1章ラストです。
一ノ瀬の精神世界。
苔むした墓標が並ぶ中、彼とコア人格は椅子に座った状態で相対していた。
しかし、それは前回のような1つの机を挟んだ形ではあれどカードゲームに興じる為のものではなく、面接の為の配置になっていた。
「面接官の一ノ瀬です。
早速ですが面接を始めさせていただきます。」
ビジネススーツに身を包みシャープなデザインのメガネを掛け、ゲンドウポーズで威圧感を放つ一ノ瀬が面接官役である。
「はい。」
対するコア人格もビジネススーツを着て面接に臨んでいる。ちなみに下はタイトスカートである。
「まずは志望動機を教えて下さい。」
「はい。
私が御社を志望した理由は…って!
何てことやらせるんですか!貴方は!!」
正気に戻ったコア人格はスーツのジャケットを引きちぎるように脱いで石畳に叩きつける。
「はい。ありがとうございました。
結果は追ってお知らせします。」
「スルーですか!
このセットを用意したのは私ですよ!!」
「あーもうキャンキャン五月蝿いなぁ!
いいじゃん!少し位ふざけたって!!」
さっきまでの圧迫感のある雰囲気は何処へやら、弛緩した雰囲気が場を占めた。
「あー、この前の件は謝りますからさっさと帰ってもらえます?
後、昨日の今日で
酷く疲れた様子で尋ねるコア人格の問い掛けに一ノ瀬はゲンドウポーズを崩さずに答える。
「ガッ!としてグワッ!てょわわわぁ~ん。ってやって来た。」
「真面目に答えてください!!」
「今回ばかりは真面目に答えたぞ!」
「むむむむ…!
はぁ…もう良いです。貴方を私のパイロットとして認めますのでさっさと帰って下さい。」
「昨日遊戯王でボコした時点でそうなってるはずなんだが…
まぁいいか。
んじゃあ明日からもよろしく頼む。」
一ノ瀬は言質を取ったと言わんばかりのにこやかな表情で精神世界からいなくなっていた。
「むぅ…帰れと言ったのは私ですが、好き勝手やった挙句片付けもせずにさっさと帰るとは…!」
後にはコア人格の悔しげな唸り声が残っていた。
▼▼▼
[side:簪]
突然だが、私は一ノ瀬・
具体的な内訳を言うと友愛9…8割、残りが恋慕の感情である。多分。
彼も私のことを少なからず好意的に見ているはずだ。そうでもないとあんなに献身的な行動をとるはずがない。
そう考えると色々と辻褄が合ってくる。
私とお姉ちゃんが仲直りするように仕向けたことや、『打鉄弐式』製作の手伝いをしてきたことが好いた相手への遠回しのアプローチだったのだろう。
でも何で私?
私の他にも良い人は居るはずだ。
湧いてきたネガティブな考えを心の奥底に押しやって考察を続ける。
ここは逆転の発想だ。
女子校のような状況の中でほぼ唯一趣味が合う異性。
日本の代表候補生の実力者。
ISについての造詣も深い。
プログラミングについては
顔は…お姉ちゃん曰く10人いたら10人が振り返るような美人。
スタイルは…まぁ年相応ぐらい?本音や虚と比べるとあれだが、それはあちらが異常なだけだし。
………あれ?結構ヒロインっぽいぞ私。
もしかしなくとも押せば行ける?
「か、かんちゃん~お~い」
「お~い、もしも~し?」
はっ!?何時からそこに!?
呼び掛けに気付き顔をそちらに向けると心配げな表情でこちらを覗き込む本音がいた。
「何か悩んでるみたいだったけど、何かあったの~?」
「いや、何でもないよ本音。
そんな風に見えたの?」
「うん。こう、ムムム~って感じだったよ~
…ホントに何もないの?」
「う、うん。大丈夫だよ。
本当に何かあったらちゃんと本音に相談するから、ね?」
「む~…約束だよ?」
「分かってるよ。」
本音の追及を受け流して数学の教科書を取り出して予習するふりをしながらさっきまでの推測を再開する。
さっきの考察から私と
多分と言うことは少し強めに押せば確実に落とせる。
うん。行ける行ける。
あのラウラさんから
私だけに向けるあの無邪気な笑顔、あれは私だけのものなのだから。
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[side:ラウラ]
私はクラリッサから送られた教本?なる漫画を備え付けの机で読み込んでいる。
内容はドイツから日本に転校してきた女子高生の主人公とその高校に在籍している男子生徒の恋愛ものである。
心を閉ざした主人公と彼女に歩み寄ろうとする男子生徒の恋愛模様はもどかしさが云々…
とクラリッサから紹介されたが、恋だの何だのは馴染みの無いこともあって目が滑る。
パラパラとページを捲りながら流し読みしていると主人公と男子生徒が一緒に昼食を食べるシーンが目についた。
不意に一ノ瀬と昼食を食べたことがフラッシュバックする。
何故今この光景が浮かんだのだろう?
