正月ボケしてました。
[side:簪]
ついに来てしまったデート(仮)当日。
集合場所は朝一の校門前。そこからモノレールで移動。大型ショッピングモール、レゾナンスで水着を買う。その後は昼ごはんを向こうで済ませて夕方には学園に戻る。
ちなみに今日の私の格好はワイドデニムパンツにライトグリーンの半袖シャツ、白いスニーカー、ブラウンのトートバッグといったファッションだ。
昨日の夜遅くまで本音と話し合って決めた渾身のファッションだ。
ちなみにその話し合いの途中にお姉ちゃんが肌面積の広い服を大量に抱えて乱入してきたが、すぐ後に飛んできた虚によって回収されていった。
閑話休題。
私が校門前に到着すると、既に
声を掛けようと近づいたところで彼の服装に気付いた。
その服装はお洒落と言うにはあまりにも…その…ダサかった。
デニムのジーンズ。ここまでは良い。
デニムシャツ。………まだ慌てる時間じゃない。
デニムキャップ。…………………はい。
デニム生地のリュックサック。もう何も言うことはない。
デニムのロイヤル・ストレート・フラッシュが完成した。
最早デニムの妖精である。
ジーパンの製造ラインに紛れ込んでいても誰も気付かないのではないかと思う程にデニムである。
そこからの私の行動は速かった。
「おはよう。簪さん。
ん?そんな目の前の光景が信じられないとでも言いたげな視線はどうしたんです?」
などとのたまう
鍵を開けさせ部屋の中に入ったらすぐさま彼の衣装箪笥からジーパンに合う服を引っ張り出して着替えさせる。
渋っていたが関係ない。
どこぞのワニの仮面ライダーの変身者みたいなファッションは現実に持ち出してはいけないタイプの劇物なのだから。
私プロデュースの
地味だのなんだのほざく彼を再び引き摺って予定より一本遅いモノレールでレゾナンスに向かう。
楽しみにしていたデートはロマンティックの欠片もない始まりとなった。
「やっぱりもう少しデニムを増やした方が良かったんじゃないですか?」
うるさい。この妖怪デニムスキーめ。
レゾナンスはIS学園から日本の首都は東京に通じるモノレール線のとある駅を下りてすぐのところにある大型ショッピングモールである。
日本有数の品揃えと出店数を誇っているため、IS学園の関係者を始め毎週多くの買い物客で賑わっている。
まぁ、そんなところに来たのだから…
「す、すごい人混みだね。」
「あぁ。水着を売っている店までたどり着けるか不安になってきた。」
私達2人はごった返す人混みを前に尻込みしていた。
「…水着の確保を優先。昼ごはんは…適当な店のテイクアウト…これで良いかな簪さん?」
「大丈夫だよ。これじゃあフードコートは無理そうだしね。」
デートプランの変更を済ませた私達は人並みの間を縫って季節もののアウトドアグッズを取り扱っている店に到着した。
「…男性向けのスペース、明らかに狭くないか?」
「最近の情勢が情勢だから、仕方ないよ。」
まずは
彼のセンスが明後日の方向に突き抜けていることが発覚したため私も一緒に選ぶことにした。
「これなんかどうだ?hotでlimitな感じだ。」
「赤いふんどし…これ水着にカテゴリーして良かったのか?」
彼の持ってくる水着はどれもキワモノ(遠回しな表現)ばかりだったので全て却下。私が見繕ったもので良さげなものを2人で選んで決めた。
すごくデートっぽいことをしていたので思わずにやけてしまう。
理性を精一杯働かせて口角を自然な感じに抑えながら彼の選んだキワモノ水着をもとあった場所に戻して男性向けのスペースから離れた。
次は私の水着だ。
上機嫌な私は彼と一緒に水着を物色する。
こうしてみるとまんまデートである。
帰ったら本音に自慢しよう。
お姉ちゃんには…伝えたら面倒なことになりそう。
お姉ちゃんのことだからうらやましい、とか今度は私と行きましょう、とか言い出すのが目に見えている。
私がワンピース型の水着が並んだハンガーラックの前で水着を見比べていると、幾つかの水着をかごに入れて
「候補を幾つか持ってきたぞ。
…こういうビキニ型とか、似合うと思うけどどうかな?」
「うえぇっ!むっ無理だよ!露出が多すぎるよ!」
「ごめんごめん。冗談だよ。」
「でも…
やっぱり男の子って露出の多い水着が好きなのかなぁ…
でも
はっ!駄目よ戻ってきなさい更識簪。
ピンク色の妄想をしている場合では無いわ!
