東方頭文字D 〜 Lunatic Stage 〜 作:D-Ⅸ
もしかしたら現実でも役に立つかも知れない運転時の姿勢の話を挟みつつ、この辺から少しずつ本番に向け動き出します。
これは作者が最近知った、目から鱗の話なので作中でも登場させたかったというのと(これをやってからコーナリング時に踏ん張りが効いて楽になりました)、慧音先生に先生らしいことをさせて今後の作中における解説枠を確立させたかったという意図があります。
リクエスト(キャラ、車両、エピソード等問わず)はまだまだ募集中です。
感想や評価、または誤字誤植の指摘等もよろしくお願いします。
脱落者一名を連れた3台は下の駐車場に降り立った。
先に出て行ったFDたちと合流する。
和やかに談笑する3人を見て慧音は「どうやらお互い上手いことやれたようだ」と内心安堵する。
滋「途中からの記憶が無い……。昨日のアレで絶対ヤバいとわかっていたのに、覚悟は出来ていたはずなのに気絶するなんて情けねぇよなぁ……俺」
途中で失神した滋がどうにか道中で復帰するが未だにしょぼくれて顔色が悪いままだった。
滋の状態を見てやりすぎてしまったことを悟ったはたての提案で一旦小休止を挟むこととなり、6人で自販機のジュースを片手に話していた。
するとそこにFD談義がひと段落ついたのか、FDの3人組がやってくる。
特にレッドサンズの2人組はスピードスターズの車の運転席からファンタジアの3人が出てきたことに何やら面白そうなイベントの空気を感じ取り、その一方で多少事情を知っているヤマメは何か察したような表情をしていた。
芳樹「お?なんだ?お前ら上手い奴に車を運転してもらったのか?」
尚子「スピードスターズだけで降りて来たと思ったら運転席にファンタジアの3人が乗ってるんだからちょっとびっくりしちゃったよ」
妹紅「あぁ、実はな……」
慧音に変わって妹紅とはたてが事情を説明する。
とは言え、これは彼女たちだけに限らず一部の走行会等で行われることでもあるが、練習生の人の車に教官役の人が乗って運転すると言うある種恒例のイベントをやっただけではある。
しかし肝心のスピードスターズのメンバーが途中で気分が悪くなってしまったためにスローダウンしつつ降りてきたのだ。
もちろん滋の名誉のためにも、はたてはスターレットの助手席で失神したことに関しては黙っていた。
芳樹「で、それで今度はそれを踏まえたお勉強会か?」
尚子「なんだか面白そうだね。私たちも少し聞いてても良い?」
ヤマメ「それなら私も。私って結構感覚派なところがあるからさ、こう言う理論的な話を聞いてみるのもたまには良いかなって」
レッドサンズの2人は高橋涼介以外の人間がどんな理論の元で走っているのかの参考とするために、そしてヤマメはお互い地底と人里というそこそこ距離が開いているところを本拠地としているせいで、同じチームに選抜されながらも普段接点がそれほど濃くは無い慧音の事が少し気になったが故にの事だった。
慧音「あぁ、良い心がけだな。……さて、生徒も増えたことだし小休止も兼ねて少し座学と行こうか。私たちが君たちの車を借りて走ってみたわけだが、率直に言ってどう思った?」
慧音がスピードスターズの面子に話を振る。
今回の本題はそこだからだ。
滋「とにかく、とんでも無く速かったとしか……。俺たちでも出来ない様なドリフトをバンバンしてたし……とても俺の車とは思えなかったぜ」
守「あと、運転してる時に体がほとんどブレてなかったな。俺のシート、純正のままなのに」
四郎「あぁ、先生は普通に運転してたのに、俺はあっちこっち振り回されて大変だったよ。あとはシフトチェンジも無駄がほとんど無かった。初見の車で出来る運転じゃあ……」
慧音の問いに少し戸惑いつつも答えていく。
慧音「なるほど、ドリフト云々はともかくとして、そうだな……じゃあ今回は基礎の基礎、運転する時にドライバーがとるべき姿勢について話しておこうか。今回は特にコーナリング中の踏ん張り方の話だな」
守「運転するときの姿勢?」
芳樹「なんか意外だな」
