東方頭文字D 〜 Lunatic Stage 〜 作:D-Ⅸ
また、今回も原作モブ走り屋のネームド化キャラ(準オリキャラ)が登場します。
リクエスト(キャラ、車両、エピソード等問わず)はまだまだ募集中です。
感想や評価、または誤字誤植の指摘等もよろしくお願いします。
3チームのシルビア組が隊列走行パフォーマンスの打ち合わせ(と、そこから盛大に多重脱線事故を起こしたシルビアトーク)で盛り上がっている頃。
一方、それ以外の車のメンバーたちはと言うと、各々自己紹介を済ませて早速練習走行を始める準備をしていた。
この場にいるメンバーは、ファンタジアはセリカGT-FOUR(ブラック)の姫海棠はたてとランエボⅥ TME(パッションレッド)の藤原妹紅、FD3S RX-7(スーパーブラック)の黒谷ヤマメ、そしてGDB-F型鷹目インプレッサ WRX スペックC(WRブルーパール)の上白沢慧音。
レッドサンズはブリリアントブラックとモンテゴブルーマイカのFD3S RX-7驚異の2台持ちという杉本芳樹・尚子兄妹の二人。
ちなみに尚子はレッドサンズ唯一の女性メンバー、いわゆる紅一点であり、男性ファンからはちょっとしたアイドル扱いを受ける事もあるようである。
スピードスターズはKP61スターレット(ラブリーレッド)の野沢滋とA170ランサーEX 1800GSRターボ(サラエボホワイト)の後藤守、AX7アルシオーネVR(ブラック)の中山四郎。
スピードスターズとレッドサンズの昨日いなかった面々は本当に秋名に美少女走り屋集団が現れていたことに内心驚きを抱えていたが、同時に興味を持っていた。
しかしやはりと言うべきか、向こう側で固まっているシルビアの一団と同じ様に、同じ車に乗っている人同士はお互いどこか惹かれ合うところがあるらしく、特に「例え走りの腕では敵わなくてもFDに対する愛だけは啓介さんにだって負けてない」と豪語している杉本兄妹の二人はかなりチューンされている様に見受けられるヤマメのFDに興味津々であった。
尚子「ねぇ、ヤマメちゃん。さっそくなんだけどあなたのFD、ちょっと見せてもらってもいいかな?」
芳樹「R magicのワイドボディキットのフル装備は初めて見るからさ、同じFDのオーナーとして、少し興味があるんだ。構わないかな?」
ヤマメ「いいよ。他の人がどんなカスタムしてるのか気になるもんね。その代わり、あとであなたたちのFDも見させてくれない?私も他の人のFDがどんなチューンをしてるのか、ちょっと気になってたところだし」
尚子「うん。もちろんだよ。同じ車同士、こうやって間近で自分のFDと見て比べてみると、いろんな発見があるもんね」
芳樹「今後のセッティングの参考にだってなるからね」
杉本兄妹の申し出を快諾するヤマメ。
すると二人は早速ヤマメのFDをまじまじと眺めていく。
芳樹「それにしてもすごいな……。ヘッドライトも結構軽そうな固定式だしボンネットとウィングもカーボンだ。やっぱりかっこいいな。特に排熱を考えても実用的だし。でもウィングはR magicのウィングの形じゃないね。ステーはアルミで3段階調整式なのか?」
ヤマメ「うん。このGTウィング、うちのメカニックのショップに依頼して、最近のモデルを参考に制作してもらったワンオフ品なの。ちなみにお友達価格って事でちょっとだけ安くしてもらったのよ」
芳樹「え、マジで?ワンオフ!?めっちゃかっこいいじゃんか」
尚子「すごい!いいなぁ!羨ましいよ」
ワンオフ品と聞いてテンションの上がる2人。
競技車両を思わせるエッジの効いたデザインのカーボン製GTウィングに、素材の保護のためにクリアを吹いてツヤを出しているため斜めから見ると街灯の光を反射してきらりと輝いている。
尚子「ワイドフェンダーも後付け感がそんなに無いし、これはこれでかっこいいね。そのおかげでホイールとタイヤも結構太いのが履ける様になってるんだね」