…今は目の前のデートに集中しなきゃ
今回も彼が持ってきたのは案の定キワモノ(やんわりとした表現)ばかりだったのでさっき同様、私セレクトのものから決めることになった。
「この白いのとかどうだ?似合うと思う。タンキニ型だから比較的露出も少ない。」
「うーん。でもこのハイネックのも捨てがたい…けど…!太ももが出ちゃう…!」
2人であーでもないこーでとないと話しながら水着を見比べる時間はとても充実した時間だった。
一旦試着しようとしたが、試着室の辺りからIS学園で聞いたことがあるような声がしたので即座に回れ右した。
出先で級友と鉢合わせするのは私の陰キャ感性からするとちょっと怖いので妥当な判断だろう。
選んだ水着と、片手間に選んだラッシュガードを会計して店を出る。
「次は…俺の私服か…」
「うん。私がコーディネートさせていただきます。」
「お手柔らかにお願いしますね…」
ばつの悪そうな顔の
ふと、隣を歩く
冷房にあてられてかヒヤリとしていてさわり心地がいい。
ぼんやりとそう考えていると、不意に人混みの流れが変わった。
辺りに意識を向けるとどうやら近くの店でタイムセールが始まったようだ。微かに40%とか50%とかの声が聞こえる。
こちらの方に来る人の数が増え、更に歩く速さを落とす人も少し増えたように感じる。
「ちょっと失礼。」
唐突に隣から掛けられた声に反応する前に左手をヒヤリとした金属の手に握られる。
「ちょっ!えっ!」
「混み合ってきたのではぐれないように、です。
嫌なら言ってくださいね。」
ズルい!その言い方すごくズルい!
私は赤くなった顔を見せないように伏せながら、
私自身の心音が耳から離れない。
彼の金属製の手のひらはさっきよりも少しだけ温かく感じた。
▼▼▼
[side:ラウラ]
日曜日の朝、嫁は朝一に用事があると言って出掛けてしまい、この前入部した茶道部も今日はオフであるので私はグラウンドでランニングをしてきた。
ちょうどランニングが終わったタイミングでグラウンド隅のベンチに放置していたスマートフォンから電話の着信音が流れてきた。
通知欄を確認すると凰・鈴音の文字。
無視する理由も無いため電話にでる。
《ちょっと!アンタ今何処に居るのよ!》
「む?グラウンドだがそれがどうした?」
《どうした?じゃないわよ!
何も聞いてないの!?》
「なッ…みっ、見間違いではないのか?」
《そんなことないわよ!証拠写真もあるわ!》
「そ、そうか…」
衝撃の事実に足元が覚束なくなる。
《とにかく、レゾナンスに来なさい!
行き方は分かるわよね?
道順はメールで渡すから分からなかったら後で電話折り返して頂戴。
ひとまず私
「あ、あぁ。恩に着る。私もすぐにそちらに向かう。」
《分かったわ。じゃあ切るわね。
…なるべく早く来なさいよ!》
「あぁ。」
電話の切れたスマートフォンの画面には今しがた鈴から送られてきた証拠写真とレゾナンスへの道順が書かれた画像を添付されたメールの通知があった。
おそるおそるその写真を見るとそこには買い物袋を提げながら簪と手を繋いで歩く嫁の姿があった。
「これが…ねとられ…」
私はぐわんぐわんと回る頭をそのままに、覚束ない足取りで寮の自室へ着替えに向かった。
特にトラブルに見舞われること無く鈴から指定されたレゾナンス内にあるファミリーレストランに到着した。
「あっ、来た来た。こっちだよ。」
入店した私に気付いたシャルに促され嫁達が座る4人席に座った。
席順は以下のとおり。
壁
┌────────────
│荷物 嫁 簪 箒 一夏
│╔══════╗ 通 ╔═════╗
壁 │║テーブル ║ ║テーブル ║
│╚══════╝ 路 ╚═════╝
│シャル 私 鈴 セシリア
簪は小刻みに震えており、嫁はしわしわといった擬音がぴったり当てはまるような顔をしていた。
残りの5人の様子は…まぁこの際気にする必要は無いだろう。
私は席に着いて、店員が持ってきた冷水を一口飲んで、ふと気になったことをシャルに小声で聞いた。
「そう言えばシャル。一夏の方に行かなくて良かったのか?」
たしか、シャルは一夏に惚れていると思ったのだが。
「あー…今回はあの2人に任せてるんだ。僕はラウラのお手伝い?って感じ。
それより、何で制服なの?」
成る程。持つべきものは友人と言うのはあながち間違いではないようだ。
同室のよしみで嫁への詰問に協力してくれるシャルには頭が上がらない。
今の私にとって彼女以上に心強い友軍は無いだろう。
「成る程。
外出用の服はこれと、ドイツにいた時に着ていた軍服しかなくてな。」
「ふーん…そうなんだ。じゃあ後で一緒に服を見に行こっか。
…さてと、ラウラも来たことだし、始めよっか。」
シャルは視線を私からテーブルの向こう側に戻し、極めて冷静であると装った声色で対面に座る2人に話し掛けた。
「まずは…その買い物袋は何?」
荷物の中にある数種類ほどの紙袋に視線を向けての質問だ。
「これは…今日買った俺の私服と、俺と簪さんの水着です。」
「この事についてラウラにちゃんと説明した?」
「用があって外出するとしか…」
「へー…ふーん…
ラウラ。これを受けて
突然シャルから話を振られたがどうしたものか。
数十秒程考え込んでから、口を開いた。
「嫁よ。」
「はい…」
「ん?嫁?ラウラ、どう言うこと?」
「よっ、嫁…そう言うプレイ…?」
混乱しているシャルと簪は置いておいて、消え入るような小ささの声で返事をする嫁を見据える。
ここは一度きつく言っておく必要があるだろう。
いやしかし、もしこの2人がただの友達付き合いとして買い物に来た可能性もある。
手を繋いでいたと言っても…日曜日で混雑しているのだからはぐれないように手を繋ぐ、というものだったかもしれない。
だが、彼は私の嫁であって、そうホイホイ他の女性と2人きりで出掛けるのは咎めるべきことで…ましてやあんな…あんな…
「ラウラ~?ラウラさ~ん?お~い」
…はっ!