突然脳裏に甦ってきた光景を頭を振って思考の中から追い出して漫画に意識を戻す。
漫画の内容に注目しようと心がける度に一ノ瀬のことがちらつく。
真っ直ぐにこちらを見つめる瞳。
時折こちらに向ける笑顔。
私にだけ向けたであろう無防備な泣き顔。
もしかして私は一ノ瀬のことを…!?
いやしかし私はあんな軟弱な奴のことなんて…
だがそしたらこの感情に説明がつかん!!
一度そんな考えに陥ってしまったが最後、一ノ瀬が私に対してとってきた行動1つ1つが、いわゆる
もしかしたら彼も私のことを…!?!?
脳内シナプスが過去最高のパフォーマンスを発揮し、逞しく妄想を拡げていく。
彼はどこで私を好いてくれたのか…?
ほぼ初対面か好意的に接していたような気がする。
もしかして向こうは一目惚れ!?!?!!!
私と一ノ瀬が手の中の漫画の主人公を自分、相手を一ノ瀬に置き換えた妄想をしそうになったところで思考を無理矢理止めて漫画を机に置き、ベッドに飛び込み枕に顔をうずめる。
これは間違いなく重症だ。恋愛漫画のヒロインにどうこう言えない程に恋に恋している。
このまま寝てしまおうにも目が異様に冴えて眠れない。
「うぅ…こんな時どうすれば良いんだクラリッサ…」
やっと仲直りできた私の部下の姿を思い浮かべるものの脳内に現れた彼女の返答は満面の笑みとサムズアップだけだった。
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[side:
新しーいあーさがきたーきーぼぅのーあーさーだ♪
朝8:00頃の廊下には鼻歌を歌いながら軽やかな足取りで教室に向かう俺。
何故ここまでハイテンションなのかと言うと、今日はあの『お前は私の嫁にする』宣言があると推測される日だからだ。
あれは良いものだ。
私はあれをアニメで見てブラックラビッ党に入った。
是非ともこの目で見たい。
こちらに転生してから知った簪さんやちょい役としてしか知らなかった本音さんも推すようになったが最推しはラウラさんだ。ここは譲れない。
あ^~!!ラウラさんと一夏の恋愛を応援しながらちょっと離れた場所から茶々入れながらデロデロに甘やかしたーい!!(性癖の開示)
原作とは異なりVTシステムは出なかったが一夏のスパダリ係数は青天井。実力も申し分ない。
ラウラさんは一夏の勇姿を見てある程度は好意的に見ていることだろう。
そこをクラリッサさんがその感情を指摘してやればもう完堕ちよ。
マジで何なんだろうな一夏の奴。男の俺でもキュンとくる行動とるなんて…恐ろしい子!!(裏声)
煩悩にまみれた思考を脇に置いて、教室の席に着く。
SHRの5分前になって一夏と箒さん、セシリアさんが教室に入ってくる。
「おっ、おはよう。
「あぁ、おはよう。」
今日もクールキャラのエミュは完璧である。
クールキャラに関しては次元を挟まないとキツいって昔のエロい人が言ってた。
この説に乗っかりクールキャラの皮を被ることで俺は原作の相関図を極力変えずに特等席でラブコメを眺めることができる。
仮にバレても一夏は優しいから吊し上げるようなことはしない、はず。
天才か?天才だ。(自問自答)
セシリアさんの件で懲りたのであれ以降は原作に沿うようにしているつもりだ。
うまく行ってるかは知らんが。
一夏達と世間話をしているとチャイムが鳴ったので席に戻る。
チラリとラウラさんの席を見るとまだ来ていないのか空いていた。
珍しいこともあるもんだ。
今日のホームルームは山ちゃん先生主導である。
淡々とシャルルが転校して行ったことが告げられ教室は騒然となった。
彗星のごとく消えていった貴公子だの何だの言われている中、新しい転校生が居ることがちっふー…ではなく織斑先生の口から告げられる。
そして転校生としてやって来たのは…
「えっと…シャルロット・デュノアです。
えへへ…またよろしくお願いします。」
本来の性別で再転入してきたシャル、本名シャルロットさんであった。
ほぼ全てのクラスメイトの脳が一斉に破壊された。
南無三。
君達の犠牲(脳)は忘れないよ。
そしてこの前男子生徒に大浴場が解放されたことに気付きクラスは再び騒然となった。
俺の方は近くの席のナギさんと本音さんから問い詰められたが、
「俺は知らないな。
確か一夏が長風呂していたから一夏に聞いたらどうだ?」
と、キラーパスを一夏に投げ付けて即退散である。
へへへ、見ろよ。シャルさんが肯定したせいで逃げ道無くなってるぜあいつ。
おっと、後ろの扉が開いて鈴さんが現れた!
