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俺が福音の反応があった場所に付いた時、既に手遅れであった。
岩礁海域の上空にて一人佇む黒い影。
ラウラの専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』が
かつての世界最強、ISの有用性、拡張性、そして兵器的な運用を世界に示した生ける伝説。織斑千冬の専用機、『暮桜』である。
しかし、オリジナルの薄い紫色とメタリックシルバーの機体色は見る影もなくシルエットのような真っ黒な姿になっていた。
人が乗っているはずの部分には凹凸すらない、光を吸い込む黒で塗りつぶされている。
2ヵ月前の無人機に感じた、上手く言い表せない不気味さが脳裏にこびり付く。
人が搭乗する前提のものを無理矢理、無人機に変えたせいで出来た不自然さと言うべきか、一般的なISなら簡単に見える搭乗者の表情が全く見えない違和感と言うべきか。
ともかく、しっくりこない不気味さを感じる。
一方、当の黒塗りの『暮桜』は俺の心境を知ってか知らずか、こちらに何のアクションも起こしては来ない。
彼我の間には目測1㎞あるかどうかの距離。
何か基準でもあるのだろうか。思わず中空で棒立ちになってしまったが今からでもここいらにいるであろう彼女らと合流せねば。
そんな俺の思考を突き崩したのは岩礁から『暮桜』目掛けて飛び出した白い流星だった。
「お前がぁっ!それを!使うなぁ!」
『敵性IS捕捉。迎撃を再開します。』
白い光を放つ剣を振り上げながら飛び立つ流星の正体は『白式』であった。
最上段から振り下ろされる『雪片弐型』の光の刃は黒塗りのISが振るうエネルギーの刀に難なくいなされる。
それもそうだろう。今の一夏の動きは猪のような遮二無二で粗いもので、いつもの慎重な立ち回りの欠片も無い。これでは直ぐに機体の燃料を使い尽くしてしまうだろう。
「クソ!クソ!クソォ!」
じわじわと劣勢に追いやられる一夏。だが今更、引くと言う選択肢を取ることは出来ず。『暮桜』の攻撃に一歩また一歩と間合いを詰められている。
このままでは一夏は…
ならどうすべきか。
俺はかろうじて使える左側のスラスターを思い切り吹かした。
唯一の武装を振り下ろしきって、隙だらけの後頭部を晒した一夏へと躊躇いなく刃が振り下ろされる瞬間、俺は一夏と黒いISの間に滑り込んだ。
左手のシールド越しに焼けるような熱が体に伝わる。
脳裏によぎる右腕が切り落とされる光景。
すぐさま臓腑がごっそり抜け落ちるような感覚と激しい吐き気に襲われる、が何とかそれらを飲み込み黒いISの右腕を蹴り上げ一夏を掴み、一夏が飛び出してきた岩礁目掛けて全力で退避する。
「おい!
いや、それよりも離せ!俺はあいつを倒さなくちゃいけないんだよ!」
何やら左側が五月蠅いが構わずスラスターを吹かし離脱を急ぐ。
が、そうは問屋が卸さないらしい。
『敵性ISへの攻撃を続行します。』
後方から聞こえた機械音声と共に背中に焼けるような痛みが走る。
「おい!?
『重装型・打鉄』のコントロールが不意に崩れる。視界の隅に写るARモニターに踊るスラスター破損の文字。
正確にスラスターを狙うとは、伊達に
いや、称賛している場合ではない。何とかして一夏だけでも無事に着地させなければ。
幸い岩礁に到達できるだけの初速は稼げた。
問題はすぐ後ろにいるであろう漆黒のISだが、これまでの行動ルーチンを鑑みればISを待機状態にしてしまえば追撃はしてこないだろう。…多分。
いや、今迷っていても仕方ない。俺はISを待機状態に切り替え叫んだ。
「一夏!IS仕舞ってな、あと舌噛むなよ!」
「は?急に何を言って『敵性IS健在、迎撃を再開します。』ええい、ままよ!」
空中に投げ出される男子高校生2人、後方には黒塗りのIS。何も起きないはずも無く…
「落ちるぅぅうぅぅ!わあぁあぁあぁああぁぁぁぁ!!」
「そりゃそうなるだろうよぉ~~!」
一夏と仲良くフリーフォールin日本近海の某所。恐怖の余り俺の左腕をがっしり抱え込む一夏。
「せっかくなら可愛い女の子が良かったな、こうおっぱいバインバインな女の子が。」
「今言うことか!?」
「そうだ一夏、IS乗れるんだから今からでも女の子ってことにならない?バストDカップ以上の美少女が抱き着いてる構図になるなら俺のモチベは爆上がりするぞ」
「昨日水着見ただろ!俺は正真正銘男だ!」
…危機的状況からの逃避とはいえ少しふざけ過ぎたか。
いい加減腹を括るとしよう。
一夏が俺の上に来るように体制を立て直す。なされるがままの一夏はここからどうなるのかまだ気づかないようだ。いつもはその察しの悪さにやきもきさせられたが今この瞬間においては好都合だ。
風切り音の中に波の音が混じった瞬間、背中に激痛が走る。
ガリガリ、ザリザリと不快な音が耳の裏から脳に響く。一拍置いて鈍い痛みが背中全体に襲い掛かる。
「がっあっ!」
「おい!?
