[side:ラウラ]
花月荘の宴会場は消息を絶った
人工衛星の観測情報から現在地の割り出しを図っているようだ。しかしアメリカが共有すべきデータを出し渋っているようで捜索は難航しているように見える。
そんな中、不意に宴会場の襖が勢いよく開かれた。
「
そこから現れたのは明るい茶色の髪を後ろで一つ縛りに纏めた20代くらいの日本人女性だった。
ISスーツに薄手のウィンドブレーカーを羽織るだけの恰好と名乗ったファミリーネームから察するに、教官の言っていた件の国家代表だろう。
「よし、貴様らも来い。」
彼女が近くにいたIS委員会の職員からデータの共有をしだすのを見計らって教官は
「福音の性能についてだが、アメリカから提供された一部のカタログスペックと先程の戦闘データから鑑みるに小金原日本代表単独での無力化は困難であると我々は判断した。」
教官の言葉を少し離れた場所で聞いていた小金原は少しだけ肩を揺らした。
「そこでこの場に居る各国の代表候補生に協力してもらいたい。」
教官が続けて放った発言はさっきまでのIS同士の戦闘をレーダーと通信越しとは言え、目撃していた私たちを動揺させる。
「もちろんこれは命の危険を伴う作戦であり、作戦への参加を拒否することもできる。
…どうする?」
「私は参加します。」
鉛のように重苦しい雰囲気の中、私の口をついて出てきたのはそんな言葉であった。
「ちょっとラウラ!?」
「元より私は軍人だ、覚悟はしてある。」
「そうじゃないよ。
確かに、
しかし今の私は『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊長でありドイツの代表候補。
スイッチが入り少しだけ熱くなっていた頭も今はすっかり冷めてクリアな状態だ。
今ならこの場に居る代表候補を相手にしても
「…公私の区別はつけている。問題ない。」
隣から来るシャルの追求を躱しながら教官の言葉を待つ。
「…分かった。先に小金原と出撃の準備をしておけ。私はこいつ等の意思を確認してから向かう。」
教官の指示に従い、茶髪の彼女がいる宴会場のステージに設置された大型のスクリーンの前に向かう。
「初めまして。私は日本代表の小金原です。よろしくお願いします。」
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
「…さて、まずは私の専用機について共有しておきましょうか。
あぁ、貴女方、国家代表候補のISについてはせんp…んん"ッ!千冬さん経由でIS学園から提供されたものを受け取っているのでわざわざ説明しなくても大丈夫ですよ。」
自己紹介もそこそこに大型スクリーンに映る捜索の進捗を横目に見ながら小金原日本代表は切り出した。
「私の専用機…『明椿』は二次移行で獲得したサブアームユニットを用いた弾幕形成が売りです。」
彼女は前髪を留めている椿の意匠が施された髪留めを撫でながら淡々と続ける。
「その代わりと言ってはあれですがIS本体の重量はそこそこの物となっておりまして、機動力は他の三世代機と比べて劣悪なものとなっております。」
サブアームか…二次移行で獲得した機能と言うことは
「なるほど…」
「まぁ機密事項を避けて言えるのはここまでですね。他の機能やスペックは、まぁおいおい。」
「はあ…」
説明を終えて、話の話題が尽きてしまったようだ。沈黙が私たちの間を占める。
しかし、被害が出てから私たちに頼るとは、日本IS委員会と言うのはつくづく危機感が薄い。
教官が居るとはいえこんなところに
だがあれでいて中々強情なのが
しかし、既成事実か…告白と口づけはすでに済ませているし、同衾もした。私の裸も見られている…
既成事実もう出来ているのでは?
そうと決まれば話は早い。この一件が片付いたらすぐに引き抜きを提案しよう。
うん。それが良い。
もしかしたら私と同棲!?
いや、男女の付き合いなら妥当だが…私生活に関しては無頓着であったことが露見してしまうとなるとそれは由々しき事態で…
私が1人悶々としていると、この沈黙を気まずく思ったのだろう小金原が話しかけてきた。
「…えーっと、今回の作戦はとても危険です。彼…一ノ瀬君があの怪我だけで済んだのが奇跡的なほどに。もしかしたら今の生活に戻れなくなるかもしれない。
それでもこの作戦に参加しますか?」
「…あぁ。問題ない。」
これまで母国にて使い潰されるかのように訓練されてきたのだ。今更気にすることは無い。
「…っ、くれぐれも無理はしないでくださいね。」
小金原は苦虫を噛み潰したかのような表情でそう言ったきり黙り込んでしまった。
それよりも
料理もろくにできないのも非常に不味い。今から一夏に教えてもらえば日本でのメジャーな料理に関しては急場をしのげるにしても、もしドイツ料理をリクエストされたら対応できない。
今のうちにクラリッサに聞いておくか?
