異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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桃もどき

 

 王様に案内されて移動した先は、食堂だ。結構広い部屋で、長いテーブルが部屋の中央に置かれてる。椅子もそれなりにあるけど、中央の方で準備がされてるみたい。

 もともとは会食とかでも使う部屋らしいけど、今回は少人数だから使うスペースは最小限でってことだね。

 

「ささ、守護者殿、奥側の中央の椅子にどうぞ」

「ん……? でもそこって王様とかが座るものじゃないの?」

「いやいや、あの席は上の者が座るべき場所だからな」

「じゃあ王様だね」

「ええ……。いや、かまわんが……」

 

 私はただの魔女だから。隅っこの席でもいいよ。

 そう思っていたけど、私が案内されたのは王様の向かい側の席だった。私の両隣はギルドマスターとルドガーさんだ。王様の隣は王妃様と王子様だね。

 

「特別なお肉、すごく楽しみ。美味しいんだよね?」

「それはもう! 我が国では祝いの時にのみ供される特別な料理だ!」

「おー……!」

「…………。守護者殿の口に合うのかは分からないが……」

 

 王様がお腹のあたりをなでなでしてる。痛いのかな。お手洗いは先に行った方がいいと思うよ。

 隣ではギルドマスターがなんだかいい笑顔で王様を見てる。なんなんだろう?

 

『俺の立場を分かったか、みたいな感じだと思う』

『下手すると国が滅びそうだからな!』

『すでにさっき滅びかけたからな!』

 

 あれは師匠と精霊様の過剰反応だから気にしないでいいと思う。もう真美がどうにかしてくれてるはずだから、きっと大丈夫。

 メイドさんたちがたくさん来て、飲み物を用意してくれる。コップを置いて、飲み物をとくとくと。私にはジュース、だね。獣人国でたくさん収穫できる果物を使ったジュースなんだとか。なんだかピンク色に見えるジュースだ。

 それじゃあ、早速一口。

 

「おー……。見た目と違ってさっぱりしたジュースだね。飲みやすくて美味しい。味は、薄い桃、みたいな感じ。桃のジュースを水で薄めたらこんな味かも」

 

『それは……美味しいの?』

『桃ジュースが濃厚すぎて苦手という人には美味しいかも』

『ちょっと飲んでみたい!』

 

 うん。悪くないよ。こっちの世界のジュースではまだ美味しい方だと思う。

 

「ちなみにどんな果物?」

「ほう。興味があるか! ならば! おい、持ってきてくれ!」

 

 王様がそう叫ぶと、メイドさんが慌てたように部屋の外に出て行った。そうしてしばらく待って、戻ってきたメイドさんが何かを持ってきてくれる。それが果物、かな?

 

「これが我が国の特産品の果物、桃だ!」

「おー……。ん? 桃?」

「そうだが?」

 

『桃!? 桃って言った!?』

『本当にこの世界での桃なんかいw』

『日本の桃とはまたちょっと違うだろうけど……』

 

 そう、だね。触ってみたら、すごく固い。見た目はこぶし大ぐらいのピンク色の果物だけど、手で軽く叩くとこんこんと音が鳴る。むしろこれは桃もどきだね。日本の桃とは違うものだ。

 

「桃もどきだね」

「ほう? 精霊の森ではその名称で伝わっているのか! ならばこれからそうしよう!」

「え」

 

『ちょwww』

『果物の名称が変わっちゃうw』

『リタちゃんにとってはもどきってだけの話なのにw』

 

 そう。そうだよ。みかんもどきだって、師匠がみかんもどきって言っちゃったからそう広まってるけど、桃まで同じようにする必要はないと思う。

 名称は変えなくていいと何度も言って、どうにか納得してもらった。さすがにこの果物をずっと食べてる人がかわいそうだ。私は桃もどきって呼ぶけど。

 この桃もどきだけど、本当にすごく固い。ただ固いのは外側だけで、殻を破ると中はすごく柔らかいのだとか。果汁がいっぱいの美味しい果物らしいよ。

 

『桃に殻www』

『獣人さんですら固いって言うぐらいだから、マジで固いんだろうな』

 

 不思議な果物だね。

 せっかくだから殻を割らせてもらおうと思ったけど……。うん。身体強化の魔法を使っても、素手で殻を破るのは難しいと思う。実際獣人さんたちも、専用の器具を使っているのだとか。

 

「食後のデザートにこちらの果物も出させてもらう。楽しみにしてほしい」

「ん」

 

 それはすごく楽しみだね。楽しみが増えてしまった。とってもいい国だと思う。

 

「さて……。守護者殿」

「ん」

「我が国では、食事は全てのメニューを一度に出しているのだが……。今回もそれで構わないだろうか?」

「いいよ」

 

 なんだっけ。他の国では、たくさんの料理を順番に出すとか、そういうのもあるんだっけ。私はそういうのに興味がないけど。むしろ早くお肉を食べたいから一度に出してくれた方がいいぐらいだ。

 

「お肉」

「ふはは! すぐに用意させよう!」

 

 王様が手を叩くと、またたくさんのメイドさんたちが入ってきた。同時に、とても良い香りが鼻をくすぐってくる。これは、期待できるかもしれない。

 メイドさんたちがたくさんの料理を並べていく。そうして並べていって……。でもお肉は最後まで並ばなかった。なぜか何もない空のお皿が一枚置かれてるけど。

 

「お肉は?」

「ふっふっふ。まあ待て待て。慌てるな」

 

 王様が楽しげに笑いながら手を叩く。するとがらがらとカートが運ばれてきた。カートの上には、大きなお肉。お肉だ!

 




壁|w・)お肉に興奮する魔女。おにく!
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