東方頭文字D 〜 Lunatic Stage 〜   作:D-Ⅸ

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更新が遅れてしまいまして誠に申し訳ございません。



今回はうちの子的なオリキャラが登場します。
同じ頭文字Ⅾの二次創作をしているとある方(こういう時に名前を出してしまってもいいのかどうか正直わからないので一応伏せさせていただきます)へのリクエストキャラとして提供させていただいたキャラクターを原型として再構築していますので、もしかしたらどこかで見覚えのある感じかもしれません。
そしてオリキャラと共にリクエストキャラの伏線もチラッと登場です。

リクエスト(キャラ、車両、エピソード等問わず)はまだまだ募集中です。
感想や評価、または誤字誤植の指摘等もよろしくお願いします。


第29話 愛車(前編)

全てのバトルが終わり、徐々にギャラリーたちがはけて行く中でも興奮を色濃く残す深夜の峠。

 

章夫「全戦全敗かぁ……トホホだぜ。……全く、秋名の奴らも侮れねぇなぁ」

 

浩二「毅でも無理なら俺らが束になったって勝てっこねぇわな……。とんでもねぇぜあのハチロク。俺じゃ無理だし、唯一望みがあるのは慎吾だけかぁ?」

 

吾郎「あぁ、慎吾はEG6シビックで毅と殆ど変わらないタイムを出せるくらいには腕が良いからな」

 

弘道「ちくしょう……。アウェーのバトルがこんなに厳しいとはな……」

 

まず最初に全戦全敗となったナイトキッズがそそくさと帰って行く。

フリーの時間には感じられていた元気の良さはすっかり鳴りをひそめていて、むしろ意気消沈といった具合で背中に哀愁を漂わせながら帰っていった。

 

涼介「もうそろそろ俺たちも引き上げようか。長居は無用だ」

 

啓介「お前ら帰るぞ。撤収だ」

 

次に高橋兄弟が帰って行ったのを皮切りにレッドサンズも全員帰路に着いた。

それを見届けると続々とギャラリーたちが帰り出し、スピードスターズや地元秋名の走り屋たちも口々に秋名のハチロクの勝利を讃えながら今しがた降りて行ったが、ごく一部のギャラリーとファンタジアメンバーのうちの数人のみが残っている。

ファンタジアは既に紫とヤマメのFDと妖夢のFCと白蓮のR32、一輪のR33、美鈴のS2000が帰っていて、現在残っているのは文とその車に乗せて貰っているはたてと、アリス、魔理沙の計4人。

その彼女たちの愛車であるR35とR34、80スープラのみだった。

それ以外のメンバーは既に帰還したメンバーの車に乗せて貰って帰っている。

 

そんな中、残存するごく一部のギャラリーの中からある人物が静かに動き出していた。

帰路につくギャラリーたちに混じって流しのペースで数往復したりと、軽めに走っては戻りを繰り返していたファンタジアの車が、再び山頂の駐車場に入り各々が休憩に入るのを見届けると1人の女性がその集まりの中へと向かって行く。

 

???「ねぇ、ちょっといいかな?」

 

魔理沙「ん?なんだ?」

 

???「あなたたちがファンタジアって言うレディースチームで合ってるのかな?」

 

魔理沙「確かに、私たちがそうだぜ」

 

水希「やっぱり!……私、大凪水希!普段は神奈川とか東京で走ってるんだけど、最近は群馬の峠が盛り上がってるって言うから今日はギャラリーしにここまで来たの。最近話題のレディースチームと、ついでにハチロクを見にね。あの黒いチェイサーに乗ってるわ」

 

そう言う彼女の指さす先には一台のJZX100型チェイサーのツアラーVが鎮座していた。

ブラックのボディにTRDのフルエアロという出立ちで、いかにも走り屋らしい車と言えた。

 

アリス「そうなのね。……私はアリス・マーガトロイド。あの白いスープラのオーナーよ。よろしく」

 

文「私は射命丸文と申します。ブンブン丸モータージャーナルというインターネットブログを運営していまして、今はこのチームを密着取材させていただいているんですよ。愛車はあのR35 GT-Rです」

 

はたて「私は姫海棠はたて。ブンブン丸モータージャーナルの共同運営者のうちの1人なの。一応、これでも記者の卵なのよ。……今日はギャラリー目的で来てたから車には乗って来てないんだけど、普段は205セリカに乗ってるわ」

