「く…う…」
全身に感じる強い痛みで、レックスは目を覚ました。
しかし、開いたはずの目に光が入ってこない。指で瞼を触ってみるが、間違いなく開いている。
辺り一面の暗闇。その中にレックスは倒れていた。
「ここ…は…?」
立ち上がりながら、レックスは直前までの記憶をたどる。
グーラから巨神獣船で世界樹を目指し、世界樹の目の前で大穴を発見し、先に行けるか確認してるところで紫の蛇に襲われた。そして必死に逃げた先でインヴィディアが口を開けていて…
と、そこまで思い出したレックスの全身に悪寒が走る。それはつい最近味わった感触。
「まさか俺、また死んだ…!?」
反射的にほっぺたをつねろうとするが、そもそもそんなことせずとも、全身が酷く痛むことに気付いた。
そもそも死んだとして、果たしてヒトは痛みを感じなくなったりするものなのだろうか。そんなことを考え出して、レックスは勢いよく首を振った。これ以上考えたくない。
「と、とりあえず…」
手探りで腰のポーチをまさぐり、お目当ての道具を見つけて引っ張り出す。少なくとも装備はそのまま残っているようだ。
手のひらサイズのソレの横についたつまみをひねる。すると、道具の中央から頭上に向けて真っ直ぐ光が伸びる。雲海探索の必需品、小型ライトだ。
伸びた光の先に岩肌らしき影が映る。とりあえず無限に続く暗闇ではないことに、レックスはほっと胸をなでおろす。
「よかっ…」
「小僧」
「うわぁっ!?」
正面を向いたレックスの視界が、強面の生首で埋まった。
「死神!?」
「誰がだ」
ガツンと頭上に衝撃。突然のことに、レックスはしりもちをつく。
「頭でも打ったか小僧」
「今…今打った…」
頭をさすりながら、文句を言う。
目の前にあった生首…もとい、目の前に立っていたのはメツだった。
メツは倒れたレックスには目もくれず、周囲に広がる暗闇を見渡してた。
「小僧、ここがどこかわかるか」
「うーん。少なくともメツがいるってことは死後の世界ってわけではなさそうかな」
「ここはインヴィディアの中じゃわい」
声のした方向に振り向きつつ、ライトを向ける。声と共にふよふよと飛んできたのはじっちゃんだった。そしてその後ろから続くように、トラとハナ、ニアとビャッコがレックス達の方へと歩いてきた。
その姿を見てレックスは大きく息を吐きだす。
「よかった…皆無事だった」
「なんとかね。全身痛いけど」
「トラはこのもふもふがクッションになったんだも!」
えっへんも!と胸を張るトラを横目に、レックスはじっちゃんの方へと向き直る。
「それで?」と、じっちゃんに言葉の続きを促す。
「文字通りじゃよ。ここは口内じゃな」
じっちゃんはレックスの後ろを指さす。
手にしたライトをそちらへ向けると、三角の岩が規則的に並んでいる様子が見えた。なるほど、アレは歯だとレックスは理解する。
「へえ…インヴィディアの口の中…まって、口の中だって!?」
ニアがうんうんと頷き、そして目を丸くする。
足元を見ながら飛びのくように跳ねると、粘性のある水しぶきが跳ねる。
「じゃ、じゃあこのまま消化されるんじゃ…」
「んなこたないわい。巨神獣は食事を必要とせんからの」
「え?そうなの?」
じっちゃんは「やれやれ」と首を振る。
そのまま「よいか」と指を立てる姿は、その小さなサイズからは読み取れない年季というものを感じる…ような気がした。
「巨神獣の主食は雲海とエーテルじゃ。中型の巨神獣ならともかく、このサイズの巨神獣が他の生き物を飲み込んだところで、消化されたりなどせん」
「そうなんだ…」
「しいて言えば…そうじゃな。お主らがここで死んでしまえば、その体が分解され、土に吸収され、やがて巨神獣の糧であるエーテルになるがの」
「冗談でもやめてくれよ…」
レックスはその冗談にあいまいな苦笑いしか返せなかった。なにせ一度死んだ身なのだ。死というものが人より少しだけ身近にある。
