絶望の協奏曲   作:漆黒の人

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タイトル通りです。
更新ペース上げるよりもじっくりとクオリティあげた方が良さそうだけど……うーん?どうしよう。


第十二話 超サイヤ人ロゼ

 

 

 

 

 

 暗雲が覆っている空の下、不穏な空気が二木市を漂っている。

 

 いつも通りの平和な街並みだった場所はビルは崩れ落ち瓦礫だらけ、道路にはヒビが入り亀裂が走っている。

 そんな場所には、たった今その惨状を生み出した張本人である、黒衣を纏う男──孫悟空が血味泥のように地面に膝をついている。

 そんな黒衣の男を見下すように見つめるのは、少女達がファンタジーの格好をしている姿、通称魔法少女達と舞台装置の魔女であるワルプルギスの夜だ。魔法少女達は皆ボロボロの姿で、立っているのもやっとな状態だ。

 しかし、黒衣の男を睨むその眼光には確かな意思が宿っていた。

 

 殺意に満ちた目だ。

 

 あの、ワルプルギスの夜ですら、魔法少女達と成り行きだが徒党を組み、黒衣の男を警戒しているように見える。

 それほどまでに黒衣の男という存在は絶望を振り撒く魔女ですら危険だということだ。

 完全にトドメを刺そうと、ワルプルギスの夜は太陽のような魔力を時間を掛けながら練り上げていく。

 そして、凝縮された膨大な熱量を秘めるそれを、黒衣の男に向けて放とうとしているのだ。

 だが、先程のエネルギーのぶつかり合いによって消耗しきった故か、練り上げる時間がかかりすぎているようだ。

 

 それを見た結菜はまず仲間の安否を確認すべく、後ろを振り向いた。

 するとそこには、アオとひかるが居たが、二人とも疲れているようであまり動けないようだ。他の魔法少女達も同じだ。

 次に、結菜は樹里の容態を確認した。

 

「樹里ぃ!!大丈夫?!」

 

 結菜が呼びかけると、樹里はゆっくりと目を開け、口を開いた。

 

「あ、ああ……」

 

「良かったわぁ……」

 

「心臓を貫かれた時は死ぬかと思ったぜ。流石に肝を冷したな……それにしても結菜、一瞬誰だか分からなかったよ」

 

「えぇ……そうねぇ。今の私わぁ、あの男に復讐する鬼よぉ……とは言っても、この力でも通用しないとは思うわぁ……とても残念だけどぉ」

 

 結菜は胸を撫で下ろし、安堵する。

 そして、再び黒衣の男の方へ視線を向けた。

 黒衣の男はもうすぐ舞台装置の魔女によって殺されるだろう。出来れば自分達の手で自らトドメを刺したかっただろう。

 だが、結菜はそれで良いと思っている。魔法少女の力で殺す手段がない以上、確実に仕留められる力を持つ存在が居るのならばそれに任せた方が合理的だ。それが絶望の象徴と謳われたワルプルギスの夜とは皮肉だが……。

 それに、黒衣の男を殺すことはこの二木市──世界の救済に繋がるからだ。

 人間ゼロ計画などという、ふざけたもののせいで、多くの命が失われてきた。

 結菜にとって二木市のみんなは、守るべき対象であり、愛すべき存在である。だからこそ、これ以上犠牲を増やしてはならない。

 

 そして、追い詰められた当の本人は──

 

「ふふふ……くくく、はははははははははははははははッ!!」

 

 笑っていた。

 それはまるで、この状況を楽しむような笑い声だった。

 遊んでいたら突然、自分の想定していた状況とは違うことが起きてしまった。

 敵を侮り己を過信しすぎた故に、自分が不利になってしまった。

 本来ならば圧倒的勝利を納めれる闘いのはずだが第三の存在に干渉され超サイヤ人3を解除され、気をそらして追い詰められる。

 あぁ、随分と道化ではないか。勝利を自らの手で突き放すとは愚かという他あるまい。

 だが、それが面白い。

 黒衣の男は窮地に立たされてもなお余裕な態度を見せて、笑みを浮かべていた。

 

「何がおかしいのかしらぁ?」

 

「いやなに、まさかここまでやるとは思っていなかったものでな。ゴミ同然としか思ってなかった貴様らに、足元を掬われるとは思いもしなかったぞ?くくく……ははっ!!」

 

