「んー!ここはいつ来ても変わらないなー!」
トリゴの街の入り口でニアが背伸びをする。
トリゴの街に入ったのはすでに日が傾き、多くの人が家路についている時間だった。元々、途中で野営を挟んで2日くらいの想定だったのでかなり早い到着だった。理由は言うまでもない。
「俺も来るのは久々だけど…ここはホントのどかだよなー。イヤサキ村にちょっと似てるかも…さすがにこっちの方が都会か」
レックスは街並みを見渡し故郷を思い出す。
トリゴの街はグーラの草原の真ん中に作られた街であり、多少整備されてるとはいえ街の中にも大分自然が残っている。元々は村だったものが徐々に発展してきたのでその名残とも言えるだろう。レックスの故郷リベラリタスもグーラ同様自然豊かな巨神獣であり、そもそもあちらはまだ村なのもあってどことなく雰囲気が似ていた。
「さてと。とりあえず宿に案内するよ」
そう言って入り口のアーチをくぐるニア。夕方とはいえ、街にはまだ人だかりがある。数人の村人がこちらに目を向けてきたが、旅人など珍しいものではないのだろう。目を向けるだけで特に関わってこようとする姿はない。
そんな視線を横目にレックスたちは街道を進む。しかし、少しして先導していたニアの歩みが止まった。
「どうしたニア」
ニアは顔を街道脇に向けていた。レックスもそちらに視界を向けると、そこには一枚の掲示板があった。
ニアは少し掲示板を眺めてから、掲示板の方へ駆け寄り、そこに張られた一枚の紙を睨みつけていた。
「ああ?何だこりゃ…『指名手配 この顔見かけたら連絡すること』…手配書か。この二人は…船のあいつらだな」
メツが掲示板に近寄って文言を読み上げる。それはアーケディアが発行した指名手配の紙だった。似顔絵と懸賞金、その他罪状や連絡先が細かく書かれていた。
手配書はニアの顔で隠れて見えないものを含めて三枚。うち二枚に書かれていたのはレックスにサルベージの依頼をした二人…シンとホムラだった。
「となるともう一枚は…おいニア、見えねえだろうが!」
僅かに肩を震わせていたニアの顔を強引にどけるメツ。そこにはやはりもう一枚ニアの手配書が…
「…あ?何だこりゃ?」
あった。あったが、そこに書かれていた似顔絵は「髪型と服装はニア、しかし顔はどう見てもビャッコ」の化け物。
「な…な…な…」
「アッハッハッハッハ!!!何だこりゃ!!クックック…こいつは傑作だ!なあニア!?」
大笑いしながらメツはニアの方を見る。
ニアは拳を握り、プルプルと震えている。
「ククク、ニアがビャッコになるのか!クククク、傑作じゃないか! ニアがビャッコだ! ハハハハハハハハ!ハガッ!?」
ニアに見せつけるように手配書を指さし、顔はニアに向け笑っていたメツだが、笑いに震える腹をニアの拳が突き刺さる。
「うぐぅ…」とうずくまるメツをよそに、ニアは件の手配書に指をかけ、そのままベリッと掲示板から引きはがす。
「お嬢様!?」
「ニャニャニャニャニャーーー!!!」
ビャッコが制止の声をあげたが、時すでにおそし。ニアは叫びながらその手配書をバラバラに切り裂いた。
細かな紙片があたりに飛び散り、ビャッコはやれやれと首を振る。
「…さ!行こっか!?」
振り向いたニアは怖いくらいいい笑顔だった。
宿屋へ向かおうとしたニアだったが、今度はその歩みが人混みで遮られる。
ちょうど街の中央で催し物をやっているらしく、道をふさぐほどの集団が出来ていたのだ。
「手配書もあったし、あんまり人混みは通らない方が」
「アレでアタシが捕まると思ってんの!?」
「いや一応ね?一応」
シャーっと威嚇してくるニアを宥めるレックス。
レックスの言い分は癪だったが、実際問題ニアも人混みは避けたいところだった。最もそれはレックスが懸念しているのとはまた別の個人的な事情。"知り合い"に会う危険性を考慮した故の判断だった。
