異世界魔女の配信生活   作:龍翠

58 / 543
もふもふ

 

 ギルドで薬草を渡すと、なんだかすごく驚かれてしまった。早すぎる、だって。

 

「本当はもっとかかるの?」

「そりゃなあ。普通は地道に探すしかないんだよ。魔獣を警戒しながら少しずつ探していく。依頼の量まで集めようと思ったら、だいたいは一日仕事だよ」

 

 その上、儲かる仕事でもないそうだ。

 Cランクの冒険者さんなら他に依頼がないなら薬草を集めようとなるらしいけど、Bランク以上になるとBランクの依頼が来るまで待とうと思うようになるんだとか。報酬が全然違うらしい。

 その上、薬草採取は見つからなかったら儲けも減る。とてもじゃないけど安定しないんだとか。

 

「ふうん……。じゃあ私も、次は討伐の依頼にしてみようかな」

「嬢ちゃんならそっちの方が向いてるだろうな。手が空いてたら付き合ってやるよ」

「ん」

 

 一人よりも誰かと一緒の方が楽しいかもしれないから、その時はお願いしてもいいかも。

 受付さんからもらった報酬は、私が全部もらうことになった。俺たちは何もしてないから、だって。お金にも困ってないから、とも言われたけど、私もあまり困ってない。まあ、しつこく言っても仕方ないし、今回は私がもらっておく。

 この後はどうしようかな。予想以上に早く終わっちゃった。んー……。

 

「もふもふでも探しに行こうかな……」

 

『本当急にどうしたんだリタちゃんw』

『謎のもふもふ熱』

『もふもふだと思って触ったらごわごわだったからなあw』

 

 普段はそんなに気にしないんだけどね。でもなんだか今日はもふもふの気分。日本にはもふもふなペットもたくさんいるって聞いていたから、その影響かも。

 でも探したところで見つからなさそうだから、諦めようかな。

 そう思ってたんだけど。

 

『リタちゃん、真美です。よければ夕方、こっちに来てください』

『おや?』

『真美ちゃん?』

『マ?』

 

 ん……。多分、真美本人だね。わざわざ来てほしいって言うってことは、何かあるのかな。

 とりあえずもう少し待ってから、日本に転移することにした。

 

 

 

 夕方。真美の家の中へと転移すると、知らない人がリビングで待っていた。真美が最近着てる制服というものと同じものを着てる。学校というのが同じなのかな? 茶色の髪はショートカットにされてる。

 その人は転移してきた私を見て、目をまん丸にしていた。

 

「えっと……」

 

 ん……。どうしよう。挨拶ってどうすればいいんだっけ。えっと。えっと。

 

『お互いに挨拶しようとして止まってる……』

『どうすんだよこれwww』

 

 本当にどうしよう。

 二人で何も言わずに固まっていたけど、すぐに真美がリビングに入ってきた。私を見て、先に入っていた人を見て、そしてどうしてか苦笑した。

 

「こんばんは、リタちゃん。待ってたよ」

「ん。何かあるの?」

「うん。今のリタちゃんなら喜んでくれるはずだよ」

 

 その前に、と真美が前置きして、

 

「この子は咲那(さな)。私の友達だよ」

「は、初めまして! 咲那です! よろしく!」

 

 咲那が勢いよく立ち上がって、頭を下げてきた。なんだろう、すごく元気なのが分かる。

 

「ん。リタです。よろしく」

「はい!」

 

 咲那は顔を上げると、真美へと振り返った。

 

「び、びっくりした! 急に呼ばれたから何かなと思ってたけど、リタちゃんがいるなんて! びっくりした!」

「あはは。うん。その、ごめんね?」

 

 んー……。咲那は、私が来ることは知らなかったみたいだね。もしかして真美にかけた魔法が失敗したのかも、とちょっとだけ思っちゃったけど、それはなさそうで安心だ。

 でも、真美はどうしてこの子を私に紹介してきたのかな。あと、咲那の足下の箱、ケージっていうのかな。あれはなんだろう。

 

「でも、なるほど。それで真美はあたしを呼んだんだね」

 

 ん。咲那の方は、心当たりがあるみたい。真美を見ると、目が合った。悪戯っぽく笑ってる。

 

「それじゃ、リタちゃん! あたしも配信見てる! 今も見てた!」

「ん。ありがと」

「うん! それでね! あたし、犬飼ってるんだ」

 

 犬。わんこ。もふもふ。もしかして。

 つい視線が下へ、ケージへと移ってしまった。咲那もそれに気付いたみたいで、ケージの蓋を開ける。そして咲那はケージの中から、その子を取りだした。

 小さい、とても小さい犬。茶色っぽいふわふわもふもふな子犬だ。もう見た目からしてふわふわしてる。もふもふしてる。かわいい。

 咲那に抱き上げられてる子犬は少し眠たげにしていて、くあ、と小さくあくびをした。

 

「わあ……」

 

『やばいこれはめちゃくちゃかわええ!』

『見た目で分かるもふもふ!』

『いいなあいいなあもふりたいなあ!』

 

 すごいね。すごくもふもふしてるね。触りたい。

 じっと子犬を見ていたら、咲那が子犬を差し出してきた。

 

「はい。おとなしい子だから、抱いても暴れないよ!」

「ん……」

 

 そっと抱いてみる。抱き方は咲那と同じように……。

 わあ……。すごく、すっごくもふもふだ……!

 

「もふもふ……!」

 

『リタちゃんが嬉しそうで俺も嬉しい』

『かわいいとかわいいが合体してとてもかわいい』

『お前は何を言ってるんだ』

 

 すごくもふもふしてるね。うん。すごく、すごく幸せ。んふー。

 




壁|w・)もふもふ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。