異世界魔女の配信生活   作:龍翠

88 / 542
異世界の保存食

 

 お昼頃。すでに森を抜けて、広い草原になってる。木もところどころにあるけど、見晴らしは良好。ここで少し休憩していくらしい。

 フランクさんたちが周囲を警戒している間に、同行者の人が馬車から出てきて準備を始めた。

 ちなみに護衛以外の同行者は六人。御者台に座ってる三人も含めてだけど、これは多いのかな、少ないのかな。ちょっと分からない。

 

 その六人は手際よく準備をしていく。折りたたみの椅子を二つ取り出したのは、ミリオさんとエリーゼさん用かな。貴族だしね。あの六人は特に座ることはしないみたい。

 さらに火をおこして、お湯を作る。お茶か何かにするのかな。

 

『はえー。こういう時魔法って便利だな』

『火起こしを魔法、水を出すのも魔法、すげえ』

『一家に一人リタちゃん』

 

「なんで?」

 

 私を巻き込まないでほしい。魔法使いがいてほしいっていう意味合いっていうのは分かるけど。

 ご飯は……、なにあれ。

 

「フランクさん」

 

 見たことがないから、少し離れた場所で警戒中のフランクさんに声をかけた。

 

「ん? どうした?」

「あの人たちが食べてるのって何?」

 

 私が指さしたのは、休憩中の八人が食べてるもの。なんだろう、なんか、大きいチョコバーみたいなもの。しかもそれぞれに色があるみたい。なにあれ。食べ物、だよね?

 

「ああ……。魔法で作った保存食だよ」

「魔法で……」

「そうだ」

 

 フランクさん曰く、お肉とか野菜とかを集めて、魔法でぎゅっと固めて保存魔法をかけたものらしい。簡単な魔法で解除できる保存魔法らしくて、食べる時に解除するんだとか。

 色が違うのは味だって。味の元になる果物とかを多く入れると色が変わるらしいよ。

 

『異世界の保存食かあ……』

『興味あるけど、正直見た目はまずそう』

『作り方が適当すぎてなんとも……』

 

 なんというか、すごいね。一度食べてみたいような気もするけど、後悔する気がする。すごく。

 そんなことを考えていたら、ばきりと何かを引きちぎる音が聞こえてきた。

 

「ほら」

 

 フランクさんが差し出してきたのは、その保存食だった。

 

「食べてみるか?」

 

 渡されたのは、一口サイズの紫色の、それ。んー……。

 

「もらう」

「ああ」

 

 受け取って、口に入れる。そして、噛んで……。

 

「…………」

 

『リタちゃん感想は?』

『美味しい? 不味い? どっち?』

 

「にちゃってしてる……」

 

『うわあ……』

 

 味はそんなに悪くない。ちょっと甘めの何かの果物、だと思う。

 問題は食感だ。なにこれ、なんかすごいにちゃってしてる。いや、にちゃあってしてる。口全体に張り付いてくるような、ねばねばな感じ。気持ち悪い。

 思わず渋面を浮かべていると、フランクさんが笑って言った。

 

「食感が最悪だろ? 固めたって言ったけど、ぐちゃぐちゃに混ぜただけだと思うよ。でも保存食としては悪くないからなあ……」

 

 料理とかだと場所を取るからね。この形のこれが、魔法で保存しやすいのかも。食感は最悪だけど。私もこれはもういらない。

 自分で水を作ってそれを飲んでいると、フランクさんが少し迷いながら口を開いた。

 

「ところで、嬢ちゃん。結局ゴブリンはどうやって倒したんだ?」

「ん。これ」

 

 聞かれたので、魔法を使う。杖で地面を叩くと、そこから黒い影が地面の中に潜っていった。そして少し離れたところで飛び出す、獣の口の形をした影。

 

「あれで丸呑み。その後に武器を吐き出す。静かで目立たない便利な魔法」

「…………」

「フランクさん?」

「なんでもないさ……」

 

 うん。これ分かる。どん引きってやつだよね。

 

『いや普通に怖いわこれ』

『これが初見殺しってやつか』

『リタちゃん、もうちょっと分かりやすい魔法でもいいと思うんだ』

『主にその場に居合わせる人の精神衛生上』

 

 ん。見られるわけじゃないから、別にいいでしょ。

 フランクさんにもそう言うと、なんとも言えない表情になってしまった。なんでかな。

 

「それじゃ、フランクさん。私はまた屋根の上にいるから」

「そうか? 昼飯は?」

「ん。いらない。野営の時までは周囲の警戒と敵の排除に集中する」

「了解だ。何かあったらいつでも言えよ」

「ん」

 

 私は頷いて、幌馬車の屋根に戻った。

 さて。

 

「まずは馬車の周囲に認識阻害。よし。次に、分身の魔法」

 

 手で自分の影を叩くと、影がぐねぐねと動いて、そして飛び出してくる。真っ黒な影はすぐに私そっくりに変身した。

 

「ちなみに実際に影を使ってるわけじゃなくて、ただの演出だって。師匠が言ってた」

 

『あのバカ何やってんだよw』

『すごい魔法だとは思うけど、くだらない部分にこだわるなw』

『まあもう言えないんだけどな』

『言うな』

 

 ん。そう、だね。

 作った分身はこのままだと何もしない、人形みたいなものだ。だから魔法でこの分身を動かすプログラムを仕込む。もちろんそんなに複雑なものじゃなくて、魔獣や盗賊などの敵を見つけたら自動で攻撃する、というもの。

 そしてもし会話を求められた時のために、私からもある程度動かせるようにしておく。これが一番大変だけど、私が日本に行く時は精霊様が魔力を繋げてくれるらしいから、きっと大丈夫。

 そうしてできあがったのは、敵を自動で迎撃する私の分身。これなら大丈夫のはず。

 

『リタちゃんが増えた!』

『リタちゃん一人ください』

『俺も! みたらし団子を出す!』

『こっちはカステラだ!』

『競売かな?』

 

 何か嫌な予感がするから絶対作らない。

 準備ができたところで、認識阻害を解除してから精霊の森のお家に転移した。

 




壁|w・)分身ちゃんは一切喋らず、ただひたすらに敵を屠ります。ばくばくっ!

Q.なんでや! ゴブリンさん歩いてただけやろ! ひどい!
A.リタ「ん(興味なし)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。