全ては幻想郷のために   作:nyagou

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本作品は『東方project』の二次創作です。原作に作者の発想、解釈を加えたものになります。その点ご了承ください。


咲夜の過去

十六夜咲夜は元々外の世界の住民だった。本来は「十六夜咲夜」という名前ではなかったらしい。

 

咲夜の家は代々聖職者を輩出しており、咲夜もそうなるはずだった。咲夜は家族に囲まれて愛情たっぷりに育てられた。

 

しかしそんな平穏な生活は突然に崩れ去ることになる。

 

ある日、幼い咲夜はいつもの神へのお祈りも済ませ、木の下で休んでいた時だった。

 

(お前に決めた)

 

「え?」

 

どこからともなく声が聞こえた。

 

(ここだよ、ここ)

 

目を凝らしてみると微かに霊のようなものが咲夜の目の前にいた。

 

(お前に私の力を全て託す)

 

「え?何?どういう事?」

 

(私にはもう時間がない。じきに消えてしまう)

 

「天国に行けずに困ってるの?じゃあ、お父様に行けるように言ってくるね!」

 

(待ってくれ。私の話を聞いてくれ)

 

「…わかった」

 

(私はこの世界の住民ではない。だから天国にも地獄にも行けない)

 

「…」

 

(だけど私は消えるわけにはいかない)

 

「?」

 

(『あのお方』は強大だ。いつか必ず復活する。その時私がいなければ完全に暴走状態になるだろう)

 

「えー?!悪魔が復活しちゃうの?」

 

(…まあ、そのようなものだ。だから私は自身の体を失い、追放されてもなんとか執念で生きてきた)

 

「…」

 

(しかし、もう限界のようだ。もう一ミリ前に進むのだけでもやっとになってしまった。だからお前に私の能力を譲る。自力であの世界へ向かうのは難しいだろうが…何もしないよりはマシだろう)

 

「…何だかわかんないけど、わかった。私がやってみる!」

 

(よく言った。さあ、もう時間がない。手を前に出してくれ)

 

咲夜は手を前に差し出した。

 

(今から能力を渡す。これから先、大変になるだろうが、…頑張ってくれ。能力は「時を操る程度の能力」だ)

 

咲夜の周りに光が満ちる。そしてゆっくりと弱まっていった。

 

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「お母様!ただいま!」

 

「あら、おかえり。どこいってたのよ?すっかり心配してたのよ」

 

「それよりも見てよ、お母様!こんなことできるようになっちゃった!」

 

「何なに?…まあ!」

 

たった今まで勝手口にいた咲夜がもうリビングの椅子に腰掛けている。

 

「あれ!あれ!ちょっとあなたー!」

 

母親が書斎にいた神父の父親を連れてきた。

 

「何だよ、一体…わっ!」

 

父親はリビングにいた咲夜があっという間に自分の前に出てきたことに驚いている。

 

「これね、さっき天使様にもらった力なの!」

 

「「え?」」

 

「天使様がね、悪魔をやっつける力だーって言ってたよ!」

 

「ふーむ…にわかには信じがたいが…現に出来てるしなあ」

 

「神の御加護…なのかしら…?」

 

「…わからんが…まあ、とにかくめでたいことだ!これからはその力で皆を幸せにするんだぞ!」

 

「うん!わかった!」

 

咲夜が神の御加護を賜ったという話は村中に知れ渡った。

 

だが、これを快く思わない連中もいた。

 

村の上層部である。

 

今まで教会に重税を強いてきたが、咲夜の存在によって住民からの非難が相次ぐようになり課せられなくなったのだ。

 

そこで恐るべき一計を案じた。

 

それは咲夜を「魔女」として政府に報告し、「教会が身内なのをいいことに魔女を匿っている」として軍隊に教会を攻撃するよう要請したのだ。

 

「早く逃げろ!まだ教会を囲みきらないうちに!」

 

「お父様!お母様!」

 

「早く逃げなさい!キャッ!」

 

母親の足に矢が突き刺さる。

 

「絶対に…生き延びるのよ…神の御加護を賜ったのだから…!」

 

「お母様あああ!」

 

咲夜は懸命に逃げた。追いかけてくる兵士は教会から持ってきたナイフと能力を駆使して倒した。なんとか都市の雑踏に紛れ込めた頃にはかつての幼い、純真な咲夜ではなくなっていた。

 

「天使が何よ。結局こんな力をもらったせいで…こんな世界なせいで…お父様とお母様が死んじゃったじゃない!憎い…憎い…この世界の人間が憎い…!」

 

それからはもう神のことは考えなくなった。夜になっては持ち物を奪ってその日を生きるため、通行人を殺してまわるただの殺人鬼に成り果てた。皮肉にも能力のおかげで至って楽なことだった。

 

そんな生活をしていた矢先のことだった。レミリアに出会ったのは。

 

「こんばんは」

 

「こんばんは」

 

「ちょっと尋ねたいことがあるのだけど…」

 

「いいもの持ってますね」

 

「ああ、この帽子?そりゃ安物ではないけど…」

 

「じゃあ死んでください」

 

「は?」

 

いつも通り、時を止める。ナイフを喉元目がけて投げつける。そして時を動かすー

 

「面白いわね、あなた。妖怪なの?」

 

「えっ」

 

レミリアは宙に浮いていた。運命を見て未来を予測し、動き出した瞬間に上に飛んだのだろう。

 

「500年近く生きてきたがこんなことは生まれて初めてよ。あなた、人間じゃないでしょう?」

 

「…人間です。人間は嫌いですが」

 

「ほほう…妖怪は?」

 

「…わかりません。今まで会ったことないので。…けど私は妖怪のような人間なので仲良くできるかもしれません」

 

「ふうん…決まりね。うちにきなさい。妖怪だらけの世界の中にある妖怪だらけの館だけど少なくともこんな生活よりはいいでしょう」

 

このようにして咲夜は幻想入りした。レミリアに「十六夜咲夜」という名前を与えられ、やがて紅魔館のメイド長になりー今に至る。




原作では咲夜の過去は全く明らかにされていません。完全にニャーゴの妄想です。戦闘まで含めてもよかったのですが今度はどこで切ったらいいかわからなくなったのでここで切りました。ご了承ください。
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