「貴様の正義など知ったことかぁ!!!!」
「「バカな……こんなっ!!!」」
男は光輝く剣で異形の絶対神ザマスを引き裂いた。
愚かなる人間の前に神の正義は敗北した。
神の禁忌を犯し、時空を越え過去を改変し、挙げ句の果てには忌々しい希望と奇跡の結晶とやらをその身に宿した男に。
人間0計画は順調だった。
手始めに師を殺害し、神の座を手に入れ、願い玉によって神に拳を振るう品性の欠片もない孫悟空の肉体を手に入れ地球人にはゴクウブラックと呼ばれる存在となり、その家族もろとも皆殺しにし、並行世界の自分と手を組みその世界の願い玉によってもう一柱の自分に不死の力を与えた。
そして、全ての宇宙の神々を葬り去り全王の目を欺かせひとつの並行世界に存在する宇宙、それに住まう人間どもを手段を選ばず駆除することが出来た。
二柱の神が合体を果たして、残る最後の人間どもを、美しい惑星から駆除していた。
後一歩のところで人無き美しい世界を創ることが出来た。何もかもが完璧だった。
だが、計画は呆気なく終わった。
神の存在を偉大な正義を否定するがごとく抵抗した地球人どもに。
人間…神が創りし失敗作のひとつだ。
神が与えし知恵を私利私欲の為に使い、醜く争い弱者を弾圧し結果星ごと滅ぶという事態が多数起こった。
その状況を快くないと感じた界王神の弟子であったかつての界王ザマスは師であるゴワスに直接手を加えた方が良いのでは?と提案した。しかし、返ってきた言葉はただ見守れという返事だけだった。
一定の不信感を持ちつつ師の言葉に従い見守ってみた。
だが、状況は変わらない。何千年、何万年もの宇宙を見守っても血で血を洗う争いが終わらない永劫のごとく繰り返す殺し合い。
中には平和な時期も確かに存在していた。だが、この時を待っていたといわんばかりにまた私利私欲の為に戦争が突然起こったこともあった。
ババリ星の時もそうだ。
知恵をつけ始めた人間が人間を醜く痛め付けていた。時が経てば良くなると師に言われ未来へ往き来する事が出来る時の指輪で1000年後の世界に跳躍した。
期待はしていなかったが結果は、何も変わらなかった。流石に1000年もの月日が経てば文化らしきものはあったが、醜く争う人間の本質的なものは何も変わらなかった。
─────人間が存在する限り…宇宙に平和は訪れない。
ザマスは激怒した。
必ず邪知暴虐の限りを尽くす人間どもをこの世から一匹残らず根絶やしにせねばならぬと決意した。
悪の所業をただ見守ることしかしない神も絶滅すると決意した。
─────愚かなるゴワスよ、お前の考えは間違っている。このような汚れた世界、悪は滅ぼさなければなるまい……その座には私の方がふさわしい。
人間0計画はそんな己の正義と信念に駆られて企てた物だった。
しかし、今となっては計画も一人では何もできない非力な人間と見下していた奇跡を纏った男に破られ、不死性の力をも凌駕する人の希望と想いとやらを集束した剣に倒され、今にも滅びそうになっていた。
「「ぐ……がぁあああああ!!!!!」」
身体を一刀両断にされ、断末魔を唄い、死が近づいてくるのを感じた。
下らないと吐き捨てた光によって切り裂かれた身体の内側から希望の結晶が蝕んでは、次第に広がり輝きが周辺を照らし出す。
ふざけるな……我の正義が、美しき理想郷が、罪の浄化が、このような人間風情に終わって良いものか────。
本来ならば、両断された肉体はそのまま消滅し一体化していたゴクウブラックの魂は滅び去り、もう一柱の魂レベルの不死性を持つザマスが概念となり宇宙を怨念で覆い尽くし地上に居る地球人を全て殺し、最期には全王に宇宙もろとも消滅される運命だった……はずだった。
ドクンッ!
心臓の鼓動音が聞こえたような気がした次の瞬間、予想外のことが起こった。
切断された合体したザマスの異形となった右半身と左半身にそれぞれゴクウブラックの魂とザマスの魂が分裂されたのだ。
ポタラによる神同士の合体は魂レベルの融合であり、通常ならば二度と解けないことを知っている二柱は異常事態と即座に知覚した。外野の反応を見てみるとこのことには気づいていないようだ。
(な……ぜだ、この俺が、人間に、敗北するは……ずが)
分裂され、まず最初にゴクウブラックの思念がそう思考した。ポタラの異変など、まるでどうでも良いようなことのように。
残念ながら人間の希望の光によって蝕まれた身体ではもうすぐ死滅されるのを待つしかないだろう……。
しかし、運命は神に味方した。正義の執行を完結せよと。
(こん、な……ことが、あっ……てたま…るか。俺は……俺は滅びん……!!!)
