異世界魔女の配信生活 作:龍翠
のんびりと函館の町並みを散策してから、ホテルに戻ってきた。でもホテルには入らずに、すぐ側にある焼き肉屋さんへ。ここでジンギスカンというものが食べられるらしい。
「お肉。お肉」
「リタちゃんはお肉が好きだね」
「まあ野生児だし」
「師匠もだけど?」
「そうだけど」
『野生児親子』
『親は野生『児』ではないのではなかろうか』
『野生人!』
『野蛮人!』
「お前らいい度胸だな……!」
さすがに野蛮人は師匠も怒ると思う。それはだめだよ。
店員さんに案内されて、奥の席へ。ある程度他からは見られにくい席だ。配慮してくれたみたい。ありがたいね。
食べ放題らしいけど、一応一番高いコースにしておいた。
「当店では最初に食べ放題メニューを全てお出ししますが、大丈夫ですか? アレルギーとかはありませんか?」
「大丈夫。なんでも食べる」
「では少々お待ちください」
店員さんが離れていく。もうすぐお肉、だね。
テーブルの上には、なんだか見慣れない道具があった。焼き肉屋さんで言うところの鉄板だとは思うんだけど……。なんだか全然違う形だ。山みたいな円形だね。不思議な形。
「変な形。何か意味があるのかな?」
「えっと……。昔は兜を使って食べたから、それが由来……らしい? 今だと、周りに野菜をたくさん入れることで、羊の肉の脂が野菜にしみこんで美味しく食べられるから、らしいよ」
「へえ」
それはすごく考えられてるんだと思う。お野菜が苦手な人でもある程度は美味しく食べられるってことだね。
『マジか、知らんかった』
『周りの野菜を食べるのを忘れて焦げ付かせたのは俺です』
『お肉に夢中だとやってしまうなあw』
そういうもの、なのかな? いい色になってきたら忘れないと思うけど。
少し待つと、店員さんがたくさんのお肉や野菜を持ってきてくれた。羊のお肉だけじゃなくて、ウィンナーやエビもある。ウィンナーはラムウィンナー、羊を使ったウィンナーらしい。羊がいっぱいだね。
「それじゃあ、まずは野菜を敷き詰めて……」
山の周りに野菜をたくさん入れていく。そうしてから、羊のお肉を山の部分に敷き始めた。今回は、ラム肉、だって。ラムってなんだろう。
「生後一年未満の羊のお肉だよ。柔らかくて、ジンギスカンでよく言われる独特な臭いが少ないんだって」
「なるほど。羊って臭いの?」
「多分リタちゃんが食べたくちゃい料理よりはましだと思うけどね」
それはそう。もしそんな臭いがしたのなら、まずお店は潰れると思うから。
『でもマトンはわりと結構な臭いだよな』
『ホテルの消臭剤はジンギスカンのためにあると思ってる』
『あり得そうで困るw』
そんなに臭うのかな?
お肉の他にエビやウィンナーも焼いていく。いっぱい食べられそう。
少し待って、食べられるぐらいになった。それじゃあ、いただきます。
小皿にタレを入れて、お肉にちょんちょんとつけて食べる。ぱくり。んー……。
なんだろう。他のお肉と確かに違うね。柔らかくて、ジューシー。ほのかに甘みも感じられる。甘辛いタレに絶妙にマッチしていて、とても美味しい。
「ん……。美味しい」
「わあ……。これが本場のジンギスカン……! 地元で食べるより臭くない!」
「ん? あるの?」
「心桜島にも一応、お店はあるよ。ちょっと臭いけど」
臭いらしい。北海道の方が新鮮だから臭いが少ないのかな?
エビもいい色になってきた。こっちもちょっとタレをつけて……。もぐり。
「バリバリ」
「知ってた」
『ためらいなく殻ごと食べるなw』
『骨よりはマシだと思ってしまった俺はすでに毒されてるかもしれないw』
骨よりは柔らかいよ。殻ごと食べると食感がいいアクセントになっていてこれも美味しい。エビもいいもの。
ウィンナーはあまり違いが分からなかったけど、でも美味しいのは間違ってない。
「もぐもぐ……。お野菜も、美味しいね……」
「リタちゃん、もうちょっと落ち着いて食べてもいいんだよ?」
「もっと一気に焼きたい」
「リタちゃん?」
『どうしても焼くスペースが限られてるからね』
『おめえの出番だ! シッショ!』
「俺にどうしろと?」
やろうと思えば火の魔法で焼けるだろうけど、別にそこまで急ぐわけでもないし、ちゃんと焼いて食べようと思う。この待つ時間もいいと思うから。
途中でご飯も持ってきてもらった。ジンギスカンをしっかり焼いて、タレをぺたぺたつけて、ご飯と一緒に食べる。これは、幸せのお味!
「んふー」
『なんか我々より日本人してませんか?』
『え? リタちゃんって日本人やろ?』
『日本エルフ!』
変な種族にしないでほしい。親はどうでもいいけど、私はちゃんとエルフだから。
「思ったよりクセがないね。食べやすくて、美味しい」
「真美。真美。お代わり頼もう。お代わり」
「うん。リタちゃんが食べたいだけ頼んだらいいよ」
「ラム肉を五十人分」
「加減しなさい」
「いたい」
真美にチョップされてしまった。いたい。
仕方がないけど、食べ放題であまり食べ過ぎるのもお店に悪い気がする。常識的な範囲内にしないといけないってことだね。
「じゃあ、十人前」
「それぐらいなら……」
『いいのか!? 本当に!?』
『あかん、真美ちゃんも感覚麻痺してきてる!』
そんなことない。常識的な範囲だよ。
しっかりとジンギスカンを味わって、お店を後にした。ちゃんと写真もぱしゃり、とね。
あとは……。さすがに師匠が追加でお金を支払っていた。私も自然とそうできるようになりたい。
壁|w・)野菜を焦げ付かせたのは私です……。