ヤマメ「そうよ。純正の16インチ8Jから前は17インチ8.5Jに、後ろは17インチの9Jにインチアップしたの。タイヤもホイールと一緒に前後で同じサイズだったのをスピリットRのタイヤサイズを参考にして225からそれぞれ245と265に、一回りから二回りぶん少しだけ太めにしてみたんだ。ただ、あまり大きく太くし過ぎてもかえって曲がらなくなったり止まらなくなったりするからその辺のバランスを考えて18インチにはしてないんだよね。私のFDは軽さがウリのチューンをしてるし、バネ下重くしたくもなかったから……今みたいに峠向きのセッティングをしてる時はちょっとだけ引っ込み気味かな。サーキット行く時は別のタイヤとホイール履かせるんだけど」
芳樹「なるほど、タイヤも国産のハイグリだし、サイズも後輪のトラクションを優先して前後で違うサイズにしてる感じなのかな?結構色々考えてるんだねぇ。FDに限った話じゃないが、やっぱりタイヤ周りだけでも乗り味と言うか、そういうのは随分変わるからな。前に金銭的にキツくてタイヤのグレード下げて、純正ホイールをガレージから引っ張り出してサイズもインチダウンしたら、コントロール性自体はまぁ悪くはなかったんだが、肝心のグリップは結構落ちちゃって全然タイム出なくてな……」
尚子「内装もシートは両方ともバケットシートだしステアリングも定番のMOMOになってる。ホイールだってバーディクラブの軽そうなやつ履いてるし、ブレーキはスピリットRの純正ブレーキ流用だよね。かなり気合入ってるじゃん。……私たちも負けてられないや」
ヤマメ「うん。かけたお金も思い入れも人一倍って感じかな。この子、もともと放置されてた事故車で、それをタダで引き取ってうちのメカニックと一緒に時間かけて私がフルレストアしながらチューンした車両でさ、外装を総取っ替えするならせっかくだしボディキットの部分以外はあらかたカーボン製にしちゃおうってなってね。ルーフとかトランクとか、あとドアも。試作品って名目でワンオフで作ってもらったパーツなんだよ」
芳樹「これもワンオフパーツって……そりゃあまたすげぇなおい」
ヤマメ「内装もそんな感じで、ダメになってるところはあらかた社外品に交換したの。シートやステアリングは当然ダメになってたしスピーカーやパワーウィンドウも壊れてたから一度全撤去してドンガラみたいにして、弱ってる部分を補強したり、あとはブッシュ類も打ち変えたり……多少の作業は教えてもらいながら自分でやったのよね。それで結果的には新車買う以上のお金がかかったけど、でも元々大した使い道もなくて寝かせてただけのお金だし……」
芳樹「なるほどなぁ、放置事故車を全身フルレストアか……そりゃあ愛着も湧くってもんだよ。実質、一から組み上げたオンリーワンだからな」
ヤマメ「うん。なんか、放置されてるのを私が見つけた時にね、ちょっと思うところがあったの。なんとかして治して、走らせてあげられないかなって」
尚子「すごいね……地道に治して作り込んで来たんだ……。今じゃ元が事故車だって分からないくらいに綺麗だよ」
芳樹「うん。こんだけ大事にされてたら、君のFDも喜んでるだろうよ」
ヤマメ「ありがとう。でも私はまだ走りたがってたFDの夢を叶える手伝いをしてるだけだから」
元が野晒しの事故車だということが見た目からでは分からないほどにチューンされたヤマメFDに、感心しきりの2人。
ここで妹の尚子が一つの提案をヤマメに投げかける。
尚子「そうだ。私……あなたのFDが走ってるところ、見たくなっちゃった。練習走行も兼ねて一本一緒に走らない?」
ヤマメ「もちろんいいよ。一人で走るよりも誰かと一緒に走った方が楽しいからね。よかったら芳樹さんも一緒にどう?」
芳樹「え?お、俺も?……君がいいのなら俺もご一緒させてもらおうかな」
尚子「良かったねお兄ちゃん。金髪美女からのお誘いだよ?」
芳樹「よせよナオ……。あんまりからかうなって」
ヤマメの方からの誘いがあったことに思わず動揺する芳樹。
妹にそれを軽く茶化されたことで顔を赤らめる。
そしてそれを誤魔化すように少し癖のついた前髪を指でいじるのが彼の癖であった。