「うむ。どうした。シャル。」
「いや、その…前々から気になってたんだけど、
「む。シャルはまだ知らなかったのか。
日本では気に入った相手を『俺の嫁』と呼ぶのだ。
シャルが知らないのも無理はない。
私もクラリッサ…私の副官から教わるまで知らなかったことだからな。」
ポカーンとする一同。
ふむ、どうやら少し情報が古かったようだ。日本のじぇーけーの流行り廃りは早いとのことだから無理もないか。
沈黙を破ったのは目の前でおそるおそる手を顔の高さに挙げた簪であった。
「あの…それ、二次元…創作の人物に使う言葉で実在する人には使わないよ…」
「……それは本当か?」
私の問いに首肯する簪。
隣のテーブルにも視線を向けると簪同様に頷く女子3人。
一夏は草臥れた様子で椅子の背もたれに体重を預けていた。今はどうでもいいことだが。
私は顔が熱くなっているのを実感しながら視線を
「よっ…
私の…嫁の使い方が誤用であったことを。」
恐々頷く彼。
「………何故、指摘してくれなかったんだ?」
顔から火を出しそうになりながらも続けて問い掛ける。
「その…ラウラさんが嫁って言ってるのが、こう…ツボにはまって?」
この男…!確信犯だったとは…!
私は席から立って、息をゆっくり吸って、彼を真っ直ぐ前に見据えて、喉から絞り出すように声を出す。
「…………次は…次は無いと思え…!」
私は火照る頬をそのままに忠告の言葉を
顔を青くしながら壊れた玩具のように勢いよく首を上下に振る彼を見て少しばかり溜飲の下がった私は熱くなった顔を誤魔化すために席に座りなおし、目の前の冷水を一気に飲み干した。
「それよりもだ。せっかくレストランに来たのだ。昼ごはんにしよう。
シャル。メニューを取ってくれ。」
(((誤魔化してる…!!)))
誰かの声が直接脳内に聞こえてきたような気がするが気のせいだ。
カツ丼があるじゃないか。これにしよう。うん。
卵とじではなくソース…盲点だった。
ソースのいい匂いが食欲を掻き立てる。
まずはカツから。
うむ、悪くない。ソースに浸されたことによりしっとりとした衣と程よい柔らかさの豚ロース肉は閉じ込められていた肉汁と共に口の中で混ざり、ジューシーな味わいをもたらしている。
だが濃いめの味付けだ。
一口カツを食べたら二口は白米が欲しくなる。
ソースカツの下にある、ソースが付いた米を一口。
ふっくらと粒の立った白米はソースのしょっぱさを包み込む程よい甘さだ。
「
「分かってはいるが…今話しかけてもどうしようもないんじゃなかろうか?味わって食べてるようだし。」
「シンプルでソースの味…」
「ごめん。簪さん今なんて?」
「あっ何でも無いです…」
美味しかった。ご馳走さま。また来よう。…と。
彼の処罰についての考えもまとまった。
「
「はっ、はい。」
「これから私はシャルと買い物をする。
それの荷物持ちをしろ。
それと、私以外と2人きりで出かける時は連絡しろ。
今回の件はそれで手打ちにする。
…簪もついてくるか?」
「あっ、はい。」
私の提案に一も二もなく頷く彼と簪を視界に収めながら私は伝票を片手に立ち上がる。
ふふふ、これが織斑先生直伝“正妻の余裕”ッ!
惚れ直しても良いのだぞ
この後4人で買い物に行った。
こういった機会は初めてであったが意外と楽しかった。
・イッチ
クソボケ2号。
ラウラの告白に対してどう返したらいいのか悩んだ挙げ句放置してるヘタレ。
人混みが苦手。
・一夏
クソボケ1号。
後日、他の3人とも2人きりで出かける約束を取り付けることで修羅場を回避した。
・簪
突然の恋敵登場にパニックになってた。
ラウラたちとの買い物の後にコッソリイッチの薦めたビキニを買った。
・ラウラ
イッチが告白を否定してこないのでもうそういう関係だと思ってる。
イッチから貰ったTシャツは黒地に黄色字で『ネコと和解せよ』
正妻の余裕でイッチと簪に言及はしなかった。
・鈴
中国が生んだひんぬーヒロイン。
ラウラとくっついたはずのイッチがデートしてたのでラウラに通報して拘束した。
ついでに一夏も拘束した。
Ifルート(ほぼバットエンド)
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いる
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いらない