どんな話が飛び出してくるのかと思えば運転時の姿勢という派手さの無い地味な話題だったことにスピードスターズとレッドサンズの面々は首を傾げる。
慧音「まず、ドリフトにしろグリップにしろ、速く走るためにはペダル、シフト、ステアリングなどの精密かつ迅速な操作が求められるわけだが、その『精密かつ迅速な操作』とやらを遂行するために重要な事はなんだと思う?」
その問いに、はたてと妹紅以外の面々は思わず言葉が詰まる。
思えばそう言う事まで深く考えたことはなかったからだ。
尚子「うーん……慣れ、とか?」
四郎「運動神経かな?」
少し考えながらも2人が答えを絞り出す。
しかし慧音の答えは否だった。
慧音「近いといえば近いが、そうではないな。……答えは『姿勢を安定させること』なんだ。つまりは加減速や旋回のGに負けることなく体をシートに固定してブレないようにするんだ。もちろん、フルバケットシートや4点式シートベルトというものはあるのだが、それはあくまでも補助的な装備として私は考えている。何より大事なのがシートポジションを含めた乗り手の姿勢だ。正しい姿勢で走らなければ陸上選手は速く走れないのと同じように、ドライバーもまた正しい姿勢で運転しなければ速く走れない。……そうだな、一つ話をしようか。君たちは食事中にナイフとフォークで肉を切り分ける時、書道などで紙に文字を書く時、どうしている?」
守「そりゃあ、文字書くときはこうやって右手に筆持って、左手で支えて書くし……」
芳樹「ステーキとか食うときはこう……フォークで支えてナイフで……あ!」
慧音「そう、支えるんだ。今回話すのは右利きの場合の話だが、右手だけで丁寧に文字を書こうとしてもなかなか上手くいかないし、ナイフ一本だけで肉を切ろうと思っても切り辛い。人が何か正確で緻密な動作をしようと思った場合、大事なのは支えている側の方なんだ」
ヤマメ「あぁ……そういう事ね」
滋「確かに片足で立つとふらつくけど、両足で立つと安定するもんな」
慧音「うむ、そういうことだ。そしてそれは車の運転でも同じこと。走り屋は常に右へ左へ動き続ける車の中で正確なシフトやペダル、ステアリングの操作を要求されるものだが、バケットシートと比較してサポートの甘い純正シートに、固定の緩い3点式ベルトではそれは難しい。何故なら乗り手が旋回Gに振られてシートからズレたりギャップを乗り越えた際にそのショックでシートから浮いたりしてしまう可能性があるからだな。そうなれば手元や足元が狂ってそれぞれの操作に少なくない誤差が出てしまうかもしれない。……だが、あえて難しいと表現したのは不可能では無いからだ。今回はそれについて説明しようと思う」
慧音は片手に持っていた缶コーヒーを一口飲むと、周りの生徒たちに視線を配る。
先ほどと比べて少し真剣そうな表情の彼ら彼女らの様子を見て満足そうに頷くと、そのまま話を続けた。
慧音「まず、運転時にかかる様々な方向への揺れに対して姿勢を安定させるためにはどうすれば良いか。これは先ほど示した様に、うまく支えてやれば良い。……具体的にはステアリングを両腕で押して突っ張らせてやること、そして左足でフットレストを押し込む様に踏むことだ。この両手と左足の3つの点で体をシートに押し付けて強く固定させてやると、体重以上の力をシートにかけられる様になって、多少踏ん張りが効く。わざわざ高いフルバケットシートなどを使わずとも、ある程度の強い横Gなどがかかっても体を殆どブレさせずに姿勢を安定させやすくなるんだ……ただし、もちろんそうした装備を買える程度にお金に余裕があるならそれに越したことはない。今教えた様な姿勢をとっていても、フルバケットシートに4点式以上の競技用ベルトがあれば、より強力に体を固定させられるのは事実だからな。だが、それが出来る人ばかりでは無いだろうし、知っていて損はない筈だ」
そこまで聞きに徹していた彼ら彼女らは黙って頷く。
実際に理屈や例え話を交えて説明されると、確かに彼女の話は理に適っている様に感じられる。