 他者から見て見れば黒衣の男は相変わらず己に酔いしれているとしか思えない。不気味だ、と誰もが思った。

 ワルプルギスの夜は今すぐにでも黒衣の男を殺せる状態にあるが、警戒しているせいで躊躇してしまっている。

 

《結菜さん、あいつなんかやばい気がするっすよ……何かを、まだ何かを隠しているような気がして……》

 

 突如として結菜の頭の中にひかるの声が響いた。

 この能力はテレパシーというものだ。

 魔法少女なら誰でも使える能力であり、基礎的な技術でもある。

 この能力を使うと、使用者同士の距離が長く数キロ離れていても会話することができるのだ。つまり、魔法少女同士であれば遠く離れても念話で話すことができる。

 

《そうね、私も同感だわぁ》

 

 警戒を更に強めて、それによって魔力が結菜の身体を駆け巡る。

 

『……ふわぁ……ってあれ?黒ちゃん!どうしてそんなに傷だらけなの?!』

 

 黒衣の男の中に在する思念体――瀬奈みことが、孫悟空の異変に気付いた。

 まるで、今この時より目覚めたように。

 

「……みことか。見ての通りだ。俺はワルプルギスと遊んでいたら、何者かによって介入され、このザマだ。みことよ、今更それに気付いたとこはまさか、意識を失っていた訳では無いだろうな?」

 

『うーん……黒ちゃんがワルプルギスの夜と押し合いしてるところまでは覚えてるんだけど、気付いた時にはこんな状態になってて、ちょっとクラクラするなぁ』

 

「……あぁ。なるほど、やはりそういう事か」

 

 みことと会話をしている最中、突如として表情を変え、納得した様子を見せた。

 

「どうやら、俺もお前もあの女もワルプルギスも世界によって踊らされていたらしい。気に入らんが、超サイヤ人を解除された時から妙だとは思っていたが、これで辻妻が合うというものだ」

 

『世界……?』

 

「そうだ」

 

 何を言っているのだろうか。

 みことには理解できないようだったが、孫悟空の瞳には確信めいたものが宿っている。

 

「まぁいい、いずれ分かることだ。それよりも今は、この状況をどうにかしなければな」

 

「……さっきから独り言を吐いているわけぇ?気持ち悪いわねぇ……諦めなさぁぃ」

 

 結菜は呆れたように呟いた。

 孫悟空はそれに反応することなく、魔法少女達とワルプルギスの夜を見つめる。

 そして、再び結菜の方向へ視線を合わせる。

 

「ふふふ、確かにな。端から見ればどうしようもない状況だ。だが、これはスポーツではない。戦いだ」

 

「どういう意味かしらぁ……?」

 

 男は右手で右胸を触り押さえる。その行動を見た結菜は目を細め、棍棒を魔法で作り出し、いつでも攻撃できるように身構えた。すると、黒衣の男の押さえている右手からは碧の光が溢れ出す。その光は徐々に強くなり、やがて黒衣の男の身体全体を包み込んだ。

 

 この現象の正体は復活パワーという回復術である。それは手で触れた対象にパワーを送り込み、どんな致命傷を負っても治すことのできる技であり、これを使えば例え心臓が貫かれようとも生きていれさえすれば再生する事ができる。また、体力や精神力を回復させたり、怪我や病気を治療することもできるのだ。

 本来ならば界王神に従者する者にしか使えないはずの回復術故に、界王神が使うのは不可能だ。

 だが、孫悟空──ザマスは違う。己こそが絶対の存在。己こそが最強。故に、ザマスにとって界王神の従者など取るに足らない存在なのだ。

 とはいえど元々彼は界王神の従者なのだ。長年に渡り魂レベルに刻まれた能力だ。界王神に昇格したことで瞬時に能力そのものが消えることはまず無いだろう。

 黒衣の男の身体を包む眩い程の碧のオーラは、徐々に強くなっていく。

 

 まるで、その輝きで男を祝福しているかのように──。

 

「……ッ!!まずい!まだ動ける者はあの男を潰しなさぃ!」

 

 何かがまずい、致命的に何かがおかしい。

 いち早く危険を察知した結菜が指示を出す。だが、誰も動かない。いや、動こうにも動くことができないと言った方が正しいだろう。

 その輝きに魅入られているかのように、誰もが動きを止めていた。

 