「ま、じゃから大丈夫じゃろう」
「むしろインヴィディアの街は巨神獣の体内にあると聞きます。ですからこのまま体内を進むのがよろしいかと」
ビャッコがそう続ける。
「知ってたのかよ!」とニアが突っかかるが、ビャッコは「ええ、まあ…」とあいまいな返事を返す。もしかしたら、ニアも知っているはずだが、忘れているのかもしれない。
「…まあ、いいや。そうなるとその街を目指して…レックスのそれだけじゃちょっと心もとないな」
ニアはレックスの手元のライトを指さす。
レックスのライトは光が真っ直ぐ伸びるタイプであり、遠くを照らすのには便利だが、周囲の状況を探るのには適していない。周囲に物が少ない雲海ならばこれが重宝するのだが、辺りに物が散らばる洞窟探索には不向きと言わざるを得ないだろう。
「せめてほかに光があればなー」
「となると、ここはハナの出番だも!」
えっへん!とトラが胸を張る。そしてそれに続くように、ハナが「もっ」と拳を胸の前で突き合わせる。
「ハナの?」
「そうだも!ハナの隠されし1万の機能!その一つを見せる時がきたも!」
「多いな!」
「いくも…ハナ・フラーッシュ!」
「ハナ・フラーッシュ。ですも」
掛け声とともにハナが付き合わせた拳をこつんと鳴らす。すると、ハナの両目から一筋ずつ、光が放たれる。
伸びた光はレックスの手元のそれと比べると幾分か弱い光だったが、広角に広がっていることと、両目分の2つの光があるおかげで、レックスの光より周囲の探索がしやすそうなものだった。
「おおー!これなら大分いいな」
ハナが首を動かすと、光が周囲を照らす。
先の歯らしき岩の反対方向。そちらに光で照らし切らない闇が続いていた。先にまだ洞窟が続いているのだろう。おそらくインヴィディアの食道だろうとレックスは推測する。
「よし」とレックスは頷いて、手にしていたライトを腰のベルトに取り付ける。レックスの装備一式はサルベージャー用のソレなので、こういう拡張性がそのまま探索にも使えるのだ。
「もも!アニキもフラッシュだも!」
「ん?ああそうだな…レックスフラーッシュ!…なんてな」
「ブッ!」
トラに乗せられて叫んだレックス。
そこに吹き出し笑いの相槌を加えたのは、その横に立っていた大男だった。
「…なんだよ」
「クッ…いや…ククッ…レックスフラッシュ…」
「なんでメツは笑ってるんですも?」
「なんでってそりゃあ…ククク…」
「わかったも!きっとメツはアニキの光の弱さに笑ってるんだも!メツはもっとすっごいのが出せるに違いないも!」
「は?」
トラの頓珍漢な指摘に笑いを止め、思わず威圧で返してしまうメツ。トラは「怖いも!」とハナの足元に後ずさる。
「なるほどですも。レックスの光より強い光…ハナも気になりますも」
「いや、ハナあのな」
「メツフラッシュなんだも!」
「トラお前…」
「いいじゃんか~。出してやれよ~。メツフラッシュ~?」
拳を握るメツを、ニアが茶化すように小突く。そしてそんな握った拳も「まあまあ」と半笑いのレックスが解こうとする。
そしてトラの「メツフレッシュも~」という言葉に続く、ニア、ハナ、そしてレックスからの「メツフラッシュ~」コールの波状攻撃。
「…チッしゃーねえなあ!」
拳をわなわなと震わせていたメツだったが、ついに堪忍袋の緒が切れた。
「メツフラッシュ!」
その高らかな叫びと共に、胸元のコアクリスタルが強い光を放つ。
「光んの!?」
それはもう、レックスの腰から出る光など目じゃないほどの強い輝きだった。
予想外の展開に、レックスとニア、ビャッコは空いた口がふさがらず、トラとハナは「すごいも~」と小躍り。そしてメツから見えない位置でじっちゃんは地面で笑い転げる。
「先を急ぐぞ」
そしてそのまま、メツはインヴィディアの食道の方へと速足で進んでいった。