 

魔理沙「私は霧雨魔理沙だ!あの黒いR34 GT-Rに乗ってるぜ。……ま、至って普通の走り屋さ」

 

アリス(……何言ってんのよ。あんたが普通なわけないでしょ)

 

水希「ふーん、マーガトロイドさんに、射命丸さんに、姫海棠さんに、霧雨さんね。……改めて、よろしくね」

 

自称、普通の走り屋だと言う魔理沙の言葉に冷ややかな視線をぶつけつつ内心で突っ込むアリス。

それぞれ自己紹介を終えると早速車談義へと発展して行く。

彼女がまずターゲットとしたのは同じトヨタ車のスープラからだった。

 

水希「それにしても、みんないい車に乗ってるのね。GT-Rもスープラもよく仕上げてあるいい車じゃない。……この白いスープラは社外のエアロが組んであるのね。何処のブランドのものなの?」

 

アリス「エアロはDo-Luckのものよ。でもエアロミラーはJUNだし、ウィングはTRD、ボンネットはVARISなの。……前のオーナーのカスタムを一部引き継ぐ形で弄ってるから、結構バラバラね」

 

水希「へぇ、でもなかなかイケててかっこいいじゃん!」

 

アリス「そう?……ありがとう」

 

目を輝かせながらスープラを眺める水希の姿に、オーナー冥利に尽きると言えば言い過ぎかもしれないが、それでも悪い気はしないアリスだった。

 

水希「それにしてもマーガトロイドさん、本当に日本語上手だよね。日本に来て結構長いの?」

 

アリス「まぁ、そうね。……でも、日本に来る前から日本語自体は勉強していたから……。あと、私のことはアリスでいいわ」

 

水希「……なるほど、そうなんだ。……それじゃあアリスさん、エンジンルームとかも見せてもらっていいかな?私のチェイサー、今は1J積んでるんだけどさ、今後は2Jにスワップしてパワーアップするのもありかなぁ……なんて、ちょっと考えてたりするんだよね。だからカスタムの参考にさせてもらえないかなって思うんだけど……」

 

アリス「えぇ、私ので良ければ構わないわよ」

 

水希「よし!それじゃあ……」

 

そして水希はアリスのスープラのエンジンを見ては、またしても目を輝かせながらあれやこれやと語り出す。

 

水希「わぁ……!エンジンカバーからストラットタワーバーのブラケット、サクションパイプ、ウォッシャータンクのキャップから冷却系のパイプ周りまですっごく綺麗にメンテしてるじゃん!私のもそうなんだけど、走り屋の車ってすぐに汚れてボロッボロになるのに……」

 

魔理沙「まぁ、アリスは繊細な作業とか得意だからな。本職が人形師って事もあるんだろうけど、結構器用だし」

 

器用の一言で纏めているが、アリスはマシンの清掃には人形を使っている。

メカニック人形と呼ばれるその人形たちが腕の入らないところなどに入り込んで磨いたり、複数箇所を手分けして清掃したりしている。

 

水希「へぇ……人形師なんだ。それって、人形を糸で操って人形劇とかしたりするあの……?」

 

アリス「えぇ、まぁそんな感じね。子供向けのものがメインなのよ」

 

 

 

そのあとは魔理沙と文のGT-Rへとターゲットを移してまたマシンガントークを繰り返して行く。

若干イツキと被る感じのハイテンションっぷりを見せられるも、喋る内容の9割が褒め言葉なためにアリスたちはどこかこそばゆい様な感覚すら覚えていた。

 

だがそんな時間も束の間、水希の纏う空気が変わる。

 

水希「さて、本当はもっと話していたかったんだけど……そろそろ本題に入らなくちゃね」

 

はたて「本題……?」

 

文「……と、言いますと?」

 

とは言いつつも文たちは水希の纏う雰囲気からおおよそ察してはいた。

ただ同じ車好きとして駄弁りに来ただけではないと。

 

水希「……いきなりな話で悪いんだけど、私ね……あなたたちとバトルがしてみたいの。この秋名の峠で。時間は明日の夜10時半ごろ。出来ればこのチームのエースと……なんて考えてはいるんだけどね、でもまぁ……予定が合うメンバーであれば誰でもいいわ。……せっかく県外まで来たんだし、何より同じ女の走り屋同士だし……ここで一つ、思い出作りがしたくて」