 戦場で呆けるなど命取りだ。

 しかし、それは仕方がないと言える。魔法少女達はあくまで人間だ。魔力の反応も何もない輝き。

 未知の光、未知の現象、未知なる強さ。それを前にして、何も考えずにはいられない。

 それは、人間として当然の反応だった。

 あらゆる常識が通じない存在を前にして、何も感じない方がどうかしている。

 

「……っ!!はあぁぁッ!!」

 

 目が眩しい。

 眩い光の前に結菜は咄嗟にして黒衣の男の目の前に移動し、棍棒を振り下ろした、が──パシッという音と共に簡単に受け止められてしまう。

 かなりのダメージを負っているとはいえ、ワルプルギスを圧倒した存在だ。故に認めたくはないが誰もが分かりきった結果だろう。

 

「くっ……!!」

 

 結菜は歯噛みしながら後退し、間合いを取る。

 危険信号を発しているのにその光からは何も感じ取れない。畏怖しているのだ。

 数十秒にわたり眩く碧に光っているそれが徐々に収まっていく。光によってまるでピント調節の壊れた双眼鏡のように距離感が掴めないほどに定まらない視界は徐々に鮮明になっていく。

 

 目を擦る。それは目の調節をする人間の行為。目の前には追い詰められている男が居る場所だ。

 今のは悪あがきだ、目眩ましで逃げようにもそれを自分が阻止したのだ。結菜はそう思考する、いや、せねばならないのだろうか。

 視界が元通りになり男の場所に視線向ける。何事もなかったと祈りを込めて。

 

 だがしかし、次の瞬間には驚愕に染まる。

 

「──────ッ!」

 

 立ち上がっていた。

 

 傷も、服が破れた箇所も、血濡れた衣も、何一つまるで最初っから無かったかの如く、深淵から目覚めたように立っていた。

 眩い碧の光が、全ての傷が癒やし、服も新品のように元の姿になっていた。

 当然のように、晴れ晴れとした気分で心地好く起きたように、完全復活を果たした黒衣の男がそこに居たのだ。

 

「……馬鹿な……そんな……こんなことって……」

 

 一人の魔法少女の声が聞こえてくる。それも無理はない。誰だってそう思うはずだ。

 こんなことはありえないと。魔法を使った痕跡すらなく、傷も全て消えた。そもそもそんなもので計れる相手ではないと分かってはいるが、一種の錯乱状態を引き起こしている。

 

「なによぉ……なんなのよそれぇ……反則じゃないのよぉ……!!」

 

 傷跡一つ残さず完治したその姿を目にして、結菜は戦慄した。やっとの思いで、黒衣の男を殺す算段がついたと思った矢先の出来事だ。動揺するなと言うほうが無茶だろう。

 

「この程度で俺を出し抜けたと思っていたのか?愚か者め。貴様らは所詮、神の掌の上で踊らされているだけの駒に過ぎない。

 ヒトの為?世界の為?笑わせるな。お前達は何も理解していない……真に宇宙を穢しているのは他でもない、お前達のそのくだらんソウルジェムだという事を」

 

 他の魔法少女も、この現実を受け入れられずにいた。

逃避したい現実。絶望が形となって現れたかのような存在。

 魔法も、奇跡も、その力とは別な何かの力によって元の状態に戻されてしまった。

 血反吐を吐きながら必死の思いで倒した相手が、何事もなかったかのようにそこに立っている。

 総ての努力を嘲笑うかの如き光景を前に、希望を、夢を、理想を、願いを、想いを、全てを踏み躙るかのようで、それが、ただひたすらに恐ろしかった。

 舞台装置の魔女とて例外ではない。ワルプルギスの夜もまた、正位置に成った姿も、結界を使用しても倒せなかったという事実が、本能に警鐘を鳴らしている。今すぐ逃げなければと思わせる程の脅威が、眼前にあった。

 しかし、逃げることなどできるはずもない。故に行った行為は一つ──

 

『アアアアッ!!!』

 

 攻撃のみ。

 ワルプルギスの夜は生成していた巨大な魔力、そこから極大の魔力光線を放った。

 破壊の業火が孫悟空に襲い掛かる。災害級の攻撃だ。直撃すればひとたまりもない。

 だというのに──

 

 ズザァッ!