なので宿屋へは少し遠回りの、裏路地を通ることにする。閉まりかけの商店の品物を見回しながらレックスはニアへと声をかける。
「なあ、ニアってトリゴの出身なの?」
「んーまあね」
「いつぐらいに住んでたの?」
「あー…だいぶ前…かな」
その質問にニアの表情は少し濁る。しかしレックスの顔は店の方へと向いていたのでレックスに見られることはない。
「じゃあ知り合いとかいないのか?」
「…アタシ家にいることが多かったからさ。そもそもあんまり知り合いがいないんだよ」
ニアは自重するように笑う。その言葉にレックスは振り向き、その横顔が目に入る。
そこに浮かぶ感情の意味は分からなかったが、何か言いたくないことがあるのだろうということは理解できた。
「…そっか」
「そそ。アタシ箱入り娘だったんだ。こう見えてお嬢様なんだぞ~?」
「ええ~?そうは見えないなー」
「なんだとー!」
暫く睨み合って、どちらがともなくプッと吹き出す。
いつのまにか、ニアの表情からは先ほどの暗い色が消えていた。
「小僧構えろ」
「どうしたメツ?」
路地裏を歩くレックス達にメツが後ろから声をかける。
振り向くと、メツはレックスたちの後ろに向けて構えを取っていた。それを見てレックスも即座にモナドを抜く。
構えたと同時に、建物の陰から複数の人影が現れる。甲冑とマスク、ヘルメットを身にまとい、更に銃で武装した兵士だった。
「スペルビア兵!?」
それはここグーラを支配下に置く軍事国家、スペルビア帝国の帝国軍装備だった。
現れたスペルビア兵達は、銃口をこちらに向けながらにじり寄ってくる。
「そこのグーラ人!貴様イーラだな!?」
「イーラ?」
ニアを指して発せられた言葉。そこに現れた単語にレックスは首をかしげる。イーラ。それはメツを引き上げた付近に沈んでいるらしいかつての巨神獣の名のはずだった。
なのでレックスはメツの方に視線だけ向けたが、メツはピンと来ていないらしく、「は?」と顔をしかめるのみだった。
「…シンとホムラ、アタシたちの組織だよ」
その単語に反応したのはニアだった。
レックス達だけに伝えるように小声でつぶやかれた言葉。見るとニアはバツの悪そうな顔をしていた。。
「コイツはイーラとは関係ない!それとも証拠でもあるのか!?」
ニアの顔を見て咄嗟にかばうレックス。それに対し、一番前の指揮官らしきスペルビア兵が腰のポーチから一枚の紙を取り出す。
「この手配書だ!似た顔を見たと通報が入ったのだ!」
それはニアが引き裂いたビャッコ顔の手配書だった。
「人混みに行かなくて正解だったな?」
「うっさい!」
メツの呟きにニアは小さく蹴りを入れる。
そしてその怒りの矛先を、今度はスペルビア兵の方へ向ける。
「ていうかあんた!それアタシに似てると思ってんの!?」
「なんだと?そりゃこんなに…あれ?…どうだお前ら」
改めてまじまじと見て自信をなくしたらしい。指揮官らしき男は振り返り、周りいたスペルビア兵に手配書を見せる。
「顔は後ろのブレイドに似てますね」
「服装は似てますね」
「似てますかね?」
「似てませんね」
スペルビア兵達は一様に首をかしげる。当の指揮官らしき男すら「そ、そうだよな?」とうろたえはじめる。
「…今のうちじゃないか?」
「そだね」
スペルビア兵達が口論してる間にそーっとその場を立ち去ろうとレックス達は後ずさりを始める。
しかし、その退路は、突如燃え上がった青い炎でふさがれる。
「な、なんだ!?」
「全く。何をしているのですか」
スペルビア兵達の更に後ろから声が発せられる。
青い炎に照らされながら現れた声の主は、青い髪に青い服装をした糸目で長身の女性。