尚子「それじゃあ早速行ってみよう!ヤマメちゃんが先頭で、私とお兄ちゃんの順番ね!」
直子のその言葉を合図にそれぞれが自分の愛車へと向かう。
ヤマメ「それじゃあよろしくね」
直子「よろしくねー!」
芳樹「うん。よろしく」
3台のFDがエンジンを始動し、ブォン!と小さく唸りR magicとFEEDとマツダスピードのそれぞれ異なるエキゾーストサウンドが混じり合った三重奏があたりに響く。
R magicエアロとワンオフGTウィングにスーパーブラックのヤマメの前期2型FD、マツダスピード製のフロントリップとMS-01ホイールに前期純正リアスポイラーのモンテゴブルーマイカのボディカラーをした尚子の前期3型FD、マツダスピード製のフルエアロに後期Type Ⅱ仕様リアスポイラーのブリリアントブラックの芳樹の中期4型FDが駐車場をゆっくりと出て行く。
ヤマメが3人一列に並んだことを確認すると徐々にエンジンを唸らせスピードを上げて行く。
バトルではないため最初からフルアクセルとはいかないものの、3台のFDはそれなりの速度で甲高いスキール音を鳴らしながら1コーナーに飛び込み消えて行った。
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♪ Take A Chance With Me / Denise
ヤマメの後に続いて走る杉本兄妹は、先頭を行く彼女の走りに驚嘆させられていた。
まず最初の1コーナーは小手調べの様に、峠のテクニックとしてはスタンダードなサイドブレーキを使ったドリフトでやや大ぶりのアングルを付けて難なくパス。
続く2コーナーはそのままグリップで通過。
そして序盤の難所であるタイトなヘアピンに差し掛かる。
杉本兄妹が走り屋としての直感からもうそろそろブレーキングを考えるタイミングに差し掛かり、アクセルを踏む力を緩めたタイミングになっても、ヤマメは依然としてコーナーへ向け加速していき、両者の車間は開いていく。
ヘアピンの直前、ヤマメの攻め方に若干肝を冷やしつつも2人が3速から2速へシフトダウンしブレーキングに移行したタイミングになってようやくヤマメのブレーキランプが点灯したかと思えば、それまで離れかけていた車間が一気に急接近。
そしてサイドターンの要領か、まるでスピンしたかと錯覚する様な勢いで大きくリアを振り回してコーナーの出口に鼻先を向けると再加速していった。
尚子「うわぁ!(びっくりしたぁ……すっごいブレーキング!制動力の立ち上げ方が上手い!)」
芳樹「おいおい……(最序盤からこれってマジかよ……ホームコース以外でこの思い切りのいい突っ込み!さすがだな!)」
しかし、かく言う2人も伊達に赤城のトップチーム、レッドサンズにいる訳ではない。
ヤマメからはワンテンポ遅れながらも大きなフェイントモーションを伴うドリフトで後を追いクリアする。
少し車間は開いていたもののヤマメが加速を抑えていたためにすぐに追いつき再び次のコーナーへと入る。
ヘアピンから短いストレートを経て突入する4コーナーはグリップによるアウトインアウトの基本的なライン取りでのグリップ走行で3台一列に通過。
そして次のコーナーには便宜上ストレートとして扱われる極めて緩い曲がりがあり、そこを抜けた先にあるややキツめの右コーナーに突っ込んだ。
軽く踏む程度と言った感じで最低限の、いわゆる荷重移動のためのブレーキングで前方に荷重を移してリアの荷重を抜いてやり、ホイールスピンをさせながらさりげなく遊ぶ程度にテールを流してパスしていく。
さらに殆ど間髪入れずに左の先ほどよりもさらにタイトなヘアピンが迫る。
そこでもやはりヤマメは先ほど同様にフルブレーキングと共にイン側にノーズを突き刺す様な勢いで車を文字通り『旋回』させ車が出口を向くと同時にステアリングを戻しリアのホイールスピンを抑えてグリップを回復させると同時に再加速。
尚子(悔しいけどすごく上手い!こんなに生き生き動くFD、中々居ないよ。合わせるこっちがキツくなってくる!)