 

 孫悟空は片手で軽く受け止めた。

 その現実を理解するよりも早く、その光景を目の当たりにした。

 ワルプルギスの夜の放った破壊の業火を、黄金の姿に変化せずとも黒衣の男は平然と片手で止めているのだ。

 そして、そのまま握り潰すようにして消し去った。

 まるで、小石を手で払うかのように容易く。儚き幻想のように。

 

「ふむ。はやりサイヤ人の肉体を高めるのは戦闘の記憶を蓄積する事か。生死の狭間から生還することで、戦闘力を大幅に上昇させる特性はまだ健在のようだ……これならまだ進化できる。まだまだ強くなれる。何故ならこの俺も孫悟空だからな」

 

 黒衣の男が不敵に笑う。それは、自分の成長を喜んでいるように見えなくもない。だが、結菜達は知っている。彼が浮かべているのはそんな感情ではなく、愉悦の表情であることを。

 

「さぁ、そろそろ幕引きだ。死してなお醜く踊り続けるその魂を浄化してやろう。人間風情が辿り着く事が出来ない領域……我が薄紅の煌めきによって──ッ!!」

 

『ア……?』

 

 ワルプルギスの夜が僅かに反応した刹那、孫悟空の身体が漆黒でもなく、黄金でもない、薄紅の闘気に包まれた。その輝きは先程の比ではなかった。

 その輝きだけで、周囲の空間が歪んで見えるほどに。

 

「はあああ──ッ!!」

 

 黒衣の男が咆哮える。

 世界が悲鳴を上げ、銀河が軋み、宇宙が揺れる。

 それは、圧倒的な存在感による威圧感。

 その輝きは、まさに美しき薄紅の閃光。その美しさは、もはや神々しさすら感じられた。

 曇りがかった空さえも所々に切り裂いて輝く光は、どこまでも煌めいていた。

 それは、この世に存在するあらゆるものの中で、最も恐ろしい光だった。故にその光を前にして、誰もが畏怖し、恐怖した。

 まるで、この世のモノとは思えない、神々しいまでの光を放つ存在。それと裏腹にどこまでも邪悪で禍々しい気配を纏う男の存在。

 その二つが合わさることで、より一層際立つ、底知れぬ闇。

 魔法少女達には、それが何なのか分からなかった。

 分かるのは、その存在が、自分達とは住んでいる次元が違うということだけ。人知を超えた何かがそこにあった。

 

 そして薄紅の闘気は、一気に膨れ上がり天へと貫き昇った。

 暗雲を裂き、曇り一つない蒼天を顕現させ、暗黒の宇宙までも照らし出す光の柱が立ち上った。

 まさに神が如き力を以て放たれたのは、眩い黄金の輝きでも、眩い黒炎でもなかった。

 ただひたすらに美しく、それでいて眩い紅なる邪光の奔流。

 そして、黒衣の男──ザマスを中心に、膨大な光が収束していく。

 憎悪と憤怒を呪いでかき混ぜたような禍々しい薄紅の闘気、逆立っている薄紅色の頭髪、漆黒から灰色に変化した瞳、そしてそれに宿るのは狂気。

 その姿は、まさしく────"薔薇色の神気"。

 

 魔法少女達も舞台装置の魔女も、その姿を見た瞬間、真の意味で理解する。

 自分たちが相手にしている存在が何者なのか。

 変異するだけで宇宙が揺れるその力、それはあまりにも強大で圧倒的である。

 だが、最も恐ろしいのはそれではない。恐るべきはなにも感じられないことだ。膨大な力を発しているのにも関わらず黄金の姿の時とは違い、その質が感じられない。底が見えない奈落のように、無限の闇が其処にはあった。

 それは、魔法少女達がこれまで戦ってきた敵が有していた力とは根本から異なるものだった。

 それ故に、恐ろしかった。得体の知れない何かに対峙していることが。

 

「この姿を拝めることに感謝するがいい、美しさの頂点に君臨する超サイヤ人ロゼの姿を。貴様らのような矮小な者が目にするには勿体無いほどの至高の領域……正に俺という存在そのものが、ただひたすらに孤高なのだ」

 

 誰も言葉を発せない。否、言葉を発することすらできなかった。今対峙しているのは、かつて戦ったどんな怪物よりも遥かに強大な力を持つであろう存在。

 これを前にすれば伝説と呼ばれたワルプルギスの夜など赤子同然だ。故に神の力を前にしては、人の子など無力でしかないのだと、脳に刻まれるほどに思わざる得ない薄紅が其処にはあった。

