異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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趣味は自然落下です

『皮肉だよなあ。生活を豊かにするために魔力を融通してもらったら、魔物の対策が必要になってしまったって』

『楽だけなんてできないってことだな』

 

 精霊たちもさすがにそこまでは意図してなかったみたいだけどね。

 

「それで、そのダンジョンがどうしたの?」

「ええ……。西のダンジョンから、魔物が溢れかえりつつあるの」

「ああ……」

 

『スタンピードってやつか』

『お約束はお約束だけど……』

『なんだおまえら、大好きなテンプレなのにテンション低いじゃん』

『そりゃまあ、さすがに人が死ぬような災害は楽しめねーよ……』

 

 ん。中にはそれでも楽しんでる人はいるみたいだけどね。でもそれはその人の価値観だ。ケンカさえしなければ、特に何かを言うつもりはないよ。

 ちなみにスタンピードが起こる理由はとても単純。魔物の討伐が間に合わなかったから。魔物の発生数が討伐数を上回ると起こる、ただそれだけのこと。

 魔物の発生は止められるものじゃないからね。精霊たちからすれば人間の怠慢が原因みたいなものだから。

 

「この街は精霊の森に近いということもあって、どこの国にも属していない街なの」

「ん?」

「街一つが小さな国になっていると思ってくれてもいいわ」

 

 ギルドマスターさんが言うには、隣接する三つの国からアドバイザーは派遣されてるらしいけど、どの国も精霊の森を気にしてかとても街に友好的らしい。だから交易の拠点になっている街でも、一定の自治は保てているのだとか。

 私は政治のことなんてよく分からないから、正直興味がない。でも、言いたいことはなんとなく分かった。

 

「つまり、スタンピードを起きないようにすることは難しいんだね。兵士さんの数が足りないから」

「そういうことね」

 

 スタンピードが起こるって分かっていれば対策も立てられるからね。湧き出てくる魔物もいつもの魔物と変わらないはずだし。

 ただ、今回は本当にタイミングが悪かったみたいだけど。

 

「今はまだ本格的なスタンピードには至っていないわ。だから、Aランクの冒険者が取り残された方の救助に向かったのだけど、それでも魔物が多すぎて深部にはたどり着けなかったらしくて……」

「ん……。魔物って少しずつ増えるよね? 注意とかしなかったの?」

「もちろんしたけれど、それでも入っていってしまったのよ」

「ええ……」

 

『それはもう自業自得では?』

『阿呆のために命をかけることなんてしたくないわな』

『冒険者の皆さんも救助についてはやる気なさそう』

 

 正直私もそう思う。忠告までされてそれでも入ったのなら、それはもう自己責任だ。だから私もそんな依頼なら受けたくなかったんだけど……。

 

「貴族ですの、そいつ」

 

 ミレーユさんが疲れたような声音で言った。

 

「国からも、可能であれば助けてほしいと。失敗しても責任は問わないとは言われているけれど、この街に援助してくれている国なのよ。その援助が打ち切られたら、少し痛いわね……」

 

 それに、とギルドマスターさんが続ける。

 

「その貴族の派閥はこの中立の街を好ましく思ってないらしくて。何かあれば、面倒なことになりかねない……」

 

 何かしらのきっかけで小競り合いからの戦争になったり、とかあり得るかも。とのことらしい。貴族側が出兵して、他の国が守るために出兵して、三国で戦争とか。

 最悪の想定ではあるけど、ないとも言い切れないんだって。わずかでも可能性があるなら、どうにか防ぎたいというのがギルドマスターさんの意見。

 

『ギルドマスターさん、ストレスやばそうやなw』

『アホに巻き込まれるのはいつも一般人』

『でも戦争になったら、森の近くだし精霊が介入するのでは?』

 