だがここで芳樹があることに気づいて疑問を呈する。
芳樹「あれ?でもシートに体を固定するって言うのなら、シートの座面にかかってるお尻や太ももはどうなんだ?」
慧音「良い質問だな。確かに両手と尻とで既に3点ある様に思えるかも知れないが、大事なのは体重以上の力、要するに1G以上の力をかけてやる事ができるかと言うところなんだ。その点で言えば、通常のシートやシートポジションでは尻には体重以上の力はどうあってもかけられない。……天井に手を突っ張りでもすれば話は変わってくるが現実的ではないだろう」
四郎「まぁ……確かに」
慧音「そこで出てくるのが左足なんだ。左足で踏ん張る事で、本来ならば1G以上の力をかけられない尻や腰のあたりにもシートへ体を押し込む力をかけられる様になると言うわけだな。そしてこの両手と左足の3点で押し込むとシートの特に背もたれのあたりに乗り手の体重以上の、強く広い面の圧力をかけて固定できる様になる。特にこの姿勢は両手を突っ張らせて肩をシートに沈めて固定できるため頭がブレにくくなると言う点も大きいな……。なぜ頭部の揺れが少ないと都合が良いのかについては、また今度ということにしておこう。……そういうわけだから、私は本気で走る時はクラッチ操作以外に左足はそれほど多用しないんだ。まぁ、コーナーのど真ん中でクラッチを蹴り飛ばすことなんかそうそう無いからな。……便宜上、私はこのフットレストの事は『第四のペダル』と呼んでいる」
芳樹「なるほど……」
守「なんつーか、上手い人はそういうところまで考えてるんだなぁ……」
滋「俺なんか運転中の姿勢なんて自分が運転しやすいかくらいのもんだと思ってたわ」
芳樹「確かに、一から改めて説明されるとその通りなんだよな。正直今までその辺のところまで頭が回らなかったけどさ」
滋「走り屋にとって純正シートの何がネックになるかって言ったらサポート緩いせいで振り回されるからだし、振り回されることの何がいけないかっつったら体がズレると手元や足元がくるってミスを誘発するからってのも、言われてみれば確かにって感じ……」
そこまで話が進んだところで、彼ら……特にレッドサンズメンバーにとっては聞きなれたロータリーサウンドが駐車場へと進入してきた。
白いFCと黄色いFD……高橋兄弟だった。
慧音「よし、キリがいいからここらで中断としようか。私としても少ししゃべり疲れてきたところだったからな。……それより、はたては何か高橋涼介に聞きたいことがあるんじゃなかったのか?」
慧音の一言に、何かを思い出したようにハッとした表情を一瞬浮かべるはたて。
はたて「そうだったわ。それじゃあ少し話してくるわね」
ヤマメ「もしかして、昼間に話してたあの一件のこと?」
はたて「うん。その事でね、少し……」
はたてがそこまで言ったところで、杉本兄妹の隣に停めた車の中から2人が出て来た。
啓介「やっぱり、お前らも来てたんだな」
芳樹「あぁ、啓介がやたら褒めてた黒いFDの話を聞いた時からいても立ってもいられなくてね。ヤマメちゃん、正直予想以上だったよ」
啓介「あぁ、コイツはその辺のカスとは話が違えって言った意味が分かっただろ」
ヤマメ「そういうあなたたちも中々良い走りしてたじゃない。途中から多少好きな様に走ってたんだけど上手くドリフトを合わせてくれて、こっちも楽しかったわ。もちろん、啓介もね」
啓介「あったりめぇだろ」
ヤマメ「改めてお礼を言わせてもらうわ。昨日は私の走りに付き合ってくれてありがとう」
はたて「ところで、話に水を差す様で申し訳ないんだけどさ……涼介さんに一つ聞きたい事があるの。良いかな?」
涼介「構わないが……昨日現れたという、バトル中の啓介とお前をまとめてぶち抜いたハチロクの件なら、すでに啓介から大まかな話は聞いている。すまないが力になれそうにはないな」
滋(何ぃ!今さらっとすごい事が聞こえなかったか!?あの高橋啓介とはたてちゃんがまとめてやられた!?まさかあの話は……っ!)
四郎(な、何だってぇ!?こんなのに勝てるハチロクがいるのか!?)