「ハッ!申し訳ありませんカグツチ様!!」
カグツチと呼ばれた女性は、両手に持った一対サーベルを振るう。
サーベルから青い炎が広がり、レックス達の周囲が完全に囲われた。
「この炎…ブレイドか!?」
「あの姿にこの炎…そしてスペルビア…まさか!?」
ビャッコがその姿と力を見て正体に感づき腰を深く落とした臨戦態勢を取る。その様子を見てレックス達も習うように武器に力を籠める
対しカグツチは臨戦態勢を取らず、レックス達を横目にスペルビア兵と話し始める。
「それで?あの少女が手配書の…似てないじゃない」
「で…ですよね?」
カグツチは手配書とニアを交互に見てそう告げる。…が、その視線がメツの方を向いた時、その動きが一度止まった。
「アレは…」
カグツチはメツを睨む。
否、正確にその視線を辿ると、その目線はメツの胸元のコアへと向けられていた。対するメツの方は「あ?」と首をかしげるのみ。
「パクス警備長。彼らを捕らえなさい。特にあの紫色のコアクリスタルをしたブレイド。あの者は絶対です」
「は?ですが彼は特に…」
「いいから!私も手伝います!」
「了解しました!」
カグツチがサーベルを振るう。サーベルに纏われた炎が大きくうねり、囲う炎と合わせて暗い路地を青く照らし出す。
それを合図とばかりにスペルビア兵達も銃を構えなおす。
「レックス、アタシはスペルビア兵をやる、だからアンタとメツは」
「オッケー。任せて…行くよ!」
レックスの合図に合わせてニアも飛び出す。
スペルビア兵達の銃弾がニアに襲い掛かるが、ビャッコの展開するシールドに阻まれてニアの元へは届かない。
走りながら腰に下げたリングを抜刀。一番近くにいた一人に切りかかる。
「このっ!」
「なんのっ!」
襲われたスペルビア兵は銃剣を横薙ぎに振るい防御。ニアは新体操の要領で足を開き、強引に体勢を下げて回避。そのまま手を地につけ、地面を押す反動でスペルビア兵の顎を蹴り上げる。
「がっ…!?」
後ろに倒れるスペルビア兵の身体を踏みつつ着地。そのまま視線を隣のスペルビア兵に向ける。
「崩れろ!」
得意アーツ「バタフライエッジ」。
衝撃に体制を崩した兵士を間髪入れず蹴っ飛ばす。そのまま次の目標へと視線を移そうとしたところで、こちらへサーベルを振りかぶるカグツチが視界に入る。
「させるか!」
「お前の相手は俺達だ」
「くっ!」
しかしそのサーベルはニアに届くより前に、横から差し込まれたレックスのモナドに防がれる。
続くメツの連撃をカグツチは後ろに下がって躱す。ニアとカグツチの間に出来たスペースに、レックスとメツが挟まって障害となる。
「ありがと!ビャッコ!やるよ!」
ニアは別のスペルビア兵を相手にしていたビャッコにリングを投げつける。
リングはビャッコの傍で滞空。武器にため込まれたエーテルエネルギーが、ビャッコの力で解放される。
「承知!アクアウェーブ!」
「ぐあああ!?」
スペルビア兵達を一気に吹き飛ばす。
その様子を横目に、レックスは目の前のカグツチに向かって突進。振るったモナドの勢いは、二刀のサーベルに殺される
「くっ!」
サーベルとモナドが鍔ぜり合う。正対するレックスとカグツチの視線が、極至近距離で交差する。
「このっ!」
サーベル片方を鞭のようにしならせ、うねる炎の壁でレックスを強引に引き離す。
そのままカグツチは後ろへ下がって距離を取ろうとするが、レックスの背後から飛び出したメツが更に追いすがる。黒いエーテルをまとった掌をカグツチは振り払ったのとは別のサーベルで受け止める。
「これが天の聖杯…ッ!」
「あ?お前も俺のことを知ってんのか?」
そう言いながらメツはもう片方の手にもエーテルをまとわせ振るう、カグツチはそれを、すんでのところで体を捻ってかわす。