芳樹(軽量化が効いてるんだろうな。鼻先の入りが俺たちよりもワンレベル上だ。特に重量物のモーターがエンジンルームから移設されているのと、ハンドリングを悪くするリトラを廃止して固定式ライト化したことによるフロントオーバーハングの軽量化の影響もあるんだろう。あとはカーボンボンネットもか。まだ限界の見えないドライバーの腕といい、長所を的確に伸ばすカスタムのセンスといい、本番のタイムアタックが恐ろしい)
そこから先はさらにスピードの乗りやすい緩やかなコーナーと直線の組み合わせから、次いでくの字に曲がるややキツめのコーナー、そこを抜ければ幾ばくかのストレートの次には2連ヘアピン。
そして秋名名物であるトップスピードに乗るスケートリンク前ストレート。
3台のFDはエンジンをレブまで引っ張りながら全開で駆け抜ける。
展望台前の左コーナーが迫るが3台とも全力のフルブレーキングで突っ込んだ。
シフトダウン時のエンジンブレーキとフットブレーキの合算で急激に速度を落とす。
荷重の急激な移動を感じとりながらそれぞれのタイヤのグリップが一番美味しいスイートスポットを狙いステアリングを切り込んで行く。
尚子「上手く行けた!今日は走れてる!(ヤマメちゃんがこっちに合わせてくれてるし、こっちもタイミングが掴めて来た!少しずつ、少しずつだけど馴染めるようになってきた!これなら付いていけてる!)」
芳樹「だんだんわかって来た!良い感じに乗れてるぞ!(3台のリズムが噛み合って行く感じがする!バトルとは違った走る楽しさが湧き上がってくる!)」
この辺りになってくると後ろの杉本兄妹も前を走るヤマメの走りに対して少しずつ順応していき、先頭で突っ込むヤマメのドリフトに続く形で自分たちもほとんど変わらないアングルでドリフトを合わせて徐々に車間を詰めようとする余裕が生まれていた。
タイトな展望台前の左を抜けてヤマメは流しっぱなしのドリフト状態のままリアを振り返してゆるい右のコーナーを流し、さらにギャラリーらしき人影を横目に捉えながらも左、右、左とリズミカルに、まるでステップを刻むようにドリフトを繋げて抜けて行った。
尚子「すごい……すごいよ。本当に。あの啓介さんが褒めてただけはあるよ(実際に後ろを走ったからこそ分かる。ヤマメちゃんは……あの子は私たち以上にFDを乗りこなせてる!過剰なステアリングの操作がないから私たちよりもよりシームレスでスムーズな、『車と喧嘩をしないドライビング』が出来てるんだ。啓介さんや涼介さんみたいな『本物のロータリー使い』が、まさかこんなところにいたなんてね!)」
芳樹「コーナーを一つ抜けるたびに痛感させられるな。ほんと、マジでとんでもねぇ(前に彼女との比較対象になるナオがいるからこそより強く見せつけられる!進入時のブレーキングにライン取りとクリッピングの位置、カウンターステアの舵角から立ち上がりのアクセルワーク。全てにおいて俺たちより上だ。俺たちはあれほど自由に振り回せないし、あれほど思い切りよく踏み切れない。……でもここまで気持ちのいい走りを見せられたらむしろ一緒に走るのが楽しいくらいだ。全く、不思議なもんだよ)」
伸びやかに、誰にも邪魔されず。
窓を開けて風を感じ走る3人の耳に、楽しげなFDたちの声が響く。
それに釣られて、乗り手の口元にも自然と笑みが浮かんでいた。
攻めるためではなく、楽しむためにエンジンを回す。
3台のFDがロータリーサウンドに小気味の良いスキール音を添えて秋名の夜を舞台に踊り、歌う。
それは麓の駐車場にたどり着き終幕を迎えるまで途切れることは無かった。
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麓の駐車場、まだ誰もいないその一角。
走り終えた3人は満足感を共有しながら車を並べて談笑する。
芳樹「……やっぱりVマウントはよく冷えるんだよな。ありがちな前置きと違ってオーバーハングが重くならないしパイピングも短くて済む分コンパクトにできるからレスポンスだっていい」
ヤマメ「うん。特に私の使ってるトラストのキットはエアクリの配置にも気を遣ってて実用的なんだよね。吸気温度が低くなる分パワーロスも少ないし」
尚子「でもVマウントはエアコンも取り外してバッテリー移設してスペース確保しなきゃいけないし、結構お金かかるんだよね。……一か月丸々残業漬けで働きまくってやっと予算作れたって感じでさぁ、危うく過労死するかと……。でもまさかお揃いとは思わなくてびっくりしたよ」
芳樹「ところで、ヤマメちゃんはタービンをシングルにしてるんだ。これも結構大変だったでしょ。どこのタービン入れてるの?」