守(この2人をハチロクがぶち抜いただって!?それってまさか……)
はたて「あら、どうして?県内にいる腕利きの走り屋に関する情報に関しては一番詳しいんじゃないかと思っていたんだけど……」
啓介「俺も聞いてみたんだがな……すまんがアニキも心当たりがないらしい」
滋「えーっと……そのハチロクの話なんだけど……」
その場の誰もが黙り込む中で、スピードスターズ組から滋が声を上げる。
そこに至って、はたても「そう言えば地元のスピードスターズに聞くのを失念してたかな」と思い出す。
守「俺らもまさかあんな伝説じみた走り屋が本当にいるとは思わなくて話半分で聞き流してた話なんだけどさ……」
四郎「うちのリーダーが働いてるガソスタの店長が昔、秋名の走り屋だったって言うんだけど……その店長が言うにはさ、秋名にはバカっ速いハチロク乗りがいるらしいんだよ。俺たちとは時間が違うっぽくてさ、肝心な俺らも一度も会ったこと無いんだけど……」
滋「その人は今麓に何件かあるうちの一つの豆腐屋のオヤジやってるらしくて、聞くところによると今でも秋名を走ってるって話なんだ。その辺探せば案外見つかるかもな。流石に走ってる詳しい日時は聞いてないからよく分からないけど……」
スピードスターズの面々がそう言うと、レッドサンズとファンタジアの面々は少し考え込むような表情を見せる。
妹紅「ハチロクか……車の性能差を考えるとにわかには信じがたい気がするな。2人はそいつの走りを間近で見たんだろう?……どうだったんだ?」
啓介「今でも認めたくはねぇし、思い出すだけで腹立つけどよ……すげぇ腕だったぜ。俺たちがまだ突き詰めきれてないコーナーを殆ど減速せずに突っ込んで、あっという間に慣性ドリフトで抜けて置き去りにしていきやがった。アレはこの峠を完全に知り尽くしてる奴の走りだった。確実に地元の走り屋だ。俺が動揺してスピンしなけりゃもっと追いかけられたんだがな。ただ、乗り手の腕もいいがあれはマシンも相当いじってるんじゃないか?普通のハチロクじゃあり得ねぇ様な距離の詰め方されたぜ。きっとアレはこの山だけのためにカリッカリにチューンしてセッティングを練られたモンスターマシンだ」
はたて「うん。凄まじい技量だったわ。とにかくコーナーワークが超人的の一言ね。ハチロクは進入スピードと脱出速度で私のセリカや啓介くんのFDを大きく上回っていたのは確実だと思う。だから加速力と最終的なストレートのトップスピードは私たちの方が上でも、その間に大きく差を縮められていたからパワーの有利があってもそれが役に立ってるとは言い難かったかな。……ただ、エンジンパワーはそれほどなかった筈。音を聞いた限りではターボ化やスーパーチャージャー化されている様には思えなかったし、音も普通の4AGとそう大差ないと感じたわ。……だからエンジンはノーマルに近いか、そこから派生したメカチューン程度なんじゃないかな?だから当然あのハチロクの馬力も現実的な数字の範疇に止まるんじゃないかと思うわ」
涼介「ボルトオンターボ化を伴わない、一般的な4AGのNA仕様のハイパワー化を目的としたチューンとして知られるのは、4スロ化とカム交換やピストン交換によるスタンダードなメカチューンだな。92後期の4スロハイコンプ仕様で大体180馬力程度が狙えるが……」
慧音「テンイチ(AE101)やイチイチ(AE111)ヘッドの流用も比較的によく見るな。あとは単純な排気量の拡大による5AG化か……過給機に頼らないとすると、大きく見積もって200馬力あたりかその手前が精々だろう(あとはうちのメカニックがやってる7AGを搭載してチューンするのもあり得るが、そこまでしてしまうと今度は明らかに音が違ってしまうな)」
啓介「いや……そんな訳はねぇはずだ。俺のFDは吸排気チューンと純正ツインターボのブーストアップ仕様で実測364馬力だ。姫海棠だったっけか、お前のセリカもそれなりに出てたんじゃないのか?それをあんなに簡単に2台まとめてぶっちぎるんだ。乗り手だけの問題じゃない筈だぜ」
はたて「一応、私のセリカは330くらいはあるかな?」
尚子「いくらダウンヒルが非力なハチロクに味方してたからと言っても、ものには限度があるよ。車重の軽さや地元としての経験値も込みで考えてもね。旧式のテンロクNAが、ターボで倍近い馬力を絞り出すスポーツカーを圧倒できるほどとは……ちょっと考えにくいかも」
四郎「コーナーにも強くてパワーもあるFRピュアスポーツのFDに、四駆ターボのラリーベース車のセリカなんて、それこそ走りのために生まれて来たみたいな車だぞ」
守「それを相手にハチロクで勝つなんて、普通は無理だよな……」