 んー……。多分、それはない。森にまで影響が出るなら精霊様が介入するだろうけど、森と街はかなりの距離がある。そうそう影響は出ないはずだから、静観すると思う。

 正直、私の気持ちとしてはそんな人は無視していつも通りに対処すればいいと思うんだけど……。でも、何かあってミレーユさんたちが巻き込まれるのは、やだなあ……。

 だから、まあ、うん。そうしよう。

 

「ん。わかった。じゃあ、ダンジョンに行って、助けてくる。何人いるの?」

「ありがとう! 貴族が一人、護衛の冒険者が一パーティ四人よ。もしも手遅れなら、遺品だけでもお願いできるかしら」

「ん。いいよ」

 

 手遅れでしたっていう証拠もいるだろうしね。それぐらいなら問題ない。

 それじゃあ、行こう。あ、その前に、一つだけ確認しておきたい。

 

「そういえば、ミレーユさんでも対処できるんじゃないの?」

「わたくしの魔法は広範囲殲滅を主としていますわ」

「つまり、勢い余って救助対象を殺してしまう可能性がある?」

「そういうことですわね」

 

『広範囲高火力の弊害ってか』

『ゲームと違ってフレンドリーファイアが普通にあり得るからなあ』

 

 ん。じゃあ、やっぱり私だね。がんばる。

 

 

 

 箒に乗って街の西へ。案内役としてミレーユさんも同行してくれてる。ミレーユさんはこの後、ダンジョンの側で待機するらしい。魔物が増えてきたらミレーユさんの魔法で一掃するらしいよ。

 

「私が魔法を使う前は必ず合図を出します。ダンジョンから出てくる時は気をつけてくださいませ。できれば脱出のあとすぐに合図をしていただければ嬉しいですわ」

「ん。じゃあ、大きな水を打ち上げる」

「分かりましたわ」

 

 お互いに間違わないようにそう決めて、私はフードを目深に被った。私のローブのフードは認識阻害がかけられてる。フードを被っていれば、見られても私だとは分からない。

 私が帽子とフードを使い分けてる理由がこれだったりする。ちなみに帽子にかけてあるのは防御と緊急脱出の魔法だね。もしものための魔法だ。

 

「すごいですわね……」

 

 ミレーユさんがそうつぶやいた。

 

「わたくしがそこにいるのがリタさんだと知っているから、まだなんとなく分かりますわ。でも、不思議ですわね。魔法使いがいるとは分かりますけれど、どんな人かというのが分かりませんわ。こんな感覚になりますのね」

「ん。おもしろいでしょ?」

「そうですわね」

 

 どうしてそこで苦笑いになるのかな。もし欲しいなら作ってあげてもいいよ。

 地上を見下ろすと、とても広い草原になってる。その草原にぽっかりと空いた穴。大きなビルぐらいならすっぽり入るその穴には、地下に続く階段があるらしい。ダンジョンの仕組みは知っていても入るのは初めてだから、ちょっと楽しみだ。

 穴から一定の距離に、穴を囲むようにたくさんの人が集まってる。這い出てくる魔物を倒してるみたいだね。

 んー……。とりあえず、穴の側に下りればいっか。

 

「それじゃ、行ってくる」

「はい。お気をつけて」

 

 ミレーユさんに声をかけて、私は箒をアイテムボックスに収納した。

 

「ちょ!?」

 

 ミレーユさんが驚く声を聞きながら自然落下。これが結構気持ちいいんだよね。

 

『気持ちいいのは分かるけどいや分からんけどこわいこわいこわい!』

『すごい勢いで自慢があああ!』

『ひええええ!』

 

 大げさすぎない? 視聴者さんは風とか感じないはずだけど。誤字してる人までいるし。

 地面に激突する寸前で体を浮かし、ゆっくり着地。地面は割れてないから問題なしだね。

 




壁|w・)サブタイトルがあまりにも思い浮かばなさすぎてこうなりました。
ギルドマスターさんの想定は最悪の最悪なので、実際にはないはずですが、可能性が一でもあるのならどうにかしたい、という考えです。
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