「…いや、そうか。お前、俺を見て戦闘を開始したな?俺について何を知っている?」
「ふざけてるの!?紫色のコアクリスタル…私を覚えてないとは言わせないわよ!?」
「俺がお前を…?」
「メツ!」
レックスの呼び掛けでメツは横から迫る炎に気付く。
それは壁として最初に展開された炎だ。ただの炎と違い、エーテルエネルギーを纏ったそれはブレイドにとって自在の武器となる。
「チィッ!」
咄嗟に後方へ飛ぶ。肩が炎に掠るが、構うことなく強引に突破する。
勢いに任せて飛んだため、受け身を取れず地面に倒れ込んだメツにレックスが駆け寄る。
「大丈夫!?」
「ああ問題ねえ。小僧。あのゴリラほどじゃないが、強いぞ」
「分かってる。せめてニアと…そうだ!」
レックスはメツに耳打ちし、モナドを構える。
メツもそれに小さく頷き、再度拳を構えなおす。
「ニア!」
レックスの呼びかけにニアがレックスの方を振り向き…
『なあメツ、モナドのアーツを発動するときに光るあれ、なんなんだ?』
焚火を囲っての食事中、レックスはモナドの柄のコアクリスタルの部分を指さしながらメツに尋ねた。
その部分はモナドの刃を展開した時、透明なプレートが露出する部分だった。普通に振るっている時は透明なだけだが、アーツを振るう時、そこには複雑な模様が浮かび上がるのだ。
『知らねぇよ。文字かなんかだろ』
『文字?こんな文字知らないけどなぁ』
『古代文字とか?てかどんなだっけ』
横で魚をかじっていたニアが混ざってくる。
『アーツごとに出てくる模様違うよね?』
『そうだな…モナドバスターの時は"
メツは言いながら地面に図を描いた。
細部は異なるような気もしたが、メツの描いたそれは確かにレックスの記憶にあるものと一致していた。
『うーん…見たことあるような。ないような?』
『で、それがどうしたんだ』
『ああ、いや…』
レックスはニアとメツを見てニッと笑う。
『これさ、敵に気付かれない合図として使えないかな?』
『中々知恵が回るじゃねえか小僧』
レックスはモナドのプレートをニアの方へ向ける。
ニアはそのプレートの模様を見て強く頷いた。
「わかった!ビャッコ!」
言葉と同時に飛び上がるニア。そのまま姿勢を低くしていたビャッコに着地。ニアを乗せたビャッコは、敵の間を縫って、近くの配管にしがみつく。
その間にレックスの手でモナドへエーテルが充填され、プレートには"轟"の模様が強く浮かび上がる。
「行くぞ!モナドサイクロン!」
闇のエーテルを纏った暴風が周囲に吹き荒れる。
先ほど縄張りバルバロッサから逃げる時に使った時とは逆に、自分たち吹き飛ばさないようにエーテルをコントロール。しがみついていたビャッコは風に耐え、唐突な竜巻に対応できなかった周囲のスペルビア兵は瓦礫のように吹き飛んでいく。
「うぉおおおおお!!!」
「くぅううう!!」
唯一エーテルの流れに感づいたらしきカグツチは、近くの木材にサーベルを巻き付けその場にとどまった。
風がやんだタイミングで、カグツチはサーベルを杖代わりに立ち上がろうとする。が、その眼前にモナドの刃が突きつけられる。
「これで二体一だ」
レックスとニアに見下ろされるカグツチ。
視線を周囲に送るが、確かに周囲にスペルビア兵の姿は見えない。おそらく炎の壁を超えて遠くに飛ばされている。
「諦めな女。俺について話すなら悪いようには…」
メツが歩み寄りながら手にエーテルを纏う。
カグツチは膝立ちのまま静止しながらメツを見上げ
「いえ、まだよ」
言葉と同時に手を挙げる。
「小僧!」
メツは叫びと同時にレックスにタックルをかます。
倒れ込むレックスの視界に、黄色い何かの塊が飛び込んでくる。