 

それはやはり案の定と言うべきか、バトルの誘いだった。

 

 

 

 

 

水希「じゃあまた明日ね。……楽しみに待ってるよ」

 

そう言うと水希は自らの愛車であるチェイサーに乗り込むと元気な1Jサウンドを響かせながら秋名の峠に消えて行った。

結局、この場にチームの意思決定権を持つ人がいないと言う事でバトルの誘いは一度持ち帰ると言うことになった。

文が水希との連絡先を交換してパイプ役となり、明日の日没前に詳細を伝える手筈となっている。

 

一応どうなるかは分からないとは伝えたものの、心の内ではほぼ問題なく通るだろうと彼女たちは考えていた。

もうそろそろ腕試しの機会が欲しいと言うメンバーもまだ多いため、複数人の候補からの選出もあり得ることだった。

 

文「さて、私たちもそろそろ帰りましょうか」

 

魔理沙「あぁ、もういい時間だからな」

 

その言葉を皮切りに、彼女たちもまた帰路につく。

仮眠をとる僅かなギャラリーを残して、峠はほんの束の間の静寂を取り戻した。

 

 

 

 

 

● ● ● ●

 

 

 

 

 

あのバトルから一夜明けて、中里はぶつけたR32のリアを治してもらうべく、ある場所へ車を転がしていた。

そこは一部の妙義の走り屋たちがよく使うことで知られる『近藤自動車』という妙義山麓にある、主に日産車をメインに扱う自動車整備工場兼中古車販売店で、中里はそのショップの常連のうちの1人だった。

割と良心的な値段で板金や整備、カスタムから車検まで対応してくれてなおかつ腕が良いとあって、走り屋から一般人まで地元民からの評判は上々だった。

そんな店の駐車場に中里が車を停めていると、中から1人の老人が姿を現した。

一部が煤けた作業用のツナギを着た白髪頭の老人。

彼こそがこの店の店主を務める、近藤亮太郎という男だった。

 

近藤「中里!お前……また事故りやがったのかこんの大馬鹿野郎!ほんとにオメェの刺さり癖はシルビアに乗ってた頃から変わんねぇな!これで何度目だ!」

 

彼はリアの凹んだ中里のGT-Rを見るや否や怒鳴りつける。

中里も事故った自分が全て悪いという自覚があるだけに、これには流石に言い返せずタジタジとなる。

ましてやこのGT-Rは彼の店で買った個体であるため、中里が怒られるのも無理はないことだった。

 

近藤「見た感じ、どうせまた垂れたタイヤで攻め込んでケツ暴れさせたんだろ」

 

中里「そこまで分かるのか?」

 

近藤「そんなもんタイヤを見れば一発だ。そんなタイヤカスまみれのツルツルのタイヤで来やがって!リアも大概死にかけだが特にフロントに至ってはもう限界だ。ワイヤー出る一歩手前って感じだな。……お前が前にリアバンパーを割りやがった時にも言っただろうが。重い車はそんだけ強く遠心力が働くんだ。タイヤが垂れて食いつきが悪くなったら、コーナーで外に持ってかれたり、パワーオーバーでケツが出て立ち上がりイン巻きしたりするからあんまし無茶なことはすんなってよ」

 

相手の方が正しいだけに、バツの悪そうな表情の中里。

だが久しぶりに限界の限界まで攻め切って走った昨日のバトルのことを思えばこうなるのも致し方のないことではあった。

 

中里「……それで、今回はいくら掛かりそうなんだ?」

 

気持ちを切り替えて中里は本題へと入る。

それなりに稼ぎはいいとはいえ、趣味が趣味なだけに懐事情はそこまで余裕のない中里にとってはそれが気がかりだった。

 

近藤「詳しいことは持ち上げたりしてもっとよく見てみなきゃ分からねぇけどな、ざっくり10万超えってとこか?」

 

中里「10万超え!?」

 

思いもよらぬ高額修理に仰天する中里。

しかし近藤は驚く中里を無視してさらに詰めていく。

 

近藤「この凹みと線傷と塗装ハゲは1ケタ万円じゃ治せねぇよ。多分、ガードレールの繋ぎ目の角になった部分がフェンダーをかなり深く抉り取ったんだ。派手にやりやがって。これ交換した方がまだ安くつくかもなぁ……。それにな、このスリックタイヤみてぇなツルツルのタイヤのままでこの俺が車返すわけねぇだろ。あとホイールもガリッてるから一応アライメントも見ておいた方がいい。この感じならほぼ確実に足の方にもダメージが来てるからな」