異常なまでの悪を、即ち人間を滅ぼすという執念と、肥大化した右手につけていた時の指輪がその想いに答えるかのように妖しく煌めいていた。
この日この時より、運命が変わり、世界に憎悪する者が神の怒りを呼び、全宇宙、全並行世界を脅かす絶望の物語が始まる────。
そして、神の奇跡が誕生した。
緑に光る輝きが覆い尽くされ時が進む度により激しく強大になりそれはやがて目映い程の光となり世界を、宇宙を、輝かせた。
しばらく経つと光が収まり、そこには何もなかった。
男に斬られた神はこの世界から存在そのものが消されたように居なくなっていた。
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「どいつもこいつもすぐ答えを知りたがる…そんなもん、自分で見つけな!」
思念体となった私、瀬奈みことは帆奈ちゃんが何をしようとしているのかその答えはわかっていた。わからないのは、その理由だった。
考えようとしたって何もまとまらない。嫌だ、嫌だ、帆奈ちゃんがいなくなるのは嫌だ…そんなことばかり思ってしまう。
ここにいてよ…それがムリなら連れていってよ…ひとりなんて悲しいじゃない。お願いだから、置いていかないでよ。
『待って、帆奈ちゃん!お願いだから私を置いていかないで!!』
私は、心の底から叫んだ。目の前に起こってしまいそうな現実を受け入れたくない気持ちを乗せて。
何でこうなっちゃうの?どうして死んじゃうの?なんでなんでなんでなんでなの!
「んじゃ…良い感じなんで……お先~!」
『────っ!?』
そんな私の気持ちを裏腹に、帆奈ちゃんは自分のソウルジェムを壊した。考えたくない現実が起こってしまった…。
ああ、なくなる…私が一番失いたくなかったものが今、目の前で…。
「…あっは…笑えるじゃない……あたしの…人生…」
『帆奈ちゃあああああんっ!!!』
帆奈ちゃんが死んじゃったその瞬間、強い力で引っ張られたかと思うと私は深い暗闇に落ちていた。
ここはどこなんだろう?
その疑問はすぐに消え失せた、どうでもよかったから。ここがどこだろうが、私がどうなっていようがもう、そんなことはどうでもよくなっていた。
帆奈ちゃん…なんで…どうして…。
…黒い何かが込み上げてくるドロドロとした熱い何かが…これは、憎しみという感情だった。そうだ、私は憎むべきなんだ。帆奈ちゃんを奪ったこの世界を、悲しみしか用意されていないこの世の真相を。
滅ぼしてやる。
結局何も台なしにできなかったからこんな悲しみが待っていたんだ。
全部滅ぼしてやる。
もう仕組みがどうのとか、抵抗がどうのとか、そんなのお構いなしにすべて力でねじ伏せ情け容赦なく叩きのめしてやる。
溢れる感情が、気持ちが止まらない。暗闇となったこの世界にビシリと亀裂が入ったような不吉な音がした。
だけど、そんなことはもうどうでもいい。必要なのは世界を滅ぼす程の力、手段なんかとる必要はない。
悪魔でも呼んでやる。
闇色の禍々しい光が射し込んでくる。すると私の周囲が血と呪いが掛け合わさったように光だした。
絶望でも迎えてやる。
私の周りには鏡の破片が無数に浮かんでいた。それらが反射し、闇色に光っている。暗闇だった世界は赤黒く禍々しい色に染まっていた。感じるはずのない血の匂いがしてきたような感覚がある。
私は、手を伸ばす。温もりを暖かさも何もかもを奪ってきたこの世界に復讐するために。
『────っ!?』
気がついたとき私は、自分が創った鏡の世界にいた。神浜に住む魔法少女からは果てなしのミラーズと呼ばれる場所に。懐かしい夢を見た、憤怒という名の宣誓をしたあの日の夢のことを。もう私は帆奈ちゃんの中にいない、あれから転々と宿主を替え今は─────。
「……」
ドロドロとなったこの宿主の中に─────。
ドロドロ?……え、ちょっと待て。なにこれ、どうなっているの。何かおかしくない?
