異世界魔女の配信生活   作:龍翠

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海鮮丼

 おじさんとお兄さんがカウンターの向こうでお魚を切り始めた。手際よく切っていってる。職人技ってやつだね。すごい。

 

「リタさん。海鮮丼は初めてでしょうか?」

 

 二人の仕事を眺めていたら、リポーターさんにそう聞かれた。

 

「ん。お寿司は食べたことがあるけど、海鮮丼は初めて。楽しみ」

「そうなんですね! 私もここは初めてですけど、とても美味しいと評判ですよ!」

「そうなんだ」

 

 それはとっても楽しみ。でもお兄さんの方の表情がちょっとだけ引きつったように見えたけど、大丈夫かな。

 

『さらりとハードルを上げるリポーターの鑑』

『鬼だ。鬼がいる……』

『かわいい顔してやることがえげつない……!』

 

 ん。お兄さんとおじさんには頑張ってほしい。

 少しして、大きめの丼が私たちの目の前に置かれた。

 具材は三種類だけの海鮮丼だ。具材の半分はサーモンといくらで、もう半分はトロ、かな? 見た目だと私はまだ判別できないから、多分だけど。

 

「これ、サーモンとトロ?」

 

 目の前にいたおじさんに聞くと、おじさんはすぐに頷いて答えてくれる。

 

「そうです。サーモンとトロになります。是非ご賞味ください」

「こちら、醤油もお好みでどうぞ。最初は少なめをおすすめします」

 

 お兄さんがお醤油を渡してくれたので、少しだけかけておいた。ちょんちょん、と。足りなかったらもう少しね。

 お箸を手に取って、早速食べる。海鮮丼だから、下のご飯と一緒に。

 んー……。美味しい。サーモンもトロも、とても濃厚な味わいだ。ご飯によく合ってる。いくらはぷちぷちした食感が楽しいね。少しだけかけたお醤油もほどよいアクセントになってる。

 

「ん。美味しい」

「ありがとうございます」

 

 個人的にはお寿司の方が好きだけど、こういうのも悪くないね。うん。これも好き。

 

『海鮮丼いいなあ』

『トロの海鮮丼とかマジで贅沢』

『大トロの海鮮丼とか食ってみたい』

『今のうちだぞ……年とると大トロはこってりしすぎになるから……』

『お、おう』

 

 大トロが苦手な人もいるらしい。味、じゃなくて体質の問題みたいだ。大トロ、美味しいけどこってりしすぎだからね。辛い人もいるかも。

 リポーターさんの方は、海鮮丼のレビューをテレビカメラへと伝えてる。私と違って、言葉巧みに伝えてるね。これがプロなんだろうなあ。すごい。

 

「私には無理だね。うん」

 

『リタちゃんは言葉じゃなくて表情で伝えてるから』

『表情は薄いのに、すごく美味しそうに食べるのは器用だと思う』

『ある意味それもまたプロだよ』

 

「ん。魔女なんだけど」

 

『いや草』

『そういえば魔女だったなw』

『え? メシテロのプロでしょ?』

『いやちが……ちが……ちがわない……?』

 

 ん。さすがに怒るよ?

 美味しかったから、すぐに食べ終わることができた。ごちそう様でした。

 リポーターさんも食べ終わったみたいで、休憩してる。私と目が合うと、にっこりと笑顔になった。

 

「リタさん、いかがでしたか?」

「ん。すごく美味しかった」

「ありがとうございます。ちなみにこちら、番組で使わせてもらっても……?」

「ん。大丈夫」

「ありがとうございます!」

 

 そう言って、リポーターさんだけじゃなくて、テレビの人たちみんなが頭を下げた。とても大げさだけど、断られるかもと思ってたのかな。今更だから好きにしていいと思ってる。

 それじゃあ、満足したし、そろそろ帰ろうかな。

 そう思ってたんだけど、

 

「少しいいですか?」

 

 声をかけてきたのは、おじさんだ。いつの間にか、手にはカメラを持ってる。おじさんは、多分笑うのに慣れてないんだろうね。なんだか変な笑顔を浮かべながら言う。

 

「よければ写真いいでしょうか。できれば飾らせてほしいなと」

「親父!?」

 

『ちょwww』

『最初のかっこいいと思った俺の気持ちを返せw』

『食べ終わったしもういいか、かなw』

 

 ちょっと予想外だけど、もちろん問題ない。私は席を立つと、噴き出しそうになってるリポーターさんに、おじさんとお兄さんと一緒に撮ってもらった。

 

「ありがとうございます。よければまた、ご来店ください」

「ん。とても美味しかった。ありがとう」

 

 最後にお店にいるみんなに手を振って、転移でその場を後にした。

 

 

 

 転移先は森のお家の中、じゃなくて、ギルドマスターの部屋の前。ミトさんはまだ勉強中だろうから、邪魔したら悪いかなって。

 ドアをノックして少し待つと、どうぞ、と声が届いた。ドアを開けて中に入る。ギルドマスターさんとミレーユさんがソファに座って待っていた。

 

「待っていましたわ、リタさん。紹介状を書いておきました。この通りに書いてくださいませ」

「ん」

 

 テーブルの上にはミレーユさんが書いてくれた手紙と、白紙の便せん、それに封筒。白紙の便せんにミレーユさんが書いてくれたものをそのまま書き写していく。とても楽だ。

 

「内容も確認しておいてもらえますか?」

「ん……。大丈夫、と思う」

 

 変なことは書いてない。自己紹介と、弟子との関係、その弟子の能力、そして学園で学ばせてほしい、という内容。これ以上は私が考えても出てこないと思う。

 そもそもとして紹介状に何を書けばいいのかすら私には分からないから。

 さっと書き写して、封筒へ。

 

「これでいい?」

「ええ、大丈夫ですわ。わたくしの妹も夕方に来るのでもう少しお待ちくださいな」

「ん」

 

 ミレーユさんの妹か。魔法使い、なんだよね。どんな子かちょっと楽しみだ。

 

『ロリお嬢様かな?』

『ちっちゃいミレーユさんが出てきたりしてw』

『それはそれでおもしろそうw』

 

 みんなはみんなで好き勝手言うね。私も気になるからいいんだけどね。

 




壁|w・)控えめにぴすぴすしながら写真撮影をした……かもしれない。

明日は金曜日なのでお休みです。
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