異世界魔女の配信生活 作:龍翠
函館から帰ってきて、夕方。獣人国のギルドマスターさんの部屋に直接転移した。
「うわあ!?」
「おお!?」
ギルドマスターさんとルドガーさんが向かい合って座っていた。何か、食べてる。なんだろう。薄く切ったお肉、だね。美味しいのかな?
「まままままままま」
「落ち着けギルマス! 気持ちは分かるが!」
『威厳たっぷりなギルマスさんが壊れたおもちゃみたいになってるw』
『失礼だが見ていて……ふふ、面白いです』
『本当に失礼だなw』
ギルドマスターさんはままままずっと言ってるね。大丈夫? 体調悪い?
「それ何?」
「あ、ああ……。酒のつまみ、みたいなものだ」
「飲んでるの?」
「いや。魔女殿が来ることは分かっていたからな。今日は飲まずに気分だけだ」
「そうなんだ」
『ノンアル飲料がなければすごく寂しいことになりそう』
『今思えばノンアル飲料って偉大な発明だったよ』
『素直にお酒を飲む時間が欲しいです』
飲めばいいと思うけど。だめなのかな?
ルドガーさんが勧めてくれたので、薄切りのお肉を食べる。生じゃなくて、さっと焼いてはいるみたい。ちょっと塩味があるね。物足りないけど、悪くないと思う。
「もぐもぐ……。それで、お城に行きたいんだけど。今から行ける?」
「ああ……。もしこちらに魔女殿が来れば、案内してほしいと言われている。正直、城に直接行くと思っていたよ……」
「誘った方がいいかなって」
「友人の家に行くように気軽に誘わないでくれ」
『おうさまー! あそびましょー!』
『おーい王様! 野球しようぜ! お前ボールな!』
『こわいこわいこわいw』
視聴者さんは意味の分からないことを言ってる。王様をボールにするのはさすがにかわいそうだよ。ちゃんと一緒にやらないと。
「ままま魔女殿! どうしてここへ!」
ようやくギルドマスターさんが我に返ったみたい。まの連続が終わって、そんなことを聞いてきた。すでにルドガーさんに言った後なんだけど。
「お城に行くから誘いに来た」
「来るなよ……」
「ん?」
「ははは。なんでもないぞ」
『今一瞬本音が出てたぞw』
『こっちに来なければ友人とメシ食って終わりだったんだろうなあw』
『ギルマスはリタちゃんにいじめられるジンクスでもあるの?』
いじめたつもりなんてないけど……。意味が分からない。
とりあえず、三人でお城に行くことになった。すでに馬車も待機しているらしい。ずっとギルドの前で待機してるから、冒険者さんたちには怪訝に思われてるらしいけど。
二人と一緒にギルドの外に出る。聞いていたように馬車があって、御者台では男の人が串焼き肉を食べていた。私たちを見て、固まってる。
「あー……。すまない。こちらに来てしまった」
「んん……っ! 少し、お待ちを!」
「慌てなくていいよ? ゆっくり食べてね。ご飯を急いで食べたらだめだから」
私も近くのお店で串焼き肉を買おう。函館ではお魚とか海鮮が多かったからね。ぐにぐにお肉も気分転換にいいと思う。
「その串焼き肉、どこの?」
「え……。あ、その、そちらの店で……。どちらかというと、他種族向けの肉ですね。私は柔らかい肉が好きで……」
「柔らかいお肉」
獣人国でも食べられるんだ。それなら、うん。食べよう。是非食べよう。
教えてもらったお店は、ギルドの向かい側あたりにあるお店。大通りを渡った場所にあるちょっと大きな飲食店だった。いろんなお肉を置いてるみたいで、柔らかいお肉もあるんだとか。
お持ち帰りでお肉を購入。ぐにぐにお肉の串焼き肉と柔らかいお肉の串焼き肉。五本ずつ。それじゃあ、いただきます。
「んー……。ぐにぐにお肉も悪くない。ちょっと濃いめの味付けでいいよね」
昨日とかは海鮮がほとんどだったからね。お肉もとてもいいもの。
「ぐにぐにお肉はお肉を食べてるっていう気分になって、これはこれでいい」
「分かる。分かるぞ魔女殿」
「だがしかし、やはり物足りない! ここは俺の料理を……」
「ルドガーさん。その口、縫い付けた方がいい?」
「…………」
『ひぇっ』
『あまり聞かないリタちゃんのストレートな脅し』
『久しぶりだからまたあの臭いを、とはならんよなw』
『時を待つんだルドガーさん。いつか、あの味を思い出したリタちゃんがまた作ってほしいと言うかもしれん』
『あるかなあ……』
それぐらいなら……ある、かな……? ないような気もするけど。
もぐもぐと串焼き肉を食べ終えて、改めてお城に向かうことになった。御者さんも食べ終わったみたいだからね。
馬車にみんなで乗り込む。私は……御者さんの隣に座った。御者さんが目を丸くして絶句してる。
「ま、魔女殿! どうされた!?」
ギルドマスターさんが慌ててるけど、気にしないでほしい。お肉のお話でもしたいだけだから。
「私はここでいいから。出発しよう」
「は、はい……」
ぺしん、と馬車が走り始める。お城へゆっくりと。
「柔らかいお肉、いいよね。私も柔らかいお肉が好き」
「あ、は、はい! 私も柔らかい方が好きで……。しかし、知人に言っても、理解してくれないのです」
「もったいないよね」
「本当に、もったいない……」
柔らかいお肉が好きな獣人さんは珍しいと思うから、お話ししてみたかった。ちょっと楽しかったです。
壁|w・)サブタイトル思い浮かばなかったので、とりあえずギルマスさんのセリフにしてみた。