「一夏ぁ!どう言うことか説明しなさいよ!!!」
鈴さん の チョークスリーパー!
効果は抜群だ!
おぉ、織斑一夏。死んでしまうとは情けない。
少し離れた場所で突如始まったプロレスのような蹂躙劇を観戦していると今度はラウラさんが教室に入ってきた。
ラウラさん曰く寝坊だそうだ。
時間に厳しい軍出身のはずだが、特殊部隊はまた別なのだろうか?
ぼんやりと遅刻理由について考えていると、ラウラさんが鈴さんを宥めてチョークスリーパーを解除させて一夏と向き合う。
来るぞ来るぞ…!
「これまで貴方やクラスメイト、鈴さんにしてきた行為について、謝らせてください。
本当に申し訳ありませんでした。」
あゑ!?
「えっと…頭を上げてくれ。
俺が不甲斐ないことも原因の一端だから…
俺は気にしていないし、な?」
俺の知ってるISと違う…(展開)壊れちゃったですぅ。
しかし、無情にも話は進む。
「まったく…アタシは前のことを蒸し返すほど狭量でもないわ。
許してあげる。」
「私も気にしてはいませんわ。
私自身の課題点が明確になりましたのでそう気に病まないでくださいまし。」
順に鈴さんセシリアさんの言葉である。
1番デカイ被害を被った2人が許したこともあって許してあげようといった雰囲気になり、呆然としていた俺を置き去りにラウラさんの件は一件落着となった。
肩の荷が降りたラウラさんはやや固い足取りで自分の席に向かうと思いきや、俺の目の前で立ち止まる。
急展開で固まっていた俺の制服のネクタイをラウラさんは掴む。
次の瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
目と鼻の先には顔を赤く染め、目をぎゅっと瞑ったラウラさんの顔。
鼻からやってくるのはIS学園でも嗅いだことの無い女性特有の甘い匂い。
耳にはクラスメイトからの黄色い歓声。
ほんのりと舌に伝わるレモンの味。
俺が今ラウラさんに何をされているのか気付くのにそう時間はかからなかった。
起きたことの余りの衝撃に引き剥がすことも出来ずに俺は、されるがままラウラさんにファーストキスを捧げた。
数十秒間いや、数分間だっただろうか。頭がホワホワして時間の感覚が怪しくなっていた。俺の唇から名残惜しそうに離れたラウラさんは林檎のように顔を赤くしながら高らかに告げた。
「お、お前は私の嫁にする!けっ、決定事項だ!異論は認めん!!」
それを聞いた俺は…
「キュゥ…」
何も答えられずに気絶した。
童貞には刺激が強すぎたんじゃ。
何がとは言わんが、凄く、良かったです。
・イッチ
推しに貢ぎまくっていたら推しの恋愛対象になってしまって慌てている。
一夏がスパダリだから最終的には一夏になびくんだろうなぁと考えている。
・簪
ヤンデレメンヘラ風ヒロイン。
恋敵が強すぎて脳破壊された。
・ラウラ
最短ルートをぶっちぎるヒロイン。
イッチの最推し。
大胆な告白はヒロインの特権。
・クラリッサ
ラウラのおかしな言動は大体コイツが歪んだ日本文化を伝えたせい。
ラウラに恋心を自覚してもらうために少女漫画を送り付けた。
嫁発言もコイツが教えた。
Ifルート(ほぼバットエンド)
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いる
-
いらない