異世界魔女の配信生活 作:龍翠
五稜郭タワーから歩いてすぐに、五稜郭の入口があった。五稜郭公園、だって。大きな橋をてくてく渡って、何かの植物のトンネルをくぐる。ちょっとおもしろい。
「おー……」
「リタちゃん、ちゃんと前を向いて歩こうね」
「ん」
『お母さんかな?』
『真美ママ!』
『真美ちゃんママ!』
『ママ味を感じる!』
『ままあじ』
『ままみ』
『変な争い始めようとすんな』
道なりにてくてく歩く。そうして歩いていくと、大きな日本らしい建物が見えてきた。タワーの展望台からも見えていた、五稜郭の中央あたりにある建物。函館奉行所、だって。
「ずっと昔に一度は解体されたけど、たくさん資料を集めて復元した建物らしいよ。当時の三分の一ぐらいしか復元してないらしいけど」
「へえ」
「あまり興味なさそう……」
『リタちゃんにとっては日本の歴史は物語程度の感覚だろうから』
『自分の世界の歴史すらろくに知らない子だからね!』
『事実だろうけどwww』
過去にいろいろあった、ぐらいしか思ってないかな。
復元された函館奉行所にはちゃんと入れるらしい。入館料を支払って、建物の中に入る。もちろんちゃんと靴は脱いで、と。それじゃあ、中に入ろう。
「おー。とても広い」
「すごく広いね」
ふすまはあるけど、いくつかある部屋が繋がっていて、とっても広い部屋になってる。ここで何かをしていたのかもしれない。そして当然、畳だ。つまり。
「みんなでお昼寝していたのかな?」
「畳はお昼寝のための道具だと思ってる?」
「違うの?」
「違うよ!?」
『想像したらシュールすぎてw』
『着物を着た人たちがみんなで横になって寝るのか……』
『奉行所としてはほとんど使われてないけどな!』
『つまり奉行所はお昼寝施設だった?』
『なんて平和な建物なんだw』
違うらしい。もちろん畳は日本の一般家庭でも使われてるのは知ってるよ。でも畳でお昼寝はとっても気持ちいいから。こんなに広い部屋だとお昼寝もすごく快適そうだ。
「師匠」
「庭に畳を敷き詰めたらさすがに怒るぞ」
「ん……」
『やばいこと考えてたw』
『そもそも庭に畳がある時点でいろいろおかしいからなw』
『いっそ精霊の森に日本家屋でも建ててみたら?』
「なるほど」
「なるほどじゃないが。お前ら余計なこと言うな!」
むう。日本家屋、とてもいいと思うのに。日本で建ててもらって、精霊の森に転移させる……。このやり方でいけると思う。精霊様に聞いてみよう。
「精霊様への無茶振りフラグが立った気がするけど、気のせいだな。ヨシ」
『ヨシじゃありませんが!?』
『無茶振りが確定した瞬間であるw』
『これも全て、奉行所が悪いんだ!』
畳がたくさんのお家、作れたらいいな。わくわくだね。
ぐるっと函館奉行所を見て回る。資料をたくさん置いた部屋とかもあった。読み物としては興味深いから、とりあえず覚えていこう。
『よくよく考えなくても、写真いらずで覚えていけるっていいよな』
『リタちゃんは産まれてから捨てられるまでも覚えているけど、羨ましいか?』
『重いことを思い出させないでくれ』
ん? その辺りはあまり気にしなくてもいいけどね。今となっては捨ててもらってよかったと思ってるから。
一通り見て回って、奉行所を出る。出て少し歩いたところに、足下に写真マークがあった。ここから写真を撮ると、パンフレットとかにある奉行所の写真と同じ物を撮れるのだとか。
「パンフレットを見ればいいのに、撮る必要あるのかな」
「え」
「あ……」
そこに立って写真を撮ろうとしていた真美と目が合った。
「…………」
「…………」
「ご、ごめん……」
「う、ううん……。別に……」
『草』
『これは気まずいやつw』
『価値観は人それぞれだからね!』
そうだね。うん。余計な一言だった。ちょっと気をつける。だから師匠、忍び笑いしないでほしい。怒るよ。
てくてく歩いて、とりあえず五稜郭公園を出ることにする。途中に五稜郭タワーもまた見ることができた。五稜郭公園から見るタワーもなかなかいいと思う。
ついさっきまであそこから見ていたんだなって思うと、ちょっとおもしろい。手を振っておこうかな。ふりふり。
『五稜郭タワーにいるワイ、奇跡的にリタちゃんのふりふりが撮れた』
『マジかよwww』
『突然のファンサ!』
ファンサってなんだろう……? よく分からない。
五稜郭公園から出たところで、次の場所に向かうことになった。次はどこかな?
「真美。真美。次は?」
「次はね、ここ。手作りクッキーとかも売ってるらしいよ。美味しいんだって」
「おー」
美味しいクッキー! それは買わないといけない!
真美に見せてもらった地図を確認して、その場所に転移した。
壁|w・)日本家屋建設フラグ!