異世界魔女の配信生活 作:龍翠
イートインコーナーの椅子に座って、テーブルの上にお菓子を置く。開封して、中身を取り出して……。おー……。
全体的に濃い紫色のお菓子。横から見ると、確かにロールケーキだ。ロールカステラ、らしいけど。外側に濃い紫色のジャムをたっぷりとコーティングしてるらしい。ハスカップのジャム、だって。
何か説明の紙も入ってる。えっと……。
「日本一食べにくいお菓子だって」
『草』
『それは自慢していいことなのかw』
『食べにくいけど美味しい、ということさ!』
ん……。食べにくいからこそ、食べると美味しい。きっとそういうお菓子。
内袋から取り出して……。ちゃんと切られていて食べやすくはしてくれてるみたい。それじゃあ、いただきます。
「おおー……。ものすごくねばねばする……」
「素手で行くとは思わなかったかな」
『まさかの素手w』
『素手はあかんっていうのは見た目で分かるだろw』
気にしてはいけない。手はあとで魔法で綺麗にすればいいから。
それじゃあ……。あむ。
「おー……。強めの酸味があるけど、しっかりとした甘みもあるね。甘酸っぱいって言えばいいのかな。あまり食べたことのない味。でもすごく美味しい。これはいいもの」
手はねばねばしちゃうけど、これはすごく美味しいね。よく見るとロールカステラの内側にもしっかりとハスカップのジャムが練り込まれてる。ちゃんと内側も美味しく食べられるいいお菓子。
でもやっぱり手で食べるのはだめだね。手に感じるねばねばがちょっと気になる。魔法で綺麗にして、アイテムボックスからフォークを取り出した。
お菓子の切断面もねばねばしてるみたいで、切られているはずなのにすごく分けづらい。フォークでつんつんして、取り分けた。もう一個。
「んふー……」
『めちゃくちゃ美味しそうに食べるじゃん』
『おい! 通販ページ落ちてんぞ!』
『おまえらwww』
とても気に入った。とりあえず……追加で十個ぐらい買っていこう。なくなったら買いに来ようと思う。
師匠と真美にも食べてもらったけど、二人とも美味しいって言ってたし、やっぱりこれはいいお菓子だね。
「函館は美味しい」
『函館食べられちゃった』
『俺の地元が魔女にぱくりとされた件について』
まだまだ美味しいものがありそうだね。わくわくだね。
朝市を出て、次に向かうことにした。向かう先は……五稜郭タワー。飛行機から見えていた場所だ。函館と言えばここ、という場所の一つらしい。
「このタワーの展望台から五稜郭を一望できるんだよ」
「おー」
あの不思議な星形の場所だよね。空から見た方が早いとは思うけど、展望台から見るのも悪くないと思う。
『よかった、勝手に建物の上に立つリタちゃんはいなかったんや』
『おい、余計なこと言うな』
なるほど。
「真美。真美。手を出して」
「待って嫌な予感があああ!?」
五稜郭タワーの屋上に立ってみた。あれが五稜郭、だね。星形の不思議な場所。川みたいなのは……堀、て言うのかな? なんだかかっこいい。緑もいっぱい。
「すごい場所」
「リタちゃん」
「ん?」
「…………」
「ご、ごめん」
『無言の圧力に屈した魔女』
『これは怒られるわwww』
『ちゃんとチケット代を払ってね!』
ん……。ちゃんと観光に来てるんだから、チケットは買わないとだね。ごめんなさい。
地上に戻ったら、師匠がものすごく呆れた目で私を見ていた。そんな目で見ないでほしい。次からは注意するから。
五稜郭タワーの中は、なんだかとっても広い空間だった。ゆっくり休憩できるようになってるみたい。中に入っていけば、チケットカウンターがある。ちょっと人は並んでるけど、あそこでチケットを買うんだね。早速並ぼう。
「あ、リタちゃんだ!」
列に並んだら、目の前の女の子が振り返ってきた。にこにこ笑顔で私を見てる。
「ん。こんにちは」
「リタちゃんもてっぺんに行くの?」
「行く」
「たのしみー!」
「ん。楽しみ」
『なんだこのほのぼの空間』
『時折ある子供との交流が好き』
『両方ともちっこいからな!』
ちっこい言うな。
女の子のおしゃべりを聞きながら少し待って……。私たちの順番になった。
「いらっしゃいま……」
固まってしまった。
『いつもの』
『昨日から函館にいるんだから来ることは予想できたでしょ!』
『みんながみんな、配信を見てるわけじゃないからね』
特に何もしない配信だからね。
お姉さんが落ち着くのを待ってから、改めてチケットを購入。これでエレベーターで展望台まで行けるみたい。早速行こう。
壁|w・)五稜郭タワーのてっぺんに立ってはいけません! 真似しないように!