「全ては幻想郷のために!!」
霊夢は大幣を構えて臨戦体制に戻る。
その殺気は圧倒的に優勢を保っている敵でも威圧するには十分なほどだった。
「ふん…さすがは博麗の巫女だな」
陽炎の顔に不敵な笑みが戻る。
「例のものは?」
「はっ、ここに」
部下が鏡のようなものを差し出す。
「博麗神社の大樹の根元とは八雲も考えましたね」
「こそ泥風情の妖怪には釣り合ってる隠し場所だな」
「無視してんじゃないわよ!」
霊夢が啖呵を切る。
「それを何に使うのか知らないけど、あんたらの幻想郷の支配するという思想は危険!例え死んででもあんたらを止める!幻想郷を守ってみせる!」
「そうか…では今・は・我々には協力しないと?」
「当然!」
「ならばここまでかな…」
「「「「え?」」」」
霊夢のみならず部下も驚いた。
「何をおっしゃるのです?確かに計画はまだまだこれからとはいえ博麗の巫女は重要因子ですよ!殺しまではせずとも拘束ぐらいは…」
「もう試したことがある」
「?!」
「だが失敗した。どうやらあくまでも本人の自由意志に基づいて我々に協力することを強制する必要があるらしい…」
(何言ってるのかしらこいつ…?私は今まであんたらと会ったことすらないのに…)
「鏡を手に入れただけでも重要な成果だ。退くぞ」
「ま、待ちなさい…」
追おうとする霊夢。しかし限界がきたのか、そのまま倒れ込んでしまう。
「くれぐれも死ぬなよー博麗の巫女」
暗くなっていく視界の中、何でかそんな言葉が聞こえた気がした。
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「はっ!」
霊夢が目を覚ましたのはベッドの上だった。
「お師匠様ー、霊夢が目を覚ましたよー!」
目の前には白い天井。
(ああ、ここは…)
永遠亭。幻想郷の病院的役割を担っている。そこに担ぎこまれたようだ。
「久しぶりね、霊夢。まさか患者としてくるとは思わなかったけど…。とにかく無事で何よりだわ」
永遠亭の院長の八意永琳がやってきた。
「どこらへんが無事なのよ」
「命あったんだから無事でしょ」
「人間じゃ腹に物体が貫通してるのは無事とは言わないのよ」
「もう治しといたわよ」
「はあ…これだからもう…」
返す言葉が見つからない。
「とはいえ、絶対安静にしとくのよ。人間なんだから」
「…魔理沙は?」
すっかり忘れていた。陽炎とかいうやつに撃墜されて…そこからどうなったの?
「魔理沙もここにいるわよ。別の病室にいるけど。」
「よかった…」
「他人の心配するなんて珍しいわね」
「うっさい」
「まあ、私はまた通常業務に戻るわ。詳しいことは鈴仙から聞いて頂戴」
永琳は病室を出ていった。
「それじゃあ説明するわねー」
さっきからずっとそばにいた鈴仙が説明を始めた。
発見者は射命丸文。文屋だ。いつものごとく新聞のネタ探しに博麗神社を訪れたところ、傷だらけで倒れている霊夢と魔理沙を発見。困惑(+好奇心)で頭の中がいっぱいになりそうになりながらも幻想郷最速を謳われる文の速力でそのまま永遠亭に担ぎこまれた。魔理沙は弾幕をくらっただけだったが霊夢に至ってはレーザーと尖った何かが胴体を貫通した跡があり、一時出血多量により生命の危機を彷徨ったが偉大なるお師匠様(「偉大なる」は鈴仙が勝手につけた)の治療の効果もあり、手術に成功したが3日間眠り続けてー今目を覚ましたとのことだった。
「やれやれ、すっかり世話になってしまったようね」
「いやー、担ぎこまれた時はほんとどうなるんだろって思ったわ。こっちも紫様の指令で永遠亭の周りを厳戒態勢で固めたりとか色々大変だったのよ?あんなにぼろぼろになった霊夢なんて始めて見たしね。まあ、こうして意識が戻って来てくれて何より。私からの説明は以上よ。今度はそっちから一体何が
「失礼するわよ」
「あ、ゆ、紫様?!」
紫はどうやらずっと病室の外で待っていたようだ。
「少々席を外してもらえるかしら?」
「は、はいっ!」
足早に病室を去る鈴仙。
「一体何があったの」
急激に重苦しくなった雰囲気の中、紫が口火を切った。
「現場を見させてもらったわ。明らかに一方的にやられたわね、貴方達。敵の弾幕の跡がほとんど見当たらなかったわよ」
「…」
「一応表向きにはあなたと魔理沙の喧嘩ってことで文屋にも口封じをしといたけど…あなた最近修行怠けすぎだったんじゃないかしら?」
「ぐっ…言うわね…」
「それで?どんなやつだったの?首脳にも共有する必要があるかもだから詳しく教えなさい」
「…敵は4人。首領と思われるやつがガスマスクをしていてそれ以外は面を被ってた。全員軍服よ。あと幻想郷を支配するとか言ってたわ」
「うーん…曖昧ねえ。なんかこうもっとインパクトのある情報はない?」
「インパクトって…ガスマスクしてるだけでも十分インパクト強いでしょ!」
「じゃあー例えば…種族とか名前とか?」
「いやー?特にこれって聞いてーあっ!」
「何?何か思い出した?」
「陽炎よ!」
「え?」
「首領の名前!あいつら私が倒れてるのをいいことに話し始めやがったの。その時にたまたま聞こえたわ。あー、今思い出しても腹が立つ!」
「陽炎…ですって?!」
「ええ、そうよ。それがどうしたの?」
「いや、なんでもないわ。もう十分よ。…このことは他言しないようにね。博麗の巫女が敗北したなんて聞いたら人里ーいや、幻想郷が崩壊するわ」
「ん?んー…わかった」
紫は病室を後にした。
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「お帰りなさいませ、紫様」
紫の屋敷で式神である藍が迎える。
「どうでしたか?霊夢の容体は?」
「まずまずというところかしら。あと5日もすれば歩けるでしょう。さすが永琳ね。それよりも事態の方がずっと深刻よ」
「何事です?そこまで霊夢を打ち負かした相手がヤバかったのですか?」
「…『天空派』が復活した!!」
【八意永琳】種族:月人 能力:あらゆる薬を作る程度の能力
永遠亭の実質的な主人。幻想郷首脳でもある。普段は病院としての経営をしており、異変時には弟子の鈴仙を霊夢の仲間に加えたり、薬を作って援護したりする。自身でも異変を起こしたこともある。
【鈴仙】種族:玉兎 能力:狂気を操る程度の能力
正式な名前は「鈴仙・優曇華院・イナバ」。師匠の永琳を筆頭とする永遠亭勢と同居人の「因幡てゐ」を筆頭とする地上の兎との間の中間管理職を担っており色々大変そうではある。
【射命丸文】種族:鴉天狗 能力:風を操る程度の能力
新聞を売ることを生業としている。移動速度は幻想郷最速であるが自分から言ったことはない。ネタがあるとなれば即座に飛びつくメディア魂の持ち主。今回も口封じをされたとしているがどう動くかはわからない。