異世界魔女の配信生活 作:龍翠
「ようこそいらっしゃいました」
お城の門の前で出迎えてくれたのは、たくさんのメイドさん。お城の中までメイドさんが並んでる。なんだか歓迎してくれてるみたいだけど……。
「暇なの?」
思わずそう言ったら、メイドさんの頬がちょっとぴくりと動いた。
『うおおおいw』
『相変わらず思ったことをすぐに口に出しちゃう子だなあ!』
『リタちゃんを歓迎してくれてるんだと思うよ?』
んー……。そうなのかな。私はお肉を食べられればそれで十分なんだけど。
メイドさんたちに案内されて、みんなでお城の中を移動。階段も上って案内された先は、謁見の間、だって。どこのお城にもある広い部屋だね。
「魔女殿。肉は食事会でとなる。まずは陛下と謁見してほしい」
「ん」
「その……。相手は、王だ。礼儀作法とか、大丈夫か……?」
「んー……」
礼儀作法とか、正直よく分からない。でも私は日本で、こういう時に言うべき言葉を学んである。
「善処する」
「…………」
ギルドマスターさんが頭を抱えてしまった。風邪かな?
部屋のドアの両側には兵士さん。槍を持ってるね。メイドさんがその兵士さんに頷くと、兵士さんはすぐにドアをノックした。
「入れ」
ドアの奥から、そんな声。ちょっと低めのかっこいい声だ。
『ペロっ……。これはイケオジの声!』
『声ソムリエたすかる』
『いや普通にキモい』
『ひどいwww』
声だけじゃどんな人かは分からないと思うけどね。
ドアがゆっくりと開かれた。
部屋は……絨毯とかはないね。石造りの床だ。でも綺麗に磨き上げられていて輝いてる。お掃除はしっかりしてるみたい。
部屋の奥には他の国と同じように玉座みたいなのがあるけど、誰も座っていなかった。
王様は部屋のど真ん中で仁王立ちしている人かな? ライオンの獣人さんだけど、白いライオンさんだ。たてがみも白い。かっこいい。
隣にいるのが王妃様、かな? こっちはトラの獣人さんだと思う。こっちも白い。
その王妃様のさらに隣にいるのが王子様かな。私が助けた子だ。白いトラの獣人さん。私を見て頬を引きつらせているのはきっと気のせい。
私たちが王様の前まで向かうと、王様は両手を大きく広げた。
「よく来たな、魔女殿! 待っておったぞ!」
「ん」
「俺はこの国の王だ! とっても偉いぞ!」
「おー。かっこいい」
「かっこいいだろう!」
ちょっと話しやすい人かもしれない。
『すっげえ気さくな王様』
『これはリタちゃんポイント高めかな?』
『リタちゃんポイントとかわけのわからないものができあがってるw』
本当に謎のポイントだよ。どこから出てきたの?
「私はリタ。魔女だよ」
「うむ! ギルドマスターから話は聞いているぞ! 隠遁の魔女殿! 最新のSランク冒険者! やつらの拠点を穴だらけにしてしまったようだな!」
「ばくっとした」
「なるほど! まるでわからん!」
『何がなるほどだったんですかねえ』
『まるでわからんのはその通りだと思うけどw』
『ぶっちゃけ俺らもばくっとする魔法を知らなかったら、わけがわからんだろうしな!』
そうなのかな? 単純な魔法だよ。ばくっとするだけだから。
「ふむ……」
王様がじろじろと私を見てくる。値踏みするような視線だ。ちょっと嫌な視線だけど、王様という立場ならこういうのは仕方ないと思う。
「いいな、魔女殿。実にいい」
「ん……?」
「是非、魔法の才能が欲しかったところだ。魔女殿! お前を我が息子の婚約者として迎え入れよう!」
「…………。ん?」
何言ってるんだろうこの人。
『よし殺せリタ。俺が許す』
『リタ。その国を滅ぼします。今から魔力制限しますね』
『落ち着け保護者組!』
『精霊様の発言が確定事項でこわい』
二人とも過激すぎるからちょっと落ち着いてほしい。
婚約者って、結婚するってことだよね。結婚っていうのはよく分からないけど、師匠たちがだめだって言うからだめなことなんだと思う。
「やだ」
「それなら仕方ないな!」
そういうことになった。
『あっさりすぎるw』
『なんなんだこの王様w』
多分、思ったことを口に出してるだけだと思う。とりあえずダメ元でも言ってみよう、みたいな感じじゃないかな。
「ならば魔女殿! 一年、どこかで時間が欲しい!」
「ん?」
「子供だけくれ! 我が息子の子供だけ産んでほしい!」
「…………。……?」
『リタちゃんが困惑しておるw』
『いやそれよりも』
『ちょっと今から行ってそのオッサンぶっ殺すわ』
『フェニちゃんを派遣しますね。大丈夫です、すぐ終わりますから』
『あかーん!』
『保護者組がマジギレしとる!』
これは……。うん。いろいろとだめかもしれない。悪いことを言ったらしいから。王妃様ですら、マジかよこいつ、みたいな冷たい目を王様に向けてるからね。
どうしよう、と思っていたら、王様の後ろに誰かが現れた。誰かというか、師匠だけど。
「どうも初めまして獣人国の王様そして死ね」
「うおおおお!?」
おお。王様、いい反応してるね。師匠の魔力がこめられた拳を避けてる。周りの兵士さんたちは大騒ぎだ。
そしてその大騒ぎがさらに追加。
「陛下! 陛下! 上空に、城の上空に炎の鳥が! 不死鳥があああ!」
「ななななななにが起こっているのだあああ!?」
うん……。えっと。
「これ、私は何も悪くないよね?」
『大丈夫。リタちゃんはマジで何も悪くないから』
『悪いのは保護者組……いや、普通に王様か』
『大混乱だwww』
大騒ぎの室内を見て、私はため息をついた。お肉、食べられるのかな、これ。
壁|w・)お肉を食べようとするだけで国が滅びかける魔女がいるらしい。