この鏡は上等な奴じゃねぇか…』
〈そりゃそうですよ!ここは元神社。上質なものが奉納されるに決まってるっす!〉
『ここは神社だったのか…?それって罰が当たるんじゃ?』
〈そんなわけないじゃないですか~!ここは管理されなくなってもう40年も経ってるんですよ?神様も居ませんって!〉
『それもそうだな…。よし、持っていくか!』
〈そうと決まったら早く逃げだしましょう!人が来ちまう前に!!〉
『おう!』
(私は…どこに連れて行かれるの…?怖いよ…姐様、助けて!!)
〈ここです!ここの質屋が高く買い取ってくれるんですよ~!〉
『行ってみるか!』
【この鏡…どこから持ってこられたので?】
『これか?我が家に代々伝わる家宝なのだ!綺麗だろ?』
【そうですね…背面の細工も非常に成功で美しい…これならば…このくらいになりますね】
店主は慣れた手つきで算盤をはじくと額を掲示した。
『こんなに高価でいいんですか?!』
【もちろん。こんなに質のいいものはそうそう出てこないので、此方としても喉から手が出るほど欲しいのです。】
(嫌だよ…姐様のところに帰りたい…!!!)
『それじゃこの額でよろしく!』
【かしこまりました。】
それから幾千の時がたち、様々な人の手に渡るにつれ、
(姐様のもとに帰らなくちゃ!)
という思いが強まり、気が付くと人間の姿をとることが出来るようになりました。最初のうちは不安定なもので、ちょっと人化すると2週間ほどは寝込んでいました。
その間にとある人に拾われました。
〔なんじゃこの鏡は…。すごく綺麗じゃ。こんなに素敵な鏡を誰かが捨てたのじゃろうか?可哀そうに…家へ持ち帰って家宝にしよう。〕
そういうとその人は桐箱の中にしまうと、蔵の中へ大切に保管しました。
「ん…?あれ、開かない?なんで?!」
その中の鏡は付喪神となっており、人化出来ると知らずに。
「私が眠っている間に閉じ込められちゃった?!」
何度も何度ももがいて抜け出そうとするもしっかりと紐で縛ってあるようで蓋は開きません。
「ここから…出られないの…?姐様に会えない…?」
そのことに気づくと同時に襲ってきたのは、絶望感でした。
なんとか出られないものかと考えているうちに月日は流れ、当時は大正と呼ばれていた時代から、令和と呼ばれる時代になりました。
《もう、なんでひいおじい様の遺品の整理を私たちが…》
[ごめんね…。おじい様が触るなっておっしゃっていたからなかなか整理出来なかったのよ…。でも、この蔵も経年劣化が進んで危ないから修繕工事をしないといけないのよ。だから手伝ってね?]
《は~い…。》
「誰?!誰かそこにいるの?」
人が寄り付くことはなくなっていたこの蔵に久しぶりにやってきた人の気配を感じ声を出しました。
《…ねぇお母さん。何か…聞こえなかった?》
[なにも聞こえなかったわよ?怖いこと言わないで頂戴。]
《…絶対聞こえたはずなのに…》
「ねぇ、気づいて!!助けて!」
《やっぱり何か聞こえる!こっちこっち!!》
[えぇ~。そこにはおじい様が生涯大切にしていた鏡しかないわよ?]
「助けて!!ここから出して!!」
《ほらこれから聞こえてくるよ!開けてみよ?》
100年以上も暗い空間にいた彼女は、突然指してきた光に目を細めつつ、人化をしました。この長い間に人化を維持できるようになっていた彼女は助け出してくれた人と対面したのです。
《え…?あなたはだれ?》
「私?私はこの鏡の神、華鏡よさりです。もとはとある神社に祭られている神様に奉納されたのですが、長い年月を経て気が付くと盗み出されて今にいたります。皆さんは、丹比琴絵之尊姫という神をご存知でしょうか?」
《[か、神様?!]》
「はい。皆様の世界では付喪神と言います。」
《ほんとに神様なんだ…えっと、丹比琴絵之尊姫という神様は知りませんね…》
「そうですか…姐様…今はどこにいるの…?」
姐様の手掛かりは得られなさそうです。ついでに今が何年なのかを聞くと、令和4年6月2日であると教えていただきました。あれから千年以上経っているようなので、わからないのは当たり前ですね…。
《わわわ!ごめんなさい!泣かないで…?》
「え…?」
気が付くと頬を涙が伝っていました。
[ほら、大丈夫ですよ?ここではあれなので、家に行きましょう。]
[粗茶ですが…]
「すみません。ありがとうございます。」
《落ち着きましたか…?》
「ええ。ご心配をおかけしました。」
[まずは…何があったのかお話していただけますか?]
「はい。あれは…」
私は最初に盗人の手に渡ってからをすべて話しました。
「というわけで、お宅の蔵で眠っていたというわけです。」
[なるほど…そうだったのね。]
《あなたは…行く当てはありますか?》
「…恥ずかしながらまったくございません…」
ここがどこなのか、その神社は残っているのかすらわからない以上、行く当ては皆無と言っていいでしょうね。
[でしたら…家の家族になりませんか…?]
「え…?」
[もともとうちの先祖のせいでもありますし…。ここを拠点として頂いてもかまいませんよ?]
《そうですよ~!!うちで暮らしませんか?》
「…ありがとうございます…!!!ほんとうに、よろしいのでしょうか?」
[もちろんですよ!]
《そうそう!!遠慮なさらなくていいですよ!あと…私たちへの敬語は要らないですよ…?》
[そうですよ。庶民の私たちへは必要ありませんわ。]
「ほんとうで…ほんとう?すっごい嬉しい!!これからもよろしくね!あ、あなたたちも敬語じゃなくていいよ?家族だもん!」
《[…わかった!よろしくね!]》
それからというもの、その家族の皆さんの養子として人間界で暮らすことにした。姐様を探しながら。
そんなある日…
「ねぇねぇ、何見てるの?」
《これ?これはVTuberの丹下琴絵さんだよ!》
≪はい!まろじゃよ~!!≫
「姐様?!?!?!」
《え?この人がお姉さんなの?!》
「う、うん…」
《おめでとう!やっと会えたね!》
「うん…うん!!姐様…やっと会えたね…!」
《それなら…連絡とってみる?》
「出来るの?!」
《うん!Twitterで連絡してみるね》
話はすんなりと進み、ついにお話することに…
「あ、姐様…?」
≪よさりちゃんか?!まろじゃよ!覚えておるかの?≫
「もちろんだよ!!!やっと会えた…!嬉しい!!!!!」
≪あの時は守れなくてすまなかった…≫
「そんなことない!私は姐様に会うために頑張ってきて、やっと会えたんだから嬉しい!!」
≪…よさりちゃん…≫
「姐様…」
姐様と積もる話をしているうちに配信者として活動するお話になった。
「私にも…出来るかな?」
≪大丈夫じゃよ!まろが手伝うから!≫
「…わかった!やってみる!!!」
そうして、VTuber 華鏡よさりとして活動することが決定しました。
早くみんなとお話したい!!!!