異世界魔女の配信生活 作:龍翠
外に出ると、ちょっと長い道があった。バスとかタクシーとかがたくさん並んでるみたい。飛行機でここに来た人のため、だね。
タクシーの列の、先頭の車へ。ちょっと大きめの車だった。側まで行くと、運転手さんが車の外に出てきて、私たちを見て……。
「おや……。テレビで見たことがあるね。魔女さんだったかな」
柔和な笑顔のおじさんだった。にこにこしてる。優しそうな人。
『これは当たりの人』
『たまに無愛想なドライバーさんっているからな』
『観光タクシーだと無愛想な人ってあまりいないイメージだけど』
話しやすそうな人だよね。
師匠と真美は後ろの席へ。私はせっかくだから、助手席という前の席に座らせてもらった。
「おー……」
助手席。なかなかいいかも。窓からの景色も悪くないと思う。
でも助手席ということは、何か手伝わないといけないのかな。何か手伝う?
「リタちゃん。何もしなくていいからね?」
後ろから真美に言われてしまった。空を飛ぶタクシーとか楽しそうと思ったんだけど。
タクシーが動き始めて、すぐに空港の敷地から出た。
周りは……ちょっと建物が少ない。ドライバーさんが言うには、もうちょっと海の方に行くと建物がいっぱい増えてくるらしい。
それにしても……。
「道、結構ぼこぼこだね」
「だなあ」
「舗装しなおしたりしないのかな?」
アスファルト、だっけ。それで舗装されてる道だけど、あちこちぼこぼこしてる。車のおかげでそこまで揺れてないけど、それでもちょっとひどい道じゃないかな。
そう思っていたら、ドライバーさんが教えてくれた。
北海道は雪が多い。それは当然函館も同じくで、この道にも雪がちゃんと積もるのだとか。つまりそれだけ気温が下がるということ。
雨や雪解け水がアスファルトに染みこんで、気温が下がって凍結して、その水が膨張してしまう。そうしてアスファルトがひび割れて、そのひび割れにまた水が入り込んで、凍結して膨張して……。その繰り返しで、どんどんアスファルトが弱くなっていっちゃう。
そうして弱くなってしまったアスファルトの上を車が通ることで、アスファルトがどんどん砕けていってしまうのだとか。
『雪国ならではの悩みってやつやな』
『全然知らんかった』
『北海道はでっかいどう、大変だどう』
『は?』
『つまらないやつは出荷よー』
『そんなー』
変なやりとりが流れてるけど、気にしなくてもいいよね。
んー……。水が凍って膨張して、あの固いアスファルトをこんなにボコボコにしてしまう。つまり、それだけの力があるということ。ふむ。ふむ。なるほど。
「なるほど」
「リタ。変な魔法考えてるだろ……」
「リタちゃん、めっ!」
「解せぬ」
また師匠に頭をチョップされてしまった。いたい。
『解せぬも何も当然なんだよなあ』
『氷の膨張を利用とかめちゃくちゃやばそうな魔法になってそうw』
『普通に怖い』
そんなに変な魔法にするつもりはないけど。ただ、そう。
「相手に水を打ち込んで、凍らせて膨張させて……」
「リタちゃん。怒るよ」
「ご、ごめん……」
『真美さん、キレた!』
『想像しただけでやばいって分かるからなw』
『すぷらったが配信されるところだったw』
むう……。結構おもしろい魔法になると思ったんだけど。あらかじめ凍るようにした水を打ち込む。なかなかおもしろい魔法だと思う。私もさすがに生き物相手に使ったりしないけど。
「配信で使ったりしないよ。ばくっとした方が早いから」
「…………」
「すごく微妙な顔になってる……」
『草』
そんな変な発想だったかな。師匠も苦笑いしてるし。
しばらく走ると、海の横を走り始めた。綺麗な海だね。
進行方向にはちょっと大きめの山も見える。山の上には何かの建物があるみたい。んー……。ロープウェイ、かな?
「あれが函館山ですよ。今日は風も落ち着いていますし、夜景が綺麗に見えると思います。その左側の先の方が、立待岬。景色がいいのでおすすめです」
「おー」
夜景。せっかくだし是非とも見てみたいね。
「風って、夜景に関係あるんですか?」
「ありますね。風の向きによっては、霧が発生しやすいんですよ。天気ばかり気にしていると、霧のせいで夜景がまともに見れない、なんてこともあり得ます」
「そうだったんだ……」
いい天気だから大丈夫、と思っていたけど、そんなことがあるんだね。
でも、大丈夫だよ。
「霧がいっぱいだったら、私が風の魔法で吹き飛ばすよ」
「あー……。えっと……。うん。そうならないように本気で祈るよ……」
「なんで……?」
手っ取り早くていいと思うんだけど。
『力業で解決したがる魔女』
『その風が原因で変な気候になったりしない? 大丈夫?』
『霧を物理的にどっかに流したら、流した先で何かありそう』
それは……どうなんだろう? 考えてなかった。もしもやる時は、霧を消滅させる方向で考えよう。
「うん。がんばる」
「師匠さん。リタちゃんが何か考えてます」
「諦めろ」
「師匠さん!?」
『おいシッショwww』
『それでいいのかw』
いいんだよ。変なことはしないから安心してほしい。
そんなことを考えながら、私は窓からの景色も楽しんだ。海が広いね。
壁|w・)これらの説明は私が実際にタクシードライバーさんに説明してもらったことです。
ありがとうございました。