暫く呆然としていたレックス達だったが、その姿が暗闇に完全に溶け込んだのに気づいて、慌ててその後を追いかけていった。
「しかしこれは…負けられないな、ビャッコ?いけ、ビャッコフラッシュ!」
「お嬢様。残念ながら、私のコアクリスタルはあんな風に光ったりしません」
「なんだ。つまんないの」
「お嬢様!?」
「お、明るい」
食道の中は、暗闇を好むようなヴァンプ系のモンスターや、消化液らしき酸の沼を縄張りとするグロッグ系のモンスターが所々に住んでいた。
それらを避け、時に襲ってくるものを退けながら進むこと暫く。突然レックス達の視界に淡い光が差し込んできた。
食道の洞窟を抜けた先、明るく開けたその空間を照らしているのは、陽光とは違う青白い光だった。その光に照らされ、インヴィディアの体内は幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「天井が高いも―!」
トラの言葉につられて視線を上げてみると、確かに天井は遥か先にあった。
先ほどまでの洞窟の天井がライトの光が届くほどでしかなかったのも相まって、ギャップで余計に高く見える。
「あれは背中?」
「ええ、インヴィディアの巨神獣は背中の皮膚が薄くなっていて、そのためにこのような景色になっていると」
「なるほどなー」
よく目を凝らしてみれば、この一帯を照らす青白い光、それは天井が光っているのではなく、天井の薄い膜から外の光が透けて見えているようだった。
レックスは周囲を確認して、腰に付けたライトのスイッチを切る。洞窟から先には道が伸びており、なだらかな下り坂になっていた。洞窟なども無いようで、そのまま明るい中を進んでいけそうだった。
「おい!誰だお前ら!」
と、一歩先を踏み出そうとしたところで、怒鳴り声が響く。
警戒しながら声のした方向へと視線を向ける。声は、レックス達の少し先にある高台から発せられていた。
「お前ら、ここじゃ見ない顔だな?」
声の主は恰幅のいい大男だった。全身の筋肉が膨れ上がっており、顔や露出した肌に見える傷から戦いに慣れた雰囲気を感じる。格式ばった装備ではなかったことから、レックスは傭兵か何かだろうと瞬時に察する。
また、大男は人型の鳥のような姿をしたブレイドを従えており、更に後方にこちらも傭兵と思わしき男が二人、ブレイドを携えて控えていた。
「ふーむ?そうか、さっきの"食事"で飲まれたな?よっとぉ!」
そう言いながら大男が高台から飛び降りてくる。残りの二人もそれに続く。
ドシンという地響きと共にレックス達の前に立ちふさがるその姿は、見上げていた時に感じた以上に大柄で威圧的だ。
「この時期は世界樹の周りを周回してるから、人は飲まれねえと思ってたが…密航でもしようとしたのか?」
向こうは悠々と歩いてくるが、レックス達は警戒を解かない。
武器に手を掛け、相手の一歩に対して、半歩足を引く。
「おいおい、そんな怖がらないでくれや。俺達は別に…ん?」
手のひらを見せ歩いてきていた男が、レックスの剣を見てその動きを止める。
そしてその視線を今度はレックス達全員に向け、メツのところで止まる。
メツは理解する。その視線は自分に向けられているのではない。自分の"胸元"に向けられていることを。
「お前、その色…"天の聖杯"か!」
その言葉にレックスはモナドを抜く。
モナドのエーテルラインが唸りを上げ、禍々しく光るエーテルの刃が現れる。
「おいおい、まさかこんな小僧がドライバーとはな」
「コイツ!天の聖杯を知ってる!」
「そりゃあ知ってるさ。ドライバーなら一度は聞く伝説。世界を滅ぼした"紫と翠のコアクリスタル"。まさかこんなところでお目にかかれるとは思わなかったがな」
「紫と、翠…」
レックスは古代船で相対した少女、ホムラとヒカリを思い出す。
