異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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ダンジョンの仕組み

 

 もふもふを堪能してから一週間ぐらい。その間、真美の家に遊びに行きつつ、薬草採取の依頼だけ受けていた。いやだって、分かりやすかったから……。

 討伐依頼も受けてみようと思ったことはあったんだけど、根本的な問題が発生したんだよね。何がというと、魔獣の名前を言われてもほとんど分からないってこと。

 ワイバーンやドラゴンとか、そういったものなら分かるんだけどね。例えば、フォレストウルフとグラスラウルフ。見た目はほとんど変わらないけど、色が微妙に違うし危険度も大きく違うらしい。フォレストウルフの方が危険なんだとか。

 

 私は区別がつかない。見れば分かるかもしれないけど、まずその一匹目でつまずくから。

 だから今はのんびり薬草採取しながら、見かけた魔獣を一匹狩って、持って帰ってフランクさんに教えてもらってる。もうすぐこの近辺の魔獣は覚えられるかも。

 今日の予定もそのつもり。いや、そのつもり、だった。

 

 

 

 いつものように配信を開始して、黒板を消してからギルドに入る。するとギルドは、なんだかいつもより慌ただしかった。

 

「Aランクを探せ! 報酬は上乗せして構わん!」

「Bランクの方! 防衛依頼を受けてください!」

「Cランク! こっちだ! 避難誘導を頼む!」

 

 ギルドの人があっちこっちで叫んでる。非常事態、かな。何かあったのかな。

 

『蜂の巣をつついたような騒ぎだな』

『蜂の巣をつつくってよくよく考えなくてもアホだよね』

『そこはつっこまなくていいよw』

 

 視聴者さんは平常運転。この人たちはあまり関係ないからね。

 いつも通りの依頼は、ちょっと受けられそうにない。せっかくだし私も何か手伝おうかなと思ったけど、Cランクとして参加すればいいのかな。それとも、Aランク? それとも。何か他にあったり……。

 

 そう考えて視線を少し上げてみれば、階段の上にいたミレーユさんと目が合った。私を見つけたミレーユさんは嬉しそうに破顔して手招きしてきた。

 うん。最近は接触を避けてくれてたけど、そうも言ってられなくなったみたいだね。やっぱり非常事態かな。

 

 

 

 階段を上ると、こっちですわと手を引かれて歩き始めた。多分、ギルドマスターさんの部屋に向かってる。

 

「ミレーユさん、何かあったの?」

「ええ、ありましたわ。ギルドの様子はご覧になったでしょう?」

「ん。みんなすごく忙しそうだった」

「ええ。数年に一度はあることらしいですけれど」

 

 ん? だったら、忙しいだけでそこまで非常事態ってわけでもないのかな。

 そう思ったけど、ミレーユさんはため息交じりにつぶやいた。

 

「今回はとてもやっかいなタイミングで発生してしまいましたわ……」

 

 やっぱり、非常事態。

 ミレーユさんと一緒にギルドマスターさんの部屋に入ると、私たちを、というより私を見たギルドマスターさんは目を丸くして、そして勢いよく立ち上がった。走るように私に近寄ってきて、両手を取られる。そして、

 

「リタさん! お願い、助けて!」

「ん。いいよ」

「もちろん急に言われても困るのは分かって……、え?」

「ん。だから、いいよ」

 

 何があったのか分からないけど、知らない仲じゃないし、助けてあげようぐらいは思うよ。

 

『食い気味に引き受けるの、リアルで見てもいいよね』

『でもリタちゃん、あんまり感心しないぞ』

『無理難題をふっかけられることもあるかもしれないから、次は必ず内容を聞いてからな』

 

 ん……。それもそうだね。ギルドマスターさんならそんなことはしないと思うけど、別の意思が入ってくることもあるし。ギルドマスターさんにも上がいるみたいだから。

 だから次はちゃんと内容を聞いてから。覚えておこう。でもとりあえず今はこのまま進める。

 

「それで、私は何をすればいいの?」

「え、ええ……。それじゃあ、改めて……」

 

 ギルドマスターさんは咳払いをすると、姿勢を正した。

 

「隠遁の魔女殿に、ギルドから依頼させていただきます。西にあるダンジョンから、とある人物の救出をお願い致します」

 

 

 

 ダンジョン。それはとても不思議な洞窟や建物。最奥にダンジョンコアというものがあって、そこから魔物が生み出されてる。魔物には自意識というものが存在せず、見つけた生者を襲う性質がある。どうしてそんなものが存在するのか一切分かっていない、不思議な場所。魔物を倒した時に残る魔石は魔道具の原動力としての価値があるから、その採取を生業とする冒険者も少なくない。

 

 というのが、表向きの、というより人間の認識だ。私は精霊側なので、この裏事情を知ってたりする。

 

 ダンジョン、それは汚れた魔力の浄化施設。ダンジョンには精霊たちによって魔力にのみ作用する浄化魔法がかけられてる。ダンジョンコアに集められた汚れた魔力が一定量貯まると排出されて生き物の形を取って、浄化魔法によって浄化されていくという仕組みだ。けれどそれは最低限で、人間から魔力を受けて浄化されるのが主要な浄化方法になってる。

 どうしてそんな仕組みかと言えば、ずっと昔、精霊たちが当時の人間たちと契約を交わした名残らしい。人間が過ごしやすいように魔力を循環させる代わりに、人間たちは魔力の浄化を手伝う。そういう契約だったそうだ。

 

 今ではその契約を覚えてる人間は少ないらしいけど、少なくとも王族みたいな偉い人はまだ伝え聞いてるはず。浄化が足りてないダンジョンには国から兵か何かが派遣されてるはずだから。

 というのをミレーユさんたちに説明すると、二人とも口をぽかんと開けて呆けて、そして二人そろって頭を抱えてしまった。

 

「それ、絶対にわたくしたちが聞いていいことではなかったでしょう……」

「間違いなく機密情報じゃないの……。え? これ、私たち暗殺されない? 大丈夫?」

「ん……。多分大丈夫」

 

 口外しなければ気付かれないと思うしね。

 

「ちなみに、どうして生き物の形を取るんですの? 適当な球体にして順番に浄化していくじゃだめですの?」

「ん……。それは勝手にそうなってるだけ。魔力の汚れって生き物の負の感情らしくて、排出したら勝手に生き物を襲う形になったらしいよ」

 

 精霊たちも魔物が生まれた時はかなり驚いたらしい。でも浄化は滞りなく進んでいたから、現状維持を選んだって聞いた。

 




壁|w・)今作のダンジョンの仕組みはこんな感じです。

あ、ここから第九話、のイメージです。
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