からくりサーカスパロ・クラウディア序章   作:ネコシマれーな

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クラウディア からくりパロ #3
クラウディア~03◆失敗を恐れぬ男
1,027文字2分
からくりサーカスパロディジョージギィフェイスレスのらへらあず阿紫花英良スタントマン


クラウディア~03&4◆失敗を恐れぬ男からの勧誘

映画クラウディアの撮影現場。

フェイスレス監督は何人ものスタントマンを用意した。

ギィも一緒だった。

今日は只のカースタント。

爆発を擦りぬけて上手く後部座席のみを破壊させ、スピンして止まる、それだけのこと。

ギィが笑っている。

 

  ギィ:「今日は失敗しないで欲しいな」

ジョージ:「……」

 

ギィは百戦錬磨のスタント。その腕は業界の誰もが認める。

ジョージラローシュ、それはこの私の名前、この名前は表に出されてはイケナイ名前。

フェイスレス監督の撮影のみに使われるスタントマン。

彼の取り計らいにより肉体の再生能力を持つように改良された、それだけのスタントマン。

私が演(スタント)してイイのは死ぬシーンだけなのかもしれない。

 

  ギィ:「自分の身体もうちょっと大事にしなよ。資本だと思わなけりゃ」

ジョージ:「…わかっている」

  ギィ:「分かって無いから言ってるんじゃないか、わからずや」

ジョージ:「わからずやだからわかっていると言ったんだ」

  ギィ:「わからずやだからわから無いんでしょ」

ジョージ:「わからずやってのはわかっているのにわからないフリをするヤツのことだろう」

  ギィ:「屁理屈ー…」

ジョージ:「なんとでも言え」

  ギィ:「そんじゃぁハゲ」

ジョージ:「……関係あるのか…」

  ギィ:「うーん。ないね多分。でもハゲだね。かんっぺきにハゲだね、それも怪しいほうのハゲだね」

ジョージ:「…それじゃお前は怪しいほうのマザコンだ」

 

と、まぁこんな感じでギィとは余り仲がよろしくない。

 

そんな会話の直後のスタントだったからだと思うんだ。

また、私は失敗した。

身体半分が吹き飛ぶような感触に襲われて。

気がついたらベッドの上。

 

  ギィ:「あーあー。あいかわらずだね」

 

ギィは私にそう言い残して処置室を出ていった。

失敗を恐れるなとはよく言った物だ。

失敗を恐れなければ失敗する、それが本当なのでは無いか、などと…

そんなことを考えていた矢先にその男は私の元を訪れた。

ベッドに座りこんだ私の背後から声をかけてきたその男の名前は阿紫花。

この映画の中心となるクラウディアという女性型の時計を製作した男だ。

 

その男は私の身体を見ても驚かなかった。

それを知っても驚かなかった。

妙な男だ。

 

アレほどまでに美しい時計を作った男だとは到底思えぬ容姿。

 

その男を見た時に私は直感した。

この男は

…失敗を恐れない。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

バーのカウンターで一人。

こんな気分の時は飲むに限る。

ざわざわと騒がしい店内のカウンターの向こうの

ブラウン管の中で名も知らぬ女が忙しそうに踊っている。

特にどうってこと無い女だ。

肌の露出も多いし只バタバタと騒々しければイイってもんじゃない。

やはり女ってのはだな、こう、おとなしめで母親的な包容力があってこそ女なのだ。

そう、言いうなればマリア、言うなればクラウディア…

 

ジョージ:「…少々酔ったか…」

 

ペチペチと額を叩いて、大きな溜め息をつくと

もう一度ブラウン管に目をやり、酒のグラスに手をかける。

ぽちゃん。

 

ジョージ:「……」

 

指先の感触に目を落とすと、ダイレクトに酒に指が浸っていた。

マスターが口を歪めて目をそらす。

…ほっておけ。

 

指の水滴を無造作に払ってグラスを手に取り煽る。

…不味い。

実は酒は苦手…なんてことは人に言ったことも無いが、短に酔う為の手段として私は扱っている。

実は酒は全て石油から作られてるんだと思ってたなんてのはギィだけが知っている事実で。

あの男、私をいつも馬鹿にする。

どうせ馬鹿にされる程度の人間だよ。

ふん。

 

頬杖をついてもう1度ブラウン管を見上げる。

番組はいつのまにか変わっていてル・マンの最中だった。

車の動きに目が釘漬けになる。

無意識に手にかけようとしたグラスが倒れた。

空のグラスが横倒しになり、指にふれたのは冷たい氷の感触。

ブラウン管の中の車。

指先の感触。

タイヤの動き。

 

ジョージ:「…冷た…」

 

…反応が遅い?…昔からだ。

 

 

不意にゴッドファーザーの音楽が私の耳にとどいた。

?と思ってブラウン管により注意を向ける。

エンジン音と、無意味なシンセサイザーのアップテンポな曲。

解説の男が早口にまくし立てるが言っている事は常に同じ。

 

 

マスター:「あのぅ、携帯鳴ってます」

ジョージ:「…あ。ああ。し、知ってたぞ」

マスター:「そうですか、コレは失礼」

 

慌ててカウンターの上から携帯を取り上げるとその場を離れた。

…あー、そうだよ照れくさかったからだよ。

 

着信の相手の名前は表示無し。

旧型の携帯だから仕方が無い。

 

ジョージ:「…」

 

耳に当てるとゴッドファーザーが耳元で鳴り響いた。

慌てて耳から離してもう片方の手で耳を押さえる。

目だけで当たりを見まわして誰も見ていなかったことを確認すると、

乱雑にボタンを押して着信する。ゴッドファーザーが鳴り止み、携帯の向こうで声がした。

 

ジョージ:「はい」

 ???:「あーよかった、でねぇのかと思いましたよ」

ジョージ:「…誰ですか」

 ???:「阿紫花ですよ。ア・シ・ハ・ナ。今日はどうも」

ジョージ:「何故私の携帯の番号を…」

 阿紫花:「いえね、監督さんにお聞きしたんですが…今暇ですか」

ジョージ:「取り込み中だ」

 阿紫花:「そうですか、そんじゃ二時に”DHR”でお会いしましょ」

ジョージ:「……」

 

人の話を聞かない男だ。

無視してもう一杯…

DHR?