彼女のコアクリスタルは確認していなかったが、ニアが彼女も天の聖杯だと言っていた。ホムラは全身赤くてそんな印象はなかったが、白い服を纏っていたヒカリの方は翠色のエーテルが時折光っていたような気がした。
「しかしそうなると、だ。ここをただで通すわけにはいかねえな?」
大男は腰から二振りの武器を抜く。それは、青く輝く刃を持った、二振りの鎌。
大男に続くように、控えていた二人も武器を取り、ブレイドと共に臨戦態勢を取る。
「ユウ、ズオ。お前らは後ろの二人だ。俺はこの小僧をやる!」
「うぉおおおおお!!」
「小僧!?」
大男の声を合図に開戦。だが、いの一番に飛び出したのはレックスだった。相手が散開したと同時に接敵。モナドの刃を、正面に立っていた大男に振り下ろす。
しかし、その刃を大男は片手の鎌で掬うように捕らえてみせる。
「ッ!」
「ほほう。こいつぁ…」
大男は、値踏みするようにモナドを眺めてから、もう片方の手にあった鎌を、今度はモナドの本体に向けて横薙ぎに振るう。
下から掬われていた刃に対し、根本への横からの衝撃。てこの原理でレックスの手元が大きく揺れ、その体はつんのめるようにバランスを崩す。
「そうりゃあ!」
体勢を崩したところに、今度は男の太い脚が迫る。
レックスはなんとか横に転がって躱そうと試みるが、抜けきらなかった肩に蹴りが直撃し、あらぬ方向へと体は転がっていく。
「ぐぁっ!」
「伸縮自在の刃か。重心バランスを崩さず敵から距離を取れるし、間合いを見誤らせることもできる…いい武器じゃねえか。それに…」
大男はそう言いながら、自らの鎌の刃を見る。先ほどまで刃こぼれ一つなかった刃が、たった一回の交叉でギザギザに欠けていた。
「なるほどな。エーテルに干渉でもしてんのか?まともに斬り合うのは厄介だな」
「レックス!」
「アニキ!」
倒れたレックスに、ニアとトラが加勢に向かおうと叫ぶが、その進軍は大男の後ろに控えていた傭兵二人に遮られる。
「お前の相手は」
「俺達ッスよ!」
巧みな位置取りにより、ニアとトラは向かいたい方向とは反対方向への移動を余儀なくされる。
「小僧!」
レックスの突進に遅れたメツが、ようやくレックスの傍へと駆け寄りその体を引き起こす。
その間、レックスの前に立っていた大男は、何をするでもなくその様子をじっと眺めていた。
「おい小僧…」
「大丈夫わかってる。アイツも強い…」
前回相対したメレフは3対1、そして今回は1対1という違いこそあるものの、レックスは目の前の大男に明確な強さを感じとる。
明らかに自分よりも幾段も戦闘慣れした格上。もしかしたらあのメレフと肩を並べるほどの実力者の可能性すらある。
「だけど、アイツにメツを渡すわけにはいかない!」
そう言ってレックスはメツの手を引いて立ち上がり、モナドに力を籠める。
モナドのエーテルラインが光を帯び、キュイイ…と低い唸りを上げる。
「まずは崩す!モナド
手元に"轟"の記号が輝き、大男に向けられたモナドの切っ先から暴風が発生する。
正面の大男は、それを見て「ほう」と関心するも、依然余裕は崩さない。
「スザク!」
「ケーン!」
大男の声と共に、後ろで控えていた鳥のブレイドが飛び出し、大男と暴風の間に割り込む。
スザクと呼ばれたブレイドは暴風を前にしても焦ることなく、いつもの事のようにその翼を振るう。その翼から巨大な竜巻が発生し、モナドの起こした暴風と正面からぶつかる。
ゴゴゴゴゴと風の吹きすさぶ音が辺りに響く。風の勢いそのものはモナドの暴風の方が強く見えた。だが、暴風は竜巻をかき消すには至らず、竜巻によってベクトルが乱され、そのまま散り散りになって霧散してしまう。
「なっ…!?」
「闇属性のブレイドだと見たが…中々いい風吹かすじゃねえか」
「ま、オレの風ほどじゃ、ないがな」
「…ッ!うぉおおおお!!!」
レックスはその状況に一瞬うろたえる。
が、すぐに気合を入れなおし、再度モナドを構えて突進する。
(なら、全力の一撃で防御ごと叩く!)