ヤマメ「私はレスポンス重視でギャレットのタービンにしたわ。純粋に馬力を求めるならTO4Zとかのもっと大きなタービンでも良いのかも知れないけど、私はサーキットよりも峠をメインにしてるから正直なところ最大馬力とかどうでもよくてさ、低回転から立ち上がってくれるこれの方が合ってるの。純正シーケンシャルに比べて変なところでのトルクの落ち込みも無い分フィーリングも自然だし何より整備しやすくて壊れにくいし、あと特性的にも扱いやすくてパワーもそこそこ出るから交換してからいいことずくめね。複雑な切り替え機構を全部省けるから軽量化にもなるってのも魅力かな。エンジンルーム内もスッキリするし熱気だって多少は抜けやすくなるんだよ」
尚子「なるほどねぇ……。やっぱりシングルタービンも選択肢としてはアリなのかなぁ……。むしろそっちの方がいい様な気がしてきた……。こうやって走ってるとどうしても純正のシーケンシャルは頻繁に壊れるもんね。私もこの前切り替え機構の不調でバルブが動かなくなっちゃっててさ、それでセカンダリータービンが止まっちゃったの」
芳樹「あと配管がすっぽ抜けた事もあったよな。どうりで回らない訳だと逆に感心したよ」
ヤマメ「あぁ、それは分かるよ。ターボ周りの配管配線系のトラブルは私もなったことあるから。ちょっと前……まだ私がシングル化させる前の話なんだけど、タイムアタック直前になって急にFDがぐずり出した時はびっくりしたわ。タービン周りのトラブルだっていうのはなんとなく理解できてはいたんだけど、その手の配管類ってエンジンルームのかなり奥まったところにあるじゃない?ステアリングシャフトとかインテークパイプとか、その辺の大物パーツどけないとまともに点検も修理もできなくてさ、その辺の煩わしさとかもシングルタービン仕様にした一要因だったりするの」
尚子「うんうん。本当はさ、もっとエアロとかにお金をかけたりしてみたいんだけど、そういうトラブルとかが結構あるから中々ね……特にさ、ヤマメちゃんのFDみたいにこういうレーシーで尖ったデザインのウィングとかエアロとか、好きなんだよねぇ。……でも、中身の方にお金を使ってるとエアロを買うお金が出せなくて……」
芳樹「あとはガソリン代も痛いよなぁ……」
ヤマメ「あぁ……確かにね。あとガソリン代だけじゃなくて整備や修理諸々の維持費も結構かかるんだよねぇ」
しきりに頷き合う3人。
オーナーである彼女らには身に染みている事ではあるが、FDというのは何をするにもとにかくお金のかかる車であった。
軽量コンパクトでパワーも出しやすいロータリーエンジンも、当然のことではあるが欠点もある。
それは燃費の悪さだった。
FDのおおよその燃費は高速道路や市街地で5〜7キロ、峠や首都高をハードに攻め込めば2キロ程度かそれ以下かと言った具合である。
この時代、昨今主流となりつつあるプリウスやインサイトと言ったエコカーがカタログ燃費で30〜33キロ、実測の燃費でおおよそ20〜30キロ手前ほどである点を見れば、ガソリンだけでもどれだけの金食い虫かは分かるだろう。
特に高速域ではかったるい代わりに低速からモリモリとトルクが出てくるそれらのエコカーと比べ、FDなどが搭載するロータリーエンジンは吹け上がりのフィーリングと高回転域でのパンチのある加速感こそ素晴らしいものの、その代わりとして、低回転域ではトルクがスカスカなせいで街乗りでの常用回転数も多少高くなりがちとなる。
さらにFDはオイルなどの油脂類の交換も、健康な状態を維持したまま乗り続けるのならば通常よりも早いスパンでやらなければならないし、純正のシーケンシャルツインターボ仕様の場合では、劣化した部品の交換を含むタービン周りの点検メンテナンスなどにもお金はかかる。
それ以外の面に目を向ければボディや足回りにも弱点がある。
それはミッションを支えるパワープラントフレーム(PPF)が強度不足によりクラックが入り断裂してしまうというものだ。
しかし、そうした愛車の欠点や愚痴を一通り語る時ですらも、彼ら彼女らは笑顔のままであった。
3台ともにボンネットを開け、エンジンから熱気を立ちのぼらせている。
熱量を伴ってゆらゆらと揺れる陽炎越しに見る3台は、まるで融けあい混ざり合うかのようだった。
それは例え所属するチームは違えども、同じ空間を共にし、同じ道を駆け抜けた走り屋としての仲間意識の表れであるかのように、3人には思えてならなかった。
2022 / 12 / 28 10時55分 レッドサンズ側FDの仕様に関する記述の誤植部分を修正。さらに一部の表現を追加または変更。
2023 / 11 / 29 13時39分 誤植部分の削除と修正。
同じ車同士で隊列を組んで走ってるだけでもきっと楽しいですよ。
ひたすらシャカリキになって攻め込んで、ただ前だけしか見ない、見れない走りよりも、余力を持って流し気味に走った方が意識的なマージンがある分マシンの音やハンドリングに心を傾ける余裕があってそれはそれで良いものです。
ちなみに今後の予定ですが、あと数話で話が一気に進んで本番の交流会となる予定です。
リクエストはまだまだ募集中ですが、もし仮に採用された場合でも登場はレッドサンズ戦以降となる可能性がかなり高いです。