妹紅「もしセリカやFDの乗り手が下手ならそれもあり得ただろうが、今回に限ってはそれは当て嵌まらないからな。1人はこの辺りじゃ名の知れた赤城最速の走り屋、1人は正規代表メンバーではないとは言え慧音に走りを教えてもらって以降はかなり腕を上げたはたてだ。それを遥かに格下の車で圧倒したとなれば、それこそプロレベルの実力がなければな……。確かに、私もこれはあまり現実的な話じゃないと思うが」
芳樹「俺も話を聞く限りじゃ普通の4AG、普通のハチロクでそんな事ができるとはとても思えないな。何かもっと秘密があるのは確かだと思うよ。乗り手が奥の手を隠し持ってたとか、マシンに何かギミックが仕込んであるとか。ハチロクのテンロクNAとセリカの四駆ターボにFDのロータリーツインターボじゃ、車全体を見てもエンジン単体で見ても、いくら何でも戦闘力に差がありすぎる」
啓介「あぁ……おおかた、大掛かりなエンジンチューンでもしてるんじゃないのか?このFDのアクセルベタ踏みでもそれほど極端に突き放せなかったってことは、軽さを考えても200後半は最低でも出ている筈だ。乗り手の腕だけでアレができるなんて信じられねぇし……俺は信じたくもねぇ」
各々の意見を出して話し合っていくが、メンバー間で若干の意見の相違が生まれる。
あのハチロクはフルチューンされたモンスターマシンだと評する啓介たちと、乗り手の凄まじい技術が全てじゃないかと語るはたて。
しかし、それに対して涼介や慧音を含む他の面々は依然として難しい顔をしたままだった。
実際に見た訳ではない彼や彼女には判断するだけの材料が乏しかったのだ。
涼介「……今の時点では何とも言えないが、俺たちの方でも調べてみる価値はありそうだな」
慧音「私もそのハチロクに興味が出てきたな。手の空いているメンバーに頼んで、少しだけ探りを入れてみようと思う。接触をとるかどうかとなると話は別だが……まぁ、同じ山を走る以上はいつかどこかで会うことにはなるだろうからな」
しかし2人は片や自らの弟を、片や半ば愛弟子同然のチームメイトをいとも容易く千切ったというハチロクの存在に少なくない興味を抱いたのは同じだった。
特に、はたては代表には選出こそされなかったものの、下り最速の椛のS14シルビアや上り最速の文のR35GT-Rに次いで、妖怪の山でもトップ10には入るほどの実力がある。
それをいとも容易く圧倒しぶっ千切ることの出来る様な人は幻想郷の走り屋たちの中でもそうそう多くは居ない。
この場にいる幻想郷の走り屋である妹紅と慧音、そしてヤマメはそれをよく知っていた。
一部出来そうな怪物クラスの人は何人か脳裏に浮かぶものの、あんなのは少数派であり例外中の例外であって、そのレベルの奴がそうそういてたまるかとも思っていた。
だからこそ、まさかとは思うがもし今回の一件が全て事実であった場合に想定されるそのハチロクの速さというものが途方もないものであるという事実に頭がくらくらして来る様な感覚に襲われる。
妹紅「ところで、スピードスターズとしてはそのハチロクのことはどう考えてるんだ?今後探し出して接触するつもりはあるのか?」
滋「えーっと、一応うちのチームのリーダーがそのハチロクを探し出して助っ人として交流戦に出せないかって言ってたから、もしかしたら……」
本当にこれを言って良いのかどうか内心に少しばかりの葛藤を抱えつつも、滋はそのハチロクの様な腕のいい走り屋をリーダーの池谷が交流戦に引っ張り出したがっていることを伝えてしまう。
たとえ本人的に本意であったかどうかは関係なくそのハチロクのドライバー自身の行いで遭遇戦になって残る二つのチームからの関心を既に引いてしまった以上、どうせここで自分たちがすっとぼけたとしても遅かれ早かれそのハチロクは再び表舞台に出てくることはほぼ確実だろうと思い開き直ってしまったのだ。
啓介「そうか。ならこっちとしても都合がいいってもんだ。もし、スピードスターズがそのハチロクの走り屋を見つけたら、伝えておいてくれ。……交流会の本番、秋名のダウンヒルで待つってな。スピードスターズの助っ人でも何でもいい。俺ともう一度戦ってもらうぜ」
リベンジを誓う啓介。
その瞳には確かな闘志が宿っていた。
啓介(……今度は油断も侮りもしねぇ。マシンもきっちり仕上げてコースも走り込んで体に叩き込む!……何より俺は簡単に諦める様なタチじゃねぇ。雪辱は必ず果たすぜ!俺は一度負けた相手に二度は負けねぇ!絶対に勝つ!)」
既にこの時点で各チームの中で、のちの「秋名のハチロク」の存在が認識されていきます。
そしてリクエストに関してですが、1人採用1人採用検討中と言った感じになります。
多少調べて設定拾ったり、あとは細かい部分を変更したり補完したりして作品の中に落とし込んでいく必要があるので本格的な登場まではまだまだ時間はかかりますが……。
(設定の大幅な変更が伴う場合はこちらから確認と承諾のメッセージを送信いたします)
2023 / 12 / 7 11時33分 誤字訂正