異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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怯える門番さん

 

 転移して、獣人国の王都に到着。転移した先は門のちょっと上空だ。ゆっくり下りていったら、この間の兵士さんが今日も立っていた。

 

「こんにちは」

 

 挨拶は大事。視聴者さんもいつも言ってる。

 

『俺らには挨拶してくれないのに』

『配信開始直後にどうも、だけでもいいんだよ?』

 

 気が向いたらね。

 兵士さんはびくりと体を震わせて、私を見た。そして顔を真っ青にした。

 

「ここここここれは魔女様ようこそお越しくださいました歓迎いたしますううう!」

「ん……?」

 

 なんだか、すごく怯えられてる気がする。その場で姿勢を正してるし、尻尾がぴんと立ってるし。隣の人が何か言ってくれるかと思ったけど、兵士さんは二人そろって顔を青ざめさせていた。

 

「その態度、なに?」

「ひぃ……!? いえ、あの、違うんです! これは、その、申し訳なく……!」

「いや、別に怒ってるわけじゃないよ……?」

 

 だめだ。すごく怯えてる。私はどうすればいいの?

 ちょっと困っていたら、慌てたように誰かが門を開けてこっちに出てきた。ルドガーさんだ。ルドガーさんは私と兵士さんを見て、ちょっとだけ頬を引きつらせた。

 

「あ、あー……。よく来たな、魔女殿」

「ん。すごく怯えられてる。びっくり」

「あんなものを見たらな……」

「ん……?」

 

 あんなもの? 兵士さんには特に何も見せてないと思うけど。

 そう思っていたら、ルドガーさんが説明してくれた。

 あのボスを捕まえた後、いろいろと尋問とかをして、拠点にも兵士さんたちが派遣されたのだとか。もう人質も救出済みだから、たくさんの兵士さんが動員されて拠点を見に行った。

 そうして見たものは、穴だらけになったたくさんの建物。いくつかは兵士さんが調査しようとするとバランスが崩れたのか倒壊したりしちゃったらしい。後のことまで考えてなかった。

 捕まえられたたくさんの人や王子からの証言で、それがたった一人の魔女が一瞬でやってしまったことだと判明した。つまりは私だね。

 

「大騒ぎだ。当然だ。一瞬でちょっとした街なら壊滅させてしまいかねない魔女が来ていて、しかもここの兵士はその魔女を少し怒らせたことがある。隊長にものすごく怒られていたぞ」

「そうなの?」

 

 それは……私もちょっとかわいそうだと思う。だって、この兵士さんはちゃんと仕事をしていただけだから。あれは私も悪かったと思うからね。先にケンカを売ってきたあっちが悪いとは思うけど、それ以外は違うと思うから。

 

「わかった。じゃあその隊長さんにお話ししてくる」

「やめてください……!」

「ええ……?」

 

 兵士さんにだめだって言われてしまった。ルドガーさんも呆れてるし。むう。

 

『マジでこの子、隊長さんとやらに話をしに行くからなw』

『逃げて! 隊長さん逃げて!』

『もう隊長さんの胃はぼろぼろよ!』

『まだ会ってすらいないのにw』

 

 そう。まだ会ってすらいない。だから、ちゃんとお話しするのは大事だと思う。

 

「ルドガーさんもそう思わない?」

「これ以上ややこしくしないでくれ……」

「ええ……?」

 

 いいけど……。私は別に困らないから。

 ルドガーさんと一緒に門を通る。門番の兵士さんたちには綺麗な敬礼で見送られた。そこまで怯えなくてもいいと思う。

 門を通っている間、通った後も、たまに見かける兵士さんからはなんだか怯えられているというか……。すごく気にされているのがわかる。なんだかちょっと居心地が悪い。

 

「むう……」

「すまないな」

「別に……」

 

『まあ警戒するなって言う方が無理あるわな』

『どんな人も自分より明らかな格上がいるってなったら怖いものだよ。多分』

 

 そういうもの、なのかな。

 ちょっとだけ不満を覚えながら、私はルドガーさんと一緒にギルドに向かった。

 

 

 

「おお、待っていたぞ、魔女殿!」

 

 ギルドで出迎えてくれたのは、ギルドマスターさん。一階の入ってすぐのところでわざわざ待ってくれていたらしい。周りの人は何事かと驚いてる。

 

「さあ、魔女殿。こちらの部屋に。料理を作っておいたぞ」

「料理……。お肉!」

「ああ、そうだ! 肉だ! 無論、ルドガーに料理は許していない!」

「おー!」

「言ってくれるじゃないかギルマス……!」

 

 ギルドマスターさんの肉料理はちょっと食感に問題があるけど、でも味は美味しいいいお肉だ。用意してくれるなら是非食べよう。お肉はいくらあってもいいと思う。

 

「よし、ルドガー、案内はお前に任せる。俺は陛下に連絡を……」

「了解だ……」

 

 なんだか二人でこそこそ話してるけど、それよりもお肉が食べたい。特別なお肉の前に美味しいお肉も食べる。今日はとってもいい日になるね。

 

『リタちゃんの扱い方を理解し始めてる人たち』

『肉さえ渡しておけばおとなしいからw』

『肉だ! 子供におもちゃを渡すように、リタちゃんにはお肉を渡しておけばいい!』

 

 なんだかすごく失礼なことを言われてる気がするけど、気にしないでおく。それよりもお肉だから。前菜ってやつだね。

 ちょっとだけ機嫌が良くなるのを自分でも自覚しながら、ルドガーさんに案内されてギルドマスターの部屋に向かった。お肉、たくさん食べよう。

 




壁|w・)前菜(肉料理)。
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