先ほどまでレックスが立っていた所に着弾したそれは、光る網のようなもの。メツに押し倒されていなければおそらくそれに包まれていたのはレックスだ。
「くっ!なんだよコレ!」
「ニア!?ビャッコ!?」
立ち上がりながら横からの声に視線を向ける。
ニアとビャッコは間に合わなかったらしい。目の前に広がった網と同じもので簀巻きにされている二人が目に入る。
「今助け…」
「小僧避けろ!」
ニアに駆け寄ろうとするが、メツの言葉に即座に反応し後ろに飛ぶ。
レックスの目の前をまた先ほどの網が着弾する。
「くっ…上か!」
網が投射された方向、それは近隣民家の屋根の上。
見ると、大砲のようなものを構えたスペルビア兵が数名立っている。おそらく今吹き飛ばした奴らとは別部隊。その構えられた砲門がレックスたちの方へと向けられている。
「それはエーテル遮断ネット。ブレイドとドライバーに有効な兵器の一つよ…これで形勢逆転ね?」
いつの間にか立ち上がっていたカグツチが余裕たっぷりに告げる。
周囲を囲む炎の勢いが増し、屋上のその砲門すら見えなくなる。
「…小僧!」
「くそっ!どうすれば…」
(サイクロンで飛ぶ?いや、エーテルを溜めてる間に掴まる…炎を無理やり突破…どれだけ炎が広がってるかわからないから危なすぎる…)
レックスは思考を繰り返すが、どれも解決策にならない。
そして何もできぬまま、その首筋に冷たい感触が走る。カグツチのサーベルが付きつけられていた。
「諦めなさい。別にあなたをどうこうしたりは」
「今だも!」
が、その時だった。ヒューンという飛来音が戦場に通る。
カグツチが何事かと視線を上げた次の瞬間、その頭上で爆発が起こる。
「な!?」
爆発が近隣住宅に走っていた水道配管をぶち破る。
勢いよくあふれ出た水がカグツチを襲う。同様に周囲の炎にも水が襲い掛かり、その勢いが急速に弱まっていく。エーテルの力を持つ特殊な炎とはいえ、炎である以上ある程度物理法則に従ってしまう。
鎮火の勢いで水蒸気が激しく上がり、カグツチの視界が一瞬で白く染め上がる。
「なにが…」
「小僧!今だ!」
「ッ!わかった!」
唐突な状況の変化に唖然としたレックスだったが、メツの言葉に即座に我に返る。ニアの元へ駆け寄り、モナドの刃を網に立てる。
「今助けて…くそっ!切れない!」
エーテル遮断ネットの名は伊達ではないらしい。メツのモナドの刃は網に刺さることなく表面を滑る。
モナドを置き、今度は手で引きちぎってみようとするが、捕獲用の網が頑丈でないはずはなかった。
「…ダメだレックス…アタシはいいから!」
「いいわけないだろ!みんなで逃げ…」
「楽園に行くんだろ!?こんな所で捕まるのかよ!」
「…ッ!」
ニアの言葉にレックスは歯を食いしばる。
水蒸気でできた靄はすでに晴れてきており、レックスの耳には多くの足音が聞こえてきていた。おそらくモナドサイクロンで吹き飛ばした兵士たちが戻ってきている。
「アタシ、レックスの口から楽園の感想が聞きたいんだ」
「…わかった」
顔をゆがめながら、レックスは立ち上がる。
そのままメツの方を振り向き、カグツチ達が来た方向とは逆方向に駆け出す。
ニアの姿が見えなくなる直前、レックスは一度振り向いて叫ぶ。
「必ず助ける!待ってろよ!」
「…ッ!わかった!!」
レックスの叫びに同じくらいの叫びで答える。それと同時に先ほどとは違う爆音が響く。
メツが地面にエーテルを叩きつけた音だ。晴れかけていた水蒸気を吹き飛ばすほどの勢いで粉塵が激しく舞い上がり、それが再びレックスの姿を隠す。
「アナタたちは屋根伝い!そっちは別ルートで先回りを!」
砂煙の向こうからカグツチが兵士たちに指示する声が聞こえる。
「…頼んだよ。レックス」
ニアは先の叫びを思い出し、少し笑って目を閉じた。
続く