皇太子はツラいよ!   作:ミスター仙人

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第一章 第2話

 アスガルド城から発進するスクールバスに乗って、最寄りに有る華族の同学年生宅に向かう。

 いの一番に寄る家は当然ながらケントの家で、スクールバスが着くとケントが出てきて、お母さんのミーシャさんと弟のマー君が見送ってくれる。

 

 「おはようございます、ミーシャさんとマー君!

 此れから皇子宮で僕の弟のルー君と仲良く勉強頑張ってね!」

 

 と挨拶し、ケントと一緒に手を振って別れた。

 

 「それで、1組はどうだった?」

 

 と昨日は殆ど喋れなかったケントが、尋ねて来たので、

 

 「まだ、クラスメイトと満足に話しも出来て無いから、良くは判らないな。

 そちらの2組こそ、どうだった?」

 

 と問い返すと、

 

 「それがなあー、昨日は大変だったんだぜ!

 お前の事で、俺はクラスメイト中から質問攻めだぜ。

 お前の趣味は何? 日頃はどんな感じ? 魔法は使えるの? 勉強は出来るの? スポーツは何が得意? 好き嫌いはあるの? 何のお菓子が好き? そして終いには、好きな女子はいるの? だとよ。

 何で面と向かって聞きに行かないのか?と聞くと、恥ずかしいからだとよ!

 参っちまうぜ!」

 

 と子供にあるまじく嘆息している。

 そして僕に何やら手紙を幾つか渡してきた。

 此の時代に、メールやSNSでは無く手紙とはな。

 視線でケントに問いかけると、ケントは肩をすくめて、

 

 「どうやら、ネットを使った言伝や正式にアスガルド城経由の私信は、強力な検閲とかいうのがあるらしくて、お前にはたどり着かないんだとよ。

 だから、こんな一昔前のやり方で俺を通すんだとよ。

 この分だと俺だけじゃなくて、サクラにマリアそしてロンの奴も預かってるんじゃねえかな?」

 

 と予想して来た。

 思わず僕は顔を顰めてしまい、心の中で舌打ちした。

 此の手紙を無碍に扱うと、場合によってはややこしい問題に発展しかねない。

 何故なら、相手がそれなりの立場に有る者の子弟の場合、相手の面子や立場を潰しかねないからだ。

 

 《此れは、幾つか手を打っておかね場ばなるまい》

 

 と心に書きとめて、即座にAR空間のログ記帳を行い、佐助に働いて貰う項目に加えた。

 

 そうこうしている内に、何人かがスクールバスに乗り込み、皇族や王族・貴族・華族のドームを出て、一般人用のドームに入り集合している生徒達の所に、スクールバスが合流して職員が人数を振り分けて生徒達をスクールバスに乗せて行く。

 なるべく早く、同学年の生徒達の顔を覚えさせる配慮なのだろう、僕達のスクールバスには新入生達が乗ってきて、サクラとマリアそしてロンが乗ってきた。

 

 「「「「「おはよう!」」」」」

 

 と親友5人が挨拶し合うと、ロンが早速僕に話し掛けて来た。

 

 「マリオン師匠から聞いたんだけど、軌道エレベーターの基礎部分が完成したから、幾つかの実験を経て静止軌道から空間チューブを連結させて、いよいよ物品でのやり取りを夏に始めるそうじゃないか!

 是非、夏休みにはスターヴェーク公国に出向いて、見学させて貰おうぜ!」

 

 と相変わらず異様な熱意で僕にお願いをして来た。

 

 「そうだな。 僕の領地でも有るし、母様の認可が有ればある程度は僕の裁量は効くから、少ない人数なら見学は出来るだろう。

 だが、予め言って置くぞロン!

 この間の様に、工場の実験炉を興味本位で弄る様な行動は禁止だ!

 アレのお陰で、僕達5人は工場ドームに暫く行けなくなったんだからな!

 折角、僕達の騎竜であるミネルヴァに装着させる予定の、5人が乗れるカーゴスペースに趣味の幾つかの武装を乗せられなくなってしまったんだから。

 夏休みの秘密の楽しみだったのに!」

 

 と釘を刺すと、ロンは、

 

 「悪かったよアポロ。

 でもさ、何処まで実験炉の温度を上げれるか? の興味は君にも有るだろう?

 僕は、己の探究心の求めるままに突き進んだだけさ!

 まあ、マリオン師匠にはこっぴどく怒られてしまったけど、自分の私見と改善策をレポートで提出したら、マリオン師匠の師匠であるガトル大師匠は感心してくれたから、きっともう少ししたら工場ドームに入っても良くなるよ」

 

 とあまり懲りて無い事を言って来た。

 

 「だけど、君はまだ『防御魔法』を覚えてないじゃないか!

 あくまでも外部装置の『シールド魔法』を使用しているだけだからな。

 僕も、漸く使える様になったばかりだから、ロンも頑張って習得しろよ!」

 

 と諭すと、

 

 「無茶言うなよ!

 アポロの魔法習得スピードは、異常極まりないじゃないか!

 大体、普通は如何に『ナノム玉1』を服用していようと、基礎の『ヒール(治癒魔法)』と『マーキング(自己目印)』そして『ブースト(身体強化)』しか小等部低学年では習得出来ない筈なのに、アポロは既に土魔法、防御魔法、探知魔法を習得していて、更に此れ等を複合して魔法を使えるオリジナル魔法まで使えるじゃないか。

 全く非常識な奴だよ!」

 

 と羨ましそうに憤慨している。

 その勢いに、サクラちゃんとマリアちゃんは呆れてしまって、黙ってスクールバスに乗り込んだ。

 スクールバスに揺られて、小等部の学校に辿り着くまでロンは僕に熱心に話し掛けてきていた。

 お陰で、他の子供が僕に話し掛けて来なかったので、良い形での僕への虫除け装置を務めてくれた。

 まあ、本人はそのつもりは一切無さそうで、小等部の学校に着いても僕のクラスに付いて来て、クラスメイト達も遠巻きにしていた。

 チャイムが鳴り、仕方無さそうに本人のクラスである5組に向かい、僕も暫定の席順に着席する。

 さて、今日は此れから席替えのくじ引きか。

 

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