きょろきょろとあたりを見まわす。

二時?

携帯の着信を確認する。

 

 阿紫花:「お待たせしやした!待ちました?」

 

げんなりして振り向くとニヤニヤしている阿紫花の顔。

 

 阿紫花:「”DHR”に」

 

床を指差して。

 

 阿紫花:「二時、ね」

 

自分の時計を提示して。

私の腕をちらりと見て。

 

 阿紫花:「時計お持ちで無いんで?」

ジョージ:「邪魔になるから時計はしない」

 阿紫花:「だからスタント失敗するんじゃねぇんですか」

ジョージ:「……余計なお世話だ!」

 

人の波を掻き分ける様にして扉へ向かう。

扉の前の男に紙幣を握らせて目もくれずに店を出る。

気分が悪い。

車の前で立ち止まり、それにもたれ掛かって後ろを見ると、街灯にシルエット。

 

 阿紫花:「…扱いずらいですねェ…こっちはやめときますか。

      そうするとギィに…ってことになりやすねェ」

ジョージ:「ギィ?なんの話だ」

 阿紫花:「アンタ、興味ありますか。クラウディア」

ジョージ:「…」

 阿紫花:「ギィに聞いたんと同じ質問をアンタにしやす」

ジョージ:「…答える義務は無い」

 阿紫花:「答えないってのも答えですからね、そんじゃ行きますよ」

ジョージ:「……」

 

パン、とポケットから出した皮の手袋に覆われた両手を合わせて音を立てる。

そのまま両手を握りこんで、咥え煙草の顎をちょいと反らしながら。

 

 阿紫花:「一番好きな車種は」

ジョージ:「……」

 阿紫花:「ない、と。そんじゃ…」

ジョージ:「コレだ」

 

溜め息一発、自分の背後の車を顎で提示する。

 

 阿紫花:「コレ…ホンダのCR-Xデルソルですかい?これは兄さンの車で?」

ジョージ:「そうだ」

 阿紫花:「…アンタが日本車?」

ジョージ:「悪いか。日本車だが信頼性は低い。ドイツ車並だろうなホンダは」

 阿紫花:「うわ、聞き捨てなりやせんね。どう言う意味で」

ジョージ:「低くしたと言った方が良いんだろうな」

 阿紫花:「は?」

ジョージ:「興味は無いのだろう、質問が終わりなら私は…」

 阿紫花:「エンジンは?」

ジョージ:「インテRのZCの縦置き」

 阿紫花:「……入りきるんですか」

 

カタン。

黒い外装からまったく見えなかった内部が扉を開くことによって曝け出された。

運転席側のすぐ後ろにタービンが見える。

 

 阿紫花:「…よく分かんねぇんですが…スゲェことは確かな様ですね」

ジョージ:「勝手にミッドにしたから…本当なら…」

 阿紫花:「本当なら?」

ジョージ:「いいや」

 阿紫花:「違反車ですかい」

ジョージ:「違法改造車と言ってくれ」

 阿紫花:「同じですよ」

ジョージ:「言葉の厚みが違う」

 阿紫花:「変な人ですネェ。そんじゃ次の質問…」

ジョージ:「まだあるのか」

 阿紫花:「酔い覚ましにイイでしょ。仕事は好きですか?」

 

パタン、と開いたままだった扉を閉じて。

もう一度それにもたれて街灯を見上げる。

 

ジョージ:「話をするならもう少し近くに来たらどうだ」

 阿紫花:「お言葉に甘えて」

ジョージ:「……」

 

コツコツと響く革靴の音。

睨みつけても立ち止まらない。

そのまま目の前までやってくる、それまでのハラハラする感触。

 

 阿紫花:「仕事はお好きですか?」

ジョージ:「…何故聞きたい」

 阿紫花:「アンタを探ってるんですよ」

ジョージ:「なんの為に」

 阿紫花:「アタシの楽しみの為に」

ジョージ:「楽しいのは予測できないからだろう」

 阿紫花:「なるほど。そりゃそうですね、そんじゃ次の質問で」

ジョ-ジ:「今の答えは要らないのか」

 阿紫花:「答えたも同然ですよ」

ジョージ:「何故そう思う」

 阿紫花:「仕組まれた予定よりも予測不可能な一瞬先がお好きなんでしょ」

 

そういって、阿紫花が笑った。

何もかもお見通しって面だ。

気に入らないと言うより、なんだかむず痒い。

 

 阿紫花:「質問、イイですかい」

ジョージ:「ああ。」

 阿紫花:「クラウディアは…」

ジョージ:「好きだ」

 阿紫花:「ははっ、なるほど、読まれてましたか」

ジョージ:「読んだんじゃない、賭けたんだ」

 阿紫花:「最後の質問」

ジョージ:「ああ」

 阿紫花:「この質問はギィさんにはしてやせん」

ジョージ:「何故だ?」

 阿紫花:「意味が無いと思いましてね」

ジョージ:「そうか」

 阿紫花:「ジョージさん」

ジョージ:「なんだ」

 阿紫花:「アタシと組みませんか」




つづくよw
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