異世界魔女の配信生活 作:龍翠
今日はずっと楽しみにしていた日。美味しいお肉が食べられる日。つまり、獣人国に行く日だ。朝からとてもとても楽しみ。
とりあえず配信を開始して、と。
「いつもなら朝ご飯だけど」
『リタちゃんおはよう!』
『相変わらず挨拶がないw』
『朝ご飯は何にするのかな?』
「今日は食べない」
『なん、だと……!?』
『リタちゃんが朝ご飯を抜く!?』
『やばいぞ! 天変地異の前触れ……。いや! 宇宙崩壊の前触れだ!』
そこまで言われることなの? 私だってたまには朝ご飯を抜くことぐらい……。いや、ないかな。うん。朝ご飯はいつもちゃんと食べてる。
『リタちゃんどうしたんだ! なんか悩みでもあるのか!?』
『お兄さんたちに話してみなさい。ね?』
『まあ何の力にもなれないけどな!』
『言うなよ、悲しくなるだろ』
そんなことはないと思う。なんだかんだとみんなとお話しできて、私は楽しいから。
「今日は獣人国でお肉を食べる日だから」
『あ、そっか。今日だっけ』
『それと朝ご飯を抜く話となんの繋がりが……?』
「お肉をしっかり味わうために抜いておこうかなって」
『なるほど……なるほど?』
『まるで意味がわからんぞ!』
『意味は分からないけど逃げて! 獣人国逃げて!』
『期待外れだったらぴかっとされちゃうぞ!』
いや、しないから。そんなことで怒ったりしないから。それにきっと美味しいお肉だよ。特別なお肉。何のお肉かまだ聞いてないけど……。うん。楽しみにしたいから、聞かなくて正解だったと思う。
「たのしみ」
『これはだめなやつですね』
『もうだめだあ……おしまいだあ……!』
さすがにそろそろ私も怒るよ?
そうしてお話ししていたら、お家のドアが開かれた。出てきたのは、師匠。なんだかちょっと呆れたような目をされてる気がする。
「リタ。朝ご飯できたぞ。トーストだ」
「今日はいらないよ? 師匠が食べて」
「チョコクリームたっぷりだぞ。あまあまだぞ」
「チョコ……あまあま……」
チョコクリームのトースト……きっと美味しい……。とっても甘くて美味しいトースト。
『シッショの誘惑攻撃!』
『いいぞもっとやれ!』
どうしよう。すごく食べたい。でも、お肉の楽しみも優先したい。ちょっと、困る。
そんなことを考えていたら、そのコメントが流れてきた。
『リタちゃん。朝ご飯を抜くとかだめだからね?』
「…………」
真美のコメントだ。ちょっと怖い。ちょっと、というかなんだろう。すごく怖い。怒られてる気がする。真美に怒られるのは、ちょっとやだ。
「じゃあ……。食べる」
「よし」
『チョコクリームには勝てなかったか』
『甘いは正義だからね! 仕方ないね!』
師匠と一緒にお家に入る。テーブルの上には師匠が言った通りにトーストが置かれていた。チョコクリームたっぷりだ。師匠が塗ってくれたみたい。トーストとチョコの香りがお鼻をくすぐってくる。美味しそう。
「いただきます」
ぱくりと一口。香ばしいパンの味とチョコの甘さがとても美味しい。あんこの優しい甘さのトーストもいいけど、チョコのがつんとくる甘さもやっぱりいいよね。
お口の中に甘い幸せが広がって、とっても美味しい。
「んふー」
『めっちゃ美味しそうに食べるじゃん』
『食パンはあるがチョコクリームがねえ!』
『両方ある俺、勝ち組』
チョコクリームはちゃんとお家に常備しておかないとだめだよ。幸せの味なんだから。
「チョコクリームを切らすと幸せが逃げちゃうよ」
『マジかよ』
『幸せのチョコクリーム』
『どこの青い鳥かな?』
追いかけたら逃げちゃいそうだね。
もぐもぐと食べ進める。甘くて、美味しい。お代わりも食べる。とても、とても美味しい。いっぱい食べよう。もぐもぐ。
『気づけば五枚目食べてるんですが』
『せっせとチョコクリームを塗るシッショ』
『お父さんかな?』
『娘にこき使われるのはまさにお父さん』
ん……。師匠が塗ってくれてる。なんだかそれも嬉しい。でも師匠もちゃんと食べてるよ。師匠は別のものを……。
「師匠。なにそれ」
「え。蜂蜜だけど」
「…………」
「…………。次は蜂蜜な……?」
「ん」
『ひぇっ』
『リタちゃんの半眼がちょっと怖かったです……』
蜂蜜も食べたい。見せる師匠が悪い。
蜂蜜をたっぷり塗ったトーストをぱくり。蜂蜜の甘さもすごくいい。とろっとした食感に、あんこやチョコとはまた違う甘さ。これも幸せの味。
たっぷりとトーストを食べて、わりと満足した。チョコも蜂蜜もどっちも美味しかった。朝ご飯はやっぱり大事かもしれない。
それじゃあ……。そろそろ獣人国に行こうかな。お肉、楽しみだね。
壁|w・)チョコクリームは美味しい。蜂蜜も美味しい。