手が赤くなるほど握りしめたモナドに"斬"の記号が浮かび上がる。
一瞬、その手のひらからモナドへ体のエネルギーを吸われるような感覚があった。だが、そんな感覚に付き合っている余裕はレックスにはなかった。
「させるかよ!」
走るレックスの前に飛び込んできたのは先ほど風を止めたスザクだった。
「どけえ!」
レックスはモナドを横薙ぎに振るう。
しかし、その薙ぎをスザクは跳躍で避け、飛び込んだそのままの勢いでドロップキックをレックスにかます。
間一髪、レックスは体を後ろに引きながら、横に倒したモナドを引き寄せて、その腹で蹴りを受け止める。
「おおっと!」
そのままスザクを振り落とそうとレックスはモナドを振るうが、スザクは翼を器用に羽ばたかせて、モナドから離れようとしない。
それどころか、そのまま羽ばたく勢いでモナドごとレックスを引っ張ってその体勢を乱して見せる。
「そーらよっ!」
スザクは崩れたレックスを引き寄せ、再度蹴り上げようと足を繰り出す。
が、レックスはそれを更に無理な体勢で躱してみせ、むしろその引き寄せられた勢いを利用して、スザクを後ろに放る。
「ちぃっ!」
「今だっ!…え?」
スザクを引き離し、ようやく本命…と、レックスは正面に立っていた大男の方へと向き直るが、そこに大男の姿はなかった。
「こっちだよこっち」
どこへ行った…と、辺りを見渡しているレックスに後ろからかけられた声。
振り向くと、そこに立っていたのは鎌を肩にかけた大男。そして、その足元で膝をつくメツの姿があった。
「メツ!」
即座に走り出すレックスだったが、焦りからか軽く躓いてしまう。
そしてその隙を見逃すまいと、瞬間、頭上から飛来したスザクの足がレックスの首根っこを掴み、その体を地面へと叩きつける。
「がぁ!?」
「ぐぁ!小僧!」
レックスが叩きつけられると同時に、メツの顔が苦痛にゆがみ、そのまま地面倒れ伏す。
戦闘は決した。戦場に立っているのは大男とスザクの二人。レックスとメツは無様に地面に倒れ込んでいる。
「メ、メツ…」
「こんなもんか」
鎌を降ろし、大男はレックスの方へと歩み寄る。
レックスはなんとかスザクの足から逃れようとするも、先ほどの攻撃で体力を使い果たしたのか、体にうまく力が入らない。
「くそ、こんな、こんなところで…ッ!!」
「こ、ぞう…」
大男がレックスの前にしゃがみ込む。
レックスは、そのまま鎌を振り下ろされると身構え、目を瞑る。
(畜生!俺にもっと力があれば…ッ!!)
「戦い方がなってねえ!!」
「…へ?」
レックスに飛んできたのは、刃の鋭い感触ではなく、耳に響く怒号だった。
「まったく。武器は悪くねえ、ブレイドも悪くねえってのに、肝心のドライバーがこれじゃ天の聖杯の名が廃るぜ?」
「え?」
大男の手に鎌はない。
レックスの上に立っていたスザクも「やれやれ」と一言呟いてから、レックスの上から降りて、大男の横に並ぶ。
「ブレイドを信用してねえってのもそうだが、何よりもペース配分がなっちゃいねえな。小僧、ドライバーになったのは最近だな?」
「え?えっと、そう、だけど…」
レックスは突然すぎる質問に困惑し、先ほどまで敵対していた相手に素直に答えてしまう。
困惑のままに当たりを見渡してみると、いつの間にか隣で戦っていたはずのニアとトラ、そして2人が相対していた敵もまた武器をおろしていた。
「だろうな、まったく。いいか?ブレイドってのはただの"武器供給係"じゃあねえんだぞ」
「レックス!大丈夫!?」
大男が話を続けるが、それに割り込むようにニアとトラがレックスの元へと駆け寄ってくる。
ニアがリングから回復エーテルを発動してレックスの傷を癒す。その間、メツの方は同じようにビャッコから治療を受けていた。
「これ、どういうこと…?」
「あいつら、アタシ達を試してたんだよ」
「そうなんだも!明らかに手を抜かれてたも!」
「え?」
その言葉にレックスは大男の方を見る。
大男は、レックスのその「信じられない」という視線の意図に気づいたのか否か、とにかくニカッと大きな笑顔を見せる。
「ま、そういうこった。立てるか?」
大男がレックスに手を差し伸べる。
レックスは未だ困惑の表情を浮かべながらも、その大きな手を取った。それは傷とタコだらけの、大きく、分厚く、硬い手だった。
「俺の名はヴァンダム。傭兵をやってる」
大男はレックスを引き起こすと、もう一度ニカッと笑い、そのまま「こっちに来い」と、ジェスチャーしつつ奥へ歩きだす。
「ついて来な俺がドライバーってものを教えてやるぜ」
続く