…いや、彼女の女子力は私に毛が生えた程度。頼るのは下策。
結局、織斑先生がこちらを呼びつけるまで
▼▼▼
[side:一夏]
俺が不甲斐ないせいで
俺が1人で部屋の隅に居ると、不意に襖が開き、大股で千冬姉が入ってきた。
「一ノ瀬の容態が安定した。右腕は上腕部半ばの所で無くなっているが傷口が焼かれていたため出血はほとんどない。
それと右半身を中心にできていた火傷だが少し後が残る程度で後遺症はないそうだ。」
「…急になんだよ千冬姉。」
「お前のことだ、一ノ瀬が心配だったのだろう?」
「そうだけどさ」
「それと福音の居場所が分かった。これから日本の国家代表と、織斑と一ノ瀬以外の専用機持ちが撃墜のために出撃する。」
「それで?」
相変わらず口数の少ない千冬姉に辟易しながら適当に返事をすると、少しだけトーンの落ちた声が降ってきた。
「その作戦に参加してもらう。」
「はぁ!?いきなり何言ってんだよ!」
思わず声を荒げて睨むが目の前の実姉は顔色一つ変えず、眉を少しも動かさず、さも世間話の続きでもするかのように補足する。
「福音との交戦経験とやり方次第でヤツを一撃で撃墜できる『零落白夜』の存在。
これが織斑に参加要請が来た理由だ。」
(実際は束が裏から口を出してこうなったのだろうが)
「そんなこと言っても…」
「自分のせいで一ノ瀬を危険に晒した。
だから出撃したくないといったところか。」
「なぁ!?」
「何年お前と一緒にいると思っているんだ。それくらいのこと私には手に取るように分かる。」
「千冬姉は大事なところに限って鈍感なところあるから…」
「…むぅ、否定しきれん。
ゴホンッ!それはともかくだ。
「…」
目の前にいる唯一の肉親の言葉を咀嚼し、飲み込む。
「まぁ…だから、そう抱え込むな。
それとも私たちは頼りないか?」
「違っ…」
否定しようと立ち上がろうとした俺の額に千冬姉が弾いた指が直撃する。
「なら、頼れ。任せろ。…いや、もういっそのこと利用してやるくらいの心持ちでいろ。
皆一夏の人の好さを知っている、少しくらいなら乗ってくれるだろう。」
「でも…」
「強情だな。誰に似たのやら」
千冬姉だろ。ちっちゃい時はほぼべったりだった記憶しかないし。
「まぁ良い。ならこれは周りの人間を頼る練習だ
頼るということは人間社会で生きていくための必須技能だからな、今の内にやり方を覚えておけ。
幸い私の後輩の小金原が作戦に参加するから極力彼女を頼るようにしろ。」
「そんなこと急に…」
「やれるだろう?私の弟なら。」
そんな殺し文句を言われたら、もうお手上げだ。
「分かったよ。千冬姉。」
「くれぐれも無理はするなよ。『白式』の整備は済んでいる。宴会場で受け取ったらすぐ出撃だ。」
「うん。ありがとう。」
立ち上がり、肩を回しながら千冬姉と一緒に部屋を出る。
「そういうのは終わってからで構わん」
パシンッと両手で頬を叩き意識を切り替える。まずは目の前の福音戦、それが済んだら
全部片付いたら山田先生にISの動かし方を一から教えてもらおう。
何かを取りこぼしてしまってからでは手遅れなのだから。
・小金原・葵
現日本国家代表。身長167cm、体重50kg。
ちっふーの後輩で山田先生の同期。
ちっふーの電撃引退を受けて棚ぼた的に代表になったのを気にしている。
好物はカスタードのたい焼き。
・ラウラ
イッチの怪我については軍属経験のお陰である程度割り切れている。
ただ福音は完膚なきまでにボコすつもり。
妄想癖あり。
・一夏
ちっふーの発破により何とか復帰。
誰かを頼る方法を模索中。
・簪
ギリギリのところで耐えて福音戦に参加表明。
福音には目にもの見せてやるつもり。
Ifルート(ほぼバットエンド)
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いる
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いらない