即落ち二コマなんてレベルじゃねえぞ!』

 

 長く時間をかけても仕方ないから。ただ中にいる人全員、それこそ地下にいるらしい人たちも、捕らえられてる人たちがいたとしても、全員縛っちゃってるけど。うっかり殺したりしないように気をつけよう。

 

「悪い人は最上階にいるものだと思う」

 

『どうした急に』

『でもそういうものだと思う』

『バカとなんとかは高いところが好きってな』

 

 ん。そういうことだね。こんなことするなんてバカとしか考えられないから。

 建物を歩いて、もぞもぞ動いてる人たちを無視して、三階へ。そうして見つけた大きい部屋に、机に突っ伏している人がいた。もぞもぞ動いてる。他の人よりもいい服に見えるから、偉い人、かな?

 とりあえずつんつんしてみよう。つんつん。

 

「おお……。睨んできた」

 

『犯罪者で遊ぶんじゃありません!』

『汚いでしょ!』

『扱いがクソのそれである』

『まあ間違ってはないw』

 

 クソみたいなものだと私は思うよ。

 お話を聞くために、口の拘束を解いてあげる。するとその人が叫んだ。

 

「お前……!」

「……っ!」

 

 これは……!

 つんつん。

 

「お前……! お前ぇ……!」

 

 つんつん。

 

「何者だお前ぇ!」

「つんつんお前だ」

 

『何やってんのリタちゃんwww』

『説明しよう! つんつんお前とは、どこかのバカ王子を捕らえた時にリタちゃんが発明した遊びである!』

『遊び……遊び?』

 

 遊びと言われるとなんだか違う気もする。でもなんだかちょっと懐かしい気持ち。

 つんつん。

 

「テメエ! 何のつもりだ!」

「つんつんテメエになった」

 

『リタちゃんwww』

『うん。楽しんでるところなんだけど、そろそろ話を聞こうぜ』

 

 それもそうだね。つんつんしていても話は進まないし。でもとりあえず……。つんつん。

 

「テメエ!」

「あと一回だけやっておこうかなって」

 

『おいシッショ! お前の教育どうなってんだ!』

『楽しんでいるようで何よりです』

『いいのかそれでw』

『いやだって、これはむしろお前らの影響だと思うけど?』

『否定できねえ!』

 

 それじゃあ、詳しいお話を聞こうかな。つんつん。

 




壁|w・)つんつん。
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