異世界魔女の配信生活 作:龍翠
女の子は私の隣に座ると、わあ、なんて声を上げながら見つめてくる。なんだろう。ちょっと恥ずかしい。
「ほんものだあ……。あくしゅ! あくしゅしたい!」
「ん……。いいよ。はい」
「わあい! ぷにぷにだー!」
「ぷにぷにだね」
『つまり二人ともぷにぷにってことですね?』
『なぜだ……なぜこの桃源郷に俺は行けないんだ……』
女の子の手もぷにぷにだ。握っていて気持ちいい。ちいちゃんみたいだね。
「こらこら。お客様に迷惑をかけちゃいけないよ」
そう言ったのは、おばあちゃん。苦笑いしてる。
「はーい! あ、おばあちゃん、おやつは?」
「カタハランブーだよ」
「リタちゃんと食べたい!」
「仕方ないねえ」
おやつ……お菓子! カタハランブーは聞いたことないけど、沖縄のお菓子ってことだよね。まだ食べてない沖縄のお菓子があるんだね。私も食べていいみたいだし、楽しみだ。
「リタちゃん! まほー見せて! まほー!」
「ん」
おねだりされちゃったから、いつものシャボン玉の魔法を使う。今は私とこの子しかいないから、たくさんシャボン玉を出してみた。
「わあ……!」
うん。すごく喜んでくれてる。なんだか見ていてほっこりするね。
「お待たせ」
嬉しそうに目をきらきらさせてる女の子を眺めていたら、おばあちゃんがお菓子を持ってきてくれた。たくさんお皿に載せて、テーブルに置いてくれる。
「おやつ!」
女の子もすぐにテーブルに戻ってきた。
カタハランブー。不思議な名前のお菓子だけど、形も不思議だ。わりと楕円形みたいな形になってるんだけど、片方が薄く、もう片方はちょっと厚くなってる。すごい。
『なんだこの菓子』
『説明しよう! カタハランブーとは沖縄の方言で片腹が重いという意味から来ているぞ! なんか、こう……。おいしい!』
『有識者ニキかと思ったらそうでもなかったw』
言葉の意味しか情報がなかったね。別にいいんだけど。味は食べてみれば分かるから。
ぱくりと一口。薄い方から。
「もぐもぐ……。ほんのり塩味、かな? ぱりぱりしてる。お煎餅ほど固くはないけど、いい食感だね」
ものすごく甘いとか、ものすごく塩辛いとか、そういう味じゃない。どちらかと言うと少し薄めの塩味かな。濃いめの味じゃないから、たくさん食べてしまいそうになるね。
ぱりぱり……。ん?
「おー……。食感が変わった」
厚い方はしっとりしていて、ちょっともちもちしてる。パンに近いかも? 一つのお菓子で二つの食感が楽しめる。とてもいいお菓子だと思う。
私はお菓子は甘い方が好きだけど、こういうのも悪くないね。うん。
『ところで誰もつっこまないけど、一個が大きくない……?』
『調べてみたけど、そういうお菓子っぽい』
『ちっちゃな女の子だけでこのたくさんの菓子を食べるのか!?』
どうなんだろう? さすがに多すぎると思うけど……。ちらりと女の子を見たら、両手でカタハランブーを持ってもぐもぐ食べてる。
「リスみたい」
『リタちゃんがそれを言うのか』
『ぶっちゃけリタちゃんが食べてる時もリスみたいだと思ってます』
「え」
そうなの? いや、口は師匠ほど大きくないとは思ってるけど。
女の子は一個食べ終えて、けぷ、と満足そう。そして両手を合わせた。
「ごちそーさまでした!」
「ん……? 一枚だけ?」
「うん。いつも一枚だけだよ?」
あれ? じゃあ、このたくさんのカタハランブーは……。
不思議に思っていたら、おばあちゃんがにこにこ笑顔で言った。
「リタちゃんはたくさん食べるって聞いてるからねえ。なんだっけ。なんか、こう、黒い穴? あれに入れておけば、日持ちも気にしなくていいんだろう? たくさん持ってお行き」
「おー……!」
私のためにたくさん作ってくれたらしい。それじゃあ、ありがたくもらっていこう。十枚ぐらいあるし、みんなで食べられるかも。
「ありがとう。みんなで食べる」
「うんうん。子供はたくさん食べるべきだからねえ」
にこにこ笑顔のおばあちゃん。子供扱いはちょっと気になるけど、仕方ないかなと思っておく。
お昼ご飯におやつも食べた。とても、満足。それじゃあ、と立とうとして。
「じー……」
女の子がこっちを見てることに気が付いた。なんだか、期待の籠もった眼差しだ。何を求めてるんだろう。
「この子はリタちゃんのファンだからねえ。よければもう少し魔法とか見せてあげてくれないかい?」
「みたい!」
「ん……」
それは……。うん。普段ならちょっとだけだけど、今日はもう満足したから……。真美たちが帰ってくる時間まで、この子と遊ぶのも悪くないかな?
「いいよ。どんな魔法が見たいの?」
「ぴかっとするやつ!」
『おいばかやめろ』
『沖縄が消えちゃう!』
『幼女のおねだりで沖縄滅亡しちゃう!』
いや、さすがにあの魔法を使ったりはしないよ。ちょっとぴかぴか光る玉でも出してあげようと思う。ぴかっは勝手に使うと師匠と精霊様に怒られると思うから。
「じゃあ、外に行こう」
「うん!」
女の子と一緒に出て、たくさん魔法を見せてあげることにした。光の魔法とか、水の魔法とか……。氷で動物を作ってみたり、とか。
とっても喜んでくれたから、これで良かった、かな?
帰り際にお店の前で写真を撮って、女の子ともツーショット。すごく嬉しそうに手を振ってくれたのが印象的だった。なんだかほっこりした。
壁|w・)おやつとして食べるのかはわかんない!