「其れでは、シレノス星系に於ける惑星シレノスとシリウスの、惑星フォーミングを進めてくれる方々と、その護衛任務を引き受けてくれた軍人諸氏に対して、人類銀河帝国皇太子アポロニウスの名を以って、貴殿らの今後の御活躍を期待致します!」
と、別れの言葉をモニター越しに挨拶して、自分達遠征軍はいよいよ『アルカディア星系』に向けて超長距離ワープに入った。
総計1万隻を超える遠征軍艦艇は、宇宙要塞艦以上の艦艇が持つ超出力の主導機によって、巨大なコクーンで空間を包んで一斉に超長距離ワープに入る。
こうすれば、個別にワープに入るよりエネルギーロスが無く、更には通常空間に戻る際の諸々の問題を解決出来る(例えば、転移座標がずれたり、時間差による集合時間のロス等)。
一ヶ月後、その間に3回目の超長距離ワープを行って、いよいよ次の超長距離ワープで『アルカディア星系』の外縁部に達する段階で、数多の探査プローブによる事前調査を行うべく、『メタトロン』の権能と『神威(カムイ)』の超出力主導機を最大限利用して、ハイパーシフト(長距離位相差ジャンプ)を使用し、探査プローブ1万機を『アルカディア星系』各所に送り込んだ。
そして、魔法による偽装でバグスに察知されない様に工夫した『新型FLT通信』による情報を、1週間後から得る事が出来た。
『アルカディア星系』では他の星系と違い、数多くの惑星が惑星フォーミングする事で、居住可能惑星や資源惑星そして機械化衛星等が存在する事は事前に確認した、本来の『人類銀河帝国』の復元したデータバンクで判っているのだが、現状に於いてバグスの侵攻を受けてどの様になっているか、見当も付いていなかったので、此れが初めての情報となる。
最初の情報で判ったのは、一つの惑星にかなりのバグス艦隊が各惑星の軌道上に展開していて、地上に睨みをきかせていて明らかに侵略行動の最中である。
その惑星以外の他の資源惑星や機械化衛星は破壊されている。
つまり、バグスが侵略されている最中の惑星以外は、占拠或いは攻略中に破損することで破却した様だ。
しかし、バグスに宇宙空間どころか軌道上まで制圧しているのに、地上でのバグスによる制圧戦でかなりアルカディア住民が抵抗している様だ。
中々、想定していた中でも可能性が低い予想の一つの状態の様だ。
他にも、隣接する暗礁宙域の情報や他の星系からの双方への援軍等を探る為に、探査プローブを様々な方向に向かわせて、詳細な情報を得る様にした。
お陰で3日もすると、かなり詳細な情報が見えて来た。
バグスの艦隊は、意外と少なくて50万隻がアルカディア星系の主星たる、『惑星アルカディア』の軌道上に展開していて、其れ以外のバグス艦隊はかなりまばらにしかアルカディア星系には存在していない。
その代わりと言っては何だが、隣接する暗礁宙域には凄まじいエネルギー偏差数値が観測されている。
もう少ししたら、隠蔽魔法を施した探査プローブの一群が暗礁宙域に侵入して、もっと細かい情報が得られるだろうが、後2週間くらいは掛かりそうだ。
観測されているエネルギー偏差数値だけでも、バグス艦隊程度の熱量を遥かに凌駕していて、まるで恒星が暗礁宙域に複数存在しているかの様だ。
こんな異常なエネルギー偏差数値が星域の一箇所に集中している所為で、周囲に発生している重力のバランスが異常を起こしていて、星系が歪んでいるのが遠距離で観測している遠征軍からも把握出来ている。
此の重力異常は、恐らく『宇宙大怪獣』が其の場所に複数存在している証拠だろう。
あの凄まじい『宇宙大怪獣』が、複数居る事実が想定していた通り暗礁宙域で生産されているのだろう。
こうなると、アルカディア星系の解放を速やかに行った後は、隣接する暗礁宙域に有るバグス共の生産工場を確実に破壊して、二度と復活出来ない様にしなければならない。
その為にも、詳細な情報を精査した上で、作戦案を煮詰めなければならない!
遠征軍の上層部による、遠征作戦の練り直しをする為に、『神威(かむい)』の作戦会議室は、活況を呈し始めた。
当然自分と部下の軍師二人は、徹底的な情報の見直しとシミュレーションを行う事で、幾つかの作戦案を遠征軍司令官の『岳飛 鵬挙』上級大将に提示して、司令官付きの幕僚達に推敲して貰った
かなり徹底的に精査されたが、殆ど手直ししないで作戦案は遠征軍司令官とその幕僚達に了承されて、其の作戦案の準備を遠征軍は開始した。
いよいよ、自分を始め帝国航宙軍によるバグスとの二回戦が開始されようとしていた。