異世界魔女の配信生活 作:龍翠
真美と一緒に、送迎デッキの側にあるフードコートへ。壁際にはたくさんのお店が並んでる。中央側にはテーブルと椅子がいっぱい。ここで注文して食べるみたい。
「さて、リタちゃん。先に言っておくけど……。函館はお魚とかが美味しい場所だからね。そこで食べられるものは、ここでは避けた方がいいと思うんだ。もちろんここのお魚も美味しいけど、せっかくだし函館の……」
「全部食べる」
「聞いて?」
『ぶれない魔女』
『全部! 全部だ! 全部よこせ!』
『まあ実際問題、飛行機の発着に間に合うか、というのはあるよね』
ん……。そっか。飛行機の出発時間もあるから、全部は食べられないんだね。それはとても残念だ。うん。とても残念。
「でも全部食べる」
「無茶を言うのはこの口かな? この口かな?」
「うあー」
『リタちゃんのほっぺをぐにぐにする真美さん』
『されるがままっていうのは、真美ちゃんを信頼してるってことかな』
『俺もリタちゃんのほっぺをぐにぐにしたいです!』
『多分シッショに殺されるぞw』
「ああ。殺すぞ」
『ですよね!?』
『草』
私も真美だから受け入れてるだけだけど。うあー。
仕方がないので、ちょっと厳選、だね。
フードコートにあるお店は、全て心桜島でも出店してるお店から選ばれてるらしい。中には全国チェーンのお店もあるけど、心桜島だけのお店もあるのだとか。
私はこの島にはよく来るから、そこまで気をつけて選ぶ必要はないけど……。あ。
「真美。真美」
「私は何も見てないよ」
「隅っこのちっちゃいお店、カレーだって」
「私は何も見てないよ」
「レトルトカレーを温めるだけのお店なんだね。それなのにすごく並んでるね」
「私は何も見てないよ」
「…………。異世界魔女カレーって書いてる」
「私は! 何も! 見てないよ!」
『なんか既視感のある流れだなあw』
『異世界(の)魔女(のお気に入りの)カレーですね分かります』
『つまり……真美ちゃんのカレーやな!?』
そういうことだと思う。まだ完成したって聞いてないから、あれも試作品だと思うけど……。売り始めるぐらいには完成が近づいてるってことかな。
せっかくなので食べたいけど、たくさんの人が並んでる。さすがにあれに並ぶと飛行機に間に合わないとかあり得そう。むう……。
どうしようかなと思っていたら、そのお店から店員さんが三人出てきた。三人ともカレーを持ってる。誰かに渡しに行くのかなと思ったら、こっちに来てくれた。その中の一人は……即売会でも会った、カレーを作る会社さんの社長さんだ。
「お待ちしていました」
社長さんはにっこり笑って言った。
「きっと来てくれると思っていたので、ご用意しておきました」
「おー!」
つまり……。食べられるってことだよね。早速食べよう!
苦笑いする真美とお礼を言う師匠。私もお礼を言って、カレーを受け取った。それじゃあ、いただきます。もぐり。
「おー……! 近くなってる……!」
「うん。これ以上近づけるのはそろそろ難しいと思うから、もうほとんど完成形かな」
「とても、すごい!」
さすがに真美のカレーと一致とまでは言わないけど、でも十分な味だと思う。少なくとも、カレーのお店に行くならこれを食べようと思えるぐらいには。
いや、もちろん他のお店のカレーもちゃんと食べたいからそっちにも行くけどね。でも、すごく美味しくなってる。これはとてもいいもの。
「んふー」
『カレーですでに満足しちゃってるw』
『これ大丈夫? お魚食べられる?』
『リタちゃんの旅行は! 終わってしまった!』
いや終わってないから。ちゃんとお魚も食べるから。
カレーを食べ終わって、食器を返して。そろそろいい時間なので、保安検査というものに行くことになった。二階に戻って、検査場に向かう。
「私たちはこっちね」
保安検査場、と書かれてる看板を無視して、その隣へ。ちょっといいチケットを持ってる人が使える場所らしくて、優先して保安検査を受けられるらしい。
それじゃあ、保安検査だ。まずは荷物を預けるらしいけど、そこはめんどくさいのでアイテムボックスに入れておいた。これで安心。警備員さんらしき人が頬を引きつらせてるけど。
『警備員さんの心労やいかに』
『めちゃくちゃ何か言いたげなんですがw』
手荷物はないよ? 大丈夫、だよね?
上着も少ない方がいいらしいから、ローブはちゃんと預けておく。そうしてから、長方形のゲートみたいなものをくぐった。金属系の所持物があったら音が鳴るらしいけど、特に持ってないから問題なく通過だ。一安心、だね。
『リタちゃんの珍しいローブなし姿』
『こうして見ると結構薄着だよね、リタちゃん』
『暑い寒いは魔法でどうにかできる子だからね』
そういうことだね。だから服は動きやすさ重視だ。
それじゃあ、ローブを受け取って合流……。
「待ってください」
警備員さんに呼び止められてしまった。なんだろう?
「なに?」
「魔女のリタさん、ですね?」
「ん」
「…………。これ、通していいのか……? 存在そのものが危険物なのに……?」
「え」
「アイテムボックスで何でも持ち込みできるのに……?」
「あ、えと、その……」
『存在そのものが危険物www』
『アイテムボックスはその通りすぎてなw』
『珍しく慌てるリタちゃん』
困った。とても、困った。見逃してほしいけど……。だめ、かな?
警備員さんが集まって相談して、なんだか無線みたいなもので相談して……。最終的には、無事に通してもらえることになった。よかった。本当によかった。
先に通っていた真美は笑いを堪えていて、そして師匠は……。
「存在そのものが危険物の二人目が来た……」
「おい」
『草www』
『知ってたw』
『がんばれ警備員さん!』
師匠もちゃんと通してもらえた。一安心、だね。これだけちゃんとしっかりしてる警備員さんだから、乗客の人も安心できる。そういうことにしておこう。
壁|w・)どこかで見た覚えのある保安検査だなあ。