今更気づいた一夏が狼狽えた声を出すがこの狂気の軟着陸を止めることは出来ない。
しばしの激痛の伴う減速の後、ようやく止まる。
岩礁の一角には深紅の一本道が完成していたが肝心の一夏には目立った怪我は無い。
今はこの状況に困惑し、戦えるような状況ではないが、この様子ならすぐにでも戦闘を再開できるだろう。
岩礁に背中でスライディングは中々に狂った判断だったが案外いい手であったと我が考えながら喝采ものである。
ふと、俺達2人以外の気配を感じ、首だけ動かし辺りを見回すと金髪の西洋美女と茶髪の童顔の女性。前者については残念なことに見覚えはないが後者の女性はISの日本代表、小金原女史であることに気づいた。
2人ともISスーツが袈裟に大きく引き裂かれており、素肌の出来立てホヤホヤの切り傷はISの救命絶対領域によって止血の処置はなされている
世界最高峰のISパイロット2人が戦闘不能になっている現状に戦慄しているといつの間にか立ち上がっていた一夏がISを展開したところであった。
「ありがとう
悲壮な表情の一夏が苦しげに言って『白式』のスラスターを吹かし出した。
このままではさっきの二の舞になることが分かっているはずなのに、目の前の男はこの場に居る3人を無事に帰すためだけに玉砕覚悟で飛び立とうとしている。
あぁ。一夏には敵わないな。俺なら自分の命惜しさで逃げだすだろうに。そこまでして誰かのために生きれる彼が、
本当に──
──
身体の底から力を絞り出しふらつきながら立ち上がる。
「──おい、一夏」
「
「こっちを向けよ」
グラグラと揺れる視界に写るのはしょぼくれた面の一夏。
急にしおらしくなりやがって。そんなに怖いのなら素直に言えば良いものを。
「何を言って…がぁっ!」
うじうじしてるコイツの顔面目掛けて渾身の頭突きを食らわす。
「一夏ぁ。その誰かのために立ち上がれるのはホントにすげぇよ。」
「なら…」
「でもそりゃねぇだろ?勝手な自己犠牲なんてナンセンスだ」
一夏を片手で制しながら続ける。
「
「
一夏の顔が歪む。図星かよ。
「…だが、もし、2人で挑むならどうだ?」
俯いていた顔をパッと上げた奴の額を指で弾く。
ここからが良いとこなんだぜ。
「一夏の爆発力と決定打なりうる『雪片弐型』と、俺の手数が合わさるなら?」
一夏の顔が少しづつ明るくなっていく。
「そうだ!2人なら『暮桜』に勝てる!2人なら“織斑千冬のデッドコピー”を越えられる!」
「だから!…だから。」
「一夏。俺に賭けろ。俺が勝たせてやる。」
俺を真っ直ぐ見つめる一夏の瞳にはさっきまで渦巻いていた迷いは無く、バッチリ決まった顔の一人の漢が居た。
それでこその
「…分かった。
「おうともさ。」
もちろん、俺に二言は無い。ぶっつけ本番だが、こうも言い切った手前。俺も決めさせてもらおう。
・イッチ
ちょっとハイになってる奴。
自分の命を軽く見ている節がある。
・VTシステム
ラウラの様子を案じて近づいた小金原さんを切り捨て、迎撃した銀の福音もズンバラリ。
2人とも遠距離武器オンリー故の相性勝ち。
・箒たち専用機持ち
一気に二機撃墜され離脱。一夏が居た場所からかなり離れた位置にある岩礁にいる。
Ifルート(ほぼバットエンド)
-
いる
-
いらない