『えっと……これは』
思わず声をだしてしまった。
人の形と言えばそれに見えるけど、明らかに異質な何かが私の宿主だった。
それは地面に仰向きに倒れている異形に見えた紫色の右半身で、右腕と手が溶けていてとても大きい。しかも手にはその手に合う大きさの指輪を付けている。服らしきものはボロボロだ。
ピクリとも動かず、そこに落ちている化物の形をした肉塊。左半身が無く切断され抉られているところからはおびただしい程の血の量が噴水のように溢れていた。
絶対に人間じゃないよね。
宿主である魔法少女たちに寄生してどれだけの喜びを得ても、結局は悲しみと絶望が訪れてしてしまう光景を数多く見ていた。だけど、流石に肉塊そのものが宿主という経験は流石の私も初めてだしこれからどうすれば─────。
いや、もうどうでもいいや、帆奈ちゃんの居ない世界なんて、と思ってしまおうとした次の瞬間には驚愕していた。
グニャリ
私は目を大きく見開いた。
なんと肉塊はうねりながら立ち上がった。左半身が欠けているそれは、どういう原理かは知らないけどとにかく立ち上がった。
噴水のように溢れていた血は止まり、やがてスライムのように身体全体が溶け始めては肉体が再構築されているようで、しばらく時間が経っていたら五体満足の背が高い男性となっていた。
ボロボロだった服は再製され、黒の道着となり、肌は人間のような肌だけど、髪も目も真っ黒。全身が真っ黒な男の人だった。
男の人に見えるけど、肉塊のことを思いだしたら…うーん、やっぱり人間じゃないよね。
「ここは…」
辺りをキョロキョロしながら男の人は呟いた。
迷子の子猫ちゃんみたいな感じがする。名前はわからないし……よし、これからは黒ちゃんって呼ぼうかな?服も髪も全身真っ黒だからね。帆奈ちゃんとは大分違った宿主でもしかしたら仲よくなれるかもしれないんだけど…。
「……何者かは知らんが俺の心の中にいるのだろう」
うーん元肉塊のこと黒ちゃんには私の声が届かない…やっぱり帆奈ちゃんは私にとって特別で、あの時間はやっぱり奇跡だったんだと思う。
「品なき名など付けるな…愚か者が。誰に向かって戯れ言を吐いている」
それでも、この宿主の嫌悪感を露にした声は─────ってあれ?もしかして。
『えっと、私の声が聞こえるの?』
「聞こえるだと?それは違うな人間。耳障りな鬱陶しい人間の声が聞こえるどころか頭の中に響くようで目覚めが悪い、口を慎んでもらおうか……ふんっ、偉大なる意思に導かれ神の奇跡を呼んだと思っていたが…どうやら俺は気高くも美しき孤高の精神に少々雑念が混じってしまったようだな。まったくやれやれだ」
『んふふっ、もーそんなこと言っちゃうと女の子にモテないよ~』
「……」
黒ちゃんはとてつもない変人みたいで途中からは何を言っているのかわけがわからなかったんだけど、久しぶりに会話が出来る宿主で嬉しいあまりつい冗談交じりに言ってみちゃった。その一方、黒ちゃんはめちゃくちゃ怒っている。実際に、こめかみの辺りに青筋を浮かべているのがその証拠だと思う。今の一瞬で嫌われちゃったのかな?。
このまま不仲で終わるのは悲しいし、まず自己紹介をして私のことを知ってもらって時間を掛けて関係を良好にするしかないかな。
『よし!まずは自己紹介しちゃおっか。はじめまして、私の名前は瀬奈みこと!今は元魔法少女っ!他の人からには果てなしのミラーズと呼ばれてます!んふふっ』
お前は何を言っているんだ、と言いたそうに黒ちゃんは首を傾げていた。
『それじゃあ…あなたの名前、教えてもらえないかな?』
「お前に教える名などない…さっさと俺の中から消え失せろ。神聖なる我が心にへばり付いてるようで気味が悪く、下等な人間の魂が中に居るだけでも不愉快だ。何せ究極までに磨き上げた己の美しさを汚し、吐き気を催す行為そのものだからな。それでも去る気が無ければこの世から魂残さず消し炭にしてやろう。慈悲はある苦しまずに逝くという点だがな」
うーん、めちゃめちゃ嫌われてるね。正直かなり傷ついてるよ私。どうしようかな…この様子だと黒ちゃんは本気みたいだし…黒ちゃんの力はまだわからないけど、もし仮にかなりの実力者で本気で消しにきて私が抵抗して共倒れになっちゃうのは嫌だな。
なにより私はしなくちゃいけないこともあるからここで消えるわけにはいけないんだよね。
『ふふっ、黒ちゃんそれはやめた方がいいと私は思うよ。前の宿主は私を無理やりにでも追い出そうとしたんだ。だけどね、私を追い出すどころか宿主が突然苦しんで記憶が消えちゃったんだ』
『それに私は自分自身の意思で宿主を決める事ができないし宿主から離れるのもできないの。だからごめんね?』
「つまりお前が言いたいことは寄生虫であるお前を攻撃または消去しようとすると俺も只では済まない、か……ふんっ、なるほど。納得はできんがそう言うことにしてやる。命拾いしたな」
とっさに嘘ついちゃったんだけど…よかったのかな。これから仲よくなれるといいけど、道のりは長そうだなぁ。
『変な雰囲気になっちゃったし場を和やかにするためにもう一度言っちゃうけど……あなたの名前を教えくれる?』
「…そもそもだ、お前に俺の名を言ったところで理解できるはずもない。我が大いなる真名は下等な人類の歴史に刻まれていない。よって、名前など言っても無意味なのだ。呼び名ならば勝手にするがいい珍妙な名以外はな……まぁ、そうだな…とりあえず孫悟空とでも言っておこうか」
それはこの世界どころか全宇宙、全並行世界を恐怖と絶望のどん底に陥れる物語の始まりだった。
ゴクウブラック(起きたらなんか居るんやけど)
高評価お願いします!
一番罪が深い市はどこだと思う?
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神浜市
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見滝原市
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風見野市
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宝崎市
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二木市
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湯国市