 それを知ってか知らずか両手を広げて誇示するかの如く語る孫悟空。その言葉は、ある種傲慢でありながらも、ある種の真理を突いているようにも思えた。

 この俺こそが宇宙の力、秩序、法則そのもの。全ては俺の為に存在している。

 そう言っているかのようにも聞き取れた。

 

 超サイヤ人ロゼ。

 それは人間が達した神の域──超サイヤ人ゴッドをサイヤ人の肉体を持つ神が超えると薄紅になる姿。つまりは、生まれながらの神とサイヤ人の神の力の融合により誕生した、超サイヤ人の亜種的存在である。

 その力は凄まじく、宇宙ですら戦いの余波で滅ぼしかねない。

 

「………………ああ、そこに居たのか。随分と見下されたものだな、神を見下ろすつもりか?まったく……先程の妨害といい、ワルプルギスの夜を差し向けたのは貴様だろう?」

 

 黒衣の男のその言葉は、この場に居る全員に向けられたものではない。それを向ける相手は地上に存在せず、その遥か彼方を見据えているようだった。

 この世界に存在していない異形のナニカに対して向けられたもの。だが、それを察する者はいなかった。

 それもそうだ、その言葉は誰の耳にも届かないほど小さく、そして意味深なもの。

 

 実際に語りかけている相手は宇宙そのもの……宇宙の意思である。

 神の領域──次元そのものが違う領域に立つ存在だからこそ成せる業。故に宇宙の意思の存在を認識するのは当然のことで、その存在を認識した上で言葉をかけるなど造作もない事だ。

 

「……まぁいい。こいつらを始末した後、手始めにキュゥベえを潰し、不快な貴様を滅し、それからゆっくりと人間ゼロ計画を進めればいいだけの話だ」

 

 薄紅の神は、不敵に笑いながら言う。

 己の偉業を果たす為に、世界に真の美しさを取り戻す為に、邪魔な存在を排除せんとする行為は実に合理的であり効率的であった。

 かつて、どうしようもない程に強かった破壊神を、界王神を殺害することで連鎖的に抹殺したように。

 人間ゼロ計画を進める為の障害となるのであれば、どんなものであれ容赦はしない。

 それが例え宇宙の意思であろうとも。

 それは、宇宙の摂理に反する行為かもしれない。

 しかし、彼にとってそんなことは関係がなかった。

 何故なら、自分の考えが間違っていないと確信していたからだ。

 自分の行動原理は正しい。己こそが絶対の善で、絶対の正義、絶対的なる神。恥じず、悔いず、そして揺るがない。

 故に、孫悟空は迷わない。躊躇うことなく、自らの信念を貫く。どこまでも純粋で歪んだ思想を持ち続ける神。

 その瞳には、何が映っているのだろうか。常人にはそれを理解することは永遠に無いだろう。

 

 そんな孫悟空はワルプルギスに対し、無言で右手による拳の一撃を繰り出しす。

 ただの右ストレート。撫でるが如く繰り出されたソレは、味気ない音を立てると共に、拳圧が衝撃波と化す。

 刹那、世界から音が奪われた。

 膨大な衝撃が空気を震わせ、空間を揺らし、次元さえも砕かんとするように。

 たったの一撃が、総てを崩壊させる威力。

 それはまるで、神の鉄槌──万物を裁く力の証明。

 宇宙の摂理に叛逆する行為を咎めるように、宇宙の秩序に背いた者を罰するように、裁きを下すかの如く、薄紅の拳圧が舞台装置の魔女に迫って行った。

 舞台装置の魔女は、反応する事が出来ず、咄嗟に防御体制に移行する動作もなく巨大な身体は神罰を受け、一瞬にして粉々に散った。

 あまりにも強すぎる力によって生み出され伝説と呼ばれた魔女だが、次元そのものが違う神気の前には無力に等しく、当然のように跡形もなく無く消し飛ばされる。

 あまりにも呆気ない幕切れ。あまりにも唐突過ぎる終焉。

 一瞬にして散りゆくワルプルギスを目の当たりにし、誰もが唖然としていた。

 

 

 

 

 

 

 




朗報:宇宙の意思ターゲットにされる。

どのENDが見てみたい?

  • 滅亡END(全王も円環の理も総て抹殺)
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