異世界魔女の配信生活 作:龍翠
ご飯が終わったら、一度ホテルの部屋に戻る。次は函館山の夜景。とても楽しみ。ロープウェイがあるはずだよね。窓からの景色にもそんな建物がちょっと見えてるから。
「真美。真美。何時に行くの?」
「夜ぐらいかなあ。本当はもう少し早い方が綺麗らしいけど、多分すごく混雑してると思うから」
「ん……。何時?」
「ここで言ったら結局混雑すると思う」
『あー』
『それはそう』
『実はすでに現地では警備員さんらしき人が増員されて、長く居座る人に移動を促してるからな。俺も追い出された』
『追い出されたのかよw』
ん……。なんだか大変なことになってるみたい。純粋に景色を楽しみに来てた人にはちょっと申し訳ない。真美が言うように、せめて何時に行くかは内緒で行かないとだめだね。
とりあえず真美が決めた時間まではお部屋でのんびりして……。あ、せっかくだから師匠のお部屋を見に行こう。なんだっけ。同じ階のシングルの部屋だったはず。
「師匠の部屋、見てくる」
「はーい。私も行こっか?」
「大丈夫」
さすがに師匠の部屋はちゃんと覚えてるよ。
自分の部屋を出て、ちょっと長い廊下をてくてく歩く。そうしてたどり着いた師匠のお部屋。ドアの側には小さなボタンがあって、これを押すと中の人にベルが聞こえるらしい。私の部屋にもあったはず。
「師匠の部屋」
『ここがあの女のハウスね!』
『男なのだが』
変なコメントはとりあえず無視して、ボタンをぽちっと。少しして師匠が出てきた。
「リタか。どうした?」
「お部屋、見たい」
「うん? いいけど」
師匠に続いて部屋に入った。
師匠の部屋は、最初の短い廊下は同じ、だね。入って左側にトイレとシャワー室がある。ここはお風呂がないみたい。
「お風呂はないの?」
「ああ。函館山が終わったら大浴場に行くから、あったところでな」
「ん。それはそう」
私も今日は大浴場に行くつもりだから。天然温泉。気持ちよさそう、だね。
横に開くスライド式のドアを開けたら、師匠の部屋をよく見ることができた。師匠のお部屋はとりあえず……。
「狭い」
「ははは。まあシングルだしな」
『この辺りの広さはビジネスホテルと大差ないと思う』
『ぶっちゃけ一人で旅行に来た時って、部屋が広くても意味ないしな』
『そうか? 俺は広い方が好き』
人それぞれってことだね。私はどっちでもいい。お部屋に不満があれば、自分のお家に帰ればいいだけだから。
入って右側にテレビ台があって、そこにあのコーヒーの道具とかがあった。下側には冷蔵庫。そしてテレビの反対側にベッドがあって、ベッドの向こう側が窓だ。
私の部屋の窓とは反対側の景色だね。市街地……かな? 大きな倉庫が見えて、左側には海が見える。こっちの景色も悪くないと思う。
ベッドの脇には小さな棚もある。あとは空気清浄機。確か私の部屋にもあったはず。魔法で部屋を綺麗にできるから使わないけど。
それだけ、だね。長期間の滞在になるとちょっと疲れそうな部屋だけど、短い期間なら快適に過ごせると思う。
うん。満足。
「じゃあ帰る」
「すごいあっさり帰るな……」
『なにしに来たんだこの子w』
『本当にただ見に来ただけだなw』
どんな部屋か気になっただけだからね。
また後で、と師匠に手を振って、自分の部屋に戻った。
そうして、夜。真美に促されて部屋を出た。師匠も後ろを静かについてくる。今回もあくまで付き添い、という形らしい。気にしなくてもいいと思うのに。
せっかくだからとロープウェイまでは歩いて向かう。いい場所があるのだとか。
「そこがここ。八幡坂だよ」
「おー……?」
結構急な坂、だね。それだけに見えるけど……。
『訪れたい坂日本一にも選ばれた八幡坂じゃないか!』
『上からの景色がいいんだよ!』
「ふうん」
そういうことらしいから、真美と一緒に坂を登る。真美はちょっと辛そうにしていたけど、自分の足でがんばっていた。
そうして、坂のてっぺんまでたどり着いて、振り返る。
「おー……」
これは……。うん。悪くないと思う。
長い下りの坂。その両側にはたくさんの木が並ぶ。そうして道の先に見えるのは、函館湾。かすかにだけどちょっと大きな船があるのも見える。ここはお昼に来てもいいかもしれない。函館湾がよく見えると思うから。
「冬に来たらイルミネーションもやってるらしいよ。両側の木がとっても綺麗になるんだって」
「今はない」
「あはは。そうだね」
『夏場はさすがにやってないなあ』
『十一月下旬ぐらいから、だったかな。すごく綺麗だからまた見に来てほしい』
まだちょっと先、だね。是非とも来てみたいと思う。
「雪化粧の町がイルミネーションでライトアップされて、写真だとすごく綺麗なんだよね」
「おー……。楽しみ、だね」
「うん。また来ようね」
「ん」
来よう。絶対に。
『しれっと約束を取り付ける真美ちゃん』
『さすがやで!』
『これが、策士!』
「変なこと言わないでください」
私は気にしないけど。
それじゃあ、改めて函館山だ。ロープウェイはここから近いらしい。もうひとがんばり、だね。
壁|w・)本音を言えば、イルミネーションがない夜の八幡坂はぶっちゃけ微妙です(無慈悲)