 

こうまで言われてしまえば中里はただただ黙って聞くしかなかった。

ひとまず、近藤の弟子でもある店員に鍵を預けて車を動かしリフトまで運ぶと、近藤と共にリフトアップされる愛車の姿を見送った。

 

結局、中里のR32は15万円(代車の料金も込みで本当はもっと高くついたが近藤の好意で少しだけまけてもらった)の高額修理となり、修理の間は店の代車を借りて行くこととなった。

 

近藤「中里よぉ、俺も歳何だからあんまりキツい仕事をさせんじゃねぇよ。俺もうそろそろ70だぞ。定年なんかとっくに過ぎてんだ」

 

中里「いや、それは……まぁ、悪いとは思ってるが……」

 

近藤「……悪いと思ってんなら、もう少し車は丁寧に扱え。まぁ、もし俺になんかあったらプライベーター時代の後輩の店を紹介してやる」

 

ここでもやはり、中里はバツの悪そうな表情を浮かべる他になかった。

 

 

 

 

 

そして今度は修理中に乗る代車の話となる。

普通にディーラーに任せても大した車には乗れないが、近藤の店であれば客のニーズに応えた車を貸し出してくれる。

一般的なユーザーであればサニーやセレナ、マーチ、エルグランドなどがメインで、車好きや走り屋であればブルーバードやスカイライン、シルビア、プリメーラ、パルサーなどだ。

 

近藤「それで、代車なんだがな。今すぐ用意できるもので一番いいのはあれだ。ちょっと前まではお前さんも気にかけてたあの黄色のENR34があったんだがあれはもう売れちまった」

 

近藤の指を刺す先にあるのは1台のシルバーのセダンだった。

 

中里「お、32じゃないか」

 

近藤「あぁ、だがBNRじゃない。HRだ。2ヶ月前に入荷したばかりでな、一応売り物でもあるんだが、思いのほかモノがいいんで最近うちの若い衆や俺自身が代車だ試運転だと適当に理由付けて乗り回してる車だ。こいつを貸してやる」

 

HR32型スカイライン、その4ドアモデルだ。

3オーナーの古い車ではあるが歴代のオーナー全てで当たりくじを引いた幸運な個体であるらしく、メンテナンスの記録が残っているものを確認するだけでもかなりの量みっちり記してあり、その車がどれだけ大切にされていたかを察せられた。

 

売却前にもブッシュの打ち替えやクラッチとレリーズベアリングなどの消耗品の交換を行ってあり、状態がすこぶるいいので近藤自身が所有しようか三日三晩悩んだほどであると言う。

 

 

近藤「一応仕様を教えてやる。……外装は純正フロントリップ以外はフルノーマルのスポイラーレス仕様でホイールはエンケイ製RP01を履いているな。足はテインの車高調で2センチダウンしてある。タイヤは2年落ちのヨコハマアドバン製だ」

 

シンプルな外装に、綺麗に磨かれた白いホイールは中里の目を引きつけた。

コーティングを定期的に施工していたらしいと聞くため、塗装のクリア剥げもない。

恐らくはガレージなどの屋内保管が基本であったと推測されていて、樹脂部分やモールの脱色やダッシュの日焼け、変形もないまさに極上車だった。

 

中里「(Rじゃないってのはちと残念だが仕方がないか。これだけ綺麗なHRに乗れる機会もなかなかないだろうし、そもそも今の俺は贅沢言える身分でもないしな)それにしても凄いな。これだけ綺麗な個体はそうそう無いぜ。一応チューンは施されてるように見えるが、元のオーナーも走り屋だったのか?」

 

近藤「詳しい個人情報は明かせないが、一応そうだったみたいだな。……仕事の事故で足に後遺症を負ったのが売却の理由らしい」

 

中里「なるほどなぁ」

 

世の中には様々な理由で望まない理由で渋々と車を降りていく人がいる。

病気の治療費のため、借金返済のため、あるいは怪我のためなどなど。

顔も名前も知らないその前のオーナーも、その1人だったようだ。

 

次に内装を見ていく。

 

近藤「内装もまた控えめだな。レカロのSR-3が運転席にある以外はほぼノーマルのまま、シートベルトも競技志向の4点や6点ではなく普通の3点だ。リアシートも撤去せず、ロールバーも組んでいない。5MTのシフトノブもステアリングも純正だ。ついでに、ミッションもクラッチも純正のまま。カスタムも最低限だな」

 

中里「中もずいぶん綺麗だな」

 

近藤「あたりめぇよ。俺が先週掃除したばかりだからな」

 

そう言いながら近藤はドアを開けると、ボンネットのロックを外すためにレバーを引っ張る。

ボコンという音と共にロックが外れた。

 

近藤「さて、お次はエンジンだ」

 

ドアを閉めて車体前方に回るとそのままボンネットを持ち上げた。

 

中里「おぉ」

 

内外装を見て想像はついていたものの、エンジンルームも相当に綺麗にしてある様で、中里も思わず声が漏れる。

 

近藤「純正オプションのストラットバーと、ニスモ製スポーツエアフィルターがついている以外はこれもノーマルだ。馬力は精々160ってところか。BNRのツインターボと違ってコイツは2リッターNAだからな」

 

中里「160か……」

 

近藤「確かにパワフルな車じゃねぇが軽い分だけきびきび動くぞ。それでも380馬力のGT-Rに慣れた体なら物足りなく感じるのも分かるけどな、だがたまにはこう言う車も良いんじゃないか?ハイパワーターボにはハイパワーターボの、ローパワーNAにはローパワーNAの良さってもんがあるんだ」

 

中里「ローパワーNAの良さ……か」

 

そう聞いて中里は昨晩のことを思い出す。

 

これまで中里はGT-Rに優る車などないと考えていたし、ましてやパワーのない車のドリフト走法など自分のグリップ走法に比べれば劣っているとすら思っていた。

だが、それも昨日までの話。

 

中里自身がもうこれ以上ないと言うくらいに攻めまくっても逃げきれず、それどころかまるで背後霊の様に背中に張り付いて離れなかったあのハチロク。

最後はほんの一瞬の隙をついてGT-Rを抜かして走り去って行ってしまった。

あの圧巻の走りが、バトルが、今でも脳裏に焼きついていた。

 

そんなハチロクの速さの秘密に、この車に乗ればもしかしたら近づけるかもしれない。

そんな淡い期待が中里の胸中に芽生えていた。

 

近藤「ほらよ、鍵だ。……くれぐれも、事故るんじゃねぇぞ。もし刺さって廃車にしやがったらお前出禁にするぞ」

 

中里「うぐ……それは困るぜおっちゃん」

 

近藤「なら気をつけて運転するこったな。さっきも言ったがもう少し車は丁寧に扱え。……それが近道でもある」

 

中里「ん?そりゃあ、どう言う……」

 

鍵を受け取りながら話している最中に出て来た唐突で意味深な言葉に思わず聞き返す中里。

 

近藤「いずれ分かる。とにかく、出来る限りは早く仕上げてやるからそれまで達者でな」

 

中里「あぁ」

 

そう短く返事をすると中里は早速車に乗り込んだ。

キーを回してエンジンをかかると2〜3回ほど軽く空吹かす。

クラッチを繋げて徐々に前進させると、店の出入り口からゆっくりと車を出して家へと向かう。

 

中里(HR32スカイラインGTS……GT-Rよりも軽い自然吸気のFRか。お前なら、あいつが持ってて俺には無いものを、教えてくれるのか?)

 

ほぼノーマルのエンジンに純正マフラーのRB20が控えめなサウンドを車内に伝える。

今の中里には何も分からなかった。

 

 

 




中里のエピソードに関しては「『また』板金7万円コースかぁ……」と言うセリフ1つから、行きつけの腕のいい板金屋を知っているのではと想像を膨らませていき、作者的な解釈を交えてこんな感じに仕上がりました。

あとRが修理中の時に乗る代車次第ではその車がヒントに化けることもあるのかなぁとも考えていたためこの車のチョイスになりました。
GT-Rじゃなくてもスカイラインはいい車ですよ。
あとこの原作にないオリジナルイベントが後々の中里の覚醒フラグになったらいいなぁ……なんて考えてもいたりします。

2024 / 5 / 3 22時45分
間違えて外伝部分に投稿してしまったため、挿入位置を修正。
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